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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41F |
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管理番号 | 1193088 |
審判番号 | 不服2006-23780 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-19 |
確定日 | 2009-02-19 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第107823号「フレキソ印刷機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月10日出願公開、特開平10-296961〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成9年4月24日の出願であって、平成18年9月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月16日付けで明細書の手続補正がなされたものである。 これに対し、当審において平成20年4月22日付けで審尋がなされたところ、同年7月7日付けで請求人は回答書を提出した。 第2 平成18年11月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年11月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものであり、補正によって特許請求の範囲は、 「【請求項1】 チャンバフレームと、該チャンバフレーム上端に設けたシールブレードと、該チャンバフレーム下端に設けたドクターブレードと、これらのシールブレードおよびドクターブレードに接触しながら回動するアニロックスロールとにより囲まれて形成されるインキチャンバ内へインキ供給口からフレキソインキを供給し、該アニロックスロールの外周面へインキを転移供給して印刷を行なうフレキソ印刷機において、 該インキチャンバに、該インキ供給口とは別個のエア供給口が設けられるとともに、 該フレキソインキの供給系とは別個に形成され、適宜のタイミングで該エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアを供給しうるエア供給系が、該エア供給口に接続されていることを特徴とする、フレキソ印刷機。 【請求項2】 該エア供給口が、該アニロックスロールの軸方向に沿って複数個設けられていることを特徴とする、請求項1記載のフレキソ印刷機。 【請求項3】 該エア供給口は、該インキチャンバの上方に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2記載のフレキソ印刷機。 【請求項4】 該インキ供給口に接続されたインキ供給管には、インキポンプが介装され、該インキ供給管には洗浄水供給管が接続されて、該インキ供給口から該インキチャンバ内に洗浄水を供給することが可能になっていることを特徴とする、請求項1?3の何れか1項に記載のフレキソ印刷機。」から、 「【請求項1】 チャンバフレームと、該チャンバフレーム上端に設けたシールブレードと、該チャンバフレーム下端に設けたドクターブレードと、これらのシールブレードおよびドクターブレードに接触しながら回動するアニロックスロールとにより囲まれて形成されるインキチャンバ内へインキ供給口からフレキソインキを供給し、該アニロックスロールの外周面へインキを転移供給して印刷を行なうフレキソ印刷機において、 該インキチャンバに、該インキ供給口とは別個のエア供給口が設けられるとともに、 該フレキソインキの供給系とは別個に形成され、適宜のタイミングで該エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアを供給しうるエア供給系が、該エア供給口に接続され、 該エア供給口は、該アニロックスロールの軸方向に沿って複数個設けられ、 該インキ供給口は、該インキチャンバの下方に配置され、該エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアが供給されると該インキチャンバ内のインキは該インキ供給口から排出されうるように構成されている ことを特徴とする、フレキソ印刷機。 【請求項2】 該エア供給口は、該インキチャンバの上方に設けられていることを特徴とする、請求項1記載のフレキソ印刷機。 