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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1193084
審判番号 不服2006-22691  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-05 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 特願2003-198514「光ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月17日出願公開、特開2005- 71395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成15年7月17日(優先権主張 平成15年6月23日)に出願されたものであって、平成17年9月26日付けで手続補正がなされ、平成18年8月31日付けで拒絶査定がされ、平成18年10月5日付けで拒絶査定不服審判が請求され、平成18年11月6日付けで手続補正がなされた。
その後、平成20年8月12日付け当審からの審尋に応答して、平成20年10月14日付けで回答書が提出されたものである。


II.平成18年11月6日付け手続補正についての却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年11月6日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.平成18年11月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正の内容
本件補正は、明細書についてするもので、そのうち特許請求の範囲の請求項1に係る発明については、

-本件補正前-
「【請求項1】 光ディスクに対してレーザビームを出力する半導体レーザと、前記半導体レーザから出力されたレーザビームを前記光ディスクのデータ記録面上にフォーカスさせるための対物レンズと、前記光ディスクから反射された光を受光し電気信号に変換する光検出素子と、前記対物レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダに設けられた軸受け部と嵌合し、前記レンズホルダを前記対物レンズの光軸に平行な方向に摺動可能で、かつ、前記光軸に直交する方向に回転可能に軸支するガイド軸と、前記レンズホルダを前記光軸と平行な方向に移動させるためのフォーカシングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むフォーカシングサーボ機構と、前記レンズホルダを前記光軸に直行する方向に回転させるためのトラッキングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むトラッキングサーボ機構と、回路基板を有する軸摺動型の光ピックアップを備え、
フォーカスオン動作の際、前記トラッキングコイルに所定電圧及び所定周波数を有する三角波形のウォブル信号を印加して前記レンズホルダの軸受け部を前記ガイド軸に対して前記光軸に直交する方向に微小変位を繰り返させた状態で、前記フォーカシングコイルを駆動してフォーカスオン動作を行うことにより、フォーカスオン動作を安定させた光ディスク装置において、
前記光ピックアップは、前記ガイド軸、前記永久磁石及び前記ヨークが固定されたベース部材と、前記対物レンズ、前記トラッキングコイル、前記フォーカシングコイル及び前記回路基板が固定され、前記ベース部材に装着されたレンズホルダと、前記レンズホルダが装着されたベース部材の上から嵌装されるカバー部材によりモジュール化された可動部分と、モジュール化された可動部分が固定される本体により構成されていることを特徴とする光ディスク装置。」

-本件補正後-
「【請求項1】 光ディスクに対してレーザビームを出力する半導体レーザと、前記半導体レーザから出力されたレーザビームを前記光ディスクのデータ記録面上にフォーカスさせるための対物レンズと、前記光ディスクから反射された光を受光し電気信号に変換する光検出素子と、前記対物レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダに設けられた軸受け部と嵌合し、前記レンズホルダを前記対物レンズの光軸に平行な方向に摺動可能で、かつ、前記光軸に直交する方向に回転可能に軸支するガイド軸と、前記レンズホルダを前記光軸と平行な方向に移動させるためのフォーカシングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むフォーカシングサーボ機構と、前記レンズホルダを前記光軸に直行する方向に回転させるためのトラッキングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むトラッキングサーボ機構と、回路基板を有する軸摺動型の光ピックアップを備え、
フォーカスオン動作の際、前記トラッキングコイルに所定電圧及び所定周波数を有する三角波形のウォブル信号を印加して前記レンズホルダの軸受け部を前記ガイド軸に対して前記光軸に直交する方向に微小変位を繰り返させた状態で、前記フォーカシングコイルを駆動してフォーカスオン動作を行うことにより、フォーカスオン動作を安定させた光ディスク装置において、
前記光ピックアップは、前記ガイド軸、前記永久磁石及び前記ヨークが固定されたベース部材と、前記対物レンズ、前記トラッキングコイル、前記フォーカシングコイル及び前記回路基板が固定され、前記ベース部材に装着されたレンズホルダと、前記レンズホルダが装着されたベース部材の上から嵌装されるカバー部材によりモジュール化された可動部分と、モジュール化された可動部分が固定される本体により構成され、
フォーカスオンに成功すると、前記トラッキングコイルへのウォブル信号の印加を停止し、トラッキングエラー信号に基づいたトラッキング駆動信号に切り替えることを特徴とする光ディスク装置。」

