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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1193324
審判番号 不服2006-12672  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-20 
確定日 2009-02-25 
事件の表示 特願2002-283320「管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月15日出願公開、特開2004-113605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成14年9月27日の出願であって、平成18年5月15日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月20日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本願発明の認定
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、補正前後の記載を比較すると、補正後の請求項2,3と補正前の請求項3,4は、引用する請求項番号が相違する(補正前に「請求項1または2に記載の管理装置」とあったのが、「請求項1に記載の管理装置」と補正された。)だけである。
そうすると、補正前の請求項1又は2のどちらかが削除され、削除されない請求項に対応するのが補正後の請求項1と解さざるを得ない。
補正前の請求項1,2及び補正後の請求項1の記載は次のとおりである(下線は本件補正による補正箇所を示す。)。
(補正前の請求項1,2)
【請求項1】
遊技者による停止操作に基づいて特別入賞が成立し得るようにゲームが制御される当選状態に特別入賞の当選によって遷移するとともに、前記特別入賞の成立によって前記当選状態を解除しかつ前記特別入賞に当選してから成立するまで前記特別入賞の抽選を中断する無抽選期間に入るスロットマシンの動作状態を管理する管理装置において、
データ計数手段と、無抽選遊技データ計数手段と、データ算出手段とを備え、
前記スロットマシンは、特別入賞が成立すると、所定回数のゲームが実行されることで賞としての遊技価値を付与可能な特定遊技状態が発生するように構成され、
前記データ計数手段は、所定期間において前記スロットマシンで実行されたすべてのゲーム回数から特定遊技状態中に実行されたゲーム回数を減算したゲーム回数を示すゲーム回数データと、該所定期間において該スロットマシンで成立した特別入賞の回数を示す特別入賞回数データとをそれぞれ計数し、
前記無抽選遊技データ計数手段は、前記所定期間における前記無抽選期間中に前記スロットマシンで実行されたゲーム回数を無抽選ゲーム回数データとして計数し、
前記データ算出手段は、少なくとも、前記データ計数手段が計数したゲーム回数データから前記無抽選ゲーム回数データを除いた実質ゲーム回数データを算出する実質遊技データ算出手段と、該実質ゲーム回数データと前記特別入賞回数データとに基づいて、前記所定期間における特別入賞の実質成立確率を算出する実質特別入賞関連データ算出手段とを含んでいる
ことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記データ計数手段が計数したゲーム回数データと前記特別入賞回数データとに基づいて、前記所定期間における特別入賞の成立確率を算出する機能を前記データ算出手段がさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。

(補正後の請求項1)
【請求項1】
遊技者による停止操作に基づいて特別入賞が成立し得るようにゲームが制御される当選状態に特別入賞の当選によって遷移するとともに、前記特別入賞の成立によって前記当選状態を解除しかつ前記特別入賞に当選してから成立するまで前記特別入賞の抽選を中断する無抽選期間に入るスロットマシンの動作状態を管理する管理装置において、
データ計数手段と、無抽選遊技データ計数手段と、データ算出手段とを備え、
前記スロットマシンは、特別入賞が成立すると、所定回数のゲームが実行されることで賞としての遊技価値を付与可能な特定遊技状態が発生するように構成され、
前記データ計数手段は、所定期間において前記スロットマシンで実行されたすべてのゲーム回数から特定遊技状態中に実行されたゲーム回数を減算したゲーム回数を示すゲーム回数データと、該所定期間において該スロットマシンで成立した特別入賞の回数を示す特別入賞回数データとをそれぞれ計数し、
