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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1192972
審判番号 不服2004-21920  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-22 
確定日 2009-01-28 
事件の表示 平成7年特許願第515792号「金属-プラスチツク-金属構造を有する缶構成部品」拒絶査定不服審判事件〔平成7年6月8日国際公開、WO95/15259、平成9年11月25日国内公表、特表平9-511698〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成6年(1994年)11月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1993年12月1日(以下、「本願優先日」という。)、フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成14年12月13日付けで拒絶理由が通知され、平成16年7月21日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正書が提出され、さらに同年11月17日に手続補正書が提出され、その後、平成18年12月5日付けで審尋がされ、平成19年3月6日に回答書が提出され、平成19年11月9日付けで再度審尋がされ、平成20年2月19日に回答書が提出されたものである。
なお、平成15年5月28日に手続補正書が提出されているが、この手続補正書は期間経過後の差出しであり、手続却下されている。

第2 平成16年10月22日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年10月22日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正内容
平成16年10月22日付けの手続補正(以下、「本件補正1」という。)は、補正前の請求項1において、(a)積層材料についての「絞り加工あるいは絞りおよびしごき加工を施される缶本体および缶端部を作るため」なる構成要件を削除する補正、及び、(b)熱可塑性ポリマー層の厚さについての「80?500ミクロン」を「80?150ミクロン」とする補正(以下、それぞれ「補正(a)」、「補正(b)」という。)を含むものである。

(2)補正要件
しかし、上記補正(a)は、補正前の発明の構成に欠くことができない事項を限定するものではないので、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当しない。さらに、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。
また、熱可塑性ポリマー層の厚さの上限を「150ミクロン」とする上記補正(b)は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項、若しくは、当業者に自明な事項ではないので、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
したがって、本件補正1は、平成6年法律116号改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項、及び、同法第17条の2第3項に違反するものである。

(3)請求人の主張
ア 請求人は、『積層材料の用途に係わる「絞り加工あるいは絞りおよびしごき加工を施される缶本体および缶端部を作るため」なる文言…の削除は、本来、誤記の訂正および明瞭でない記載の釈明として取り扱われる程度の内容であ(る)』(平成20年2月19日付け回答書【回答の内容】4.)と主張する。

イ この出願に係る発明について、明細書には、「本発明は層状の金属-プラスチック構造から出発して1ないし数回のパス中で絞り加工することによって食品生産物のパッケージをするための構成部品、缶本体および簡単に開けられるものあるいはそうではない端部の製作の技術分野に該当する。もっと詳しく云うと、本発明で使われる金属-プラスチック構造は金属-ポリマー-金属のタイプであり、即ち、そこではポリマーの層が2つの金属シート間にそれらに接着して挟まれている。」(「発明の背景」第1?第2段落)と記載されている。
すると、この請求項1に係る「積層材料」である「金属-プラスチック構造」は、缶本体および缶端部を作るために使用されるものであることは明らかであり、補正により削除された「絞り加工あるいは絞りおよびしごき加工を施される缶本体および缶端部を作るため」なる文言を、誤記であるとすることはできない。よって、「絞り加工あるいは絞りおよびしごき加工を施される缶本体および缶端部を作るため」なる文言の削除を、誤記の訂正を目的とするものということはできない。
また、該文言が付された「積層材料」は、その意味するところが明りょうであるから、「絞り加工あるいは絞りおよびしごき加工を施される缶本体および缶端部を作るため」なる文言の削除を、明りょうでない記載の釈明を目的とするものということもできない。そもそも、平成6年法律116号改正前特許法第17条の2第3項第4号は「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」と規定するものであるから、「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正は、法律上、拒絶理由中で特許請求の範囲が明りょうでない旨を指摘した事項について、その記載を明りょうにする補正を行う場合に限られる(必要であれば、平成19年(行ケ)10159号判決(平成20年3月19日判決言渡)参照)ところ、当該拒絶理由通知に係る拒絶の理由の明りょうでない旨を指摘した事項に「絞り加工あるいは絞りおよびしごき加工を施される缶本体および缶端部を作るため」との事項はないのであるから、上記補正が同号に掲げる事項を目的とするということができないことは、明らかである。
したがって、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明として取り扱われる程度の内容であるとの請求人の主張は、採用できない。

(4)まとめ
以上のとおり、上記補正を含む本件補正1は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 平成16年11月17日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年11月17日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正内容
平成16年11月17日付けの手続補正(以下、「本件補正2」という。)の対象は、本件補正1の却下により、本件補正1による補正前の明細書又は図面である。
本件補正2は、該補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1において、積層材料についての「絞り加工あるいは絞りおよびしごき加工を施される缶本体および缶端部を作るため」という構成要件を削除する補正を含むものである。