【請求項3】 該インキ供給口に接続されたインキ供給管には、インキポンプが介装され、該インキ供給管には洗浄水供給管が接続されて、該インキ供給口から該インキチャンバ内に洗浄水を供給することが可能になっていることを特徴とする、請求項1又は2記載のフレキソ印刷機。」 と補正された。 特許請求の範囲についての本件補正は、 (1)本件補正前の請求項1を削除するとともに、本件補正前の請求項2-4の項番を繰り上げて、本件補正後の請求項1-3にする補正、 (2)本件補正前の請求項1を引用する請求項2において、「該インキ供給口は、該インキチャンバの下方に配置され、該エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアが供給されると該インキチャンバ内のインキは該インキ供給口から排出されうるように構成されている」を追加する補正、 とからなるものである。 ここで、上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)第1号の請求項の削除を目的するものに該当する。 上記(2)の補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2において、「インキ供給口」に関し、「該インキチャンバの下方に配置され、該エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアが供給されると該インキチャンバ内のインキは該インキ供給口から排出されうるように構成されている」と限定したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含むので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下、単に「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用刊行物 (1)刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-25617号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】アニロクスロール(10)を回動自在に支持するフレーム(F)と、 上記アニロクスロールに接触して閉塞された室を形成するドクターブレード(12,13)と端部シール(14)とを有すると共にフレームに取り付けられたインクチャンバ(11)と、 間隔をおいてインクチャンバの上記端部シールの近くに設けられ、このインクチャンバを流体が通過するように流体を出入させる一対のポート(37,38)と、 上記フレームと作用的に関連する反転可能なポンプ(19)と、 同様にフレームと作用的に関連するインク源(20)と溶剤源(29,31)及び廃棄用容器(30)と、 上記ポンプを上記インク源と上記溶剤源と上記廃棄用容器と上記ポートとに接続する管路手段(12,16,17,32,38)とを備え、 上記管路手段には複数のバルブ手段(1?5)が設けられ、 これらのバルブ手段は、 (a)第一の状態において、インクを上記インク源(20)から上記インクチャンバ(11)を通過して流れるように案内し、 (b)第二の状態において、上記ポンプがインク源から切り離されている間、溶剤を上記溶剤源(29,31)から上記インクチャンバを通過して流れるように案内し、 (c)第三の状態において、ポンプがインク源(20)及び溶剤源(29,31)から切り離されている間、溶剤をインクチャンバを通って循環するように案内し、 また、この第三の状態の間には、ポンプと作用的に関連する手段がポンプ内を流れる流体の流れ方向を複数回反転させて溶剤を一方のポートに流した後で他方のポートに交互に導き、 更に、(d)第四の状態において、溶剤を(c)の状態から上記廃棄用容器(30,130)に流れ込むように案内するものである、 印刷機あるいは塗工機のデッキを洗浄するための装置。 【請求項2】 ・・・ 【請求項4】前記バルブ手段は、前記ポンプが一方の回転状態にあるときに空気を上記インクチャンバの一方のポートに導き、またポンプが逆回転状態にあるときに空気をインクチャンバの他方のポートに導くように操作されるものである、 ことを特徴とする請求項1に記載の装置。」 イ 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、印刷機あるいは塗工機のデッキを洗浄するための装置と方法に関するもので、より詳しくは、フレキソグラフィックのアニロクスロールやグラビュアロールのようなロールに溶剤を供給するための閉じられたドクターブレードチャンバを備えた機械のデッキを洗浄する装置と方法に関するものである。なお、便宜上、以下の説明はフレキソ印刷機の用語による。 