というもので、-本件補正前-の構成に対して、-本件補正後-では、フォーカスオン動作後について、「フォーカスオンに成功すると、前記トラッキングコイルへのウォブル信号の印加を停止し、トラッキングエラー信号に基づいたトラッキング駆動信号に切り替える」と上記下線部の事項を付加するものである。
そして、上記下線部の事項を付加する補正は、フォーカスオンに成功した後のトラッキングサーボの動作について、自明の処理手段ながら、トラッキングコイルへのウォブル信号の印加を停止してトラッキングエラー信号に切り換えるとするもので、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
要するに、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件
次に、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本件補正後発明
本件補正における【請求項1】に記載された発明(以下「本件補正後発明」という。)は、上記1.-本件補正後-に記載したとおりのものである。

(2)刊行物及び記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-287039号公報(以下「刊行物」という。)には、支持軸と支持軸に対して摺回動自在に支持された対物レンズを保持する可動部材との摩擦が、静止時と動作時で異なるため、フォーカスサーボ引き込み時の対物レンズの情報記録面方向への移動がなめらかなものとする光学式情報記録再生装置について、以下の記載がある。(なお、下線は審決で付与した。)
(i)「2.特許請求の範囲
(1) 支持軸と、この支持軸に対して摺回動自在に支持された可動部材と、この可動部材の上記支持軸の軸心に対して偏心した位置に保持された対物レンズと、この対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカス用磁気回路と、上記対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキング用磁気回路と、フォーカスサーボ引き込み時に上記対物レンズをフォーカス動作方向及び、又はトラッキング動作方向に微小振動させつつフォーカス方向に移動させる対物レンズ加振移動手段と、フォーカス状態を検出するためのフォーカス状態検出手段と、フォーカスサーボ引き込み位置を検出しフォーカス方向を制御状態に引き込むフォーカス方向駆動信号切り換え手段とを備えた光学式情報記録再生装置。
(2) 対物レンズをフォーカス動作方向及び、又はトラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号発振器と、単調増加及び、又は直流の信号を発生するバイアス信号発生器と、上記微小交流信号発振器の出力及び上記バイアス信号発生器の出力を加算する加算器と、この加算器の出力に比例し対物レンズを駆動する駆動回路により対物レンズ加振移動手段とした特許請求の範囲第1項記載の光学式情報記録再生装置。」

(ii)「3.発明の詳細な説明
産業上の利用分野
本発明は、光学式の情報記録面に対物レンズを介して光ビームを照射し、ディスクから対物レンズを通過して戻る光ビームを受光部で受けるようにして情報を記録再生する光学式情報記録再生装置に関するものである。
従来の技術
対物レンズをフォーカス方向に移動しフォーカスサーボを引き込む場合、単調に増加する電流でフォーカス用磁気回路を駆動し対物レンズを情報記録面に漸次近づけてゆきジャストフォーカス点でフォーカスサーボ回路を閉じることによりフォーカスサーボを行っていた。
発明が解決しようとする問題点
このような従来の装置では、支持軸と支持軸に対して摺回動自在に支持された対物レンズを保持する可動部材との摩擦が、静止時と動作時では異なるためフォーカスサーボ引き込み時の対物レンズの情報記録面方向への移動がなめらかなものとならず、スティックスリップが生じて対物レンズが、ディスクなどの情報記録媒体に衝突するというような問題があった。
問題点を解決するための手段
本発明は上記問題点を解決するため、フォーカスサーボ引き込み時に対物レンズをフォーカス動作方向及び、又はトラッキング動作方向に微小振動させつつフォーカス方向に移動させる対物レンズ加振移動手段により駆動させるものである。
作用
本発明は上記対物レンズ加振移動手段により、支持軸に対して摺回動自在に支持された対物レンズを保持する可動部材を支持軸に対し微小振動させて動作状態とし、その状態でフォーカス動作方向に移動させることにより対物レンズの動作をなめらかにし、精度よくフォーカスサーボ引き込みを行なわせる。」(1頁右下欄11行?2頁右上欄7行)

