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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22D
管理番号 1192868
審判番号 不服2006-26250  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-21 
確定日 2009-02-20 
事件の表示 特願2002-154086「鋳片の表面欠陥の除去方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 2日出願公開、特開2003-340557〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年5月28日の出願であって、その請求項1?3に係る発明は、平成18年8月9日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】 加熱炉装入前の連続鋳造による鋳片の表面欠陥を皆無とする方法であって、連続鋳造による鋳片の冷却時において、Ar_(3)変態点直上の温度よりフェライトパーライト組織を現出させることのない冷却速度で鋳片を急冷した後、鋳片の表面疵の磁探による検出部の長さLを基準にして、該表面疵の磁探による検出部の長さLと該検出部の外側のそれぞれ0.5L以上1L以下の表面疵の磁探による非検出部を加えた鋳片の表面疵部を除去範囲として除去することを特徴とする鋳片の表面欠陥の除去方法。」

2.引用刊行物及びその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?5には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)刊行物1:特開昭63-168260号公報
(1a)「特許請求の範囲
(1)連続鋳造により製造されたキルド鋼からなる鋳片を、その表面温度がAr_(3)変態点より150?50℃高い温度まで冷却時に、冷却媒体により鋳片内部が赤熱状態で、かつ表面温度がAr_(1)変態点より100?400℃低い温度となるように急冷した後、前記鋳片を所定長さに切断し、ついで炉内加熱して熱間成形することを特徴とする連続鋳造片の熱間加工法。」(1頁左下欄4?12行)

(1b)「[作用]
本発明では鋳片の表面温度がAr_(3)変態点より150?50℃高い温度まで冷却された時に、鋳片内部が赤熱状態のままで、鋳片表面(20?40mm程度が好ましい)のみをAr_(1)変態点より100?400℃低い温度となるように急冷することにより、その組織をベイナイト変態させ、鋳片内部に対し圧縮応力を付与し、オーステナイト粒界に組織的に弱いフィルム状のフェライトが生成するのを防止する。」(3頁左上欄8?17行)

(2)刊行物2:特開昭59-101227号公報
(2a)「本発明は、金属板の表面欠陥手入装置に関し、具体的にはスラブ等の表面に存在する各種の表面疵、例えば縦割れ、横ヒビ及びカミ込み等を除去する半自動の手入装置を提案するものである。」(1頁右下欄2?5行)

(2b)「検査者は被手入材2上に立ち欠陥を探索し、欠陥2aが存在し、発見した場合はこれを除去するに要する領域を手入部2b(欠陥2a及びその周辺部をいう)として教示入力すべく・・・手入部2bの周縁に沿うように欠陥位置教示器9を移動させる。1つの手入部2bを周回するとその手入部2bについての表面位置教示が終了する。」(3頁右上欄2?10行)

(3)刊行物3:特開平1-157770号公報
(3a)「従来の表面欠陥除去方法としては、ビレット等の小断面素材に使用される自動蛍光磁粉探傷法がある。この方法は、各工程が自動化されており、先ず、被処理体のビレット表面を磁化し、磁化表面に蛍光磁粉を塗布し、ブラックライトの紫外線を検査面に照射して欠陥部に生じた磁粉模様を電気的に検出し、検出された磁粉模様の領域を研削機等により自動研削して欠陥を除去する。」(1頁右下欄11?18行)

(4)刊行物4:特開平6-126622号公報
(4a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶鋼の連続鋳造ライン及び鋳片切断後の高温鋳片を連続的あるいは部分的に研削する、鋳片の表面あるいは表層の疵の除去手段に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、溶鋼の連続鋳造ラインにおけるスラブ表面あるいは表層の疵除去として、連続鋳造片をカッターでスラブに切断したのち、冷却状態で全面をホットスカーフによる溶削か、グラインダーによる研削で疵を除去することが一般に行われてきた。
・・・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の方法である複数の加工により溶削する場合は、冷間で表面あるいは表層の疵を除去するものであり、溶削自体は部分疵の選択的な除去が難しく、しかも部分,全面溶削とも溶削量が増加し、鋳片の歩留りが大幅に低下する。」

(4b)「【0013】疵の非接触検知手段としては、磁粉探傷や超音波探傷,画像処理装置,レーザースキャニング、さらには、スラブの温度が750?850℃の領域以外で普通鋼であれば渦電流センサーも使用できる。」