(2)補正要件
そして、この補正は、本件補正1における上記補正(a)と同じであるから、本件補正1における補正(a)に対するのと同じ理由で、平成6年法律116号改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)まとめ
したがって、上記補正を含む本件補正2は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4 本願発明
上記のとおり本件補正1(平成16年10月22日付け手続補正)及び本件補正2(平成16年11月17日付け手続補正)は却下されたから、この出願の請求項1?42に係る発明は、本件補正1及び本件補正2による補正前の明細書及び図面である特許出願時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?42に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項14、15、29に係る発明は、それぞれ以下のとおりである。

【請求項14に係る発明】
「絞り加工によって得られる金属-ポリマー金属型の金属-プラスチツク構造のベースおよび壁部から成る缶本体および端部であって、金属-プラスチツク構造体は厚さPの熱可塑性ポリマーの中央層とその内側および外側面の各々にコートされたそれぞれ厚さM_(i)およびM_(e)を有する金属箔を有し、比P/(M_(i)+M_(e))は0.5より大きいことを特徴とする缶本体および端部。」

【請求項15に係る発明】
「比P/(M_(i)+M_(e))が0.7と2.5の間にあることを特徴とする請求項14に記載の缶本体。」

【請求項29に係る発明】
「a)厚みPの熱可塑性ポリマーの中央層、その内側および外側の面の各々を厚みM_(i)およびM_(e)の金属箔でコートされて構成され、その比P/(M_(i)+M_(e))が0.5以上である金属-プラスチツク構造のストリップを準備すること、
b)このストリップから円盤を切り出すこと、
および
c)これらの円盤を缶本体にするため1あるいは数回の連続するパス中で絞り加工することを含むことを特徴とする絞りおよびしごき加工される缶本体の製作プロセス。」

第5 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、請求項1?28に係る発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、請求項29?42に係る発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、また、請求項1?42に係る発明は、引用例3、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、及び、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない、というものである。

第6 当審の判断
1 引用文献及びその記載事項
本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭57-74154号公報(上記拒絶の理由における引用例1。以下、「引用文献1」という。)及び特開平3-27828号公報(同引用例2。以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1) 引用文献1の記載事項
a 「1枚のプラスチツクコアの両面がうすい金属ストリツプ、特にアルミニウムのうすいストリツプで被覆された金属-プラスチツク複合箔の製造方法において、該複合箔は深絞り成形によつてあるいは箔の延伸を伴う深絞りで、荷物込みの重量が約30Kgまでである比較的大きな軽量コンテナに常温で形成可能な、そして公知のシーリング方法で密閉又は取付ができるものであり、該製造方法は、…ことの組合せを特徴とする金属-プラスチツク複合箔の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
b 「本発明の目的は金属-プラスチツク複合箔を製造する方法及び、該方法によつて一枚のプラスチツクコアと両面にうすい金属ストリツプを有する三重複合材の形でそして深絞り又は箔の延伸を伴う深絞りによつて特に半剛性軽量コンテナの製造に使用できる複合箔を開発することである。」(3頁左上欄12?18行)
c 「プラスチツクコア2は例えばポリエチレン-テレフタル酸塩(PETP)、ポリブチレン-テレフタル酸塩(PBT)、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリプロピレン又はポリカーボネート即ち2軸延伸又は配向箔の形である熱可塑性プラスチツクである。」(3頁右下欄15行?末行)
d 「金属層5及び6のプラスチツクコア2に対する全厚みの比はここでは4:1から1:1、好ましくは2.5:1から1.5:1である。」(4頁左上欄16?19行)
e 「かかる複合材から製造されたコンテナは破損や漏洩に耐え公知のシーリング方法で密閉及び取付けができる。」(4頁左下欄末行?右下欄2行)

(2) 引用文献2の記載事項
f 「実施例1 素材厚0.15mmのティンフリースチール(引張強さ約63Kgf/mm^(2):DR-9)に予め両面に熱硬化性樹脂塗料を塗装焼付けしたものを径179mmの円板に打ち抜き、常法に従い絞りパンチと絞りダイとの間で、絞り・再絞りを行い内径65.9mmの平底のコップ状に成形した。」(7頁左上欄14行?末行)

2 引用発明
引用文献1記載の「金属-プラスチツク複合箔」は、「プラスチツクコアと両面にうすい金属ストリツプを有する三重複合材」(摘記b)であって、プラスチツクコアが、「熱可塑性プラスチツク」(摘記c)からなるものである。また、両面の金属層のプラスチツクコアに対する全厚みの比が「4:1から1:1」(摘記d)であるから、(熱可塑性プラスチツク層の厚み)/(両面の金属層の全厚み)は0.25?1.0ということができる。そして、該複合箔は「深絞り成形によつて…軽量コンテナ」(摘記a)を形成するためのものである。
そうしてみると、引用文献1には、
「深絞り成形により形成される熱可塑性プラスチツクコアと両面にうすい金属ストリツプを有する三重複合材の軽量コンテナであって、その三重複合材の(熱可塑性プラスチツク層の厚み)/(両面の金属層の厚み)は0.25?1.0である軽量コンテナ」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