(iii)「実施例
第1図は本発明の光学式情報記録再生装置の一実施例を示すブロック図である。第1図において1は微小な振幅の交流電圧を発生する交流信号発振器、2は単調にゆるやかに増加する電圧を発生するバイアス信号発生器、3は端子14と端子16の入力端子を持ちその加算値を端子16に出力する加算器、4は入力端子11と12を持ち切り換え信号入力端子10の信号により入力端子11と12のどちらかの信号を出力端子13に出力する切り換え回路、5は切り換え回路4の出力電圧に比例した電流をフォーカス用磁気回路6に流すための駆動回路、7はフォーカス状態検出器、8はフォーカス状態検出器出力を増幅する増幅器、9はフォーカス状態検出器出力よりフォーカスサーボ引き込み範囲を判定し切り換え回路4の端子10に切り換え信号を出力する。
第5図,第6図は、対物レンズ駆動部の斜図及び断面図である。22は対物レンズであり、可動部材20に保持されている。21は第1のヨークであり可動部材20を支持する支持軸となっている。フォーカス動作方向へは、フォーカスコイル23及び第1の磁石26で構成されるフォ一カス用磁気回路で駆動される。トラッキング動作方向へは、トラッキングコイル24及び第2の磁石28で構成されるトラッキング用磁気回路で駆動される。
フォーカスサーボ引き込み時に交流信号発振器1には第2図に示す電圧、バイアス信号発生器2には第3図に示す電圧が出力される。Oからt_(1)時間の間対物レンズを微小に移動させる微小な直流電圧を持っている。加算器3の出力は第4図に示すものとなる。切り換え回路4は最初入力端子12の入力を出力しフォーカス用磁気回路6は第4図に示す電圧に比例した電流で駆動される。Oからt_(1)時間の間に、第6図の対物レンズ22は、可動部材20と軸受部20aの静摩擦状態から動摩擦状態に移行して動作し始める。t_(1)のときバイアス信号発生器2の出力が増加し始めそれに対応して対物レンズは、微小に変動しながらフォーカス方向になめらかに移動してゆく。フォーカス状態検出回路7はフォーカスサーボ引き込み範囲を判定し、切り換え回路4の出力信号を加算器3の出力から増幅器8の出力に切り換える。増幅器8の出力は、フォーカス状態検出回路7の出力に比例し負帰還の方向に作用する信号のためフォーカスサーボが引き込まれることになる。本実施例では、フォーカス動作方向に微小振動させたが、トラッキング動作方向を微小振動させても同様な動作を行うことは明らかである。」(2頁右上欄8?右下欄17行)

以上の摘示事項、及び、特に第1図?第6図を参照して整理すると、刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
「光学式の情報記録面に対物レンズを介して光ビームを照射し、ディスクから対物レンズを通過して戻る光ビームを受光部で受けるようにして情報を記録再生する光学式情報記録再生装置であって、
支持軸と、この支持軸に対して摺回動自在に支持された可動部材と、この可動部材の上記支持軸の軸心に対して偏心した位置に保持された対物レンズと、この対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカス用磁気回路と、上記対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキング用磁気回路と、
フォーカスサーボ引き込み時に上記対物レンズをトラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号発振器と、単調増加及び、又は直流の信号を発生するバイアス信号発生器と、上記微小交流信号発振器の出力及び上記バイアス信号発生器の出力と、この出力に比例し対物レンズを駆動する駆動回路により微小振動させつつフォーカス方向に移動させる対物レンズ加振移動手段と、
フォーカス状態を検出するためのフォーカス状態検出手段と、フォーカスサーボ引き込み位置を検出しフォーカス方向を制御状態に引き込むフォーカス方向駆動信号切り換え手段とを備えた
光学式情報記録再生装置。」(以下「刊行物発明」という。)

