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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1193196
審判番号 不服2007-35364  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-28 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 特願2002-239102「複数のラスタを並行して処理する画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 80480〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成14年8月20日の出願であって,平成19年11月27日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年12月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付で手続補正がなされ,さらに平成20年1月25日付けで手続補正がなされたものである。

第2 手続補正の却下
1 補正却下の決定の結論
平成20年1月25日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1)平成19年12月28日付の手続補正の適否について
平成20年1月25日付の手続補正(以下,「本件補正」という。)が適法であるかどうかの判断の基準となる明細書及び図面は,平成19年12月28日付の手続補正により補正された明細書及び図面であるので,直前の平成19年12月28日付の手続補正(以下,「審判請求時補正」という。)が適法であるか否かを判断する必要がある。
したがって,最初に,審判請求時補正の適否について検討する。

ア 審判請求時補正の内容及びその適否について
審判請求時補正により,当該補正前の特許請求の範囲の請求項10ないし19,21ないし22,24ないし30が削除された。そして,当該削除に伴い,当該補正前の請求項20,23が,それぞれ請求項10,11となった。
したがって,審判請求時補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

イ 審判請求時補正についてのむすび
以上のとおりであるから,審判請求時補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に規定された要件を満たすものであるから,適法な補正といえる。

(2)本件補正の適否について
ア 本件補正の内容について
上記のとおり審判請求時補正は適法な補正であるから,本件補正が適法であるかどうかの判断の基準となる明細書及び図面は,審判請求時補正で手続補正された明細書及び図面である。
この点を考慮すると,本件補正により請求項1,10,11は「ドット形成有無の判断に伴う処理」において,「キャッシュ,パイプライン処理の少なくとも一方を実装するコンピュータによる処理として実施する」ものから,「少なくともパイプライン処理を実装するコンピュータによる処理として実施する」ものに補正された。
また,請求項2として「ドット形成判断手段のコンピュータは,キャッシュを備える請求項1記載の画像処理装置。」の発明が追加された。
請求項2が追加されたことに伴い,補正前の請求項2ないし5は,請求項3ないし6に補正されるとともに,各請求項において引用する請求項が,請求項4では補正前の「請求項1または2」から「請求項1ないし3」に,請求項5では補正前の「請求項3」から「請求項4」に,請求項6では補正前の「請求項4」から「請求項5」に補正された。
補正前の請求項6の「N=2である」もの,請求項7の「N=8である」ものが,請求項7としてまとめられ,「N=2またはN=8である」ものに補正された。

イ 本件補正の適否について
請求項1,10,11における「ドット形成有無の判断に伴う処理」を「キャッシュ,パイプライン処理の少なくとも一方を実装するコンピュータによる処理として実施する」ものから,「少なくともパイプライン処理を実装するコンピュータによる処理として実施する」ものに補正することは,補正前の請求項1,10,11が含んでいた“キャッシュを実装するコンピュータによる処理として実施する”もの,“パイプライン処理を実装するコンピュータによる処理として実施する”もの,“キャッシュ,パイプライン処理の両方を実装するコンピュータによる処理として実施する”のうち,“パイプライン処理を実装するコンピュータによる処理として実施する”ものに限定したものといえる。加えて,本件補正後の請求項1,10,11に記載された発明は,本件補正前の請求項1,10,11に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
請求項2は,請求項を追加するものであるが,実質的に,補正前の請求項1が含んでいた“キャッシュ,パイプライン処理の両方を実装するコンピュータによる処理として実施する”ものに限定されたものであり,構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項を,その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項としたものといえる。加えて,請求項2に記載された発明は,本件補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
請求項3ないし6は,請求項2が追加されたことに伴い,なされた形式的な補正であって,実質的に,補正前の請求項2ないし5に記載された発明内容を変えるものではないから,補正を認めない理由はない。
請求項7の「N=2である」もの,請求項8の「N=8である」ものをまとめ,請求項7として「N=2またはN=8である」に補正することは,形式的にみて,平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号のいずれかを目的としてなされたものとは認められないが,実質的に,補正前の請求項7,8に記載された発明内容を変えるものではないから,補正を認めない理由はない。

