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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1193187
審判番号 不服2007-28471  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-18 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 特願2002-14721「オイル塗布部材」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月30日出願公開、特開2003-215972〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本願は、平成14年1月23日の出願であって、平成19年2月22日付け拒絶理由通知に対して、同年5月1日付けで手続補正がされたが、同年9月11日付けで拒絶査定され、これに対して、同年10月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成19年5月1日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅の連続したオイル塗布面を有し、該オイル塗布面に接触するオイル被塗布物に該オイル塗布面からオイルを移行させるオイル塗布部材であって、該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイルの移行が、オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルを介して行われ、かつ該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量が該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なり、
該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とするオイル塗布部材。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-139477号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
(以下、下線は当審が付記。)

記載事項ア(第1頁右下欄第8行目乃至第14行目)
「3.発明の詳細な説明
「発明の目的」
本発明は複写機用オイル塗布部体の創案に係り、PPC複写機におけるトナー像定着装置の離型液などを適切に塗布操作することができ、しかも耐久性において著しく優れた塗布部体を提供しようとするものである。」

記載事項イ(第3頁右上欄第9行目乃至同頁左下欄第12行目)
「(作用)
肉厚多孔質組織材を介してオイル透過量制御層に離型オイルを供給し、該オイル透過量制御層により加熱定着ロールまたは加圧ロールのような複写機構に離型オイルを塗布する。
前記肉厚多孔質組織材とメラミン、ポリイミド、フェノール、ビスマレイミドトリアジン樹脂などの熱硬化性樹脂多孔質発泡体とすることにより適度の弾性と共に耐熱性、高空孔率が得られ、しかもオイルに対する濡れ性を良好とし且つ適度な孔径を具備せしめてオイル保持力を大とし、オイル含浸性を良好とする。
従って、又オイル透過制御層との間において剥離の生ずることを防止し、機構の形状変化を回避して耐用性を大幅に向上する。
前記オイル透過量制御層が多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムで形成されることにより塗布量を適切に制御し、又被塗布ロールに付着したトナーなどを掻き落す。この多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムにシリコンゴム及び離型オイルを保有させることによりその耐用性を高め安定した制御塗布機能を発揮すると共に導電性物質を保有させることもでき、それによって帯電防止を図らしめる。」

記載事項ウ(第4頁左下欄第3行目乃至第9行目)
「前記のような素材を組合わせる手法としては基本的には多孔質ポリテトラフルオロエチレンにシリコンゴムとオイルの混合物を含浸させた後架橋させる。又オイル透過量の制御方法としては多孔質ポリテトラフルオロエチレンの膜厚、孔径及び空隙率の何れか1つ又は2つ以上を変えるか、或いはシリコンゴムとオイルとの混合比率を変える。」

記載事項エ(第5頁左下欄第12行目乃至第6頁左上欄第17行目)
「又本発明のものは別に第3図に示すようにロール状の肉厚多孔質支持体14に補強体18を介して熱硬化型接着剤17によりオイル透過制御層16を覆着し、オイル塗布部体19とする。このものを第3図の(B)(C)に示すように加熱定着ロール1に対し接合せしめ、該加熱定着ロール1と加圧ロール2との間に記録媒体3を通すようにされた複写機に通用する。前記した第3図のような構成を有するオイル塗布部体19はその両端側が支持体20によって支持されることは図示の通りである。
上記したように用いられる塗布部体10について本発明者等が具体的に実施した若干例について説明すると以下の如くである。
実施例 1.
第3図に示すように外径が27mmで内径が8mmであり、密度が11kg/m^(3)のメラミン樹脂多孔体14に直径8mmの鉄芯15を挿入融着せしめてロール状となしたものに、膜厚30μmで空隙率80%、最大孔径0.4μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜16を、熱硬化型接着剤17を0.5mmφでグラビアコートした後、のり巻き状に1回巻き付け熱融着して積層ロールを得た。
上記とは別にシリコンゴム(信越化学社製KE106)8部に対し離型オイル用シリコンオイル(信越化学社製KF96)2部の割合で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜16に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とし、150℃、40分間の加熱をなしてシリコンゴムを架橋せしめオイル透過制御層を有する積層ロールを得た。
さらに別に上記シリコンゴム1部に対し上記シリコンオイル9部の割合で混合したものを準備し、これを上記補強層を有する積層ロールのメラミン樹脂多孔体14部分の横方向から注入した後遠心させ、150℃、80分間の加熱をなして離型オイルをゲル化させたオイル塗布部体19を得、このようなオイル塗布部体19の両側にポリテトラフルオロエチレン製のリング状支持体20を取付けて本発明による製品とした。
このものの初期オイル塗布量は0.1μl(A4判)であって、1,000,000枚コピーまでのオイル塗布量を20,000枚コピー毎に測定したところ0.1?0.2μl (A4判)であって、また外観、形状とも変化はなかった。」

