ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R |
---|---|
管理番号 | 1193097 |
審判番号 | 不服2006-27851 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-12-11 |
確定日 | 2009-02-19 |
事件の表示 | 特願2006- 6304「プロ-ブカ-ド用プロ-ブピン」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日出願公開、特開2007-212139〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成18年1月13日(優先権主張平成17年10月31日、平成18年1月11日)の出願であって、平成18年11月6日付け(発送日同年11月14日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年12月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年12月28日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年12月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年12月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の 「【請求項1】 白金1?10重量%、銀5?15重量%、銅,ニッケルのいずれか又は双方で10?20重量%を含有し、残部が金および不可避的な不純物からなるプローブカード用プローブピンにおいて、引張り強さが1000?1200N/mm^(2)で、かつ硬度Hv300?360であることを特徴とするプローブカード用プローブピン。」 を、 「【請求項1】 白金1?10重量%、銀5?15重量%、銅とニッケルの双方で10?20重量%を含有し、残部が金および不可避的な不純物からなる直径が0.05?0.20mmのプローブカード用プローブピンにおいて、引張り強さが1000?1200N/mm^(2)で、かつ硬度Hv300?360であり、電気比抵抗が13?14μΩ-cmであることを特徴とするプローブカード用プローブピン。」 と補正することを含むものである。 上記補正は、補正前の請求項1の「銅,ニッケルのいずれか又は双方で」を「銅とニッケルの双方で」と限定し、また、補正前の請求項1に「直径が0.05?0.20mmの」、「であり、電気比抵抗が13?14μΩ-cm」を追加するものであるから、 平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により、なお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 (1)引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前である平成14年9月20日に頒布された特開2002-270654号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、 (1-1) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハー上に構成された集積回路の電気的特性を検査するためのプローブカードに組み込まれる、比較的低い電圧電流で用いるプローブカード用プローブピン(以下、「プローブピン」または「ピン」という)に関する。」 (1-2) 「【0002】 【従来の技術】プローブカードは、プリント配線基板に数十本から数百本のプローブピンを配設したものである。このプローブカードをプローバ(検査機)に搭載し、半導体ウエハー上の集積回路チップの各電極パッドにプローブピンを当接させ、通電検査のための測定を行う。 【0003】 プロープビン1の形状は、例えば図1(a)に示すように、ストレート部2とテーパ部3とからなるものを、図1(b)のようにテーパ部3の先端部を折り曲げて屈曲部4としたものが一般的である。ピンの標準的な寸法は、ストレート部の直径が0.05?0.20mm程度で、ピンの全長は20?100mm程度である。」 (1-3) 「【0010】 【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、本発明のプローブピンは、白金1?10重量%、銀5?15重量%、銅および/又はニッケル10?20重量%を含有し、残部が金および不可避的不純物からなることを特徴とする。 【0011】 上記構成における数値限定は以下の理由による。すなわち、金自体は展延性に優れ、しかも耐腐食性が高く、電気比抵抗が小さく導電性が高いという非常に優れた特長を有している。しかし、柔らかいため白金、銀、銅、ニッケルなどと合金として用いられるのが一般的である。ただ白金以外の合金元素は耐腐食性が金に比べ劣るため、その含有量が多くなるにつれて耐腐食性は低下し、また銅、ニッケルは金よりも導電性が劣るため、含有量の増加に伴い導電性が低下する。よって、上記白金、銀、銅および/又はニッケルの含有量を上記特定範囲内としたのは、特定範囲未満では合金の強度を向上させることができず、プローブピンに要求される耐摩耗性、バネ性が得られないためであり、特定範囲を超えると導電性および耐腐食性が低下するためである。さらに銀は導電性が金よりも優れておりプローブピンの導電性をさらに向上することができ、また、銀、銅およびニッケルは金よりも価格が安く、材料コストの増加を抑える効果もある。 【0012】 上記の理由から、白金1?10重量%、銀5?15重量%、銅および/又はニッケル10?20重量%がプローブピンにとって最も好ましい含有量である。銅とニッケルは、両者を含有させてもよいし、銅だけあるいはニッケルだけでも効果を発揮する。 【0013】 上記構成のプローブピンは、金、白金、銀といった導電性が非常に高い金属元素で構成されているので高い導電性を有し、よってジュール熱による発熱を可及的に抑えることができる。また白金、銀、銅、ニッケルとの合金であるので合金の強度が高く、耐摩耗性、バネ性に優れる。さらに金が主元素であるので耐腐食性、展延性に優れ、防錆を目的とした表面処理が省略できるとともに、曲げ加工を施しても割れや折れの発生を防止することができる。また、被検査体電極である金パッドを傷つけることもない。 【0014】 上記構成において、電気比抵抗は13?14μΩ-cmとするのが好ましい。その理由は、13μΩ-cm未満は強度を上げるべく合金化したため、これより小さくすることは不可能であるためで、14μΩ-cmを超えると抵抗値が大きくなりすぎジュール熱による発熱が大きくなるからである。 【0015】 さらに、引張り強さが1000?1400N/mm^(2)、又は硬度がHv300?400であることが好ましい。