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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1193045
審判番号 不服2005-19976  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-14 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 特願2001-158525「コンタクトピン及び電気部品用ソケット」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月14日出願公開、特開2003- 45539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成13年5月28日(国内優先権主張平成13年5月22日)の出願であって、平成17年9月2日(発送日:平成17年9月13日)付けで拒絶査定がなされ、この査定に対し、平成17年10月14日付けで審判請求がなされるとともに、平成17年11月14日付けで手続補正がなされ、その後、この手続補正に対して、平成20年6月9日付けで当審より補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで当審より拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成20年8月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。



2.本件の請求項1に係る発明
そこで、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記平成20年8月8日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
導電性を有する板状の金属材料から打抜かれて形成され、弾性変形される弾性部と、該弾性部の先端側に設けられて電気部品の端子に接触される接触部とを有するコンタクトピンにおいて、
前記弾性部は、前記金属材料が打抜かれて板面に垂直な方向から見て湾曲して形成されると共に、板面に沿う方向と直交する方向に打抜き面が形成され、前記板面に沿う方向に弾性変形可能となっており、
前記打抜き面は、化学研磨されることにより平滑に形成され、前記打抜き面の研磨後の表面粗さが、前記打抜き面の打抜き時の表面粗さ以下になるように研磨されたことを特徴とするコンタクトピン。」



3.平成20年6月9日付け拒絶理由通知で引用された刊行物
本件発明は、「打抜き面は、化学研磨される」という事項を含んでおり、上記拒絶理由通知で拒絶すべきものとされた、同様な事項を含む「請求項3に係る発明」に基づいて補正されたものと認められる。そして、この「請求項3に係る発明」に対しては、上記拒絶理由通知において以下の刊行物1ないし3が引用されている。
刊行物1:特開平4-82176号公報
刊行物2:特開平10-270140号公報
刊行物3:特開平4-193425号公報



4.引用刊行物に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
《記載事項》
刊行物1には次のa.?g.の記載がある。
a.「従来の技術
従来、ばね性を有する接片に設けられた電気接点部と雄端子部を有し、接片のばね性により相手側接触子との接触力を得るようにした電気接触子においては、該電気接触子を並列配置した時の各電気接触子の隣接面は滑沢な表面を有していた。
・・・・・
発明が解決しようとする問題点
上記電気接触子は上記のように構成されているため、・・・雄端子部をプリント基板等に半田付けする際に雄端子部と半田との密着面積が小さく半田強度が弱い。又上記電気接触子が、ばね接点材料から成る帯板から連続的に打抜かれたものである場合、電気接触子がそのばね性に抗して変形される場合に応力集中を起こす個所の表面が滑らかでない打抜き面となるため、より応力集中が進みその結果として電気接触子の寿命を短くする問題点を有していた。」(第1頁右下欄1行?第2頁左上欄6行)(なお、下線は当審が付した。以下、同じ。)

b.「実施例
以下本考案の実施例を第1図乃至第7図に基いて説明する。
第1図に示すように電気接触子1は横設連結片1cの一端部に該横設連結片1cの上位に延びる上下に弾性変位可能なばね性を有する接片1dを有すると共に、他端部に下方へ延びる雄端子部1bを備え、上記接片1dの自由端に上向きの突起を形成し、これを電気接点部1aとする。
上記電気接触子1は第1図に示すように、ICリードの如き相手側接触子2を上記電気接点部1aへ押し付けることにより、接片1dをその弾性に抗して下方へ変位させ、その復元弾力で相手側接触子2との接圧を得るものである。
・・・・・
上記微細な凹凸地膚1e’は電気接触子1をばね接点材料から成る帯板から連続的に打抜いた後形成しても良いが、好ましくは第4図A乃至Cに示されるように、先ずばね接点材料から成る帯板8の一表面又は二表面をサンドブラストか若しくは塩化第二鉄や塩化第二銅によるエッチングで凹凸地膚IEを形成し、その後プレス加工により連続的に打抜けば良い。」(第2頁左下欄5行?第3頁左上欄1行)

c.「上記によって接片1dの復元力で接圧を得る場合、接片1dは相手側接触子2が載接される都度その基部を支点として打抜き面側へ曲げを繰り返す。その結果として該接片1dに応力が生じる。該応力は最大曲げモーメントが生ずる場所に最大応力が生ずることとなり、本実施例においては、接片基部が最大応力部1fとなる。応力はばね形状が変化する部分に集中する性格があり、本実施例におけるばね形状を例にとると最大応力部1fの表面があまり滑らかでない打抜き面(破断面)となっているために、応力が一点に集中して接片1dを折損する結果となっていたが、・・・」(第3頁右上欄1?12行)