(5)刊行物5:特開平7-132443号公報
(5a)「【0002】
【従来の技術】一般に、溶鋼など金属溶湯は連続鋳造され、圧延素材であるスラブなどに切断されて平面状物体となる。このような連鋳スラブには、・・・割れ疵や裂け疵や機械的な引っ掻き疵などの表面欠陥が発生することがある。一旦発生したこれらの表面欠陥は、消失することなく、そのまま次なる熱間圧延工程で圧延すれば、欠陥程度が悪化方向に助長され、穴があいたり、裂けたり、剥げたり、最悪の場合は圧延中に破断したりするし、冷間圧延などの工程を経て最終製品まで残存する懸念がある。このため、たとえばスラブ研削機などによって、少なくとも表面欠陥の部分を研削し完全に取除く必要がある。しかしながら、表面欠陥の種類や欠陥程度とか、その発生する位置や形状、大きさなどを自動的に検出し正確な検査情報を得ることが非常に困難であるので、このような表面欠陥の除去を自動化することは困難である。
【0003】一般的には、先ず表面検査を行い、目視でスラブ表面欠陥の位置にマーキングを施す。次に、マーキングの位置に沿ってスラブ研削を行う。近年、鋼帯など金属帯表面欠陥の種類やその欠陥程とか、その位置、形状、大きさなどをレーザや超音波等で自動的に検出し識別して検査情報を得ることが試みられ、かつ実用化されている。しかしながら、現段階では、平面状物体である連鋳スラブのように、その地肌がラフでバラツキの大きいものについては、実用化に至っていない。」

(5b)「【0021】この表面欠陥8には深さがあるので回転砥石による1回の研削では除去し切れない場合が生ずる。このような場合には、・・・作業者の目視判断(判定)結果に基づいて、1回の研削では除去しきれない表面欠陥8については2回,3回,…と研削回数を指定し入力しておいて、指定された研削回数に従って表面欠陥8の除去を行うこともできる。
【0022】このようにして、1通りの表面欠陥8の除去を行った後に、なお表面欠陥8が残存しているときは、以上のように走査し入力しては研削することを繰り返せばよい。」

3.刊行物1記載の発明
連続鋳造により製造され、圧延される鋳片について、加熱炉装入前に、その表面疵を除去することは、本願出願前において周知乃至慣用の技術であるから、そのような周知乃至慣用技術を併せ考慮し、摘記(1a)、(1b)の記載を整理すると、刊行物1には、次の「鋳片の表面疵の除去方法」についての発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「連続鋳造により製造されたキルド鋼からなる鋳片を、その表面温度がAr_(3)変態点より150?50℃高い温度まで冷却された時に、鋳片内部が赤熱状態のままで、鋳片表面のみをAr_(1)変態点より100?400℃低い温度となるように急冷することにより、オーステナイト粒界に組織的に弱いフィルム状のフェライトが生成しないように、その組織をベーナイト変態させ、その後、加熱炉装入前に、鋳片の表面疵を除去する鋳片の表面疵の除去方法。」

4.対比・判断
本願発明1と刊行物1発明を対比すると、
(ア)刊行物1発明における「表面疵」は「表面欠陥」であるといえる。
(イ)本願発明1における「Ar_(3)変態点直上の温度」及び刊行物1発明における「Ar_(3)変態点より150?50℃高い温度」は、どちらも、「Ar_(3)変態点より高い温度」といえる。
(ウ)本願明細書の「【0007】・・・連続鋳造による鋳型から鋳片を引き出し時の冷却において、Ar_(3)変態点直上のオーステナイト領域の温度よりフェライトパーライト組織を現出させないような冷却速度で急冷却し、鋳片表層組織に粒界フェライトの析出を抑制し、ベイナイト組織化して鋳片の延性を改善することで、鋳片の表面疵の発生を低減する。」との記載を考慮すると、刊行物1発明における「急冷することにより、オーステナイト粒界に組織的に弱いフィルム状のフェライトが生成しないように、その組織をベーナイト変態させ」る旨は、本願発明1における「フェライトパーライト組織を現出させることのない冷却速度で鋳片を急冷」する旨と同様の事項を意味するといえる。

以上の(ア)?(ウ)の事項を考慮すると、両者は、
「加熱炉装入前の連続鋳造による鋳片の表面欠陥を除去する方法であって、連続鋳造による鋳片の冷却時において、Ar_(3)変態点より高い温度よりフェライトパーライト組織を現出させることのない冷却速度で鋳片を急冷した後、鋳片の表面疵を除去する鋳片の表面欠陥の除去方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。

