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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1193384
審判番号 不服2007-29023  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-25 
確定日 2009-02-27 
事件の表示 特願2002-303585「地下鉄トンネル内や埋設共同溝内に輸送管(気送管)を配管し、空気圧力を利用して気送子(カプセル)に搭載した軽量荷物及び郵便物等を搬送・宅配するシステム。」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004- 99311〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成14年9月11日の出願であって、平成19年5月2日付けで拒絶理由が通知され、同年7月17日に意見書が提出されたが、同年8月31日付けで拒絶査定がなされ、同年10月25日に同拒絶査定に対して審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のもの(以下、「本願発明」という。)である。
「地下鉄トンネル内や埋設共同溝内に大口径輸送管(気送管)を設置し、発送地から到着地まで気送子(カプセル)に軽量荷物及び郵便物を搭載し、空気圧力を利用して搬送するシステム。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された特開昭50-85086号公報(以下、「引用文献1」という。)
(A)引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている。
(a)「ナイロン、その他の合成樹脂もしくは繊維などのの材料をもつて一定の断面形状を保持できる硬さでしかも湾曲自在なパイプを備え、該パイプをもつて高架道路、鉄道、道路下の共同溝等の物流施設に連続したパイプラインを形成し、該パイプライン内にカプセルを摺動自在に収容し、該カプセル内に食料品、廃棄物その他の物資を収容自在にし、上記パイプライン内に上記カプセルを移動させ物資を搬送させるようにしてなる物資搬送方式。」(特許請求の範囲)
(b)「次に本発明の実施の一例を図面について説明する。
図中1,2は都市郊外に設けた物流基地、例えば清掃工場であり、この物流基地1,2はそれぞれ都市生活に必要な物資、主として生鮮食料品等を需要地から貸車(「貨車」の誤記と認める。)、自動車、船等の運搬手段をもつて集め、それらの物資を梱包する。一方都市圏内の人口の密集した消費地には、末端の商店等に物資を分配する配送場3,4,5,6を設けておき、郊外の物流基地1,2から送られてくる物資の梱包を解いて、もしくは解かないで末端の消費地に分配する。この物流基地1,2と配送場3,4,5,6とをパイプライン7a,7b,7cをもつて連絡し、そのパイプライン7a,7b,7c内に設置した後述するカプセル内に収納した物資を搬送する。
上記パイプラインは高架道路、鉄道、道路下の共同溝等既製の各種物流施設もしくは新設されるこれらの物流施設に設置するもので、パイプライン7aは第3図に示すように都市圏内に張りめぐらされた地下鉄のトンネル8の壁面9に設置されたものを示し、パイプライン7bは第2図に示すように道路10等の下に設置された共同溝11の底部に設置したものを示している。」(公報第2ページ左上欄第12行ないし同ページ右上欄第15行)
(c)「このパイプライン7a,7b,7cに移動させるカプセル14は第2図に示すように、その外形の断面がパイプ17の内面の断面と略同形状の筒状に形成され、そのカプセル14の外周面には適宜ローラー22,22……を取付けし、パイプ17内を摺動自在に構成している。
このカプセル14をパイプライン7a,7b,7c内に収納し、各パイプライン内のカプセル14を移動させるようにしている。」(公報第2ページ左下欄末行ないし同ページ右下欄第8行)
(d)「4.図面の簡単な説明
図面は本発明の実施の一例を示すもので、第1図は本発明方法に使用する設備の概略を示す説明図、第2図,第3図は物資搬送路を示す一部切欠斜面図、第4図はパイプの斜面図である。
1,2……物流基地、3,4,5,6……配送場、7a,7b,7c……パイプライン、14……カプセル、16……コントロールセンター。」(公報第3ページ左上欄第8ないし15行)