d.「第1図は本発明の一実施例を示す電気接触子の斜視図、第2図は同側面図、第3図は同背面図、第4図Aは表面が凹凸地膚とされたばね接点材料から成る帯板の側面図、第4図Bはプレス加工された帯板の側面図、第4図Cは第4図Bにより帯板から打抜かれた電気接触子の側面図、・・・である。
1・・・電気接触子、1a・・・電気接点部、1b・・・雄端子部、1d・・・接片、1e・・・隣接面、1e’・・・凹凸地膚、1f・・・最大応力部、2・・・相手側接触子、3・・・ソケット基板、6・・・プリント基板、7・・・半田。」(第3頁右下欄4?18行)

e.第1図,第2図及び第4図B,Cには、接片1dが隣接面1eに垂直な方向から見て湾曲していることが図示されている。

f.第1図ないし第3図には、最大応力部1f表面等の打抜き面(破断面)が隣接面1eと直交することが図示されている。

g.第4図B及び第4図Cには、帯板からプレス加工により打抜かれた電気接触子1の形状が図示されている。


《発明の認定》
したがって、刊行物1には、
「ばね接点材料から成る帯板から打抜かれて形成され、ばね性を有し弾性変位する接片1dと、この接片1dの自由端に設けられてICリードの如き相手側接触子2が押し付けられる電気接点部1aを有する電気接触子1において、
前記接片1dは、前記ばね接点材料から成る帯板から打抜かれて隣接面1eに垂直な方向から見て湾曲して形成されるとともに、隣接面1eと直交して打抜き面が形成され、(第1図における)上下方向に弾性変位可能となっており、
前記打抜き面は滑らかでなく、前記隣接面1eは滑沢な表面を有している電気接触子1。」
という発明が記載されている。



(2)刊行物2に記載された発明
《記載事項》
刊行物2には次のa.?d.の記載がある。
a.「【発明の属する技術分野】本発明は接触用ピンおよびその製造方法ならびに同ピンを用いた接触方法に関し、特に、集積回路の測定のためにこの集積回路を外部回路に接続するためのソケットにおいて、この集積回路を封止したパッケージのリードと接触して電気的接続を得るための、接触用ピンおよびその製造方法ならびに同ピンを用いた接触方法に関するものである。」(段落【0001】)

b.「【0002】
【従来の技術】半導体集積回路の検査のための測定を行う目的でこの集積回路を封止したパッケージのリードと個々に接触し電気的接続を得るための接触用ピンについては、多数の形状が提案されている。
【0003】図8は、複数のリードを有したパッケージと、それぞれのリードに対応して複数設けられた接触用ピンとの配置をを示した図である。ここで1は接触用ピンであり、これら複数の接触用ピン1は図のX軸方向に沿って並んでいる。各接触用ピン1は、X、Y、Z軸に各々平行な面を有した構成とされている。2は、各接触用ピン1のZ軸方向の端部に形成された接触面であり、X軸に平行であるとともに、パッケージ4のリード3からの機械的圧力を受けてこのリード3と直接に接触する。リード3の材料には、通常、鉄ニッケル合金もしくは銅合金が用いられる。また、リード3の表面には、プリント基板へのハンダ付けが容易となるように錫メッキもしくはハンダメッキが施される。パッケージ4は、リード3の一端と集積回路とを封止している。5はソケット本体で、複数の接触用ピン1におけるZ軸方向の基端部をそれぞれ固底している。接触用ピン1は、湾曲部6を有する。その接触面2には、端部9が存在する。
【0004】ここで、リード3とピン1との電気的接続が良好となるように、比較的強い機械的な圧力がリード3から接触面2に加えられる。多数の集積回路を検査のために測定する際には、比較的強い圧力により新しいリード3との接触が繰り返されることによって接触面2に磨耗が生じてくる。・・・このような状態を避けるために、接触用ピン1の交換が定期的に行われており、通常約10万回の測定を行った時点で接触用ピン1を含むソケット全体が交換される。
【0005】図9は、接触用ピン1の形状を例示する図である。一般に、接触用ピン1は金属板から製造されており、金属板の主面は接触用ピン1の主面1aとなる。この主面1aは、この図の正面図に相当する。この正面図に対する背面が対面1bとなる。接触用ピン1の端部における線A-A′に沿った断面図が、図8の端部におけるXZ面を成す。
【0006】図10は、リード3が接触用ピン1に接触した状態を図8におけるX軸方向から示したものである。ここでは、接触前においてソケット5から接触用ピン1の先端までの距離がhであるものが、接触後においてΔhだけ圧縮された状態を示す。この圧縮により、湾曲部6を支点として、接触用ピン1からリード3に向かう応力が働く。この応力によって、接触用ピン1の接触面2とリード3とが強く接触する。」(段落【0002】?【0006】)