<相違点1>
急冷開始時のAr_(3)変態点より高い温度が、本願発明1では、「Ar_(3)変態点直上の温度」であるのに対し、刊行物1発明では、「Ar_(3)変態点より150?50℃高い温度」である点

<相違点2>
鋳片の表面疵の除去について、本願発明1では、「鋳片の表面疵の磁探による検出部の長さLを基準にして、該表面疵の磁探による検出部の長さLと該検出部の外側のそれぞれ0.5L以上1L以下の表面疵の磁探による非検出部を加えた鋳片の表面疵部を除去範囲として除去」して、「鋳片の表面欠陥を皆無とする」のに対し、刊行物1発明では、そのような事項が規定されていない点

以下、上記相違点1、2について検討する。
<相違点1について>
刊行物1発明における急冷開始時の温度の選択肢のうち「Ar_(3)変態点より50℃高い温度」やそれよりやや高い温度は、「Ar_(3)変態点直上の温度」といえるから、この相違点1で示される本願発明1の特定事項は、刊行物1発明における選択肢の範囲内であって、格別なものとはいえない。
また、仮に、上記相違点1が実質的な相違であるとしても、そのような相違は、当業者が容易に想到し得た程度の事項というべきである。すなわち、本願発明1と刊行物1発明とは、Ar_(3)変態点以上のオーステナイト領域から急冷し、表層組織を粒界フェライトが析出しないようにベイナイト組織として、鋳片の延性を改善する点で共通しており、急冷開始時の温度を「Ar_(3)変態点直上の温度」とすることは、そのような組織調整の正確さ、及び、組織調整のための冷却能力や冷却コストを考慮して当業者が適宜決定する程度のことであって、格別に困難なこととはいえない。

<相違点2について>
刊行物3の摘記(3a)、刊行物4の摘記(4b)、刊行物5の摘記(5a)の記載に見られるように、鋳片等の表面疵の検査や検出には、作業者の目視の外に、磁粉探傷、超音波探傷、レーザースキャニング、渦電流センサー等を用いることが本願出願前において知られており、磁粉探傷や渦電流センサーによる磁探も、そのような表面疵の検出手段として本願出願前において周知のものである。そして、目視による検査に限界があるように、このような各検出手段にもそれぞれ検出性能の限界があって、摘記(5a)、(5b)の記載に見られるように、表面疵の正確な検査や検出は困難であり、1回の検査や検出では、表面疵が見落とされる場合があることも、当業者のよく知るところである。
一方、刊行物2の摘記(2a)、(2b)には、金属板表面の表面疵の除去に関し、欠陥(疵)だけでなく、欠陥(疵)周辺部をも除去する旨が記載されている。そして、除去する範囲を広げれば、除去量の増加に伴う歩留まり低下が大きくなるものの、(圧延)加工後の表面欠陥が少なくなり、逆に、除去する範囲を狭くすれば、歩留まり低下が小さくなるものの、除去すべき表面疵を見逃し、それが(圧延)加工後の表面欠陥の増加に直結するであろうことは、普通に予測できる程度の事項であるから、表面疵の除去範囲は、検出手段の検出性能、歩留まり、加工後の表面欠陥の状況を考慮し、当業者が適宜決定する程度の設計的な事項というべきである。
してみれば、刊行物1発明において、表面疵の検出手段として周知の磁探を採用し、検出手段の検出性能、歩留まり、加工後の表面欠陥の状況を考慮して、表面疵の除去範囲を検出された疵だけでなく、その周辺部にも適宜に広げ、結果的に、「鋳片の表面疵の磁探による検出部の長さLを基準にして、該表面疵の磁探による検出部の長さLと該検出部の外側のそれぞれ0.5L以上1L以下の表面疵の磁探による非検出部を加えた鋳片の表面疵部を除去範囲として除去」して、「鋳片の表面欠陥を皆無とする」ように構成することは、刊行物2の上記記載や上記周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得た事項というべきである。

そして、本願発明1は、刊行物1、2の記載から予測できないような格別に顕著な効果を奏するとは認められない。

したがって、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び上記の周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-05 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2008-12-24 
出願番号 特願2002-154086(P2002-154086)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小柳 健悟  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 徳永 英男
國方 康伸
発明の名称 鋳片の表面欠陥の除去方法  
代理人 横井 知理  
代理人 横井 健至  

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