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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D01G
管理番号 1193425
審判番号 不服2008-1074  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-15 
確定日 2009-02-02 
事件の表示 平成 8年特許願第529832号「中間貯え装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月10日国際公開、WO96/31641、平成10年 2月10日国内公表、特表平10-501592〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年4月9日(パリ条約による優先権主張1995年4月7日、スイス国)を国際出願日とする出願であって、平成19年10月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成18年12月26日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項21に記載された発明は以下のとおりのものである。
「複数の繊維機械において作業プロセス時に同時に生じる夾雑物(例えば繊維、殻片、ダスト等)を搬送空気流の作用で導出して捕集する方法において、
-夾雑物を、各繊維機械において搬送空気流から分離し、
-分離された夾雑物を、各繊維機械に設けられた中間貯え装置の内部に送って貯え、
-夾雑物を、繊維機械の各中間貯え装置から1つの共通の捕集場所に、時間的に相前後して段階的に導出することを特徴とする、複数の繊維機械において作業プロセス時に同時に生じる夾雑物を搬送空気流の作用で導出して捕集する方法。」(以下、「本願発明」という。)である。

3.原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項21に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであり、そして、引用刊行物として特公昭53-015185号公報(以下、「引用例」という)が引用された。

4.当審の判断
(4-1)引用例の記載事項
a.第1欄31?35行には、
「本発明は紡績工場における精紡機、梳綿機、コマ等の各紡機毎に設けたニユーマチツククリヤラー装置のフイルターボツクスに非紡出繊維、不良篠綿等を一時分離収集し、この集積綿を適時中央集綿装置により回収する集綿装置に関する。」と記載されている。
b.第2欄23行?第3欄21行には、
「図面に示す実施例に於て、各紡機1には、非紡出繊維、不良篠綿、切断糸条等の繊維屑が発生する各部に配設した吸込ノズル21と、接続ダクト22と、フイルターボツクス3とから成る公知のニユーマチツククリヤラー装置2を配備する。上記フイルターボツクス3は、接続ダクト22から流入する繊維屑を過する集綿室31と、集綿室31を負圧となし吸込ノズル21に吸引力を作用せしめる吸引ブロワー32を具えている。
第1図は上記フイルターボツクス3を中央集綿装置4に接続した構成を示し、複数のフイルターボツクス3a…………3d例えば4台を1群として、紡績工場内の全部のフイルターボツクスをいくつかの群に分け、各フイルターボツクス3の集綿室31には分岐ダクト5の一端を接続して分岐ダクト5の他端は各群毎に集合し、連結ダクト6を介して中央集綿装置4に接続している。
中央集綿装置4は、各フイルターボツクス3のブロワー32による吸引負圧と同等或いは稍大なる程度の負圧を主ダクト7に及ぼしており、主ダクト7と連結ダクト6との分岐部又は連結ダクト6中には主ダクト7との連通を開閉する切換バルブ8が介装されており、該バルブを開放してフイルターボツクスの集綿室が中央集綿装置4に連通するとき、ブロワー32及び中央集綿装置4の吸引力は集綿室31にて略均衡するようになっている。
切換バルブ8の開閉及び各フイルターボツクス3のブロワー32への通電は、機械的或いは電気的な公知の制御装置によつてなすもので、切換バルブ8が閉じているとき各ブロワー32には通電されるが、切換バルブ8が開放されたとき、その群のニユーマチツククリヤラー装置のブロワー32は順次所定時間(約11秒)宛通電を止め、惰性回転する様に制御するものである。」と記載されている。
c.第3欄28行?33行には、
「然して常時はブロワー32の定常運転によつて、各フイルターボツクス3の集綿室31は負圧に保たれ、吸込ノズル21は繊維屑の吸引除去をなして、一定時間毎に或いは集綿室内の綿の堆積を検出して集綿時期に達すると、制御装置9が作動し、集綿を開始するものである。」と記載されている。
d.第3欄41行?第4欄7行には、
「切換バルブ8の開放と同時に第1フイルターボツク3aのブロワー32に対する通電が停止されて惰性回転に入り、ブロワー32による負圧が弱まるとフイルターボツクス3aの集綿室31への負圧は分岐ダクト5即ち中央集綿装置の吸込力となり通常のニユーマチツククリヤラー作用は継続され乍ら接続ダクト22から流入する繊維屑及び集綿室中に堆積する綿は、分岐ダクト5に流入する空気流と共に流動して、ダクト5,6,7を介して中央集綿装置4に搬送され、回収処理されるのである。」と記載されている。
e.第4欄28行?末行には、
「本発明は上記の如く、複数のニユーマチツククリヤラー装置を1群として、各群毎に1個の切換バルブ8を設け、各フィルターボツクスのブロワーの通電を順次1台宛停止して集綿を行うから切換バルブ8の数を著しく減少して装置を安価ならしめると共に保守管理の手間が節減され連結ダクト6、主ダクト7は、1台のフイルターボツクス3を処理する能力で良いので小径でよく、又中央集綿装置4の吸気源も小容量でよく、更にブロワーの惰性回転中に集綿を行なうから、ブロワーの再起動に際しても起動トルクは小さく、電力損失は節減でき、しかも各ニユーマチツククリヤラー装置のフイルターボツクス内集綿室の集積綿をクリヤラー作用を停止することなく能率的に且つ効果的に回収除去できる等幾多の効果を有すものである。」と記載されている。