c.「【0007】図11は、従来の接触用ピン1の接触面2を120倍に拡大して示した顕微鏡写真である。この従来の接触用ピン1は、金属板を切断して形成された金属片にメッキ処理を施したもので、切断面の一部が接触面2として用いられている。この切断面では、接触用ピン1を形成する金属板の一方の面である主面から切断が開始され、他方の面である対面で切断が終了している。この主面に始まって対面に至る中央部までは切断による歯形が残っており、この中央部から対面にかけては裂けた面が出現している。
【0008】金属板の材料には前述のごとく鉄合金もしくは銅合金が用いられ、これら金属の表面を安定化させるために、切断によるピン形状の形成の後にメッキ処理を施す。詳細には、硬い皮膜を形成させるためのニッケルメッキと、その周りを覆って酸化を防止するための金メッキとを施す。このメッキの厚さは、全体として通常0.3ミクロン程度が採用されており、このうち、金メッキの部分の厚さは金格子の数にして7?8個の厚さに相当する。
【0009】図12は、ピン1の形状を従来の手法である切断によって形成する工程を示したものである。ここで、7は金属板であり、8は切断工具である。図12(a)?(c)にかけて金属板7に対してほぼ垂直に切断工具8の歯先が当てられ、切断が進行する様子を示す。図12(d)は、切断が完了した状態を示す。
【0010】切断を開始する部分すなわち金属板7の表面から、厚み方向の中央部にかけては、工具8の歯が押しつけられるためにできた歯形が残り、中央部から終了部にかけては金属板の引き裂かれた形状が残り、切断終了部には金属板7から外に向かう突起状部7aが生じる。」(段落【0007】?【0010】)

d.図8には、各接触用ピン1が、接触面2が形成されたZ軸方向の端部と、ソケット本体5に固定されたZ軸方向の基端部との中間に、湾曲部6を有することが図示されている。


《発明の認定》
したがって、刊行物2には、
「集積回路の測定のために集積回路の接続に用いられ、集積回路を封止したパッケージ4のリード3と接触して電気的接続を得るための接触用ピン1であって、
この接触用ピン1は鉄合金もしくは銅合金を材料とする金属板を切断して形成され、端部に上記リード3と接触する接触面2を有し、基端部がソケット本体5に固定され、これらの端部と基端部との中間に湾曲部6を有し、多数の集積回路を検査のために測定する際には、新しいリード3との接触が繰り返され、接触によりΔhだけ圧縮されて上記湾曲部6を支点として応力が働く接触用ピン1。」
という発明が記載されている。



(3)刊行物3に記載された発明
《記載事項》
刊行物3には次のa.?f.の記載がある。
a.「〔産業上の利用分野〕
本発明は、鋼部材の疲労強度向上方法に関するもので、さらに詳しくは、トランスミッションやデファレンシャルにおいて用いられる高い疲労強度が要求される鋼部材の疲労強度を向上させる方法に関するものである。」(第1頁左下欄12?17行)

