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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1193182
審判番号 不服2007-21901  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-08 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 平成11年特許願第 65751号「画像形成装置、画像形成装置の制御方法、記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月22日出願公開、特開2000-261656〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年3月12日の出願あって、平成19年7月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年8月8日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年8月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された。

「複数枚の記録紙で構成される記録紙束を包む表紙用の1枚の記録紙の同一面上に、表表紙用の画像と裏表紙用の画像の2つの画像を、画像形成手段により形成可能にした画像処理装置であって、
前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像を記憶手段に記憶させる手段
と、
前記記録紙束の背表紙幅を、操作手段に表示される、背表紙幅として設定される候補となる値を表示するように構成された表示画面を介してユーザから受け付ける背表紙幅受付手段と、を有し、
前記表紙用の1枚の記録紙の同一面上に前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像を形成する場合に、
前記表紙用の1枚の記録紙における前記表示画面を介してユーザから受け付けた背表紙幅分の間隔が確保された背表紙部分に該当する領域に対して、前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像の2つの画像を形成すること無
く、前記表紙用の1枚の記録紙の同一面上に同じ向きで前記2つの画像を前記画像形成手段により形成させる、制御手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。」
(下線部が補正箇所である。以下、この記載された事項によって特定される発明を「本願補正発明」という。)

2-2.補正の目的
本件補正により「背表紙幅受付手段」は、本件補正前の
「前記記録紙束の背表紙幅を操作手段を介してユーザから受け付ける背表紙幅受付手段」
から
「前記記録紙束の背表紙幅を、操作手段に表示される、背表紙幅として設定される候補となる値を表示するように構成された表示画面を介してユーザから受け付ける背表紙幅受付手段」
とされた。
「操作手段」をこのように特定することは、補正前の発明を特定する事項を限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものといえる。
しかし、このような補正は、審判請求書に
「4.本願発明が特許されるべき理由(本願発明が特許出願1と実質的にも同一ではない理由)
……
これに対して本願請求項1は、背表紙幅をユーザから受け付けるのに優れたユーザインタフェースを提供できるものであって、単に特許出願1のようなキーボードに代わって表示画面を採用するといった設計事項乃至周知技術では無い特徴的構成要件を具備します。
具体的には、本願請求項1は、『?前記記録紙束の背表紙幅を、操作手段に表示される、背表紙幅として利用される候補となる値を表示するように構成された表示画面を介してユーザから受け付ける背表紙幅受付手段』という構成要件を具備します。 」
と記載されているように、それにより本願補正発明は「背表紙幅をユーザから受け付けるのに優れたユーザインタフェースを提供できる」とする補正前にはない、新たな課題を解決するものとなった。
このことは、補正前の「操作手段」については具体的な限定がないので、補正前の発明が、それに関連する課題を解決するものでないことからも明らかである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号でいう解決しようとする課題が同一であるものに限られた特許請求の範囲の減縮には該当しないし、請求項の削除、誤記の訂正、又は拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明でないことは明らかである。

2-3.むすび
以上のように、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下する。

3.本願発明について
3-1.本願発明
平成19年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数枚の記録紙で構成される記録紙束を包む表紙用の1枚の記録紙の
同一面上に、表表紙用の画像と裏表紙用の画像の2つの画像を、画像形成手段により形成可能にした画像処理装置であって、
前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像を記憶手段に記憶させる手段
と、
前記記録紙束の背表紙幅を操作手段を介してユーザから受け付ける背表紙幅受付手段と、を有し、
前記表紙用の1枚の記録紙の同一面上に前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像を形成する場合に、
前記表紙用の1枚の記録紙における前記操作手段を介してユーザから受け付けた背表紙幅分の間隔が確保された背表紙部分に該当する領域に対して、前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像の2つの画像を形成すること無
く、前記表紙用の1枚の記録紙の同一面上に同じ向きで前記2つの画像を前記画像形成手段により形成させる、制御手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。」

3-2.先願発明
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は特願平10-213565号
(特開2000-43378号、以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないというもので、その明細書には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
……
【請求項2】 印刷をする印刷枚数と印刷用紙の厚さとサイズを含む印刷情報を保持する印刷情報受信部と、
前記印刷情報に基づいて、印刷後の用紙束の厚さを求め、表表紙と背表紙と裏表紙とから成る表紙を一括して印刷するための用紙を用紙トレイから選択する表紙印刷用紙選択部と、
選択された表紙印刷用紙に、表紙用の印刷データを印刷する表紙印刷用
データ編集部とを備えたことを特徴とする印刷装置。」