3 対比・判断
(1) 請求項14に係る発明について
ア 引用発明との対比
本願の請求項14に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比すると、引用発明における「深絞り成形により形成される」は本願発明1における「絞り加工によって得られる」に、引用発明における「熱可塑性プラスチツクコアと両面にうすい金属ストリップを有する三重複合材」は本願発明1における「金属-ポリマー金属型の金属-プラスチツク構造(体)」に、それぞれ相当する。そして、引用発明における「その三重複合材の(熱可塑性プラスチツク層の厚み)/(両面の金属層の全厚み)」は本願発明1における「金属-プラスチツク構造体は厚さPの熱可塑性ポリマーの中央層とその内側および外側面の各々にコートされたそれぞれ厚さM_(i)およびM_(e)を有する金属箔」の「比P/(M_(i)+M_(e))」に相当し、その数値範囲も0.5?1.0で重複し、さらに、引用発明における軽量コンテナ及び本願発明1における「ベースおよび壁部から成る缶本体及び端部」は、いずれも容器といえるから、両者は、
「絞り加工によって得られる金属-プラスチツク構造体の容器であって、金属-プラスチツク構造体は、厚さPの熱可塑性ポリマーの中央層とその内側および外側面の各々にコートされたそれぞれ厚さM_(i)およびM_(e)を有する金属箔を有し、比P/(M_(i)+M_(e))は0.5?1.0である容器」
である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
相違点A:金属-プラスチツク構造体の容器が、本願発明1では「ベースおよび壁部から成る缶本体及び端部」からなるものであるのに対し、引用発明では「軽量コンテナ」である点
(以下、「相違点A」という。)

イ 相違点Aについての判断
本願発明1における「ベースおよび壁部から成る缶本体及び端部」の「ベースおよび壁部から成る缶本体」は、絞り加工によって形成するものであるから、ベースである底部と、それと一体に形成された筒状の壁部とからなる容器本体をいうものといえる。
一方、引用発明の「軽量コンテナ」も絞り加工することによって形成するものであるから、ベースである底部と、それと一体に形成された筒状の壁部とからなる容器本体、すなわち、本願発明1における「ベースおよび壁部からなる缶本体」であるといえる。
さらに、引用発明の「軽量コンテナ」は「公知のシーリング方法で密閉」(摘示e)できるものとされるから、そのシーリング方法を周知の蓋(端部)とすることは当業者が適宜採用しうる事項であり、その際、その蓋(端部)の材料を缶本体と同材料とすることは格別のことではない。
よって、引用発明の「軽量コンテナ」を、「ベースおよび壁部から成る缶本体及び端部」とすることは、当業者にとって格別困難なこととは認められず、本願明細書及び図面を検討しても、本願発明1において容器を「ベースおよび壁部から成る缶本体及び端部」とすることによる格別の効果を認めることもできない。

ウ まとめ
したがって、本願発明1(請求項14に係る発明)は、引用発明(引用文献1に記載された発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 請求項15に係る発明について
この出願の請求項15に係る発明は、P/(M_(i)+M_(e))を、本願発明1の「0.5より大きい」を「0.7と2.5の間にある」と限定するものであり、前記一致点における「P/(M_(i)+M_(e))は0.5?1.0」が「P/(M_(i)+M_(e))は0.7?1.0」となるにすぎないので、本願発明1と同様の理由により、この出願の請求項15に係る発明は、引用発明(引用文献1に記載された発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 請求項29に係る発明について
この出願の請求項29に係る発明は、本願発明1の缶本体を、金属-プラスチツク構造体から切り出された円盤に絞り加工を施すことによりの製造する方法に係るものであるが、引用文献2に記載されるとおり、缶本体を製造するにあたり、円盤状の板体を絞り加工することは常法といえる(摘記f参照)ので、引用発明の軽量コンテナを深絞りにより製造するにあたり当業者がこの方法を採用することは容易に想到し得ることである。
したがって、この出願の請求項29に係る発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、請求項29に係る発明は、末尾が「プロセス」となっており、発明の属するカテゴリーが必ずしも明らかであるとはいえないが、これを物を生産する方法の発明と解して上記のように判断した。

4 まとめ
以上のとおり、この出願の請求項14、15に係る発明は引用文献1に記載された発明に基づいて、請求項29に係る発明は引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、この出願の請求項14、15及び29に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-21 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-17 
出願番号 特願平7-515792
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
P 1 8・ 574- Z (B32B)
P 1 8・ 573- Z (B32B)
P 1 8・ 561- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 健史細井 龍史  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
安藤 達也
発明の名称 金属-プラスチツク-金属構造を有する缶構成部品  
代理人 小塚 勉  
代理人 小沢 慶之輔  

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