前記無抽選遊技データ計数手段は、前記所定期間における前記無抽選期間中に前記スロットマシンで実行された遊技者の技量により様々に変化するゲーム回数を無抽選ゲーム回数データとして計数し、
前記データ算出手段は、前記データ計数手段が計数したゲーム回数データから前記無抽選遊技データ計数手段が計数した無抽選ゲーム回数データを除いた実質ゲーム回数データを算出する実質遊技データ算出手段と、該実質遊技データ算出手段が算出した実質ゲーム回数データと前記データ計数手段が計数した特別入賞回数データとに基づいて、前記所定期間を単位として、遊技者の技量にかかわらない実質的な遊技性能データとしての前記特別入賞の実質成立確率を算出する実質特別入賞関連データ算出手段と、前記データ計数手段が計数したゲーム回数データと前記特別入賞回数データとに基づいて、前記所定期間における特別入賞の成立確率を算出する機能とを含んでいる
ことを特徴とする管理装置。

上記下線部のうち、「遊技者の技量により様々に変化する」、「無抽選遊技データ計数手段が計数した」、「実質遊技データ算出手段が算出した」、「データ計数手段が計数した」及び「遊技者の技量にかかわらない実質的な遊技性能データとしての」との追加記載については、そのような文言を追加してもしなくても、「管理装置」の発明には何の変更ももたらさない。特に、「遊技者の技量により様々に変化する」については、管理対象となるスロットマシンを限定することはあり得るが、管理装置を限定しないだけでなく、管理対象をみても、「前記特別入賞の成立によって前記当選状態を解除しかつ前記特別入賞に当選してから成立するまで前記特別入賞の抽選を中断する無抽選期間に入るスロットマシン」である以上、無抽選期間中のゲーム回数が「遊技者の技量により様々に変化する」ことは明らかである。
「所定期間における」を「所定期間を単位として、」と補正する点については、所定期間を定めて特別入賞の成立確率を算出することは、本件補正前後に共通した発明特定事項であり、その場合、算出の基礎とした所定期間とは別の所定期間に対しても、特別入賞の成立確率を算出すると解すべきであり、それは「所定期間を単位として、」算出することにほかならないから、この補正事項も格別補正前の請求項1又は請求項2を限定するものではない。
データ算出手段が「前記データ計数手段が計数したゲーム回数データと前記特別入賞回数データとに基づいて、前記所定期間における特別入賞の成立確率を算出する機能」を含むことは、補正前請求項2の限定事項そのものである。
そうすると、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、実質的に本件補正前の請求項2に係る発明と同一というべきであり、本願発明が進歩性を欠如すれば、本件補正前の請求項2に係る発明が進歩性を欠如することになる。
そこで、本件補正を却下すべきかどうかひとまず措き、本願発明が進歩性を欠如するかどうかを検討する。本願発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、その記載は上記のとおりである。

第3 本件審判請求についての判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-149528号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?シの記載が図示とともにある。
ア.「外周面に種々の識別情報が描かれた複数のドラムを予め定めた始動条件の成立に基づいて回転させた後、各ドラムに対応付けて設けられたストップスイッチの操作に従って各ドラムを停止させるゲームを実行し、すべてのドラムが停止した際の停止態様に応じて遊技者に所定の利益を付与するスロットマシンにおいて、
遊技状態を設定変更する遊技状態設定手段と、前記遊技状態設定手段が設定した遊技状態に従って前記ゲームを実行する遊技実行手段と、自装置の稼動状況を表わす情報を外部装置に向けて出力する情報出力手段とを備え、
前記遊技実行手段は、自装置の側で定めた停止態様が形成されるように前記各ドラムの停止位置を調整する制御モードと、前記ドラムの停止位置を調整しない無制御モードのいずれかで前記ゲームを実行するものであり、
前記遊技状態設定手段は、所定の開始条件が成立したときから前記無制御モードで前記ゲームを所定回数実行するチャレンジ状態に遊技状態を設定するものであり、
前記情報出力手段は、自装置の前記稼動状況を示す各種の情報を前記チャレンジ状態中のものとそうでないものとに区別可能に出力するものであることを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ.「請求項1、2、3、4、5または6に記載のスロットマシンが複数台接続され、これらの稼動状態を統括管理する遊技機管理装置において、