以上のとおり,本件補正は,主に特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するものであるから,次に,本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(ア)補正後の本願発明
本件補正後の本願の発明は,その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたものと認められるところ,その請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項1】 複数の画素で構成された画像データの各画素の階調値と所定の閾値とを比較することによって,該画像データをドットの形成有無による表現形式のデータに変換する画像処理装置であって,
複数の前記閾値が二次元的に配列された閾値マトリックスを記憶しておく閾値マトリックス記憶手段と,
ドットの形成有無の判断を行う対象画素を選択する対象画素選択手段と,
前記対象画素に対応する閾値を前記閾値マトリックスの中から読み出して,該対象画素に対応付けられた前記階調値と比較することにより,該対象画素についてのドット形成有無を判断するドット形成判断手段と
を備え,
前記対象画素選択手段は,画素の列であるラスタであって互いに隣接する所定のN本(Nは2以上の整数)のラスタをラスタ群としてまとめ,該ラスタ群に含まれる各画素を所定の順番に従って順次選択することにより,該N本の各ラスタから並行して前記対象画素を選択する手段であり,
前記ドット形成判断手段は,前記ドット形成有無の判断に伴う処理を,少なくともパイプライン処理を実装するコンピュータによる処理として実施する画像処理装置。」

(イ)引用例
原査定の拒絶の理由として引用された特開2001-16448号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

a 「【請求項6】ディザパターン記憶部よりディザデータを読み出す手段と,
画像データ記憶部よりディザデータと比較する画像データを読み出す手段と,
読み出された前記画像データをディザデータと比較して2値化処理する手段と,
2値化処理された2値データを2値画像データ記憶部へ書き込む手段と,
を備え,
前記読み出した一つのディザデータと比較される画像データを,主走査線方向と副走査線方向のうちのいずれか一の方向に前記画像データ記憶部から順次読み出して前記ディザデータと比較し,前記一の方向の2値化処理が終了した後,
次に,主走査線方向と副走査線方向のうちの前記一の方向とは異なる他の方向に前記画像データ記憶部から画像データを順次読み出して前記ディザデータと比較して2値化処理し,
前記一つのディザデータに対する主走査線及び副走査線方向の画像データの2値化処理が終了した後に,
次のディザデータがある場合,該次のディザデータを記憶手段から読み出して,主走査線及び副走査線方向の2値化処理を行なうように制御する,ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】前記画像データをディザパターンの大きさを単位に2値化処理する,ことを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。」

b 「【0002】
【従来の技術】ディザ法は,画像処理により擬似的に中間調画像を表現するものである。ディザデータを用いた画像データの2値化処理について,図7に示した,4×4のディザパターンを用いた場合について説明する。ここで,ディザとは,2値化を行うためのしきい値をマトリックス内に異なった値で配置し,マトリックス単位で階調化するものである。しきい値を格納した2次元マトリックスを「ディザパターン」と呼ぶ。このしきい値は,特定の値に決まったものでなく,任意とされ,またマトリックスの大きさも任意に設定される。
【0003】そして,画像データ としきい値を比較し,
多値画像データ > しきい値 の場合,‘0’ (=黒)
多値画像データ ≦ しきい値の場合, ‘1’ (=白)
と変換する。
【0004】あるいは,‘0’ (=白),‘1’ (=黒)としてもよい。
【0005】図7に示す例では,多値画像データは,4×4のマトリックスに配置されたディザパターンと比較され2値化処理される。ディザパターンは,繰り返し多値画像と比較され,2値化処理される。
【0006】図8は,従来のディザパターンを用いた2値化処理について説明するための流れ図である。記憶手段から,ディザーパターン,及び多値画像データをそれぞれ読み出して,これらを比較して2値化処理され,2値データを格納するという一連のステップB1?B4を2値化処理が終了するまで繰り返す。
【0007】図9は,従来のディザパターンを用いた2値化処理について説明するための模式図である。図9を参照すると,多値画像データ812をディザデータ816を用いて2値化処理を行ない,次に,多値画像データ813をディザデータ817を用いて2値化処理を行ない,次に,多値画像データ814をディザデータ818を用いて2値化処理を行ない,次に,多値画像データ815をディザデータ819を用いて2値化処理を行ない,最終多値画像データまで同じ動作を繰り返す。先頭行より主走査線方向に向って1行ずつ,その多値画像データに対応したディザデータを用いて2値化処理を行なっている。」