(3)対比・判断
〔対比〕
(a)刊行物発明における「光学式の情報記録面に対物レンズを介して光ビームを照射し、ディスクから対物レンズを通過して戻る光ビームを受光部で受けるようにして情報を記録再生する光学式情報記録再生装置」であるが、上記「光学式情報記録再生装置」とはディスクの面に光ビームを照射して記録再生するもので、上記「光ビームを照射」とする光源には半導体レーザが通常採用されること、上記「対物レンズ」を通過する光ビームは光ディスク情報記録面を再生する過程でフォーカスサーボさせていること、及び、上記「光ビーム受光部」は光ディスクからの反射光を電気信号に変換する光検出素子からなること、等は自明であるから、本件補正後発明の「光ディスクに対してレーザビームを出力する半導体レーザと、半導体レーザから出力されたレーザビームを光ディスクのデータ記録面上にフォーカスさせるための対物レンズと、光ディスクから反射された光を受光し電気信号に変換する光検出素子」を備えていることで共通する。
(b)刊行物発明における「支持軸と、この支持軸に対して摺回動自在に支持された可動部材と、この可動部材の上記支持軸の軸心に対して偏心した位置に保持された対物レンズ」について、実施形態である第5図,第6図を参照すると、「対物レンズ駆動部の斜図及び断面図である。22は対物レンズであり、可動部材20に保持されている。」(上記(2)(iii))というものであるから、これは本件補正後発明の「対物レンズを保持するレンズホルダと、レンズホルダに設けられた軸受け部と嵌合し」に相当する。
(c)上記(b)に加えて、刊行物発明における「この対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカス用磁気回路と、上記対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキング用磁気回路」であるが、可動部の駆動実施形態について、第5図,第6図を参照すると、「21は第1のヨークであり、可動部材20を支持する支持軸となっている。フォーカス動作方向へは、フォーカスコイル23及び第1の磁石26で構成されるフォ一カス用磁気回路で駆動される。トラッキング動作方向へは、トラッキングコイル24及び第2の磁石28で構成されるトラッキング用磁気回路で駆動される。」(上記(2)(iii))というものであるから、これは本件補正後発明の「レンズホルダを対物レンズの光軸に平行な方向に摺動可能で、かつ、光軸に直交する方向に回転可能に軸支するガイド軸と、レンズホルダを光軸と平行な方向に移動させるためのフォーカシングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むフォーカシングサーボ機構と、レンズホルダを光軸に直行する方向に回転させるためのトラッキングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むトラッキングサーボ機構」と共通する。
(d)刊行物発明の上記(a)?(c)の記載事項と、その実施形態である第5図,第6図を参照しての構成は、本件補正後発明の「軸摺動型の光ピックアップ」を有することで共通する。
(e)刊行物発明における「フォーカスサーボ引き込み時に上記対物レンズをトラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号発振器と、単調増加及び、又は直流の信号を発生するバイアス信号発生器と、上記微小交流信号発振器の出力及び上記バイアス信号発生器の出力と、この出力に比例し対物レンズを駆動する駆動回路により微小振動させつつフォーカス方向に移動させる対物レンズ加振移動手段」であるが、上記「フォーカスサーボ引き込み時」の際に、対物レンズを「トラッキング動作方向に交流的に微少振動する」との「交流的」とは「ウォブル」で、「トラッキング動作方向へは、トラッキングコイル24及び第2の磁石28で構成されるトラッキング用磁気回路で駆動」(上記(2)(iii))とする以上トラッキングコイルにウォブル信号を付加することは明らかで、上記「トラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号発振器と、単調増加及び、又は直流の信号を発生するバイアス信号発生器と、上記微小交流信号発振器の出力及び上記バイアス信号発生器の出力と、」の構成は、本件補正後発明の「フォーカスオン動作の際、トラッキングコイルに所定電圧及び所定周波数を有するウォブル信号を印加してレンズホルダの軸受け部をガイド軸に対して光軸に直交する方向に微小変位を繰り返させた状態」に対応するもので、及び、刊行物発明のものは「対物レンズを駆動する駆動回路により微小振動させつつフォーカス方向に移動」とするものであるから、結局、本件補正後発明の「フォーカスオン動作の際、トラッキングコイルに所定電圧及び所定周波数を有するウォブル信号を印加してレンズホルダの軸受け部をガイド軸に対して光軸に直交する方向に微小変位を繰り返させた状態で、フォーカシングコイルを駆動してフォーカスオン動作を行うこと」に相当する構成を備えていることで共通する。
(f)刊行物発明における「支持軸と、この支持軸に対して摺回動自在に支持された可動部材と、この可動部材の上記支持軸の軸心に対して偏心した位置に保持された対物レンズと、この対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカス用磁気回路と、上記対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキング用磁気回路」において、実施形態である第5図,第6図を参照しての「固定部材25」及び「可動部材20」はそれぞれ本願発明の「ベース部材」及び「可動部分」と共通するから、結局、上記事項は本件補正後発明の「光ピックアップは、ガイド軸、永久磁石及びヨークが固定されたベース部材と、対物レンズ、トラッキングコイル、フォーカシングコイルが固定され、ベース部材に装着されたレンズホルダと、レンズホルダが装着された可動部分と、可動部分が固定され」に相当する。
(g)刊行物発明の「フォーカス状態を検出するためのフォーカス状態検出手段と、フォーカスサーボ引き込み位置を検出しフォーカス方向を制御状態に引き込むフォーカス方向駆動信号切り換え手段とを備えた」について、具体的には「フォーカス状態検出回路7はフォーカスサーボ引き込み範囲を判定し、切り換え回路4の出力信号を加算器3の出力から増幅器8の出力に切り換える。増幅器8の出力は、フォーカス状態検出回路7の出力に比例し負帰還の方向に作用する信号のためフォーカスサーボが引き込まれることになる。」(上記(2)(iii)参照)と記載しており、『フォーカスサーボ引き込み範囲を判定し、』『切り換える。』のであるから、この段階では『フォーカスサーボが引き込まれることになる。』と記載している。少なくとも、フォーカス状態を検出してフォーカスオンに成功することを前提としてフォーカスサーボに移行駆動信号の切換を実行するものである。
要するに、引き込み位置にある状態ではフォーカスオンに成功することを前提とするもので、「トラッキング動作方向に交流的に微小駆動する」必要性はなく、切り換えはフォーカスサーボにフォーカス方向の駆動信号を印加しての駆動信号切り換える段階に移行することは自明であるから、本願発明の「フォーカスオンに、コイルへのウォブル信号の印加を停止し、駆動信号に切り替える」に相当する。
(h)刊行物発明の「光学式情報記録再生装置」は本件補正後発明の「光ディスク装置」に相当する。