(B)上記(A)及び図面によると、引用文献1には、
「地下鉄のトンネル8の壁面9や共同溝11内にパイプライン7a,7b,7cを設置し、物流基地1,2から配送場3,4,5,6までローラー22を取付けたカプセル14に食料品、廃棄物その他の物資を収納し、搬送するシステム。」
という発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明における「共同溝11」、「物流基地1,2」、「配送場3,4,5,6」及び「収納」は、本願発明における「埋設共同溝」、「発送地」、「到着地」及び「搭載」に、それぞれ相当する。
そして、引用文献1記載の発明における「パイプライン7a,7b,7c」は、本願発明における「大口径輸送管(気送管)」と、「搬送管」という限りにおいて相当し、また、引用文献1記載の発明における「ローラー22を取付けたカプセル14」は、本願発明における「気送子(カプセル)」と、「搬送体」という限りにおいて相当し、さらに、引用文献1記載の発明における「食料品、廃棄物その他の物資」は、本願発明における「軽量荷物及び郵便物」と、「被搬送物」という限りにおいて相当する。
したがって、本願発明と引用文献1記載の発明は、
「埋設共同溝内に搬送管を設置し、発送地から到着地まで搬送体に被搬送物を搭載し、搬送するシステム。」
という発明で一致し、次の(1)ないし(3)の点で相違している。
(1)「搬送管」の設置位置が「埋設共同溝」に加えて、本願発明においては、「地下鉄トンネル内」となっているのに対して、引用文献1記載の発明においては、「地下鉄のトンネル8の壁面9」である点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願発明においては、「大口径輸送管(気送管)」を用い、「気送子(カプセル)」を搬送するのに「空気圧力を利用」するのに対して、引用文献1記載の発明においては、「パイプライン7a,7b,7c」を用い、「カプセル14に物資」を搬送するのに何を利用するのか不明である点(以下、「相違点2」という。)。
(3)本願発明においては、「気送子(カプセル)に軽量荷物及び郵便物を搭載」するのに対して、引用文献1記載の発明においては、「カプセル14に食料品、廃棄物その他の物資を収納」する点(以下、「相違点2」という。)。

4.当審の判断
以下、相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
本願発明における「地下鉄トンネル内」がどこまでを指すのか不明確であるものの、引用文献1記載の発明における「地下鉄のトンネル8の壁面9」を含むとも考えられるし、また、仮に本願発明における「地下鉄トンネル内」には引用文献1記載の発明における「地下鉄のトンネル8の壁面9」が含まれないとしても、「搬送管」の設置位置を本願発明のように「地下鉄トンネル内」とするか、引用文献1記載の発明のように「地下鉄のトンネル8の壁面9」とするかは、設計上の微差にすぎない。
(2)相違点2について
引用文献1記載の発明のように、「パイプライン7a,7b,7c」を用い、「カプセル14に食料品、廃棄物その他の物資」を搬送するシステムにおいて、「空気圧力を利用」することは普通に行われていることである。しかも、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭49-110083号公報(以下、「引用文献2」という。)にも、「輸送管1」を用い、「気送郵便筒」を搬送するシステムにおいて、「空気圧力を利用」することが開示されている(以下、「引用文献2の開示事項1」という。)。
なお、「輸送管(気送管)を通して気送子(カプセル)での搬送システム」が周知であることは、以下の点からも裏付けられる。
(ア)原査定において例示した特開2002-12322号公報の開示内容
(イ)本願の明細書の段落【0002】の「輸送管(気送管)を通して気送子(カプセル)での搬送システムは、病院内、工場内、銀行内、ホテル内等で多々活用されている」
(ウ)平成19年10月25日付けの審判請求書の「3.立証の趣旨」中の「出願人の特許請求の範囲は、気送子を用いて気送管内を空気で物を搬送するという先願技術と係争する新技術発明を申請するものではない。」
(3)相違点3について
「気送子(カプセル)」内に何を搭載するかは、当業者が必要に応じて適宜選択可能な設計事項にすぎない。
しかも、上記引用文献2には、「気送郵便筒」と記載されているから、この「気送郵便筒」内には「郵便」が搭載されていることが明らかである。したがって、「気送子(カプセル)」内に「郵便」を搭載することは、引用文献2に開示されている(以下、「引用文献2の開示事項2」という。)。
なお、平成19年10月25日付けの審判請求書の特に「4.本願特許が登録されるべき理由」において、本願発明は「宅配システムのビジネスモデル」である旨の主張があるが、本願の特許請求の範囲にはそのような「宅配システムのビジネスモデル」が記載されていないので、審判請求人の上記主張は特許請求の範囲に基かないものであり、失当である。

そして、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用文献1記載の発明並びに引用文献2の開示事項1及び2から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明並びに引用文献2の開示事項1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-04 
結審通知日 2008-11-25 
審決日 2008-12-10 
出願番号 特願2002-303585(P2002-303585)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 慎一  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 森藤 淳志
金澤 俊郎
発明の名称 地下鉄トンネル内や埋設共同溝内に輸送管(気送管)を配管し、空気圧力を利用して気送子(カプセル)に搭載した軽量荷物及び郵便物等を搬送・宅配するシステム。  

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