c 「【0009】すなわち,通常,多値画像データのサイズは,ディザパターンのサイズよりもはるかに大きく,また2値化処理は1ピクセル単位で行なわれるため,ディザパターンのディザデータを繰り返し用いる。」

d 「【0066】次に,本発明の第2の実施例について説明する。図6は,本発明の第2の実施例を説明するための模式図である。
【0067】図6を参照すると,本発明の第2の実施例は,2値化処理が,図3を参照して説明した前記実施例におけるディザデータ1ピクセルに対応した多値画像データ1ピクセルを2値化処理するのに加え,ディザデータをディザパターンの大きさで2値化処理する点が異なる。
【0068】多値画像データ700は,多値画像データ709はディザパターン713を用いて2値化処理を行ない,2値化データ714を2値画像データ705に書き込む,次に多値画像データ710の2値化処理を行ない,主走査線方向が終了後,副走査線方向に進む多値画像データ711,712の2値化処理を行ない2値画像データ716,717を2値画像データ707,708に書き込書き込み,多値画像データの終了まで上記動作を繰り返す。2値化処理をディザパターン単位で処理出来るという新たな効果が得られる。
【0069】また,本実施例は,2値化処理を主走査線方向から副走査線方向,主走査線方向から副走査線方向と2値化処理を行なっているが,副走査線方向から主走査線方向,副走査線方向から主走査線方向と2値化処理を行なっても同様の効果が得られ2値化処理を行なう方向はいずれの方向から行なってもよい。」

e 前掲dを参酌すると,図6には,n×nの多値画像データと,4×4のディザパターンとを比較して,2値化処理する模式図であって,4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行った後,主走査線方向に進んで,次の4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行い,主走査線方向が終了後,副走査線方向に進んで,4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行い,主走査線方向に進んで,次の4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行うことが記載されていると認められる。

前掲aないしeの記載及び図面によると,引用例1には,

「4×4のしきい値を格納した2次元マトリックスであるディザパターンとn×nの多値画像データを比較して2値化処理され,2値データを格納する画像処理装置において,
ディザパターン記憶部より前記しきい値を読み出す手段と,
画像データ記憶部より前記しきい値と比較する多値画像データを読み出す手段と,
読み出された前記多値画像データと前記しきい値とを比較して2値化処理する手段と,
を備え,
4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行った後,主走査線方向に進んで,次の4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行い,主走査線方向が終了後,副走査線方向に進んで,4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行い,主走査線方向に進んで,次の4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行う画像処理装置。」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(ウ) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明において「多値画像データ」の用語は,画像データ全体を表すものと,画像データの各画素におけるデータの値を表すものの,2つの意味で用いられている。このことは,前記「(イ)d」の段落【0068】に,画像データ全体として「多値画像データ700」が,各画素におけるデータとして「多値画像データ709」が記載されていること,前記「(イ)b」の段落【0003】に,「多値画像データ > しきい値 の場合,‘0’ (=黒)」,「多値画像データ ≦ しきい値の場合, ‘1’ (=白)」と,しきい値と比較される値として「多値画像データ」が記載されていることからも明らかである。よって,引用発明の「n×nの多値画像データ」は,本願補正発明の「複数の画素で構成された画像データ」に相当すると共に,その「各画素の階調値」に相当する。
引用発明の「しきい値」は,本願補正発明における「所定の閾値」に相当する。
引用発明の「2値データ」は,本願補正発明の「ドットの形成有無による表現形式のデータ」に相当するものであって,引用発明の「2値化処理を行」うことは,本願補正発明の「画像データをドットの形成有無による表現形式のデータに変換する」ことに相当する。
したがって,引用発明の「4×4のしきい値を格納した2次元マトリックスであるディザパターンとn×nの多値画像データを比較して2値化処理され,2値データを格納する画像処理装置」は,本願補正発明の「複数の画素で構成された画像データの各画素の階調値と所定の閾値とを比較することによって,該画像データをドットの形成有無による表現形式のデータに変換する画像処理装置」に相当する。

