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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60B
管理番号 1193112
審判番号 不服2007-7359  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-12 
確定日 2009-02-18 
事件の表示 特願2001-170974号「駆動車輪用軸受装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月18日出願公開、特開2003- 48405号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1手続の経緯
本願は、平成13年6月6日の出願[【優先権主張番号】特願平2001-158687号【優先日】平成13年5月28日【優先権主張国】日本(JP)]であって、平成19年2月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年3月12日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、平成19年4月11日付けで手続補正がなされたものである。

2平成19年4月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年4月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「内周に複列の転走面を有する外方部材と、
外方部材の転走面とそれぞれ対向する複列の転走面、および車輪取付けフランジを外周に、トルク伝達用の歯部を内周にそれぞれ有する内方部材と、
対向する転走面間に組み込まれた複列の転動体と
を備え、上記内方部材が、車輪取り付けフランジおよび小径段部を一体に有するハブ輪と、このハブ輪の小径段部に嵌合され、複列の転走面のうち、少なくともインボート側の転走面を有する内輪とからなる駆動車輪用軸受装置において、
ハブ輪と内輪を軸方向で突き合わせ、かつ両部材の突き合わせ位置を軸受中心よりもインボード側にオフセットし、複列の転動体の中心間距離をP、上記突き合わせ位置とインボード側の転動体の中心との間の距離をL、インボード側の転動体直径をDとして、L≦0.4P、かつ、L≦Dに設定すると共に、インボード側の転動体中心を、ハブ輪の内周に形成したトルク伝達用の歯部のインボード側端部よりもアウトボード側に配設し、ハブ輪のうち、肩面と小径段部の外周との隅部を、肩面および小径段部外周と同時研削された研削面からなる円弧面で形成したことを特徴とする駆動車輪用軸受装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「小径段部を一体に有するハブ輪」について「ハブ輪のうち、肩面と小径段部の外周との隅部を、肩面および小径段部外周と同時研削された研削面からなる円弧面で形成した」との限定を付加したものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献と記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用した文献等の記載
[刊行物1]特開平11-129703号公報(引用例1)
車輪支持用転がり軸受ユニットに関する発明で、
【0046】には、
「次に、図9は、
《中略》
駆動輪(FR車及びRR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全輪)を回転自在に支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニット」と記載されている。
【0021】中段には、
「又、上記段部8の外周面と上記段差面12との連続部である隅R部分は、応力集中により変形する事を防止する為に硬化させる。尚、好ましくは、この隅R部分の断面の曲率半径を、2.5±1.5mmの範囲に規制する。」と記載され、隅R部分が円弧面であることが記載されている。

【符号の説明】を参照し、【図9】に示されている各構成とその位置関係を見ると【図9】には、
外輪4,第一の内輪軌道7,第二の内輪軌道9,第一のフランジ6を外周に雌スプライン部35を内周に、段部8を一体に有する有するハブ2c,段部8に嵌合され、ハブ2cとを軸方向で突き合わせる内輪3及び転動体5、5からなる軸受ユニットが示されている。

【図9】の位置関係を見ると、
上記突き合わせ位置は、軸受中心よりもインボード側にオフセットし、
上記突き合わせ位置とインボード側の転動体5の中心との間の距離は、転動体5、5の中心間距離の0.4倍以下で、インボード側の転動体5直径以下である。
インボード側の転動体5中心を、ハブ2cの内周に形成した雌スプライン部35のインボード側端部よりもアウトボード側に配設されている。

上記【0021】【0046】の記載と【図9】に示されている各構成とその位置関係から、刊行物1には、
「外輪4と、第一の内輪軌道7と第二の内輪軌道9、および第一のフランジ6を外周に雌スプライン部35を内周にそれぞれ有するハブ2cと、転動体5、5とを備え、第一のフランジ6および段部8を一体に有するハブ2cと、このハブ2cの段部8に嵌合される内輪3とからなる軸受ユニットにおいて、
ハブ2cと内輪3を軸方向で突き合わせ、かつ両部材の突き合わせ位置を軸受中心よりもインボード側にオフセットし、転動体5、5の中心間距離をP、上記突き合わせ位置とインボード側の転動体5の中心との間の距離をL、インボード側の転動体5直径をDとして、L≦0.4P、かつ、L≦Dに設定すると共に、インボード側の転動体5中心を、ハブ2cの内周に形成した雌スプライン部35のインボード側端部よりもアウトボード側に配設し、ハブ2cのうち、段差面12と段部8の外周との隅R部分を、円弧面で形成したた軸受ユニット」の発明(以下「引用発明」という。)が示されていると認められる。