結局、両発明の[一致点]及び[相違点]は以下のとおりである。
[一致点]
「光ディスクに対してレーザビームを出力する半導体レーザと、半導体レーザから出力されたレーザビームを光ディスクのデータ記録面上にフォーカスさせるための対物レンズと、光ディスクから反射された光を受光し電気信号に変換する光検出素子と、対物レンズを保持するレンズホルダと、レンズホルダに設けられた軸受け部と嵌合し、レンズホルダを対物レンズの光軸に平行な方向に摺動可能で、かつ、光軸に直交する方向に回転可能に軸支するガイド軸と、レンズホルダを光軸と平行な方向に移動させるためのフォーカシングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むフォーカシングサーボ機構と、レンズホルダを光軸に直行する方向に回転させるためのトラッキングコイル、ヨーク及び永久磁石を含むトラッキングサーボ機構と、軸摺動型の光ピックアップを備え、
フォーカスオン動作の際、トラッキングコイルに所定電圧及び所定周波数を有するウォブル信号を印加してレンズホルダの軸受け部をガイド軸に対して光軸に直交する方向に微小変位を繰り返させた状態で、フォーカシングコイルを駆動してフォーカスオン動作を行うことにより、フォーカスオン動作を安定させた光ディスク装置において、
光ピックアップは、ガイド軸、永久磁石及びヨークが固定されたベース部材と、対物レンズ、トラッキングコイル、フォーカシングコイルが固定され、ベース部材に装着されたレンズホルダと、レンズホルダが装着された可動部分と、可動部分が固定され、
フォーカスオンに、コイルへのウォブル信号の印加を停止し、駆動信号に切り替える光ディスク装置。」

[相違点]
イ.本件補正後発明は、光ピックアップが「回路基板を有する」ものであって、「回路基板」はレンズホルダに固定されるとしているが、刊行物発明のものでは回路基板の構成について言及していない点。

ロ.本件補正後発明はフォーカスオン動作の際に、「トラッキングコイルに所定電圧及び所定周波数を有する三角波形のウォブル信号を印加」して、レンズホルダの軸受け部をガイド軸に対して光軸に直交する方向に微少変位を繰り返させるとしているが、刊行物発明のものではトラッキングコイルに三角波形のウォブル信号を印加する構成について明確な記載がない点。

ハ.可動部分について、本件補正後発明は「ベース部材の上から嵌装されるカバー部材によりモジュール化された可動部分と、モジュール化された可動部分が固定される本体により構成」というものであるが、刊行物発明のものはカバー部材を嵌装してモジュール化するとの構成について明確に記載されていない点。

ニ.フォーカスオン前後について、本件補正後発明は「フォーカスオンに成功すると、トラッキングコイルへのウォブル信号の印加を停止し、トラッキングエラー信号に基づいたトラッキング駆動信号に切り替える」というものであるが、フォーカスオンに成功したことでトラッキングエラー信号に基づいたトラッキング駆動信号に切り換えることについてを刊行物発明のものは明確に記載していない点。

〔判断〕
-上記相違点イ.について-
刊行物発明の実施形態において、可動部材20にはトラッキングコイル24及びフォーカスコイル23がある。そして、これら各コイルには固定側から給電していくことになり、軽薄短小を図るべく一手段として回路基板を採用することは適宜なし得るもので、刊行物発明において上記相違点イ.は容易に成し得るものである。