引用発明の「ディザパターン」は,「4×4のしきい値を格納した2次元マトリックス」であるから,本願補正発明の「複数の前記閾値が二次元的に配列された閾値マトリックス」に相当する。
引用発明の「ディザパターン記憶部」は,「ディザパターン」の各「しきい値」を読み出すものであるから,その内部に「ディザパターン」を記憶していることは明らかである。
したがって,引用発明の「ディザパターン記憶部」は,本願補正発明の「複数の閾値が二次元的に配列された閾値マトリックスを記憶しておく閾値マトリックス記憶手段」に相当する。

引用発明における「多値画像データとしきい値と比較する2値化処理」は,本願補正発明の「ドットの形成有無の判断を行う」ことに相当する。つまり,引用発明の「画像データ記憶部よりしきい値と比較する多値画像データを読み出す手段」は,本願補正発明の「ドット形成有無の判断を行う」ことに相当する「2値化処理」対象とする多値画像データを選択することに他ならないから,本願補正発明の「ドットの形成有無の判断を行う対象画素を選択する対象画素選択手段」に相当する。

引用発明における「しきい値」は「ディザパターン」内の「しきい値」であって,読み出される「しきい値」は,当然,処理対象の画素に対応したものであるから,「ディザパターン記憶部よりしきい値を読み出す」ことは,本願補正発明の「対象画素に対応する閾値を閾値マトリックスの中から読み出」すことに相当する。
引用発明の「多値画像データとしきい値とを比較して2値化処理する」ことは,本願補正発明の「閾値」を「対象画素に対応付けられた階調値と比較することにより,該対象画素についてのドット形成有無を判断する」ことに相当する。
したがって,引用発明の「ディザパターン記憶部よりしきい値を読み出」し,「多値画像データとしきい値とを比較して2値化処理する手段」は,本願補正発明の「対象画素に対応する閾値を閾値マトリックスの中から読み出して,該対象画素に対応付けられた前記階調値と比較することにより,該対象画素についてのドット形成有無を判断するドット形成判断手段」に相当する。

引用発明は「4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行った後,主走査線方向に進んで,次の4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行い,主走査線方向が終了後,副走査線方向に進んで,4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行い,主走査線方向に進んで,次の4×4のディザパターンの大きさで2値化処理を行う」ものであるから,画素の列であるラスタであって互いに隣接する所定の4本(本願補正発明における「N=4」の場合に相当する。)のラスタをまとめて2値化処理するものであり,かつ前記所定の4本のラスタ内において,4×4のディザパターンの大きさずつ,各ラスタから並行して2値化処理するものといえる。なお,2値化処理する際に,対象とする画素が選択されていることは自明である。
したがって,引用発明と本願補正発明とは,「画素の列であるラスタであって互いに隣接する所定のN本のラスタをまとめ,該N本の各ラスタから並行して対象画素を選択する」点で共通する。

以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。

【一致点】
複数の画素で構成された画像データの各画素の階調値と所定の閾値とを比較することによって,該画像データをドットの形成有無による表現形式のデータに変換する画像処理装置であって,
複数の前記閾値が二次元的に配列された閾値マトリックスを記憶しておく閾値マトリックス記憶手段と,
ドットの形成有無の判断を行う対象画素を選択する対象画素選択手段と,
前記対象画素に対応する閾値を前記閾値マトリックスの中から読み出して,該対象画素に対応付けられた前記階調値と比較することにより,該対象画素についてのドット形成有無を判断するドット形成判断手段と
を備え,
前記対象画素選択手段は,画素の列であるラスタであって互いに隣接する所定のN本(Nは2以上の整数)のラスタをまとめ,該N本の各ラスタから並行して前記対象画素を選択する手段である画像処理装置。