前記スロットマシンの有する前記情報出力手段から出力された前記各種の情報を入力し、これらに基づいて前記スロットマシンの稼動状況を前記チャレンジ状態中とそうでないときとを区別して管理することを特徴とする遊技機管理装置。」(【請求項7】)
ウ.「【従来の技術】遊技場では、場内に配置された多数の遊技機の稼動状況を遊技機管理装置で統括管理するようになっており、スロットマシンについては、大ボーナスゲームに関する情報や小ボーナスゲームに関する情報を収集管理し、機種の入れ替えや台の設定を行う際の情報として役立てている。」(段落【0002】)
エ.「情報出力手段(1040)は、自装置の稼動状況を示す各種の情報をチャレンジ状態中のものとそうでないものとに区別可能に出力する。たとえば、遊技状態が、チャレンジ状態か否かを示す情報を出力する。また、遊技状態として、チャレンジ状態と、通常状態と、通常状態よりも遊技者に有利な特別状態とを備える場合には、現在の遊技状態がこれらのいずれであるかを示す情報を出力する。」(段落【0015】)
オ.「情報出力手段(1040)は、ゲームのスタート回数についての情報を、チャレンジ状態中のものとそうでないものとを区別可能に出力する。」(段落【0017】)
カ.「遊技機管理装置は、上述のようなスロットマシンの情報出力手段(1040)から出力された各種の情報を入力し、これに基づいて遊技場内に設置された複数のスロットマシンの稼動状況をチャレンジ状態中とそうでないときとを区別して管理する。また、スロットマシンから得た情報をさらに加工し演算し、遊技機の管理に都合のよいデータを作成する。たとえば、チャレンジ状態か否かを示す情報、特別状態か否かを示す情報、遊技媒体の投入情報、払出情報、ゲームのスタート情報等を取得すれば、チャレンジ状態中のゲームで大当たりが出て特別状態に移行した回数や、チャレンジ状態中の遊技媒体の投入数や、チャレンジ状態中の払出数などを管理することができる。」(段落【0019】)
キ.「遊技状態設定手段1020は、遊技状態を、通常状態と、大ボーナス状態と、小ボーナス状態と、チャレンジタイム(チャレンジ状態)のいずれかに設定するものである。大ボーナス状態は、一般に、ビッグボーナスと呼ばれる遊技者にとって有利な遊技状態である。」(段落【0056】)
ク.「図33は、遊技情報(稼働情報)の1つであるスタート情報の伝達手順を示している。遊技機300の情報出力端子1402から出力されたスタート情報は(ステップS3301)、対応する台コントローラ200にI/Fを介して入力され、台コントローラ200の遊技機情報記憶部220に記憶される(ステップS3302)。その後、台コントローラ200からI/Fを介してホール管理端末機500に送信され(ステップS3303)、ホール管理端末機500は台コントローラ200からのスタート情報を受信して(ステップS3304)、遊技機情報データベース523に記憶する(ステップS3305)。」(段落【0104】)
ケ.「総スタート回数は、遊技状態を問わず、スロットゲームのスタート回数を示している。チャレンジタイム中スタート回数は、チャレンジタイム中にスタートした回数を示すものである。これは、チャレンジタイム信号とスタート信号とから求めることができる。」(段落【0111】)
コ.「大ボーナス回数は、大ボーナスの発生回数を示す信号であり、チャレンジタイム回数は、チャレンジタイムの発生回数を示すものである。」(段落【0112】)
サ.「図45は、情報表示端末機800の遊技情報表示画面の一例を示している。画面上の機種名は、遊技機の機種名称を示し、台番号は、表示している台の台番号を示している。大ボーナス回数は、大ボーナス回数の合計値を、小ボーナス回数は、小ボーナス回数の合計値を、チャレンジタイム回数は、チャレンジタイム回数の合計値をそれぞれ示している。」(段落【0126】)
シ.「大ボーナス確率は、大ボーナスの出現確率を示しており、総スタート回数÷大ボーナス回数で求めたものである。小ボーナス確率は、小ボーナスの出現確率を表しており、総スタート回数÷小ボーナス回数で求めたものである。」(段落【0127】)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1に記載された遊技機管理装置が管理対象とするスロットマシンは、遊技状態として「チャレンジ状態と、通常状態と、通常状態よりも遊技者に有利な特別状態」(記載エ)を有するものであり、「特別状態」とは記載キの「大ボーナス状態」及び「小ボーナス状態」のことである。