【0002】 【従来技術とその問題点】フレキソ印刷機のデッキ(インク溜めやアニロクスロールなど)の洗浄には時間とコストがかかる。インクを変える(色変更や粘性の異なるものへの変更等のため)場合には、古いインクは取り除かれなければならないが、この仕事は誰もが嫌がる仕事である。洗浄作業はインク変えの仕事の最も大きな部分を成す。 【0003】従来、デッキを完全に清掃するためには例えば20ガロンの溶剤を流さなければならなかった。溶剤は、回転するアニロクスロールによって形成されるインク溜めのチャンバ内を通過する。アニロクスロール自体もまた清掃を必要とする。洗浄の間、溶剤中の固体状内容物は急速に飽和状態になり、多量の溶剤が必要となる。 【0004】より複雑な点は、作業を効率良く行うには流速を高め、特にチャンバをくまなく清浄するために乱流を造出する必要があることである。しかしながら、端部シールは通常、僅かな圧力、例えば10から15インチH2Oに耐えられるだけである。高圧流は端部シールからの漏れを起こさせる。従って、洗浄作業は予想する以上に長い時間を必要とする。 【0006】本発明では、新しいあるいは一度使用された溶剤がバルブを備えたシステム内に流入され、残っているインクあるいは用済みの溶剤を廃棄用容器に圧送させる。一旦、本システムに溶剤が充填されると、バルブがシフトし、ポンプによって溶剤を閉回路あるいは環状路を通って循環させる。こうした閉回路では所望の高い流量が得られる。また、ポンプの回転は、正逆の方向に反復サイクルし、溶剤による清浄作用を高める。溶剤は、インク組成を希釈してインク固形物を運び去るものであればどのような液体、例えば水溶性インクの場合には水を用いるようにしても良い。 【0007】本システムは、一度使用された溶剤が作用している間に新しい溶剤を再充填するようにしても良い。その後、本システムでは空気に置き換えられた溶剤が排出される。この方法では、インキングシステムのほぼすべての構成部分(ホース、ポンプ、アニロクスロール、ドクターブレードチャンバ、バルブ、付属品他)が自動的に清掃され、次の印刷作業に備えることになる。 【0008】・・・ 【0009】操作に際し、印刷が一度成し遂げられると、システムのバルブは、一度用いられた溶剤を追加容器からシステム内に向かわせる一方、残っているインクを廃棄用容器に向かわせるように調整する。その後、システムは、一度用いられた溶剤を再循環させるために閉じられ、それによってシステム内が洗浄されると共にこの今までの一度用いられた溶剤を廃棄用溶剤に変換させる。サイクル終了後、廃棄用溶剤は廃棄用容器に向かい、一方、新しい溶剤がポンプによってシステムに送り込まれる。更に操作を続けるためのインクを導入するのに先立って、一度使用した溶剤の新しい一容量が追加容器に案内される。システムの第一の部位の溶剤は追加容器へと排出され、その一度使用された溶剤は追加容器の頂部からの空気に置き換えられ、第二もしくは戻し廃水は追加容器内の一度使用された溶剤の残りに向けて送られてそれを空気に変える。」 ウ 「【0011】 【実施例】以下、本発明を図示した実施例に基づいて詳説する。先ず、図1の左部を参照するに、符号Fは印刷機のフレームである。図中符号10は、フレームに回動自在に取付けられたアニロクスロール(anilox roll)である。アニロクスロール10に共働するようにしてインク溜め11が設けられている。インク溜め11は適切な端部シール(その一方は符号14で示してある)を持つドクターブレード12,13を備える。インク溜め11もまたフレームFと作用的に関連しており、アニロクスロール10と共に、液体を導入し及び除去する一対のポートを備えたインクチャンバを形成する。装置のこの構成は従来のものであり、形態を変えるようにしても良い。図を簡単かつ明らかにするために他の印刷用構成部材、例えばフレーム、中央の刷りシリンダ、プレートシリンダなどを省いてある。 【0012】先に示したように、本発明ではフレキソ印刷機に共働して流体システムが有利に用いられる。このシステムは図中符号15で示してある。本システムは第一管路16と第二管路17とを備える。第一管路16はインク溜め11の下部に近いところに接続されており、第二管路17はインク溜め11の上部に近いところに接続されている。印刷中(図2に関連して説明されるであろう)、第一管路16がインク溜めにインクを送り、第二管路17が余剰インクを戻す。 【0013】図1を依然として参照するに、符号18はフレームFと作動的に共働するキャビネットで、バルブ、エアシリンダ、ポンプモータが収納されている。キャビネット18にはポンプ19とインク容器20が支持されている。適切なポンプとしては、マンチェカ、テキサス78652所在のランドルフポンプ株式会社製750-000型がある。