-上記相違点ロ.について-
刊行物発明のものは本件補正後発明と同じ課題を有し、同じ作用効果を達成し得るものである。そして、刊行物発明の実施形態としては「フォーカスサーボ引き込み時に上記対物レンズをフォーカス動作方向及び、又はトラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号発振器」(上記(2)(i))と、微小振動させる方向について、フォーカス動作方向と、トラッキング動作方向と、を『又は』と選択できる記載としている。
そして、トラッキング動作方向へ微小駆動する手段を選択した場合に、刊行物発明においては、フォーカスコイルに交流信号を印加しての実現は不可能であって、微少振動する交流信号をバイアス信号発生器の出力に加算することなく、微小振動する交流信号をトラッキングコイルに、フォーカスサーボ引き込みの為のフォーカス方向動作の信号をフォーカスコイルに、各々印可することは当業者において自明のことである。
また、微小振動する交流信号として三角波形であるが、交流信号として正弦波ないし三角波形等は基本的な波形で、正弦波でなく三角波形とすることで特段の効果が得られると云うものでもなく、三角波形での微小振動としても前置審尋での提示文献である特開平1-119922号公報に記載される周知技術でもあるから、刊行物発明の実施形態である第2図の正弦波に換えての上記相違点ロ.の構成は当業者が適宜に成し得るものである。

-上記相違点ハ.について-
光ピックアップを構成するものにベース部材の上からカバーを嵌装してモジュール化することは周知(例(拒絶査定での提示文献):特開昭59-104735号公報,特開2000-251298号公報等)である。
刊行物発明のものにおいても実施形態として記載のある第5,6図に記載の固定部材及び可動部材からなる対物レンズ駆動部においての固定部材25の上から嵌装されるカバーをしてモジュール化することでの上記相違点ハ.の構成は当業者が適宜に成し得るものである。
また、モジュール化された可動部が固定されるところを「本体」と呼称することでの実質的な相違はない。

-上記相違点ニ.について-
上記相違点ロ.での判断と関連するところ、刊行物発明の「フォーカス状態を検出するためのフォーカス状態検出手段と、フォーカスサーボ引き込み位置を検出しフォーカス方向を制御状態に引き込むフォーカス方向駆動信号切り換え手段とを備え」としている技術的意義について、フォーカス状態検出とはフォーカスサーボ引き込み位置を検出していることで、次のステップでする、トラッキングエラー信号をトラッキングコイルに、フォーカスエラー信号をフォーカスコイルに、切り換えてサーボ制御状態に移行することは自明ないし周知である。
仮に、検出されての切り換えるタイミングについて、刊行物発明のものは「フォーカスサーボ引き込み位置」としており、これはまだフォーカスオンに成功したタイミングか否かが明確であるといえなくとも、そもそもフォーカスオンを前提としている以上『フォーカスオンに成功すると、』について実質的に言及しているとの解釈もでき、文言上での「フォーカスオンに成功すると、」との言及は当業者が必要に応じて容易に想到できるものである。
そして、上記相違点ロ.で指摘した繰り返しになるが、選択肢の構成として記載のある微少駆動する手段をトラッキング動作方向へ選択した場合に、微少交流信号をトラッキングコイルに印可することは技術常識であって、この場合は第1図の実施形態では交流信号発生器1とバイアス信号発生器2を加算する加算器3は不要である。第1図に記載のある加算器3をもつ実施例はフォーカス方向へ微少駆動する場合と理解できる。
また、トラッキングコイルに「トラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号発振器」の印加はフォーカスオン状態になるまでで、フォーカスオン状態になれば、トラッキングエラ-信号に基づいた駆動信号へ切り換えるられることは明らかで、刊行物発明においても「トラッキングエラー信号に基づいたトラッキング駆動信号に切り替え」ての上記相違点ニ.の構成は当業者が容易に想到できるものである。

そして、上記各相違点についての判断を総合しても、本件補正後発明の奏する効果は、上記刊行物に記載された発明、及び周知技術から当業者が十分予測可能なもので格別のものではない。

