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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07F
管理番号 1192867
審判番号 不服2006-26048  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-17 
確定日 2009-02-20 
事件の表示 平成 8年特許願第269768号「自動販売機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月 6日出願公開、特開平10-116379〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成8年10月11日の出願であって、平成18年10月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年12月14日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成18年12月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年12月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「商用電源により駆動される自動販売機において、前記商用電源の停電時には、前記商用電源にて蓄電された蓄電装置の電力にて、商品を搬出するための搬出装置と全体の動作制御を行うための制御装置とのみを駆動可能にし、その他の電力消費装置の動作は不能にして停電後にも長期に亘り販売動作が可能なように構成したことを特徴とする自動販売機。」(なお、下線は補正箇所を示すものである。)

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無(補正の(目的の)適否)
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「自動販売機」に、「商用電源により駆動される自動販売機において」及び「その他の電力消費装置の動作は不能にして停電後にも長期に亘り販売動作が可能な」ように構成したとの限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-251228号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「無停電電源装置を持つ自動販売機に対する電源供給状態を監視し、停電を検出したら電源を商用電源側から前記無停電電源装置側に切り換えるとともに、停電時から時間カウントを開始して一定時間経過したら前記自動販売機の状態を判断し、販売状態にないときにのみ電源を無停電電源装置側から商用電源側へと切り換えることにより、前記無停電電源装置での放電を防止することを特徴とする自動販売機の電源供給方法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(イ)「しかしながら、このようなUPSを使用するとき、停電時間がさらに長くなるとUPS内部のバッテリを放電し切ってしまう。そして、バッテリを放電し切ってしまうとその充電に長時間を要するため、その間は自動販売機が使用不能になるという問題が発生する。したがって、この発明の解決すべき課題はUPSを用いた自動販売機で、そのバッテリを放電し切ってしまわないようにすることにある。」(段落【0004】)
(ウ)「・・・なお、負荷14としては、例えば商品を搬出するソレノイドなどが含まれる。」(段落【0008】)
(エ)上記記載事項(ウ)及び図3を合わせみると、停電時に無停電電源装置により商品を搬出するソレノイドなどを動作させることが示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「停電を検出したら電源を商用電源側から無停電電源装置側に切り換え、商品を搬出するソレノイドなどを動作させるとともに、停電時から一定時間経過しかつ販売状態にないときに電源を無停電電源装置側から商用電源側へと切り換えることにより、前記無停電電源装置での放電を防止する自動販売機の電源供給方法。」

原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4-294485号公報(以下、「引用例2」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(オ)「商用電源より電源供給を受けて作動する冷却装置とヒータ等の加温装置を具備し、庫内に並設した加温商品の収納室と冷却商品の収納室とに冷風または温風を循環させる空気循環用ファンを有する自動販売機において、通常商用電源より蓄電され、商用電源OFF時に放電する蓄電池と、前記冷却装置及び前記加温装置と別個に設けられた別系統の冷却装置と加温装置と、この冷却装置と加温装置とを商用電源OFF時に前記蓄電池により作動するよう回路切換を自動的に行なう回路切換手段とを備えることを特徴とする自動販売機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(カ)「商用電源より電力供給を受けて作動する冷却装置とヒータ等の加温装置を具備し、庫内に並設した加温商品の収納室と冷却商品の収納室とに冷風又は温風を循環させる空気循環用ファンを有する自動販売機において、通常商用電源より蓄電され、商用電源OFF時に放電する蓄電池と、商用電源OFF時に、温風を循環させている空気循環用ファンに対して商用電源に代わる駆動電源として前記蓄電池による作動を可能とし、かつこの空気循環用ファンを一定時間遅延作動して、停止させる制御手段を備えることを特徴とする自動販売機。」(【特許請求の範囲】【請求項2】(引用例2には、【請求項1】と記載されているが、正しくは【請求項2】と認められる。))
(キ)「本発明は上記の点に鑑みて成されたもので、商用電源の供給が切れた時、自動的に蓄電した直流電源の供給に切換え、別系統の冷却及び加温装置を作動して、販売商品の冷却・加温を保障し、またHOT商品収納室内の空気循環用ファンに対する一定時間の遅延回転動作を続けて温度上昇による周辺部品の熱破損を防止できる自動販売機を提供することを目的とする。」(段落【0009】)
上記記載事項(オ)、(カ)及び図1、図2からみて引用例2には、停電時を含む商用電源OFF時には、冷却装置と加温装置あるいは空気循環用ファンのみを蓄電池により作動させ、他の装置は蓄電池による作動はさせない点が示されているといえる。