記載事項a?e及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「紡機において作業時に生じる非紡出繊維、不良篠綿、切断糸条等の繊維屑を搬送空気流の作用で回収する集綿方法において、繊維屑や各紡機において搬送空気流から分離し、分離された繊維屑を各紡機に設けられた集綿室の内部に送って貯え、繊維屑を紡機の集綿室から、1つの共通の中央集綿室に、導出することを特徴とする、複数の紡機において作業時に生じる繊維屑を搬送空気流の作用で回収する方法。」

(4-3)対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「繊維屑」は、紡績工場において生じる、繊維、殻片、ダスト等を含むものであるから、後者の「繊維屑」は、前者の「夾雑物」に相当し、以下、「紡機」は、「繊維機械」に、「搬送空気流」は、「搬送空気流」に、「回収」は、「導出して捕集」に、「分離」は、「分離」に、「集綿室」は、「中間貯え装置」に、「1つの共通の中央集綿室」は、「1つの共通の捕集場所」に夫々相当する。
そこで、両者は、「複数の繊維機械において作業プロセス時に同時に生じる夾雑物(例えば繊維、殻片、ダスト等)を搬送空気流の作用で導出して捕集する方法において、
-夾雑物を、各繊維機械において搬送空気流から分離し、
-分離された夾雑物を、各繊維機械に設けられた中間貯え装置の内部に送って貯え、
-夾雑物を、繊維機械の各中間貯え装置から1つの共通の捕集場所に導出することを特徴とする、複数の繊維機械において作業プロセス時に同時に生じる夾雑物を搬送空気流の作用で導出して捕集する方法。」で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本願発明は、繊維機械の各中間貯え装置から1つの共通の捕集場所に、繊維屑を導出する際「時間的に相前後して段階的に導出する」ものであるのに対し、引用発明は、その旨の明示がない点。

〈判断〉
そこで上記相違点について検討する。
引用発明には、「複数のニユーマチツククリヤラー装置を1群として、各群毎に1個の切換バルブ8を設け、各フイルターボツクスのブロワーの通電を順次1台宛停止して集綿を行う」(上記(4-1)e参照)こと、および「一定時間毎に或いは集綿室内の綿の堆積を検出して集綿時期に達すると、制御装置9が作動し、集綿を開始する」(上記(4-1)c参照)ことが記載されている。
したがって、引用発明には、切り換えバルブ8により順次一台宛停止して集綿すること、および、一定時間毎に或いは集綿室内の綿の堆積を検出して制御装置9が作動し、集綿を開始することが記載されているものといえる。
そうすると、本願発明のように繊維屑を導出する際、時間的に相前後して段階的に導出することは、引用発明に記載された集綿の技術手段に基づいて当業者が必要に応じ適宜なしえた事項にすぎないものといえる。
そして、本願発明に格別の作用効果があるものとも認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願出願は、請求項1?20に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-27 
結審通知日 2008-09-05 
審決日 2008-09-17 
出願番号 特願平8-529832
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 佐野 健治
中西 一友
発明の名称 中間貯え装置  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 山崎 利臣  
代理人 星 公弘  
代理人 久野 琢也  
代理人 杉本 博司  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  

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