以上、記載事項ア?エから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「加熱定着ロールに接合して離型オイルを供給する、ロール状のオイル塗布部体19であって、該オイル塗布部材から該加熱定着ロールへの該離型オイルの供給は、シリコンゴムと離型オイルとを混合したものを多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに含浸した後、該シリコンゴムを架橋したものからなるオイル透過量制御層16を介して行われ、かつ、該オイル透過制御層16のオイル透過量は、該シリコンゴムと該離型オイルの混合比率を変えることによって制御が可能な、オイル塗布部材19」

次に、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-281546号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項オ
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複写機、ファクシミリ、レーザプリンタ等の画像形成装置に適用される定着装置に関するもので、更に詳しくはシート上の転写画像を通紙・定着するニップ部を形成する定着ローラ対或いは搬送ベルトに対向する加熱ローラに当接するオイル塗布ローラに関するものである。」

記載事項カ
「【0007】微量塗布ローラにも、含浸タイプ、タンクタイプ、スポンジタイプ、スパイラルタイプ等と多数の方式があるが、いずれもオイル塗布量が初期動時と経時段階で異なる問題がある他に、製品寿命が短い欠点がある。更には、ローラ表面上で大サイズシートのみ通紙する領域と小サイズシートも通紙する領域とで、オイル塗布量の制御を行わなければならない問題がある。即ち、小サイズシートを連続通紙すると、大サイズシートのみに対応する領域では紙が通らないために塗布されたオイルが加熱ローラに溜り、大サイズシートを通紙すると、その溜まったオイルが紙に付着しオイル跡が生じたり、最悪の場合には当該オイルがシートの定着ニップ部への侵入を妨げ、ジャムが発生する。」

記載事項キ
「【0010】そこで本発明は、このような問題に鑑み、サイズの異なるシートの給紙切り換えの際にシート上にオイル跡を生じることなく、また加熱ローラに当接するサーミスタや爪部にオフセットしたトナーや紙粉が溜まることなく、したがって加熱ローラを傷つけることのない定着装置を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】・・・
【0014】あるいはニップ部を形成し未定着トナーと接触するローラ表面の小サイズシート通紙領域にオイルを付与するオイル塗布ローラ部分に保持されるオイルの粘度が、他の塗布ローラ部分のオイル粘度よりも低くなっていても、上記課題を解決する。」

記載事項ク
「【0024】更に図3に示すように、芯金12、オイル保持層13及びオイル塗布層14のそれぞれを同軸ストレート円柱に形成し、小サイズシート通紙に対応する中央部分と、その両端の大サイズシート通紙に対応する端部分とで保持される夫々のオイルの粘度を異ならせる。即ち、中央部分でのオイル粘度を端部分でのオイル粘度よりも低くし、中央部分でのオイル滲み出し量を多くする。これにより、大サイズシート対応の端部分の方を少なく塗布することができる。例えば、同じシリコーンオイルを用いても、中央部分では、1万cs程度の粘度になるように調整し、端部分では、10万cs程度の粘度になるように調整して用いるのがよい。上記と同様に、小サイズ対応部分のオイル保持量を多くすることで、オイル寿命のバランスをとるのがよい。」

以上、記載事項オ?クから、引用例2には、定着ローラ対或いは搬送ベルトに対向する加熱ローラに当接するオイル塗布ローラに関し サイズの異なるシートの給紙切り換えの際にシート上にオイル跡を生じないようにするという技術課題、及び該課題の解決手段として、オイル塗布ローラのオイル塗布層14からのオイル滲み出し量を、該塗布ローラの中央部分と端部分で異ならせるという技術思想、が開示されている。