記載シによれば、遊技機管理装置は「大ボーナス回数」及び「小ボーナス回数」を把握しており、スロットマシンにおいて大ボーナス又は小ボーナスが発生した際に、その旨の情報を遊技機管理装置に出力すると解すべきである(摘記していないが、引用例1の段落【0093】及び【0094】に直接記載されている。)。
すなわち、スロットマシンからは、遊技状態情報、スタート情報及び特別状態発生情報が遊技機管理装置に出力され、遊技機管理装置はこれらの情報に基づいて、特別状態発生確率(「大ボーナス確率」及び「小ボーナス確率」)を算出するものと認める。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「遊技状態としてチャレンジ状態と、通常状態と、通常状態よりも遊技者に有利な特別状態を有するスロットマシンが複数台接続され、これらの稼動状態を統括管理する遊技機管理装置において、
前記スロットマシンの有する情報出力手段から出力された、遊技状態情報、スタート情報及び特別状態発生情報に基づいて、総スタート回数÷特別状態発生回数である特別状態発生確率算出を含むスロットマシン稼働状況の管理を行う遊技機管理装置。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「特別状態発生」は本願発明の「特別入賞の成立」に相当する。引用発明1が管理対象とするスロットマシンは「遊技状態としてチャレンジ状態」を有しているから、遊技者が停止操作するスロットマシンであり、「特別入賞」を含むすべての入賞は「遊技者による停止操作に基づ」く。また、「特別入賞」は、停止操作に先立つ抽選により当選することが入賞成立の前提である(特に摘記はしなかったが、段落【0069】,【0070】にその旨の記載がある。)。引用発明1の「遊技機管理装置」は本願発明の「管理装置」に相当するから、「遊技者による停止操作に基づいて特別入賞が成立し得るようにゲームが制御される当選状態に特別入賞の当選によって遷移するスロットマシンの動作状態を管理する管理装置」は、本願発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1は、「スタート情報」を受け、「総スタート回数÷特別状態発生回数である特別状態発生確率算出」を行うのだから、「データ計数手段」及び「データ算出手段」と称し得る手段は引用発明1にも備わっている。「データ計数手段」については、「総スタート回数÷特別状態発生回数」を算出しており、「スタート回数」と「ゲーム回数」には表現上の相違しかないから、「ゲーム回数データ」と「スロットマシンで成立した特別入賞の回数を示す特別入賞回数データ」をそれぞれ計数することも本願発明と引用発明1の一致点である。「データ算出手段」について、「特別入賞の成立確率を算出する機能」を含むことも本願発明と引用発明1の一致点である。
したがって、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりである。
〈一致点〉
「遊技者による停止操作に基づいて特別入賞が成立し得るようにゲームが制御される当選状態に特別入賞の当選によって遷移するスロットマシンの動作状態を管理する管理装置において、
データ計数手段と、データ算出手段とを備え、
前記データ計数手段は、ゲーム回数データと、該スロットマシンで成立した特別入賞の回数を示す特別入賞回数データとをそれぞれ計数し、
前記データ算出手段は、特別入賞の成立確率を算出する機能とを含んでいる管理装置。」
〈相違点1〉本願発明が管理対象とするスロットマシンが「前記特別入賞の成立によって前記当選状態を解除しかつ前記特別入賞に当選してから成立するまで前記特別入賞の抽選を中断する無抽選期間に入る」及び「特別入賞が成立すると、所定回数のゲームが実行されることで賞としての遊技価値を付与可能な特定遊技状態が発生するように構成され」との限定を有するのに対し、引用発明1が管理対象とするスロットマシンにかかる限定があるかどうか明らかでない点。
〈相違点2〉本願発明の「データ計数手段」が計数する「ゲーム回数データ」が、「前記スロットマシンで実行されたすべてのゲーム回数から特定遊技状態中に実行されたゲーム回数を減算したゲーム回数」であるのに対し、引用発明1のそれは「総スタート回数」、すなわち、「総ゲーム回数」である点。この相違点に伴い、「特別入賞の成立確率」の具体的内容も相違する。
〈相違点3〉データ計数及びデータ算出につき、本願発明が「所定期間において」及び「所定期間における」と限定しているのに対し、引用発明1にはかかる限定がない点。