戻し管路17はインク容器20の符号21の箇所に接続され、ポンプ19は一つのポート22を有する。ポート22は管路23を介してインク容器20に符号24で示すように連結されている。ポンプ19の第二ポート25は、管路26を介してハウジング18の内部、即ち後述するバルブに接続されている。これらのバルブはライン(第一管路)16に接続されている。 【0014】ハウジング18は、また、管路27と28とを介してそれぞれ新しい溶剤と用済みの溶剤のための収容容器29と受け容器30とに接続されたバルブを有する。ハウジング18は、また、供給ライン32及び戻しライン33,34によって使用済み溶剤の受け容器もしくは受け31と接続されている。追加的受け容器31は吸気及び排気のための通気口35を有する。図2には、インキングにおける後述する構成要素の作用が示されている。 【0015】インキング 図2はインキング回路を概略的に示す。この図には、バルブの位置と、正常印刷のためのポンプの回転方向とが表されている。インクはドクターブレードチャンバに供給され、重力によってインク桶20に戻る。詳しく言うと、インク桶20からのインクは管路23を通ってポンプ19のポート22に流れ込む。インクは強制的にポート25から出て管路26に流れ、三方向バルブ1に至る。 【0016】インクは、バルブ1の一つの通路を通った後、管路36を介して流れ、われわれの先の発明とは異なり、第二の三方向バルブ2の脇を通る。その代わりにインクは管路36を介して第三の三方向バルブ3の一つの通路を通る。バルブ3からの出力流(図2参照)は管路16を介してインク溜め11の下部ポート37に流れる。一方、余剰インクはインク溜め11の上部ポート38から流出し、管路17を介してインク桶20に至る。除去用バルブ4としては、サウスカロライナ、ページランド所在のコンブラコ・インダストリーズ社のモデル70-000/9000シリーズのボールバルブが良好で、これらのバルブはボールを回転させるためのエアシリンダを備える。清掃のためには、ポンプとインク桶との間の接続をポンプと使用済みの溶剤受け容器との間の接続に変えなければならない。このことは一旦使用された溶剤の充填に関連して図3に示されている。 【0017】一旦使用した溶剤の充填 図3は溶剤の充填に関係するもので、印刷機のオペレータが管路17と23をインク桶20から外し、それらを一緒に符号39の位置で接続すること(図3の下部参照)を含んでいる。代わりに、適切なバルブによって達成するようにしても良い。図3に示されている状態では、全部で5つのバルブが用いられる。この状態では、一度使った溶剤、先行するサイクルで使用した比較的新しい溶剤を、チャンバ11とライン16内に残っているインクを取り替えてこの用済みのインクを廃棄用容器30に移送させるために、チャンバの上部ポート38に圧送させることはできない。 ・・・ 【0020】洗浄サイクル 概略的にいうと、バルブ1と4は、他の3つのバルブが図5の状態に維持されている間、インキング(図2参照)の原初状態に戻されている。ポンプ19は洗浄作業のため、正逆方向に回転方向を変えて回転される(図4の下方右部参照)。回転方向を示す矢印はこの方向の変更を示すために両方に終端がある。 ・・・ 【0023】新しい溶剤の充填 これは、廃棄用容器30に向かう液体が2回使用される溶剤であり、インクではない(図3参照)という点を除いては、われわれの先の出願のステップと良く似ている。新しい溶剤は、供給容器29から取出され、ライン27を通ってバルブ2に流れる。その後、新しい溶剤の通路は図3における一旦使用された溶剤に関するものと同様である。両溶剤はライン41を通ってバルブ1に流れ、それからライン26を経てポンプ29に至り、そこからライン17を経てポート38を目指す。 【0024】2度使用された溶剤はポート37を介してチャンバ11を出、ライン16、バルブ3、ライン36a、ライン28a、バルブ4及びライン28を通って最後に廃棄用容器30へと流れる。システムに残されたものは新しい溶剤で、この溶剤はそれから図6に示されるように洗浄サイクルに用いられる。洗浄後、本溶剤は、2つの便利なステージにおける付加的な容器31に向けて流れる。特にチャンバ11が重力による流出が行えるように持ち上げられたときに、。このことは図6と7に関連して説明される。 【0025】チャンバと供給ライン流出 図6を参照するに、バルブ3は図5の状態から変更されているのが見られる。今、ポンプ19が逆方向に稼働される(図2と比較)。ポンプ19は空気ポート35から空気をシステム内に引き込み、システム内の一度使用された溶剤を容器31に向けて流す。空気の流れが破線によって示してある。 【0026】更に詳しくいうと、バルブ5は容器31の空気ポート35にライン32とライン40,41を介して接続され、また、バルブ1と2はポンプ19のポート25に接続された管路26に接続されている。