3.対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「加熱定着ロールに接合して離型オイルを供給する、ロール状のオイル塗布部材19であって、該オイル塗布部材から該加熱定着ロールへの該離型オイルを供給は、」と、本願発明の「所定幅の連続したオイル塗布面を有し、該オイル塗布面に接触するオイル被塗布物に該オイル塗布面からオイルを移行させるオイル塗布部材であって、該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイルの移行が、」とを対比すると、

ア 引用発明の「加熱定着ロール」、「接合して」、「離型オイル」、「オイルの供給」及び「オイル塗布部材19」は、本願発明の「オイル被塗布物」、「接触する」、「オイル」、「オイルを移行」及び「オイル塗布部材」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「オイル塗布部材19」の形状は「ロール状」であること、また、該「オイル塗布部材19」のロール状表面から「加熱定着ロール」に対してオイルが塗布されることは、引用例1の第3図からも明らかであるから、該「オイル塗布部材19」は該ロールの幅分の「連続したオイル塗布面」を有するものであるといえる。

以上、ア、イから、両者は相当関係にあると言える。

(2)引用発明の「シリコンゴムと離型オイルとを混合したものを、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに含浸した後、該シリコンゴムを架橋したものからなるオイル透過量制御層16を介して行われ」と、本願発明の「オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルを介して行われ」とを対比すると、

ア 引用発明の「シリコンゴム」は、本願発明の「オイルゲル化剤」に相当する。
(本願明細書の記載(「【0007】本発明で用いるオイルゲル化剤は、前記したオイルを、固形物にゲル化し得るものであればよく、・・・その具体例としてはシリコーンゴム」)から、本願発明の「オイルゲル化剤」として、「シリコーンゴム」を含む。)

イ 引用発明の「シリコンゴムと離型オイルとを混合したものを、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに含浸した後、該シリコンゴムを架橋したもの」は「オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイル」に相当する。
(本願発明の「固化オイル」は、下記の本願の明細書の記載(段落【0029】)によれば、「オイル」及び「オイルゲル化剤」を混合し、これを、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜に塗布含浸させた後、これを加熱による架橋によって形成されたものである点、開示されている(「【0029】・・・オイルとして、粘度1000csのジメチルシリコーンオイル(KF96-1000cs、信越化学工業社製)とオイルゲル化剤(3次元架橋剤)として付加反応型RTVシリコーンゴム(KE-106[信越化学工業(株)製])を用意し、オイル:ゲル化剤を7:3の重量比で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜の図1中のaで示した領域(ロール端部より300mm域)に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とした後、100℃30分間加熱せしめ、前記ロール中央部に固化オイルを含むオイル透過制御層Aを形成した。」)
したがって、引用発明の「シリコンゴムと離型オイルを混合したものを、・・・該シリコンゴムを架橋したもの」(シリコンゴムは、上記3(2)アより、「オイルゲル化剤」に相当)と、本願発明の「固化オイル」とは、実質的に同じである。)

ウ 引用発明の「オイル透過量制御層16」は、「シリコンゴムと離型オイルとを混合したもの」を「架橋」したものを、構成として含むものであるから、引用発明の(オイルの塗布が)「オイル透過量制御層16を介して行われ」るとは、「シリコンゴムと離型オイルとを混合物」を「架橋したもの」を介して行われる、とも言い換えられる。
また、上記、3(2)イの考察から、「シリコンゴムと離型オイルとの混合物」を「架橋したもの」は、本願発明の「固化オイル」に相当する。
したがって、引用発明の「オイル透過量制御層16を介して行われ」は、本願発明の「固化オイルを介して行われ」に相当すると言える。

以上、ア?ウから、両者は相当関係にあると言える。

(3)引用発明の「該オイル透過制御層16のオイル透過量は、該シリコンゴムと該離型オイルの混合比率を変えることによって制御が可能」と、本願発明の「該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量が該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なり、
該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていること」とを対比すると、

ア 引用発明の「該シリコンゴムと該離型オイルの混合比率」は、「固化オイル中のオイルゲル化剤の割合」に相当する。

イ 本願発明の「2つの部分A、B」でオイル移行量の相違は、オイル塗布面の各A,Bの部分に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合の相違によってもたらされる。

以上ア、イから、両者は「該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量は、該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合によって制御される」点で一致する。

よって、上記(1)?(3)の対比考察から、本願発明と引用発明とは、
「所定幅の連続したオイル塗布面を有し、該オイル塗布面に接触するオイル被塗布物に該オイル塗布面からオイルを移行させるオイル塗布部材であって、該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイルの移行が、オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルを介して行われ、かつ、該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量は、該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合によって制御される、オイル塗布部材」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点