原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-110879号公報(以下、「引用例3」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ク)「このため従来、新幹線電車に搭載される自販機は、瞬停のない無停電電源装置の電源(100V±10V)より受電して居り、その受電容量もこの電源装置の容量から制限を受けている。・・・」(段落【0003】)
(ケ)「しかしながら、このように新幹線電車用に負荷設計された自販機でも、一編成の電車に当初の計画以上の多数台の自販機を搭載しようとしてもできないという問題がある。そこで本発明は、この問題を解消できる複数供給電源付自動販売機を提供することを課題とする。」(段落【0004】)
(コ)「図1は本発明の一実施例としての回路図である。同図において、01は自販機、02は商品販売に直接関わる図外の貨幣識別回路,商品選択回路,商品搬出回路及びこれらの回路を制御する主制御回路等からなる販売系回路である。また、1はこの自販機01に図外の無停電電源装置から供給されるAC100V±10Vの瞬停のない主電源であり、2,3は同じくこの自販機01に架線側から供給される瞬停のある電源である。・・・」(段落【0008】)
上記記載事項(コ)及び図1からみて引用例3には、商品搬出回路や主制御回路を含む販売系回路のみに無停電電源装置から給電され、その他の回路には無停電電源装置からは給電されない点が示されているといえる。

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「商品を搬出するソレノイド」は、本願補正発明の「商品を搬出するための搬出装置」に相当する。
また、上記記載事項(イ)及び図2からみて、引用発明の「無停電電源装置」も「商用電源にて蓄電され」るものであって、「蓄電装置」であることが理解できる。
そして、引用発明の「自動販売機」も「商用電源により駆動され」ていること、及び引用発明にはそのような「自動販売機」が記載されていいることは明らかである。
そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「商用電源により駆動される自動販売機において、前記商用電源の停電時には、前記商用電源にて蓄電された蓄電装置の電力にて、商品を搬出するための搬出装置などを駆動可能にした自動販売機。」

そして、両者は次の相違点1及び2で相違する。
(相違点1)
停電時に、本願補正発明においては「商品を搬出するための搬出装置と全体の動作制御を行うための制御装置とのみ」を駆動可能にし、「その他の電力消費装置の動作は不能に」するのに対し、引用発明においては「商品を搬出するための搬出装置など」を駆動可能にする点。
(相違点2)
本願補正発明は「停電後にも長期に亘り販売動作が可能なように構成」したものであるのに対し、引用発明は「無停電電源装置での放電を防止する」ものである点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例2や引用例3に示されるように、蓄電池等の無停電電源装置からは必要な回路あるいは装置のみに給電し、他の回路あるいは装置には給電しないようにすることは本願出願前周知の技術事項である。そして、記載事項(ク)を示すまでもなく、蓄電池のような無停電電源装置には容量に制限があることから、それに対処するために上記周知の技術事項が採用されることは当業者に自明の事項である。
また、引用例3には、商品搬出回路や主制御回路を含む回路のみに無停電電源装置から給電する点が記載されている。
そして、上記引用例2や引用例3に記載された発明も引用発明と同様自動販売機における蓄電池等の無停電電源装置に関するものであり、また引用発明の無停電電源装置が放電し切ってしまうことを防止するという課題と、自明の事項である無停電電源装置の容量に制限があることに対処するという課題とは技術的に共通する課題であるから、引用発明に上記周知の技術事項及び引用例3に記載された発明を適用する点に格別の困難性は見いだせない。
さらに、該適用の際に必要な回路あるいは装置としてどの範囲を選択するか、すなわち引用例3に記載された商品搬出回路や主制御回路のみとすることは、当業者が適宜定めうる事項にすぎない。
そうすると、引用発明に、上記周知の技術事項及び引用例3に記載された発明を適用して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到できたことである。

(相違点2について)
そもそも引用発明も、商用電源の停電時に無停電電源装置に切り換えるものであるから、「停電後にも販売動作が可能なように構成」したものである。そして、引用例1には、「停電時間がさらに長くなるとUPS内部のバッテリを放電しきってしまう。」(上記記載事項(イ))との課題が示されていることから、その課題に対処し「長期に亘り」販売動作が可能なようにするとの機能も示唆されている。
そうすると、引用発明及び引用例1に記載された事項に基づいて相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用例1及び引用例3に記載された発明並びに周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例3に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、願書に最初に添付された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「商用電源の停電時には、前記商用電源にて蓄電された蓄電装置の電力にて、商品を搬出するための搬出装置と全体の動作制御を行うための制御装置とのみを駆動可能にするように構成したことを特徴とする自動販売機。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「自動販売機」についての「商用電源により駆動される自動販売機において」及び「その他の電力消費装置の動作は不能にして停電後にも長期に亘り販売動作が可能な」ように構成したとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用例1及び引用例3に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用例1及び引用例3に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例3に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-11 
結審通知日 2008-12-17 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願平8-269768
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G07F)
P 1 8・ 121- Z (G07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 吉澤 秀明
豊永 茂弘
発明の名称 自動販売機  
代理人 山本 格介  
代理人 池田 憲保  

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