というのは、引張強さが1000N/mm^(2)未満、又は硬度がHv300未満ではプローブピンの強度が低く耐摩耗性が不足するためで、引張り強さが1400N/mm^(2)、又は硬度がHv400を超えると逆に硬く成りすぎ電極パッド表面をキズつけてしまうとともに、伸線加工性が低下するためである。」 (1-4) 「【0020】 【発明の効果】本発明のプローブピンは、金、白金、銀といった導電性が非常に高い金属元素で構成されているので、従来のベリリウム銅より格段に優れた高い導電性を有し、ピンに高電流を流すことが可能であり、ジュール熱による発熱も小さくできる。したがって、安定確実な導電テストが可能になると共に、ピンの寿命を可及的に延長できる。また、白金、銀、銅、ニッケルとの合金とすることにより合金の強度が増加し、耐摩耗性を向上することができるとともに、優れたバネ性も有し、価格も低く抑えることができる。さらに展延性、耐腐食性に優れるので、ピン先端曲げ加工時に割れや折れの発生がほとんど皆無となり、防錆を目的とした表面処理が省略できる。従って、材料歩留まりが大幅に向上すると共に加工コストを大幅に低減できる。」 が記載されている。 したがって、これらの記載事項によると、引用例1には、次のとおりの発明、 「白金1?10重量%(白金1?10重量%に相当。)、銀5?15重量%(銀5?15重量%に相当。)、銅およびニッケル10?20重量%(銅とニッケルの双方で10?20重量%に相当。)を含有し、残部が金および不可避的な不純物(残部が金および不可避的な不純物に相当。)からなるプローブカード用プローブピン(プローブカード用プローブピンに相当。)において、引張り強さが1000?1400N/mm^(2)(引張り強さが1000?1200N/mm^(2)に対応。)で、かつ硬度Hv300?400(硬度Hv300?360に対応。)であり、電気比抵抗が13?14μΩ-cm(電気比抵抗が13?14μΩ-cmに相当。)であることを特徴とするプローブカード用プローブピン(プローブカード用プローブピンに相当。)」(以下、これを「引用例1に記載された発明」という。) が記載されていると認める。 (2)対比・判断 本件補正発明1と引用例1に記載された発明とを対比する。 引用例1に記載された発明における「白金1?10重量%」、「銀5?15重量%」、「銅およびニッケル10?20重量%」、「残部が金および不可避的な不純物」、「プローブカード用プローブピン」、「電気比抵抗が13?14μΩ-cm」は、それぞれ、 本件補正発明1における「白金1?10重量%」、「銀5?15重量%」、「銅とニッケルの双方で10?20重量%」、「残部が金および不可避的な不純物」、「プローブカード用プローブピン」、「電気比抵抗が13?14μΩ-cm」に相当する。 したがって、両者は、 【一致点】 「白金1?10重量%、銀5?15重量%、銅とニッケルの双方で10?20重量%を含有し、残部が金および不可避的な不純物からなるプローブカード用プローブピンにおいて、引張り強さが1000?1400N/mm^(2)で、かつ硬度Hv300?400であり、電気比抵抗が13?14μΩ-cmであることを特徴とするプローブカード用プローブピン。」 で一致し、 【相違点1】 「本件補正発明1では、プローブピンの直径が、0.05?0.20mmであるのに対して、 引用例1に記載された発明では、プローブピンの直径が不明である点」 【相違点2】 「本件補正発明1では、引張り強さの上限が、1200N/mm^(2)であり、かつ硬度のHvの上限が、360であるのに対して、 引用例1に記載された発明では、引張り強さの上限が、1400N/mm^(2)であり、かつ硬度のHvの上限が、400である点」 で相違する。 そこで、上記【相違点1】について検討する。 引用例1には、「ピンの標準的な寸法は、ストレート部の直径が0.05?0.20mm程度で」と記載されている(上記(1-2)参照。)。 したがって、引用例1に記載された発明において、そのプローブピンの直径を、0.05?0.20mmとすることは、当業者が容易になし得ることである。 次に、上記【相違点2】について検討する。 引用例1には、「引張り強さが1400N/mm^(2)、又は硬度がHv400を超えると逆に硬く成りすぎ電極パッド表面をキズつけてしまうとともに、伸線加工性が低下する」と記載されているから(上記(1-3)参照。)、引用例1に記載された発明において、その引張り強さの上限1400N/mm^(2)及び硬度Hvの上限400を、伸線加工性が低下しないように、かつ、硬く成りすぎ電極パッド表面をキズつけてしまわないように、より安全側の1200N/mm^(2)及び360とすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本件補正発明1の効果は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が予測可能な範囲のものである。 したがって、本件補正発明1は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお、従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成18年12月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認められる(以下、「本願発明1」という。)。 「【請求項1】 白金1?10重量%、銀5?15重量%、銅,ニッケルのいずれか又は双方で10?20重量%を含有し、残部が金および不可避的な不純物からなるプローブカード用プローブピンにおいて、引張り強さが1000?1200N/mm^(2)で、かつ硬度Hv300?360であることを特徴とするプローブカード用プローブピン。」 (1)引用例記載の発明 引用例に記載の発明は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明1は、前記「2.」で検討した本件補正発明1に、銅とニッケルの含有率10?20重量%に関し、「銅とニッケルのいずれか」という選択肢を付加し、また、「直径が0.05?0.20mmの」、「であり、電気比抵抗が13?14μΩ-cm」という発明特定事項を追加したものである。 そうすると、本願発明1の構成を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明1が、前記「2.(2)」に記載したとおり引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、本件補正発明1についての判断で示したのと同様の理由により、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-15 |
結審通知日 | 2008-12-16 |
審決日 | 2009-01-05 |
出願番号 | 特願2006-6304(P2006-6304) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 羽飼 知佳、関根 洋之 |
特許庁審判長 |
江塚 政弘 |
特許庁審判官 |
濱本 禎広 山川 雅也 |
発明の名称 | プロ-ブカ-ド用プロ-ブピン |
代理人 | 角田 嘉宏 |