〈相違点4〉本願発明が「無抽選遊技データ計数手段」を備え、データ算出手段が「前記データ計数手段が計数したゲーム回数データから前記無抽選遊技データ計数手段が計数した無抽選ゲーム回数データを除いた実質ゲーム回数データを算出する実質遊技データ算出手段と、該実質遊技データ算出手段が算出した実質ゲーム回数データと前記データ計数手段が計数した特別入賞回数データとに基づいて、前記所定期間を単位として、遊技者の技量にかかわらない実質的な遊技性能データとしての前記特別入賞の実質成立確率を算出する実質特別入賞関連データ算出手段」を含む構成としたのに対し、引用発明1にはこのような構成は存在しない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
本件出願当時のスロットマシンの多くは、特別入賞に当選したゲームにおいて特別入賞が成立しない場合、その当選を次回以降のゲームに持ち越し(特別入賞が成立するまで)、持ち越し期間中は特別入賞の抽選を行わない仕組みになっており、また特別入賞が成立した場合には、「所定回数のゲームが実行されることで賞としての遊技価値を付与可能な特定遊技状態が発生」するように構成されている。
引用発明1が管理対象とするスロットマシンが、上記のようなスロットマシンであっては不都合な理由はどこにもなく、そのようなスロットマシンを管理対象とすること、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項程度である。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-113151号公報(以下「引用例2」という。)には、「遊技情報として、BBゲームや、RBゲーム等の特別遊技の終了から次の特別遊技へ移行するまでの通常遊技の遊技回数を設定しても良いものである。」(段落【0115】)との記載があり、「BBゲームや、RBゲーム等の特別遊技の終了から次の特別遊技へ移行するまでの通常遊技の遊技回数」には、特別遊技中の遊技回数(本願発明の「特定遊技状態中に実行されたゲーム回数」に相当)は含まれていない。
すなわち、引用例2記載の「BBゲームや、RBゲーム等の特別遊技の終了から次の特別遊技へ移行するまでの通常遊技の遊技回数」は、「所定期間における」かどうかはともかくとして、本願発明及び引用発明1の「特別入賞の成立確率」と同様の意味を有するデータであり、引用発明1のそれとは、「ゲーム回数データ」に「特定遊技状態中に実行されたゲーム回数」を含むかどうかの相違がある。
そして、本件出願当時のスロットマシンのほとんどが、「特定遊技状態中」に特別入賞を重ねて成立させ同じ特定遊技状態を重ねて発生しないことは周知であり、引用発明1の管理対象であるスロットマシン及び引用例2記載のスロットマシンもそのようなものと解すべきであり、「特別入賞の成立確率」算出に際し、「特定遊技状態中に実行されたゲーム回数」を引用例2記載の技術に従い、「ゲーム回数データ」から除外することは当業者にとって想到容易である。引用発明1は、遊技状態情報をスロットマシンから受けているから、特定遊技状態中のゲーム回数(スタート回数)を把握することができ、除外に当たり、総スタート回数から特定遊技状態中に実行されたゲーム回数を減算することは設計事項である。そのことは、特定遊技状態中でないけれども、1つの遊技状態である「チャレンジ状態」のスタート回数(ゲーム回数)を区別して求めることが引用例1に記載(記載ケ参照。)されていることからも明らかである。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
引用例2には、「遊技情報表示装置(170)は、所定期間内の前記特別遊技への移行回数を表示することを特徴とする。」(段落【0052】)及び「「所定期間内」とは、例えば、過去1時間や、本日や、本日及び昨日や、過去3日間や、過去1週間等の期間を含むものである。(段落【0053】)との各記載がある。
引用例1の記載ウは従来技術について記載したものであるが、「大ボーナスゲームに関する情報や小ボーナスゲームに関する情報を収集管理し、機種の入れ替えや台の設定を行う際の情報として役立て」ることは、引用発明1にも当てはまる。そして、「機種の入れ替えや台の設定を行う際の情報」とするためには、引用例2の上記記載は「特別入賞の成立確率」について述べたものではないが、前掲段落【0115】)の記載と併せ読めば、遊技情報には「特別入賞の成立確率」も含まれる。
そうであれば、引用発明1においてデータ計数及びデータ算出を、所定期間(例えば1日)を単位として行うこと、すなわち相違点3に係る本願発明の構成を採用することは設計事項に属する。

(4)相違点4について
(1)で述べたように、本件出願当時のスロットマシンの多くは、特別入賞に当選したゲームにおいて特別入賞が成立しない場合、特別入賞が成立するまでは特別入賞の抽選を行わない仕組みになっている。他方、特別入賞に当選する確率は予め設定されており、実際の当選率がどうなるかは、統計的(2項分布に従う。)に定まる。