[周知技術を示す刊行物]特開平7-127634号公報
この刊行物は車軸用軸受装置及びその軸受隙間測定方法の発明に関するが、【0012】の中段には、「基準面2eは、例えば図12に示すような加工砥石15を用いて、転走面2a、肩部2bと同時研削すると良い。このようにすると、寸法P1およびL1(肩部2bから基準面2eまでの軸方向寸法)の精度を確保することができる。」と記載されている。
同様に、特開平7-119738号公報の【0014】には「・・・尚、車軸2については、例えば図4に示すような加工砥石15を用いて、転走面2a、肩部2b、圧入部2c、圧入部2cの端面2eを同時研削すると、寸法P1およびL1(肩部2bから端面2eまでの軸方向寸法)の精度が確保されるので、上記選択組合せを容易にすることができる。・・・」と記載されており、車軸用軸受装置において、「ハブ輪のうち、肩部と他の部分とを同時研削する」ことが周知技術として示されている。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「外輪4」は本願補正発明の「内周に複列の転走面を有する外方部材」に該当し、「第一の内輪軌道7と第二の内輪軌道9」は「外方部材の転走面とそれぞれ対向する複列の転走面」に、「第一のフランジ6」は「車輪取付けフランジ」に、「雌スプライン部35」は「トルク伝達用の歯部」に、「段部8」は「小径段部」に、「内輪3」は「複列の転走面のうち、少なくともインボート側の転走面を有する内輪」に該当する。
「ハブ2c」は「ハブ輪」に該当し、「ハブ2c」と「内輪3」とで「内方部材」に該当する。
「転動体5、5」は「対向する転走面間に組み込まれた複列の転動体」に該当する。
また、【図9】の軸受ユニットは、駆動輪(FR車及びRR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全輪)を回転自在に支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットであるから、「駆動車輪用軸受装置」である。
また、【0021】中段の「段差面12」は「肩面」に、「隅R部分」は、「隅部」に該当する。
(一致点)
このことより、本願補正発明と引用発明とは、
「内周に複列の転走面を有する外方部材と、
外方部材の転走面とそれぞれ対向する複列の転走面、および車輪取付けフランジを外周に、トルク伝達用の歯部を内周にそれぞれ有する内方部材と、
対向する転走面間に組み込まれた複列の転動体と
を備え、上記内方部材が、車輪取り付けフランジおよび小径段部を一体に有するハブ輪と、このハブ輪の小径段部に嵌合され、複列の転走面のうち、少なくともインボート側の転走面を有する内輪とからなる駆動車輪用軸受装置において、
ハブ輪と内輪を軸方向で突き合わせ、かつ両部材の突き合わせ位置を軸受中心よりもインボード側にオフセットし、複列の転動体の中心間距離をP、上記突き合わせ位置とインボード側の転動体の中心との間の距離をL、インボード側の転動体直径をDとして、L≦0.4P、かつ、L≦Dに設定すると共に、インボード側の転動体中心を、ハブ輪の内周に形成したトルク伝達用の歯部のインボード側端部よりもアウトボード側に配設し、ハブ輪のうち、肩面と小径段部の外周との隅部を、円弧面で形成した駆動車輪用軸受装置。」の点で一致し、

(相違点)本願補正発明では、「ハブ輪のうち、肩面と小径段部の外周との隅部を、肩面および小径段部外周と同時研削された研削面からなる」のに対して、引用発明には、該構成が不明な点で相違する。

しかしながら、「ハブ輪のうち、肩部と他の部分とを同時研削する」ことは、上記の周知技術を示す刊行物に記載されているように当業者においては周知技術であるから、引用発明において、ハブ輪のうち、肩面と小径段部の外周との隅部を、肩面および小径段部外周と同時研削された研削面で形成する程度のことは当業者であれば容易に設計できることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3本願発明について
(1)本願第1発明
平成19年4月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年1月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「内周に複列の転走面を有する外方部材と、
外方部材の転走面とそれぞれ対向する複列の転走面、および車輪取付けフランジを外周に、トルク伝達用の歯部を内周にそれぞれ有する内方部材と、
対向する転走面間に組み込まれた複列の転動体とを備え、上記内方部材が、車輪取り付けフランジおよび小径段部を一体に有するハブ輪と、このハブ輪の小径段部に嵌合され、複列の転走面のうち、少なくともインボート側の転走面を有する内輪とからなる駆動車輪用軸受装置において、
ハブ輪と内輪を軸方向で突き合わせ、かつ両部材の突き合わせ位置を軸受中心よりもインボード側にオフセットし、複列の転動体の中心間距離をP、上記突き合わせ位置とインボード側の転動体の中心との間の距離をL、インボード側の転動体直径をDとして、L≦0.4P、かつ、L≦Dに設定すると共に、インボード側の転動体中心を、ハブ輪の内周に形成したトルク伝達用の歯部のインボード側端部よりもアウトボード側に配設したことを特徴とする駆動車輪用軸受装置。」

(2)引用文献等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

(3)判断
本願発明は、前記「2」で検討した本願補正発明から「小径段部を一体に有するハブ輪」の限定事項である「ハブ輪のうち、肩面と小径段部の外周との隅部を、肩面および小径段部外周と同時研削された研削面からなる円弧面で形成した」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明は引用発明との比較において相違点はなく、一致点だけとなる。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明となる。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明となるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し特許を受けることができない。
そうすると,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-17 
結審通知日 2008-12-18 
審決日 2009-01-07 
出願番号 特願2001-170974(P2001-170974)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60B)
P 1 8・ 121- Z (B60B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 幸信  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 渡邉 洋
中川 真一
発明の名称 駆動車輪用軸受装置  
代理人 熊野 剛  
代理人 田中 秀佳  
代理人 白石 吉之  
代理人 江原 省吾  
代理人 城村 邦彦  

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