結局、本件補正後発明は、刊行物に記載された発明、及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

《補足》
審判請求人は審判請求の理由で、
1) 『(i) 引用文献1の第4図には、フォーカシングコイルに印加される信号の波形が示されています。また、引用文献1の公報第2頁、右下欄、第14行から第17行までには、さらに「本実施例では、フォーカス動作方向に微小振動させたが、トラッキング動作方向に微小振動させても同様な動作を行うことは明らかである。」と記載されています。従って、トラッキングコイルを駆動する場合にも第4図と同様の信号が印加されると思われます。
引用文献の第4図に示された信号波形は、時間0からt1までは、バイアスが一定の正弦波又は三角波であり、t1以降はバイアスが徐々に増加しています。換言すれば、トラッキング駆動信号の電圧(最大値、最小値及び実効値)は一定ではなく、時間経過に伴って変化しています。これに対して、本願発明におけるトラッキング駆動信号は、図8(b)に示すように、バイアスが一定、すなわち零であり、電圧の最大値、最小値及び実効値は一定であり、時間的経過に伴って変化していません。すなわち、本願発明では、ウォブル信号を印加中に変化させることは全く考えていません。そのため、本願発明のウォブル信号のバイアスは零です。
一方、引用文献1では、ウォブル信号のバイアスを時間経過に伴って増大させるように制御しています。その理由として、引用文献1の公報第2頁、右下欄、第2行から第8行までにおいて、「0からt1時間の間に、第6図の対物レンズ22は、可動部材20と軸受け部20aの静摩擦状態から動摩擦状態に移行して動作し始める。t1のときバイアス信号発生器2の出力が増加し始め、それに対応して対物レンズは、微小に変動しながらフォーカス方向に滑らかに移動してゆく。」と記載されているように、摩擦状態(摩擦係数)の変化に合わせてバイアスを変化させているようです。引用文献1の構成の場合、ウォブル信号の印加開始からの時間を測定すると共に、時間経過に応じてバイアスを変化させなければならず、制御が複雑になると共に、可変式のバイアス信号発生器を必要とし、構造も複雑になります。しかしながら、一般的に静止摩擦係数の方が動摩擦係数よりも大きいので、本願発明のように、ウォブル信号のバイアスを一定にしたままでも特に問題はなく、制御方法及び回路構成が簡単になるというメリットがあります。』と主張する。
しかしながら、引用文献1(審決注:審決本文では「刊行物」に相当する。以下において「引用文献1」は同様である。)に記載してある「フォーカスサーボ引き込み時に上記対物レンズをトラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号発振器」であるが、これは実施形態として「交流的に微小駆動」については、フォーカス動作方向と共に“トラッキング動作方向”を選択できるとしている。そして、引用文献1の第1図?第4図は、フォーカスコイルに、フォーカス動作方向への微少駆動と、フォーカス引き込み駆動と、を印加することの実施形態である。
“トラッキング動作方向”に交流的に微少駆動する場合を想定した場合には、第2図に記載する交流電圧発信器の出力波形はトラッキングコイルに、バイアス電圧の第3図波形はフォーカス方向への移動であるからフォーカスコイルに、それぞれ印加されるようになることは、フォーカスコイルに“交流的に微小駆動する交流信号”を印可しても“トラッキング動作方向”への微少駆動はできない、トラッキングコイルにバイアス電圧を印可してフォーカスサーボ引き込み状態は達成し得ない等のことから当業者が容易に想定できることである。
したがって、請求人の主張する上記「トラッキングコイルを駆動する場合にも第4図と同様の信号が印加される」との解釈は誤りであり、これに基づく以降の「引用文献の第4図・・・」との主張も採用できない。


なお、審判請求人は、上記主張での「本願発明のように、ウォブル信号のバイアスを一定にしたまま」は本願発明の記載に対応していないことを審尋に対する回答書で認める回答をしている。
2) 更に、請求人は『(ii) 次に、本願発明では、「フォーカスオンに成功すると、前記トラッキングコイルへの前記ウォブル信号の印加を停止し、トラッキングエラー信号に基づいたトラッキング駆動信号に切り替え」られます。換言すれば、本願発明では、フォーカスオンするまでトラッキングコイルにウォブル信号が継続して印加されます。
これに対して、引用文献1では、フォーカスオンする前にウォブル信号の印加が停止されます。すなわち、引用文献1の公報第2頁、右下欄、第8行から第14行までには、「フォーカス状態検出回路7はフォーカスサーボ引き込み範囲を判定し、切り替え回路4の出力信号を加算器3の出力から増幅器8の出力に切り替える。増幅器8の出力は、フォーカス状態検出回路7の出力に比例し負帰還の方向に作用する信号のためフォーカスサーボが引き込まれることになる。」と記載されています。
この点に関して、引用文献1の公報第2頁、右下欄、第14行から第17行までには、さらに「本実施例では、フォーカス動作方向に微小振動させたが、トラッキング動作方向に微小振動させても同様な動作を行うことは明らかである。」と記載されています。これらの文章からすると、引用文献1の実施例では、フォーカシングコイルにのみウォブル信号を印加して、フォーカス動作方向における対物レンズの動き始めの動作をスムーズにすると共に、フォーカス動作も行うことを前提としています。フォーカス動作方向に微小振動させたまま、フォーカス動作を行うことはできないので、引用文献1では、対物レンズが動き始めたらウォブル信号の印加を停止しなければなりません。その結果、ウォブル信号の印加停止後、対物レンズの動きがスムーズでなくなる可能性があります。
本願発明では、トラッキングコイルにのみウォブル信号を印加して対物レンズ(レンズホルダ)の動きをスムーズにすると共に、フォーカシングコイルに、通常のフォーカスエラー信号に対応したフォーカス駆動信号を印加してフォーカスオン動作をさせています。そのため、フォーカスオンに成功するまでトラッキングコイルにウォブル信号を印加させ続けることができます。その結果、フォーカスオンするまで対物レンズをスムーズに動かすことができます。』と主張する。
しかしながら、審判請求人の上記主張は引用文献1に開示されている技術的思想をきわめて狭く、実施の形態そのものに限定して解釈をしての主張である。
そして、“トラッキング動作方向に交流的に微小駆動する交流信号を発生する微小交流信号”の印加において、請求人は、
上記1)ではトラッキングコイルにのみにバイアス信号を含めて印可すること、
上記2)ではフォーカスコイルにのみにバイアス信号を含めて印加すること、
として理解しているようであるが、誤りであることは上記1)で反論したとおりである。
即ち、「トラッキング方向に微少駆動しながらフォーカス引き込み状態を得る」には、トラッキングコイルとフォーカシングコイルの両コイルを使用することは技術的にみて明らかでトラッキングコイル、又はフォーカシングコイルのみを使用することを前提とする請求人の上記主張は採用できない。