(2)「【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体例を用いて説明する。
〈具体例〉
図1は、本発明による印刷装置のブロック図である。
図において、印刷データを供給する上位装置1は、例えばディスプレイ
2、本体3、キーボード4等を備えたパーソナルコンピュータから構成される。ここで生成された印刷データが印刷部5に供給されて印刷される。印刷部5には、図の下側に表示した機能ブロックが組み込まれている。各機能ブロックは、印刷データバッファ11、印刷情報受信部12、表紙印刷用紙選択部13、表紙印刷用印刷データ編集部14から成る。
【0007】
印刷データバッファ11は、印刷用紙7に印刷される文書データを格納する記憶装置である。図に示す印刷装置は、この文書とともに、文書が印刷された多数枚の印刷用紙7を綴じ込むための表紙8を印刷する。印刷情報受信部12には、文書印刷のために必要な印刷枚数15、印刷用紙の厚さ16、印刷用紙サイズ17等の印刷情報が保持されている。
【0008】
印刷部5には、複数のトレイ6が収納されており、各トレイからはそれぞれ別々のサイズの印刷用紙が供給されて印刷されるよう構成されている。表紙印刷用紙選択部13は、表紙の印刷を行う場合に、表紙を印刷するために適切なサイズの用紙を選択し、その用紙を収納するトレイ6を指定する。
【0009】
この発明では、図に示すように、表表紙8Aと、裏表紙8Bと、背表紙8Cとが連続した表紙8を1枚の用紙に一括して印刷する。従って、予め文書の印刷枚数15と印刷用紙の厚さ16から背表紙8Cのサイズを計算し、印刷用紙サイズ17から表表紙8Aと裏表紙8Bのサイズを計算する。これによって、表紙8の印刷に適切な印刷用紙が選択される。表紙印刷用印刷データ編集部14は、表表紙8A、裏表紙8B、背表紙8Cに印刷するべきタイトル等のデータを編集し、印刷部5へ供給する機能を持つ。」

(3)「【0020】
図5は、印刷準備処理動作のフローチャートである。
この図のステップS11では、表表紙の描画可能範囲を設定する。また、ステップS12では、背表紙の描画可能範囲を設定する。更に、ステップS13では、裏表紙の描画可能範囲を設定する。これらは、図4(c)に示した要領で求めた結果を利用する。
【0021】
図6には、このような表紙に対するタイトル印刷のための編集方法説明図を示す。
図6の(a)に示すように、表紙8に、表表紙上揃えタイトル21と、背表紙中央揃えタイトル22と、裏表紙下揃えタイトル23を印刷するものとする。このような印刷のための情報を図5のステップS14において、図1に示す表紙印刷用印刷データ編集部14が読み込む。これらの情報は、例えば印刷データバッファ11等に予め受信されている。ここでは、1文字のサイズや文字数、あるいは横書き、縦書きの種別等が情報として取り込まれ
る。この内容を図6(b)に示した。」

(4)「【0026】
本発明は以上の実施例に限定されない。本発明では、印刷される文書の用紙束全体の厚さが重要になる。この厚さは、既に説明したように、文書を構成する用紙全ての厚さを累積した値を演算処理することにより、この厚さを求める。その他に、例えばその文書を一挙に印刷した場合に、排出トレイに積み上げられた文書の厚さを実際に測定して、その値を印刷情報に含めるようにしてもよい。文書の厚さの測定は、光センサやローラ等の機械的なセンサで測定してもよいし、オペレータがスケールを用いて測定してもよい。後者の場合、オペレータが、図1に示すキーボード4等を用いてその印刷情報を入力し、印刷情報受信部12へ転送すればよい。」

したがって、先願には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。

「印刷後の用紙束の、表表紙と背表紙と裏表紙とから成る表紙を1枚の用紙に一括して印刷部で印刷する印刷装置であって、
表紙の印刷のための情報が予め受信されている印刷データバッファと、
用紙束の厚さをオペレータが入力するキーボードと、
表表紙と、裏表紙と、背表紙とが連続した表紙を1枚の用紙に一括して印刷する場合に、
表表紙の描画可能範囲を設定し、背表紙の描画可能範囲を設定し、裏表紙の描画可能範囲を設定し、表表紙、裏表紙、背表紙に印刷するべきデータを編集し、印刷部へ供給する表紙印刷用印刷データ編集部と、
を有する印刷装置。」