b.「〔従来技術およびその問題点〕
従来より、自動車のトランスミッション歯車のように高強度が要求される鋼部材においては、焼入れ処理、特に浸炭焼入れ処理が施され使用されている。・・・しかし、近年、自動車のエンジンの高出力化に伴い、さらに高い疲労強度が要求されるようになり、ショットピーニング処理を付加することが多くなりつつある。
このショットピーニング処理は、鋼部材の表面下200?400μmにわたって大きな圧縮残留応力が付与されるため、疲労強度が向上すると言われている。
しかしながら、このショットピーニングにより鋼部材に発生する残留応力は、表面下数10?100μm内部の位置でピークを有し、より表面層では、圧縮応力値が小さいという基本的な特性を有する。また、ショットピーニングは、硬質粒子を高速で衝突させる技法であるため、部材の表面にキズが生じやすい。さらに、鋼部材が浸炭焼入れの場合には、表面から5?50μmにわたって、浸炭異常層と呼ばれる不完全焼入れ層が存在する。この低強度の異常層は、ショットピーニング処理によっても除去されずに残留するため、表面キズ等とともに疲労破壊の起点になりやすく、安定かつ大幅な疲労強度の向上は望めないのが実情である。
これら従来技術の問題点を解決する方法として、疲労強度の向上を阻害している前記表面層を除去するために、表面硬化処理を行った後ショットピーニングを行い、さらに立方晶窒化ホウ素ホイールで研削加工して仕上歯切を行う「高強度歯車の製造方法」(特開平・・・号)等の機械的研磨法が提案されている。しかしながら、この場合、疲労強度向上の観点からは欠陥を有する前記表面層を除去し、かつできるだけ平滑な仕上げ面とすることが要求されるが、この機械的研磨法では焼入れ鋼材の硬さが硬いため研削仕上げの加工効率が大変低い。特に、歯車等の形状が複雑な部品の場合には、疲労強度向上が問題となる歯底付近を精度よく研磨しようとすると加工効率が著しく低下するという問題がある。
また、前記以外の従来技術の問題点を解決する方法として、特定組成の鋼線を所定のばね形状にコイルング成形し、焼入れ焼戻し処理で引張強度を調整し、ショットピーニング処理、研磨処理をしてなる「高強度コイルばねおよびその製造方法」(特開平・・・号、特開平・・・号等)が試みられている。しかしながら、この方法では、確かに表面層を除去しかつ平滑仕上げとすることは容易であるが、厳密な加工精度を要求される歯車等の場合には電解用の対極の配置等を部品毎に細かく設定する必要があり、非常に複雑な装置を必要とするという問題点がある。
また、浸炭・焼入れした鋼部材の表面層を化学的溶解処理により除去した後にショットピーニングを施す「浸炭焼入れ層表面の処理方法」(特開昭・・・号)が提案されている。この方法では、化学的溶解処理、すなわちエッチングと言われる方法により浸炭異常層の除去を行うため、該処理後の鋼部材の表面粗さが数10μmR_(max)と粗くなるために、さらにこの表面粗さの改善のために後工程としてショットピーニングを施している。しかしながら、この方法では、初めから存在する表面欠陥、すなわち浸炭異常層を除去することができても、ショットピーニングにより鋼部材表面に再びキズ等の表面欠陥を発生することになり、大幅な疲労強度の向上は達成することができないという問題があった。
そこで、本発明者らは、上述の如き従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験を重ねた結果、本発明を成すに至ったものである。」(第1頁右下欄1行?第2頁左下欄15行)

c.「〔発明の目的〕
本発明の目的は、鋼部材の疲労強度を、大幅に向上させる方法を提供するにある。
また、本発明の他の目的は、特殊な装置を必要とせず、簡便でかつ安定的に鋼部材の疲労強度を向上させる方法を提供するにある。
本発明者らは、上述の従来技術の問題に関し、以下のことに着眼した。すなわち、先ず、上記従来技術である機械的研磨法や電解研磨法の前記問題点を克服する手段として、ショットピーニング後の表面研磨を化学研磨法により行うことに着目した。
そこで、各種表面欠陥を有するショットピーニング後の鋼部材を化学研磨液の強力な化学的溶解作用および平滑化作用を利用して、化学研磨液への浸漬処理のみで大幅な疲労強度の向上を可能にするとともに、装置の簡易化、加工効率の向上および安定した疲労強度の向上を実現した。」(第2頁左下欄16行?右下欄13行)

d.「第1発明の構成
本第1発明の鋼部材の疲労強度向上方法は、自動車のトランスミッションの歯車等の鋼部材の疲労強度を向上させる方法において、鋼部材の表面をショットピーニングする工程と、該ショットピーニングを施した鋼部材の表面を化学研磨処理する工程と、からなることを特徴とする。」(第2頁右下欄15行?第3頁左上欄1行)