また、請求人は、上記主張に関連して、「フォーカスオンに成功すると、・・・」について、審尋に対する回答書で「「フォーカスオンに成功する」と「フォーカスサーボ可能な範囲に到達する」は、技術的に意味が異なり、・・・」等縷々回答しているが、この点は上記-上記相違点ニ.について-の判断に記載したとおりであって採用できない。

なお、請求人の主張で「トラッキングコイルにのみウォブル信号を印加」なる事項についてであるが、本件補正後発明に「のみ」は記載のない事項である。

3)加えて、請求人は『(iii) なお、引用文献には、上記のように「本実施例では、フォーカス動作方向に微小振動させたが、トラッキング動作方向に微小振動させても同様な動作を行うことは明らかである。」という記載、すなわち、フォーカシングコイルの代わりにトラッキングコイルにウォブル信号を印加してもよいという記載はありますが、本願発明のような「フォーカスオンするまでバイアスが一定(零)の三角波形のウォブル信号をトラッキングコイルにのみ印加して、レンズホルダをトラッキング方向にのみ振動させ、フォーカスオン方向には振動させない」という概念は、開示も示唆もされていません。さらに、トラッキングコイルにのみウォブル信号を印加する場合、フォーカスオンするまでウォブル信号を印加し続けることができますが、引用文献1には、そのことについては一切触れられていません。』とも主張する。
しかしながら、上記1)及び2)で指摘したように、引用文献1に記載された発明のものが「トラッキング動作方向に微小振動させても同様な動作を行うことは明らかである。」との技術的開示乃至示唆がある以上、トラッキング動作方向に「交流的に微少振動させる」べくトラッキングコイルに第2図に示す交流電圧発信器の出力波形の電圧を加えること、フォーカスコイルには第3図に示す単調増加電圧発生器からの出力電圧を加えることでフォーカス方向に移動させることは容易に想到できるものである。
そして、「トラッキングコイルにのみウォブル信号を印加する場合、フォーカスオンするまでウォブル信号を印加し続ける」ことは、本願補正後発明と共通する課題をもつ引用文献1に記載された発明においても当然に奏する事項にすぎないので採用できない。


3.補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
1.本願発明
平成18年11月6日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1乃至3に係る発明は、平成17年9月26日付け手続補正で補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、【請求項1】に係る発明は、上記II.〔理由〕1.-本件補正前-の【請求項1】に記載されたとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。

2.刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物に記載された事項は、上記したとおりである(上記II.〔理由〕2.(2)刊行物及び記載された事項)。

3.対比・判断
本願発明は、上記II.で検討した本件補正後発明の構成から、下線部分の、「フォーカスオンに成功すると、前記トラッキングコイルへのウォブル信号の印加を停止し、トラッキングエラー信号に基づいたトラッキング駆動信号に切り替える」を削除して上位概念の構成としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を実質的に全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正後発明が、上記「II.〔理由〕2.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-19 
結審通知日 2008-12-24 
審決日 2009-01-07 
出願番号 特願2003-198514(P2003-198514)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 吉川 康男
小松 正
発明の名称 光ディスク装置  
代理人 板谷 康夫  

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