オイル塗布部材からのオイルの移行量、及びオイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合として、本願発明では「オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量が該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なり、該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっている」のに対し、引用発明にはそのような記載がない点。

4.当審の判断

前記相違点について、検討する。

画像形成装置の定着装置において、サイズの異なるシートの給紙切り換えの際に、シート上にオイル跡を生じることを防止する、という技術的課題は従来周知である(例えば、記載事項カ、及び、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-173087号公報の記載(「これら公知のクリーニングローラは、・・・通紙モードによって塗布量が大きく変化し、小サイズの紙を連続通紙後、大サイズの紙を通紙すると、そのサイズ幅の差の部分にオイルが付着し、非通紙部でのオイル汚れが生じ、このため最悪の場合には通紙過程で紙詰りが起ってくるという問題があった。」(第1頁右下欄第14行目乃至第2頁左上欄第2行目までの記載))等を参照のこと。)
また、引用例2には、該課題の解決手段として、オイル塗布部材(ローラ)表面からのオイル塗布量(オイル滲み出し量、すなわち、オイル塗布部材からオイル被塗布部材へのオイル移行量)を、オイル塗布部材表面において、各サイズシートがそれぞれ通紙する部分に応じて異ならせるという技術思想、が開示されている(記載事項オ?ク)。
したがって、上記従来周知の課題に対処するために、引用発明のオイル塗布部材においても、引用例2に記載された上記技術思想(オイル塗布部材表面の領域毎に、オイル移行量を制御する)を採用することは、当業者であれば容易に想到し得る事項であり、その際、領域毎のオイル移行量の制御を、引用発明のオイル移動量の制御方法である「シリコンゴムと該離型オイルの混合比率を変えること」により行い、前記相違点に係る本願発明のようになすことは、当業者であれば、当然に想起する程度の事項である。

また、本願発明によってもたらされる効果は引用例1乃至2の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、審判請求人は、審判請求書において、引用例1の「シリコンゴム/オイル混合比率」によるオイル透過量の制御は、「あくまでも補強層の上下に隣接する層との相対関係において、オイル塗布部材の強度を保持しつつ、オイルが肉厚多孔質組織材→補強層→透過制御層へと確実に移行するために必要なシリコンゴム/オイル混合比率に言及したもの」(第2頁第40行目乃至第43行目)であり、「すなわち「固化オイル」から別の「固化オイル」へのオイル移行のこと」(第4頁第12行目乃至第13行目)だから、「「オイル塗布面(固化オイル)」から、紙などの「被塗布物(請求項1)」へのオイル移行のことをいう」(第4頁第16行目乃至第17行目)、本願発明のオイル移行とは「物理的意味合いが異なる」(第4頁第13行目))ものと主張する。
しかしながら、引用例1に記載されたシリコンゴム/オイル混合比率の調整は、審判請求人が主張するような「固化オイル」から別の「固化オイル」すなわち各層間でのオイル移行量の制御に限るものではなく、透過制御層自体のオイル透過量、すなわち、透過制御層から被塗布物である定着ロールへのオイル移行量を制御するために行われるものでもあることは、引用例1の下記の記載内容から明らかである。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
(「・・・該オイル透過量制御層により加熱定着ロールまたは加圧ロールのような複写機構に離型オイルを塗布する。・・・オイル透過量制御層が多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムで形成されることにより塗布量を適切に制御し、・・・。この多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムにシリコンゴム及び離型オイルを保有させることによりその耐用性を高め安定した制御塗布機能を発揮する」(記載事項イ)。
「前記のような素材を組合わせる手法としては基本的には多孔質ポリテトラフルオロエチレンにシリコンゴムとオイルの混合物を含浸させた後架橋させる。又オイル透過量の制御方法としては・・・、或いはシリコンゴムとオイルとの混合比率を変える。」(記載事項ウ))

まとめ

よって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-17 
結審通知日 2008-12-24 
審決日 2009-01-07 
出願番号 特願2002-14721(P2002-14721)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 誠  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 越河 勉
赤木 啓二
発明の名称 オイル塗布部材  
代理人 菅河 忠志  
代理人 植木 久一  
代理人 二口 治  
代理人 伊藤 浩彰  

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