e.「発明の作用および効果
本発明の方法により、鋼部材の疲労強度を簡便で安定的にかつ大幅に向上させることができる。
また、特殊な装置を必要とせず、簡便でかつ安定的に鋼部材の疲労強度を向上させることができる。
・・・・・
すなわち、本第1発明の鋼部材の疲労強度向上方法では、先ず、鋼部材の表面をショットピーニングする。これより、鋼部材には、通常表面下約200?400μmにわたって圧縮の残留応力か付与される。この残留応力は、通常表面下約数10?100μm内部の位置でピーク値を有する。次いで、ショットピーニングを施した鋼部材の表面を化学研磨処理する。これより、圧縮の残留応力のよりピークに近い値を有する面の露出が可能となり、疲労破壊を引き起こす亀裂の伝播が大幅に抑制される。また、この化学研磨処理は、従来技術のような機械的研磨あるいは電解研磨のように特別な外部からの作用力ではなく、化学研磨処理液が有する化学的な溶解力に基づいているため、化学研磨処理液と接する被処理材表面では材料の硬さおよび形状によらず均一な研磨が進行する。この結果、ショットピーニング工程後に存在する疲労破壊の起点になりやすい各種欠陥の研磨除去がほぼ完全に行われ、部分的な取り残しをなくすことができる。また、この化学研磨処理後の鋼表面は、化学研磨作用により著しい平滑化がなされるため、疲労破壊の起点部での応力集中が緩和され、大幅かつ安定した疲労強度の向上が可能となる。さらに、この化学研磨処理工程は、化学研磨処理液への浸漬処理のみでなされるため、処理槽以外に特別の機械あるいは電気装置等が必要ではなく、極めて簡便に処理を行うことができる。」(第3頁左上欄2行?右上欄18行)

f.「〔第2発明の説明〕
以下に、前記第1発明をさらに具体的にした第2発明について説明する。
本発明の鋼部材の疲労強度向上方法において、被処理材としての鋼部材は、炭素鋼、クロム鋼、ニッケルークロム-モリブデン鋼など、化学研磨処理が適用できるのであればよく、特に限定されるものではない。また、事前の熱処理の有無にも限定されるものでもないが、高い疲労強度を要求される鋼部材は、通常焼入れ、焼戻し等の熱処理が施されるため、硬さが大きく、金属組織的には生地の大部分が所謂マルテンサイト組織なっているものがショットピーニング工程でのより大きな残留応力が付与でき、また化学研磨工程において平滑化が行い易く好ましい材料である。具体的には、例えば、自動車関連部品では、焼入れ・焼戻しされた各種スプリング類、あるいは浸炭焼入れ・焼戻しされた歯車等の各種駆動系部品が特に好ましい被処理材料である。また、生地中には疲労破壊の起点になりやすい介在物等ができるだけ少ないことが好ましく、さらに各種の炭化物等の析出粒子が存在する鋼部材では、析出粒子径が小さいものが好ましい。鋼部材の形状は、少なくとも疲労強度を向上させたい部位にショットピーニングが可能でかつ化学研磨処理の際に化学研磨処理液と十分に接触できる形状であればよく、強化所望部位が極端に狭い隙間のような場合を除き、如何なる形状のものでもよい。」(第3頁右上欄19行?右下欄6行)


《発明の認定》
したがって、刊行物3には、
「鋼部材の表面をショットピーニングする工程と、該ショットピーニングを施した鋼部材の表面を化学研磨処理する工程と、からなる鋼部材の疲労強度を向上させる方法。」
という発明が記載されている。



5.対比・判断
(1)対比
イ.用語の対応
本件発明と、刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明における「ばね性を有し弾性変位する接片1d」は本件発明における「弾性変形される弾性部」に相当し、以下同様に、「接片1dの自由端に」は「弾性部の先端側に」に、「ICリードの如き相手側接触子2」は「電気部品の端子」に、「電気接点部1a」は「接触部」に、「電気接触子1」は「コンタクトピン」に、「隣接面1eに垂直な方向から見て」は「板面に垂直な方向から見て」に、「(第1図における)上下方向に弾性変位可能」は「板面に沿う方向に弾性変形可能」にそれぞれ相当すると認められる。

ロ.一致点
そこで、両発明は
「板状の材料から打抜かれて形成され、弾性変形される弾性部と、該弾性部の先端側に設けられて電気部品の端子に接触される接触部とを有するコンタクトピンにおいて、
前記弾性部は、前記材料が打抜かれて板面に垂直な方向から見て湾曲して形成されると共に、板面に沿う方向と直交する方向に打抜き面が形成され、前記板面に沿う方向に弾性変形可能となっていることを特徴とするコンタクトピン。」
で一致する。

ハ.相違点
そして、両発明は下記のAおよびBの2点で相違する。
相違点A:本件発明では「コンタクトピンが導電性を有する板状の金属材料から打抜かれ」、そして、「弾性部は、前記金属材料が打抜かれ」て形成されるが、刊行物1に記載された発明では、電気接触子1(コンタクトピンに相当)が打抜かれて形成され、そして、接片1d(弾性部に相当)が打抜かれて形成される帯板が、導電性を有する金属であるか不明である点。