3-3.対比
先願発明の「印刷後の用紙束」及び「印刷部」は、本願発明の「複数枚の記録紙で構成される記録紙束」及び「画像形成手段」にそれぞれ対応し、表表紙と背表紙と裏表紙とから成る表紙を1枚の用紙に一括して印刷するのであるから、表表紙用の画像と裏表紙用の画像が同一面上に形成されることは明らかであり、そのような印刷装置は画像処理装置といえるから、両者は、複数枚の記録紙で構成される記録紙束を包む表紙用の1枚の記録紙の同一面上に、表表紙用の画像と裏表紙用の画像の2つの画像を、画像形成手段により形成可能にした画像処理装置である点で共通する。
先願発明の「印刷データバッファ」は本願発明の「記憶手段」に対応し、それに表紙の印刷のための情報が予め受信されるのであるから、先願発明は表表紙用の画像と裏表紙用の画像を記憶手段に記憶させる機能の点で、本願発明と共通する。
先願発明の「用紙束の厚さ」は背表紙幅に相当するから、それをオペレータが入力するキーボードは、本願発明の「操作手段」に対応し、先願発明
は、記録紙束の背表紙幅を操作手段を介してユーザから受け付ける機能の点で、本願発明の「背表紙幅受付手段」と共通する。
先願発明は、表表紙と、裏表紙と、背表紙とが連続した表紙を1枚の用紙に一括して印刷する場合に、表表紙の描画可能範囲を設定し、背表紙の描画可能範囲を設定し、裏表紙の描画可能範囲を設定し、表表紙、裏表紙、背表紙に印刷するべきデータを編集するのであるから、背表紙の描画可能範囲の幅は入力された「用紙束の厚さ」に応じたものであり、表表紙の描画可能範囲及び背表紙の描画可能範囲も設定されるのであるから、背表紙の描画可能範囲に表表紙用の画像と裏表紙用の画像が形成されることはないので、その「表紙印刷用印刷データ編集部」は、表紙用の1枚の記録紙の同一面上に表表紙用の画像と裏表紙用の画像を形成する場合に、表紙用の1枚の記録紙における操作手段を介してユーザから受け付けた背表紙幅分の間隔が確保された背表紙部分に該当する領域に対して、表表紙用の画像と裏表紙用の画像の2つの画像を形成すること無く、表紙用の1枚の記録紙の同一面上に2つの画像を画像形成手段により形成させる機能の点で、本願発明の「制御手段」と共通する。

したがって、本願発明と先願発明とを対比すると、次の点で一致する。

「複数枚の記録紙で構成される記録紙束を包む表紙用の1枚の記録紙の
同一面上に、表表紙用の画像と裏表紙用の画像の2つの画像を、画像形成手段により形成可能にした画像処理装置であって、
前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像を記憶手段に記憶させる手段
と、
前記記録紙束の背表紙幅を操作手段を介してユーザから受け付ける背表紙幅受付手段と、を有し、
前記表紙用の1枚の記録紙の同一面上に前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像を形成する場合に、
前記表紙用の1枚の記録紙における前記操作手段を介してユーザから受け付けた背表紙幅分の間隔が確保された背表紙部分に該当する領域に対して、前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像の2つの画像を形成すること無
く、前記表紙用の1枚の記録紙の同一面上に前記2つの画像を前記画像形成手段により形成させる、制御手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。」

また次の点で一応の相違がある。

相違点1
本願発明は背表紙の画像形成について「前記表表紙用の画像と前記裏表紙用の画像の2つの画像を形成すること無く」との特定だけであるのに対し、先願発明は背表紙の印刷も行う点。

相違点2
本願発明は表表紙用の画像と裏表紙用の画像の2つの画像が同じ向きで形成されるのに対して、先願発明は向きに関する特定がない点。

3-4.相違点に対する判断
相違点1について
背表紙の印刷を行うかどうかは、必要に応じて適宜選択できることであって、先願発明は背表紙の印刷を行う機能を有するとしても、必要がなければそのような機能を停止又は省略する程度のことであり、実質的な相違とはいえない。

相違点2について
特別な奇をてらった装丁を行うのでなければ、普通は表表紙用の画像の向きと裏表紙用の画像の向きを異なるものとはしない。
先願発明は向きに関する特定がないとしても、異なるものとの特定がないのであるから、普通の向きである同じ向きで形成されると解釈でき、この点に実質的な相違はない。

上述のように、各相違点に実質的な相違はないから、本願発明は先願発明と同一の発明である。

なお、前記2.の補正却下の決定のとおり平成19年8月8日付けの手続補正は却下されたが、仮に本願発明の「操作手段」が本願補正発明のような操作手段に表示される、背表紙幅として設定される候補となる値を表示するように構成された表示画面を介してユーザから受け付けるものであったとしても、表示画面を介するユーザインタフェースは、普通に用いられる周知のもので、初期値をデフォルトで表示することも普通に用いられる入力のユーザインタフェースであって、先願発明でキーボードで入力する点をそのような普通に用いられる周知のものとすることは、単なる設計事項といえる程度のことである。

3-5.むすび
以上のとおり、本願発明は先願発明と同一の発明であり、本願の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、本願の出願の時において、その出願人が先願の特許出願の出願人と同一でもないので、本願発明は特許法第29の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-15 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2009-01-05 
出願番号 特願平11-65751
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H04N)
P 1 8・ 161- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 圭吾  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 廣川 浩
原 光明
発明の名称 画像形成装置、画像形成装置の制御方法、記憶媒体  
代理人 水垣 親房  

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