ポンプ19の出力は(本適用例では)、ポート22と、ライン23及び17を通り、チャンバ11の上部ポート38に至る。同時に、一度使用された溶剤は、チャンバ11からポート37を介して管路16とバルブ3と管路33と容器31に流出する。 【0027】ポンプと戻しライン排水 これは図7に示されており、図6とほとんど同じであるが、ポンプが正方向に回転して空気をインク溜め11の頂部よりも底部37に導き入れている点が異なる。空気は符号35の位置(上部左)でシステムに流入され、管路33を流れる。それから空気は、バルブ3と管路16を通り、ポート37に進む。インク溜め11の外に一度使用した溶剤を押し流した後、空気(今やこの溶剤と一緒になって)は、ポート38とライン17を通ってポンプ19のポート22へと流出する。混合物は、ポンプポート25、ライン26とバルブ1,2,5を通って、管路32から容器31へと流れる。ホースの道筋のある部分にはトラップ、例えば圧力の低い域があるので、第二の排水サイクルがポンプを正方向に作動することによって行われる。このようにして、殆どすべての溶剤が次のインクを導入するに先立ってシステムの外に圧送される。」 エ 刊行物1の「インク」は、フレキソ印刷機に用いられるので、「フレキソインク」と称することができる。 オ 上記ウ(段落【0011】)の記載及び【図1】から、ドクターブレード12はインク溜め11の上端部をなすものであり、ドクターブレード13はインク溜め11の下端部をなすものであることが、看取できる。 カ 上記ウ(段落【0015】-【0016】)の記載及び【図2】から、インクは、インク桶20から管路23、ポンプ19、管路26、バルブ1、管路36、バルブ3、管路16を介してインク溜め11の下部ポート37に流れて、正常印刷を行うこと、及び、管路16はインク溜め11の下部ポート37に接続されていることが、看取できる。 キ 上記ウ(段落【0025】-【0026】)の記載及び【図6】から、空気は、空気ポート35から、ライン32、バルブ5、ライン40、バルブ2、ライン41、バルブ1、管路26、ポンプ19、ライン23及び17を通り、チャンバ11の上部ポート38に流れることが、看取できる。 ク 上記ウ(段落【0027】)の記載及び【図7】から、空気は、符号35から、管路33、バルブ3、管路16を通り、ポート37に流れることが看取できる。 してみれば、上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「引用発明」という。なお、刊行物1では、同一符号が付された部材の名称が、記載箇所により異なる場合があるが、上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1では、同一符号が付された部材は、その名称の差異に拘わらず、同一部材を示していることが、明らかなので、同じ符号が付された部材の名称はいずれかに統一して表記した。) 「回動自在に支持されたアニロクスロール10に接触して閉塞された室を形成する、インクチャンバ11の上端部をなすドクターブレード12と、インクチャンバ11の下端部をなすドクターブレード13と、端部シール14とを有するインクチャンバ11の下部ポート37に、フレキソインクを、インク桶20から管路23、ポンプ19、管路26、バルブ1、管路36、バルブ3、管路16を介して流して、正常印刷を行うフレキソ印刷機において、 空気は、空気ポート35から、管路32、バルブ5、ライン40、バルブ2、ライン41、バルブ1、管路26、ポンプ19、管路23及び17を通り、インクチャンバ11の上部ポート38に流れて、一度使用された溶剤は、インクチャンバ11から下部ポート37を介して流出させ、 または、空気は、空気ポート35から、管路33、バルブ3、管路16を通り、下部ポート37に流れて、一度使用された溶剤は、インクチャンバ11から上部ポート38を通って流出させ、 管路16はインクチャンバ11の下部に近いところで下部ポート37に接続されている、 ことを特徴とする、フレキソ印刷機。」 (2)刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-139453号公報(以下、「刊行物2」という。なお、平成18年4月17日付けの拒絶理由通知書に記載される「特開昭6-139453号公報」は誤記であって、同年6月26日付けの意見書の記載から、請求人にも正しい文献が理解されているものと解する。)には、以下の記載が図示とともにある。 ケ 「3.