そして、「遊技者の技量にかかわらない実質的な遊技性能データとしての前記特別入賞の実質成立確率」とは、特別入賞の抽選数と特別入賞数の比であり、抽選数が極めて大きければ設定された当選確率に近づく。
ところで、管理装置は遊技機の稼働状況を把握するものであるが、「特別入賞の実質成立確率」がどのような値であるか、設定確率に一致するのか乖離するのかといったデータも、1つの稼働状況を示す情報であり、実際に特定の遊技機で遊技店が得をしたのかそれとも損をしたのかの原因が、遊技者の技量によるものか、偶然によるものかを把握する上で重要な情報であるから、これを管理装置において算出すること、及びその算出を「前記所定期間を単位として」行うとの発想自体には何の困難性もない。そもそも、稼働状況を示す情報としてどのような情報を採用するかは、専ら遊技店の経営方針等によって定まるものであって、それ自体は技術と無関係である。
技術思想として評価すべきは、「特別入賞の実質成立確率」を算出するに当たり、どのような具体的手段を講じるかの点のみである。そして上記のとおり、「特別入賞の実質成立確率」は特別入賞の抽選数と特別入賞数の比であるから、特別入賞の抽選数をまず求めるべきであることは当然であり、それは総ゲーム回数から、特別入賞の抽選を行わないゲーム回数を減じた数である。特別入賞の抽選を行わないゲームは、前示のとおり「特定遊技状態中に実行されたゲーム」及び「特別入賞に当選してから成立するまで」のゲームである。「特定遊技状態中に実行されたゲーム回数」を減算することの容易性は(2)で述べたとおりであるから、その減算結果からさらに「特別入賞に当選してから成立するまで」のゲーム回数を減算することは当業者にとって想到容易であり、そのために「特別入賞に当選してから成立するまで」のゲーム回数計数手段(本願発明の「無抽選遊技データ計数手段」)を備えることや、「データ算出手段」が「実質特別入賞関連データ算出手段」を含むことは付随事項にすぎない。もちろん、無抽選遊技データを計数するためには、遊技状態が無抽選期間である旨の情報をスロットマシンから管理装置に出力しなければならず、そのことは引用例1に記載されてはいないけれども、無抽選期間をそれまでの遊技状態と区別することも、無抽選遊技データを計数する上での設計事項である。
なお、無抽選期間中(特別入賞に当選してから成立するまで)のゲーム回数が「無抽選期間中に前記スロットマシンで実行された遊技者の技量により様々に変化するゲーム回数」であることや、「実質特別入賞関連データ算出手段」で算出する「特別入賞の実質成立確率」が「遊技者の技量にかかわらない実質的な遊技性能データ」であることは当然である。
もっとも、「特別入賞の実質成立確率」を算出するのであれば、「前記データ計数手段が計数したゲーム回数データと前記特別入賞回数データとに基づいて、前記所定期間における特別入賞の成立確率を算出する機能」の必要性がなくなるとの見解がありうるので、さらに検討を進める。
「特別入賞の実質成立確率」と「特別入賞の成立確率」は異なる入賞率であり、後者は遊技者の技量を含めて、現実にどの程度特別入賞が成立したかを示す値であり、営業上重要な値であり、前者が後者を代用できるというものではない。また、選挙の際に、絶対得票率(有権者総数に対する得票率)と相対得票率(投票総数に対する得票率)の両方を算出し公表することがあることを考慮すると、相互に関連性がある2つの情報をともに算出することをもって、進歩性を容認することは到底できない。
以上のとおりであるから、相違点4に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(5)本願発明の進歩性の判断
相違点1?4に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であるか、又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本願発明が特許を受けることができないから、本件補正の当否を判断するまでもなく、また本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-10 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願2002-283320(P2002-283320)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 川島 陵司
有家 秀郎
発明の名称 管理装置  
代理人 柏原 健次  
復代理人 鈴木 秀昭  
代理人 柏原 健次  
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