相違点B:本件発明では「前記打抜き面は、化学研磨されることにより平滑に形成され、前記打抜き面の研磨後の表面粗さが、前記打抜き面の打抜き時の表面粗さ以下になるように研磨され」るが、刊行物1に記載された発明では、打抜き面は研磨されない点。


(2)判断
《相違点Aについての検討》
イ.動機づけ
刊行物2に記載された発明において、接触用ピン1は多数の集積回路の検査に際し、新しいリード3との接触が繰り返され、(接触のたびに)湾曲部6を支点として応力が働く(変形する)のであるから、この接触用ピン1がその湾曲部6において弾性的に変形するのは明らかである。
したがって、刊行物1に記載された発明と、刊行物2に記載された発明とには、
板から湾曲して形成され、弾性変位する接片1d(湾曲部6)と、この接片1d(湾曲部6)の自由端(端部)に設けられて相手側接触子2(リード3)が押し付けられ(接触され)る電気接点部1a(接触面2)を有する電気接触子1(接触用ピン1)、
という技術分野の共通性がある。

ロ.発明の組み合わせ
上記イ.で述べたように刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明には技術分野の共通性がある。
また、刊行物1に記載された発明において、
・帯板がばね接点材料から成ること、
・帯板から打抜かれて形成された電気接触子1が電導性を有するのは
電気接触子の機能から見て自明であること、
・この電気接触子1の雄端子部1bはプリント基板等に半田付けされ
ること(上記4.(1)a.中程及びd.後半参照)、
を考慮すれば、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用し、刊行物2に記載された発明の「接触用ピン1は鉄合金もしくは銅合金を材料とする金属板を切断して形成され、」により、刊行物1に記載された発明の「帯板」を金属材料から成るものとすることに格別の困難性は認められない。
また、金属が導電性を有する材料であることは自明である。
したがって、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用し、相違点Aにおける本件発明の特定事項に到達することは当業者であれば容易である。


《相違点Bについての検討》
イ.動機づけ
本件明細書段落には、
「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のものにあっては、コンタクトピンを打ち抜いて形成する際に、切断面が粗くなってしまうものがあり、そのコンタクトピンの弾性部は、ICパッケージの収容・取出しに伴って繰返し荷重を受けると、その弾性部の表面粗さにより、角部に応力が集中して、疲労し易くなり、耐久性の悪化を招く、という問題があった。
そこで、この発明は、弾性部の耐久性の向上を図るコンタクトピン及び電気部品用ソケットを提供することを課題としている。」(【0008】及び【0009】)
と記載されている。
刊行物1には、
「又上記電気接触子が、ばね接点材料から成る帯板から連続的に打抜かれたものである場合、電気接触子がそのばね性に抗して変形される場合に応力集中を起こす個所の表面が滑らかでない打抜き面となるため、より応力集中が進みその結果として電気接触子の寿命を短くする問題点を有していた。」(上記4.(1)a.後半)
と記載されている。
刊行物3には、
「また、この化学研磨処理後の鋼表面は、化学研磨作用により著しい平滑化がなされるため、疲労破壊の起点部での応力集中が緩和され、大幅かつ安定した疲労強度の向上が可能となる。」(上記4.(3)e.後半)
と記載されている。
したがって、これらの3つの発明には、“応力集中を避け、材料の疲労を防止し、耐久性の向上を図る”という課題の共通性がある。

ロ.発明の組み合わせ
上記イ.で述べたような発明の課題の共通性があるので、刊行物1に記載された発明に、刊行物3に記載された発明を組み合わせ、刊行物1に記載された発明の、滑らかでない打抜き面を、刊行物3に記載された発明の「化学研磨」を用いて、打抜き時の表面粗さ以下になるように研磨し、もって、相違点Bにおける本件発明の特定事項に到達することは当業者であれば容易である。


《本件発明の効果についての検討》
本件発明の効果は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が予測できたものである。


(3)まとめ
このように、本件発明は、本願の国内優先日前に国内において頒布された刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。



6.むすび
以上のように、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件の請求項2及び3に係る発明については検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-19 
結審通知日 2008-12-24 
審決日 2009-01-07 
出願番号 特願2001-158525(P2001-158525)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 利治  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 会田 博行
長浜 義憲
発明の名称 コンタクトピン及び電気部品用ソケット  
代理人 佐野 弘  

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