発明の詳細な説明 本発明は、印刷機のインキ排出方法に係り、特に相対接するアニロックスロールとドクターロールとの対接部上方にインキ溜めを形成する印刷機において、オーダ換えに伴うインキの交換を、エアーの圧力によりインキが飛散することなく迅速でかつ良好に行うことができるインキ排出方法に関する。」(第1頁左下欄第12-19行) コ 「以下本発明に係る印刷機のインキ排出方法の実施例を図面に基づき説明する。まず、該インキ排出方法を実施するための第1実施例の装置を説明すれば、第1図及び第2図において、1はアニロックスロール、2はドクターロールである。・・・前記インキ溜め3の上方には、エアーを噴出するノズル15が臨ませてある。」(第2頁左下欄第1行-右下欄第17行) サ 「第6図は、第2実施例を示し、ノズル33a?33cを適数個設けて、各ノズル33a?33cを固定形式としたものである。ノズル33a?33cは第7図に示す如くエアー供給源32に切換弁35a?35c、電磁弁24?27、調圧器28?31及びサービスバルブ34を介して接続される。各電磁弁24?27はセンサー19の信号を受けてそれぞれ動作をするようになっている。・・・ そして、オーダ換えの時は、制御装置36によりまず中央の切換弁35aを開放して、ノズル33aより噴出されるエアーによりインキ溜め3内のインキ6を両側方に押し出し、次に切換弁35b,35bが開放して、更にノズル33b,33bにより噴出されるエアーによりインキ6を両側方に押し出し、最終的に切換弁35c,35cが開放して、ノズル33c,33cより噴出されるエアーにて、インキ6をインキ溜め3内から前記回収ダクト7,8内に排出する。該1度の動作でインキ溜め3内のインキ6が所定量まで排出できない時には、前記動作を数回繰返す。」(第3頁右下欄第20行-第4頁右上欄第7行) シ 上記コ、サの記載及び第6図から、第2実施例では、複数のノズル33a?33cがアニロックスロール1の軸方向に沿って設けられていることが、看取できる。 3 対比 本願補正発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「フレキソ印刷機」が、アニロクスロール10の外周面へフレキソインクを転移供給して印刷を行なうものであることは、当該技術分野における技術常識であって、自明である。 引用発明の、ドクターブレード12及びドクターブレード13を除くインクチャンバ11の構成部材、「ドクターブレード12」「ドクターブレード13」「アニロクスロール10」「インクチャンバ11」は、それぞれ本願補正発明の「チャンバフレーム」「シールブレード」「ドクターブレード」「アニロックスロール」「インキチャンバ」に相当する。 引用発明の「インクチャンバ11の下部ポート37に、フレキソインクを、インク桶20から管路23、ポンプ19、管路26、バルブ1、管路36、バルブ3、管路16を介して流」すことは、本願補正発明の、「インキチャンバ内へインキ供給口からフレキソインキを供給」することに相当する。 引用発明の「インクチャンバ11の上部ポート38」及び「インクチャンバ11の下部ポート37」は、いずれも、空気ポート35から空気が流されるので、本願補正発明の「インキチャンバ」に設けられた「エア供給口」に相当する。 引用発明では、一度使用された溶剤を、インクチャンバ11から、下部ポート37を介して、あるいは、上部ポート38を通って、流出させる時には、空気を空気ポート35からインクチャンバ11の、上部ポート38、あるいは、下部ポート37に流しているので、引用発明の、前記空気を流している時は、本願補正発明の、エア供給口からインキチャンバ内へエアを供給する「適宜のタイミング」に相当する。 引用発明の、「空気は、空気ポート35から、管路32、バルブ5、ライン40、バルブ2、ライン41、バルブ1、管路26、ポンプ19、管路23及び17を通り、インクチャンバ11の上部ポート38に流れ」るための構成、及び、「空気は、空気ポート35から、管路33、バルブ3、管路16を通り、下部ポート37に流れ」るための構成は、いずれも本願補正発明の「インキチャンバ内へ」「エアを供給しうるエア供給系が、該エア供給口に接続され」たものに、相当する。 引用発明の「管路16はインクチャンバ11の下部に近いところで下部ポート37に接続されている」ことは、本願補正発明の「インキ供給口は、該インキチャンバの下方に配置され」ていることに相当する。 引用発明の「空気は、空気ポート35から、管路32、バルブ5、ライン40、バルブ2、ライン41、バルブ1、管路26、ポンプ19、管路23及び17を通り、インクチャンバ11の上部ポート38に流れて、一度使用された溶剤は、インクチャンバ11から下部ポート37を介して流出させ、空気は、空気ポート35から、管路33、バルブ3、管路16を通り、下部ポート37に流れて、一度使用された溶剤は、インクチャンバ11から上部ポート38を通って流出させ」ることと、 本願補正発明の「エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアが供給されると該インキチャンバ内のインキは該インキ供給口から排出されうるように構成されている」こととは、 共に「エア供給口から該インキチャンバ内へエアが供給されると該インキチャンバ内の液体は排出されうるように構成されている」ことで共通である。 