【相違点】
(a)本願補正発明が,まとめられるN本のラスタを「ラスタ群」と呼称し,当該「ラスタ群に含まれる各画素を所定の順番に従って順次選択する」のに対し,引用発明は,4本のラスタをまとめて処理するものの,それに対して呼称はなく,前記4本のラスタに含まれる4×4のディザパターンの大きさの領域内では,どのような順序に従って処理する画素を選択するのか,特定されていない点。

(b)「ドット形成判断手段」における「ドット形成有無の判断に伴う処理」を,本願補正発明では「少なくともパイプライン処理を実装するコンピュータによる処理として実施する」のに対し,引用発明では特定されていない点。

(エ) 当審の判断
上記相違点(a)について検討する。
引用発明において,まとめて処理される4本のラスタを「ラスタ群」と呼称するか否かは技術的事項ではなく,単なる呼称の問題は,発明としての実質的な差異とはならない。
また,引用発明は,4本のラスタに含まれる4×4のディザパターンの大きさの領域内で,どのような順序に従って処理する画素を選択するのか,特定されていないものの,しきい値と多値画像データを画素単位で比較するものである以上,何らかの「所定の順番」,例えば,一般的に行われているように,先頭のラスタにおいて主走査方向に向かって1画素ずつ処理を行い,当該ラスタの処理が終了すると,一つ下のラスタにおいて,同様に主走査方向に向かって1画素ずつ処理を行う,というような順番で順次選択して処理していることは,自明である。
したがって,N本のラスタを「ラスタ群」と呼称し,当該「ラスタ群に含まれる各画素を所定の順番に従って順次選択する」点に関して,引用発明は,本願補正発明と実質的に相違しない。

次に,上記相違点(b)について検討する。
パイプライン処理を実装するコンピュータは,例を挙げるまでもなく周知技術であるから,引用発明における「2値化処理する手段」を,そのような周知なパイプライン処理を実装するコンピュータを用いて実施することは,当業者が適宜採用し得た設計的事項である。また,このような周知のパイプライン処理を実装するコンピュータを採用することに対して阻害する要因も何ら存在していない。

そして,これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず,本願発明の奏する効果を検討してみても,引用例1に記載された発明及び周知技術それ自体の効果であって各相違点の組合せによって新たな効果を奏するものではない。

したがって,本願補正発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ウ 本件補正についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年12月28日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】 複数の画素で構成された画像データの各画素の階調値と所定の閾値とを比較することによって,該画像データをドットの形成有無による表現形式のデータに変換する画像処理装置であって,
複数の前記閾値が二次元的に配列された閾値マトリックスを記憶しておく閾値マトリックス記憶手段と,
ドットの形成有無の判断を行う対象画素を選択する対象画素選択手段と,
前記対象画素に対応する閾値を前記閾値マトリックスの中から読み出して,該対象画素に対応付けられた前記階調値と比較することにより,該対象画素についてのドット形成有無を判断するドット形成判断手段と
を備え,
前記対象画素選択手段は,画素の列であるラスタであって互いに隣接する所定のN本(Nは2以上の整数)のラスタをラスタ群としてまとめ,該ラスタ群に含まれる各画素を所定の順番に従って順次選択することにより,該N本の各ラスタから並行して前記対象画素を選択する手段であり,
前記ドット形成判断手段は,前記ドット形成有無の判断に伴う処理を,キャッシュ,パイプライン処理の少なくとも一方を実装するコンピュータによる処理として実施する画像処理装置。」

2 引用例
引用例1及びその記載事項は,前記「第2 2(2)イ(イ)」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から前記「第2 2(2)ア」に記載した限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2(2)イ(ウ)」,「第2 2(2)イ(エ)」に記載したとおり,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-17 
結審通知日 2008-12-24 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願2002-239102(P2002-239102)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 板橋 通孝
廣川 浩
発明の名称 複数のラスタを並行して処理する画像処理装置  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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