よって両者は、 「チャンバフレームと、該チャンバフレーム上端に設けたシールブレードと、該チャンバフレーム下端に設けたドクターブレードと、これらのシールブレードおよびドクターブレードに接触しながら回動するアニロックスロールとにより囲まれて形成されるインキチャンバ内へインキ供給口からフレキソインキを供給し、該アニロックスロールの外周面へインキを転移供給して印刷を行なうフレキソ印刷機において、 該インキチャンバに、エア供給口が設けられるとともに、 適宜のタイミングで該エア供給口から該インキチャンバ内へエアを供給しうるエア供給系が、該エア供給口に接続され、 該インキ供給口は、該インキチャンバの下方に配置され、該エア供給口から該インキチャンバ内へエアが供給されると該インキチャンバ内の液体は排出されうるように構成されている ことを特徴とする、フレキソ印刷機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 ・相違点1 エア供給口に接続されるエア供給系に関し、本願補正発明は、「インキ供給口とは別個のエア供給口」に接続される「該フレキソインキの供給系とは別個に形成され」るものと特定されるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。 ・相違点2 エア供給系が供給するエアに関し、本願補正発明は「高圧のエア」と特定されるのに対し、引用発明はそのような特定がない点。 ・相違点3 エア供給口に関し、本願補正発明は「アニロックスロールの軸方向に沿って複数個設けられ」と特定されるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。 ・相違点4 エア供給口からインキチャンバ内へエアが供給されるときに、本願補正発明は「インキチャンバ内のインキは該インキ供給口から排出されうるように構成されている」と特定されるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。 4 判断 上記相違点1ないし相違点4について検討する。 ・相違点1について 一般に、液体や気体の供給を、供給される液体や気体毎に個別の供給系を設け、個別の供給口から供給することも、共通の供給系を設け、共通の供給口から供給することも、例えば、前者については、刊行物2において、インキを注入するノズル9とエアーを噴出するノズル15が個別に設けられている(第2頁右下欄第3-17行)ことに見られるように、いずれも周知の技術である。 してみれば、引用発明において、前記周知技術の一方を選択して、フレキソインクの流れる管路、バルブ及びポートからなる経路と、空気の流れる管路、バルブ及びポートからなる経路を、それぞれ個別にすることにより、本願補正発明と同様に「インキ供給口とは別個のエア供給口」であって「フレキソインキの供給系とは別個に(エア供給系が)形成され」るようにすることは、当業者にとって、適宜選択される設計事項であり、当業者であれば容易に想到し得る。 よって、上記相違点1は当業者が容易になし得る程度のことである。 ・相違点2について 上記「・相違点1について」で述べた、当業者が適宜選択することにより、「インキ供給口とは別個のエア供給口」が「フレキソインキの供給系とは別個に(エア供給系が)形成され」た引用発明とする際に、あわせて、液体を排出するために供給するエアを「高圧のエア」とすることは、エアにより液体が排出される速度等を勘案して、当業者が、適宜選択する設計事項であり、当業者であれば容易に想到し得る。 よって、上記相違点2は当業者が容易になし得る程度のことである。 ・相違点3について 上記「・相違点1について」で述べた、当業者が適宜選択することにより、「インキ供給口とは別個のエア供給口」が「フレキソインキの供給系とは別個に(エア供給系が)形成され」た引用発明とする際に、あわせて、液体を排出するために、供給するエアを、何箇所から、どのように供給するかは、エアにより液体が排出される速度や、エア供給口と排出口の位置関係等を勘案して、当業者が適宜選択する設計事項であって、刊行物2でも、インキ排出のためにエアーを噴出するノズルを、1箇所(上記記載コ)設けることと、アニロックスロールの軸方向に沿って複数個設ける(上記記載サ、シ)ことの双方が開示されているように、当業者であれば容易に想到し得る。 よって、上記相違点3は当業者が容易になし得る程度のことである。 ・相違点4について 液体を交換する時に、交換前の液体を排出して、回収しようとすることは、きわめて一般的な事項である。(例えば、インキの交換について刊行物2の上記記載ケ、サ、を参照。) また、引用発明では、液体である一度使用された溶剤を流出させるために、インクチャンバ11内に空気を流すという技術を用いている。 してみれば、上記「・相違点1について」で述べた、当業者が適宜選択することにより、「インキ供給口とは別個のエア供給口」が「フレキソインキの供給系とは別個に(エア供給系が)形成され」た引用発明とする際に、あわせて、前記一般的な事項に基づいて、交換されるインクチャンバ内のフレキソインクを排出させ、回収するようにすることは、当業者であれば容易に想到し得るものであり、その具体化のために引用発明の前記技術を適用することは、適宜選択される設計事項である。 そして、その際には、フレキソインクを供給していた、インキチャンバ11の下部ポート37から、フレキソインクが排出されるものとなることは、明らかである。 よって、上記相違点4は当業者が容易になし得る程度のことである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、刊行物2に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成18年11月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、平成18年6月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2に記載された事項により特定されるものである。従属項である請求項2を独立形式で記載すると、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「チャンバフレームと、該チャンバフレーム上端に設けたシールブレードと、該チャンバフレーム下端に設けたドクターブレードと、これらのシールブレードおよびドクターブレードに接触しながら回動するアニロックスロールとにより囲まれて形成されるインキチャンバ内へインキ供給口からフレキソインキを供給し、該アニロックスロールの外周面へインキを転移供給して印刷を行なうフレキソ印刷機において、 該インキチャンバに、該インキ供給口とは別個のエア供給口が設けられるとともに、 該フレキソインキの供給系とは別個に形成され、適宜のタイミングで該エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアを供給しうるエア供給系が、該エア供給口に接続され、 該エア供給口が、該アニロックスロールの軸方向に沿って複数個設けられている ことを特徴とする、フレキソ印刷機。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1,2及びその記載事項は、前記「第2」欄の「2 引用刊行物」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記「第2」欄で検討した本願補正発明から、「インキ供給口」についての限定事項である「該インキチャンバの下方に配置され、該エア供給口から該インキチャンバ内へ高圧のエアが供給されると該インキチャンバ内のインキは該インキ供給口から排出されうるように構成されている」との構成を省いたものである。 そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記前記第2欄に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1,2に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1,2に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-10 |
結審通知日 | 2008-12-16 |
審決日 | 2009-01-05 |
出願番号 | 特願平9-107823 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41F)
P 1 8・ 575- Z (B41F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藏田 敦之 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
武田 悟 酒井 進 |
発明の名称 | フレキソ印刷機 |
代理人 | 真田 有 |