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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1193504
審判番号 不服2006-6647  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-07 
確定日 2009-03-02 
事件の表示 特願2003-147135「化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-346046〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年5月26日の出願であって、平成17年10月26日付の拒絶理由通知に対して平成18年1月20日付で意見書及び手続補正書が提出され、これに対し同年3月3日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月7日付で拒絶査定に対する審判請求書、及び手続補正書が提出されているものである。

2.平成18年4月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年4月7日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の概略
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、平成18年1月20日付の手続補正書に記載された、
「【請求項1】下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を3?53.5重量%で含有する化粧料。
{(CH_(3))_(3)SiO}_(3)SiR^(1) (1)
(ここでR^(1)は炭素数2?10の1価アルキル基である)」を、
「【請求項1】下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を3.0?46.0重量%で含有する、スキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品及び紫外線防御製品からなる群より選ばれる化粧料。
{(CH_(3))_(3)SiO}_(3)SiR^(1) (1)
(ここでR^(1)は炭素数2?5の1価アルキル基である)」
とする補正を含むものである。

上記補正は、補正前の請求項1の「化粧料」を、「スキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品及び紫外線防御製品からなる群より選ばれる化粧料」と特定し、「R^(1)」を「炭素数2?10の1価アルキル基」から「炭素数2?5の1価アルキル基」と、また一般式(1)で示されるシリコーン化合物の含有量の上限の値を、「53.5重量%」から「46.0重量%」とそれぞれ減縮するものである。

(2)補正の適否
しかし、本願の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)にはシリコーン化合物の含有量について、「1.0?99.0重量%であり、好ましくは5.0?50.0重量%である。」(段落【0020】?【0021】参照)との記載があるだけで、その上限値を「46.0重量%」とする記載は無く、そして、実施例を検討しても「46.0重量%」を使用する実例は無い。

この点について、請求人は、平成18年4月7日付の審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の「(II)」において「上記補正は、…実施例2においてM3T-C4が46%含有されている事…に基づき、補正前の特許請求の範囲を減縮するものであ」る旨主張している。
しかし、当初明細書の実施例1?4には、本願発明の一般式(1)で示されるシリコーン化合物について、(成分A)の(2)として「揮発性シリコーン 10%」(注:「%」は「重量%」を意味する。段落【0082】参照)、及び(成分C)の(9)として「揮発性シリコーン 18%」の揮発性シリコーンのみを含有するものであり、その余の成分((1)、(3)?(8)、(10)?(17))は一般式(1)で示されるシリコーン化合物には該当しないものである。そして、実施例2は成分A及び成分CともにM3T-C4すなわちトリストリメチルシロキシイソブチルシラン(【0085】)を用いている。
ここで、成分Aの10重量%と成分Cの18重量%を足し合わせると28重量%となり、請求人が主張する46重量%とはならない。なお、当初明細書の段落【0093】の表1には実施例2に係る評価の欄に、「46」という値が記載されているが、この値は、皮膚への密着感の官能特性評価の値として記載されているものであって、一般式(1)で示されるシリコーン化合物の含有量を示すものではない。
してみると、前記請求人の主張は失当であり採用できない。

よって、本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年4月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?31に係る発明は、平成18年1月20日付手続補正で補正された請求項1?31に記載された事項により特定されたとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を3?53.5重量%で含有する化粧料。
{(CH_(3))_(3)SiO}_(3)SiR^(1) (1)
(ここでR^(1)は炭素数2?10の1価アルキル基である)」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-528565号公報(以下、「引用例A」という。)には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付記したものである。
(A-1)「【請求項1】(a)トリメチルシロキシシリケート樹脂と
(b)揮発性または不揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体とを含む組成物。
【請求項2】?【請求項4】 ・・・省略・・・
【請求項5】前記揮発性または不揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体が下記の一般式:
(R_(3)SiO)_(2)MeSiR^(1)
(R_(3)SiO)_(3)SiR^(1)
[上式で、各Rは独立して、1?約3個の炭素原子を有する一価の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R^(1)は6?約18個の炭素原子を有する一価の直鎖または分枝鎖アルキル基である]で表される化合物を含んでなる、請求項1に記載の混合物。
【請求項6】前記揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体が、…n-ヘキシルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シランおよびそれらの任意の混合物から成る群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】?【請求項8】 ・・・省略・・・
【請求項9】 前記トリメチルシロキシシリケート樹脂が前記組成物中に、約5%?約75%(w/w)の範囲の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】 前記トリメチルシロキシシリケート樹脂が前記組成物中に、約33%?約67%(w/w)の範囲の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】?【請求項14】 ・・・省略・・・
【請求項15】(a)トリメチルシロキシシリケート樹脂と、
(b)揮発性または不揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体
とを含む非毒性の化粧品配合物。」(【特許請求の範囲の請求項】1、5、6、9、10、15、2頁2行?4頁3行)
(A-2)「【0008】…本発明は、…アルキルシロキサンの流体の存在下でエチルポリシリケートの加水分解によって調製される分散性の範囲の狭いトリメチルシリル化シリカの混合物に関する。このような混合物は、アルキルシロキサン中のトリメチルシロキシシリケートの広範囲にわたる比率で配合される。」(段落【0008】、6頁15?20行)
(A-3)「【0021】
このような混合物に長鎖脂肪族炭化水素やエステルなどの有機物質を包含する当業者に公知の他の化粧品成分を添加して、皮膚や毛髪のコンディショニング製品、モイスチャライザ、ローションおよび洗浄剤等の化粧品配合物に配合することができる。」(段落【0021】、9頁13?17行)
(A-4)実施例5の(d)として、50%のトリメチルシロキシシリケートと50%のn-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(31M60)を含有する組成物の、「物質および生成物の感覚性評価」と題するASTM法E1490-92のプロトコールに従った、24人のボランティアから成る感覚性被験グループの感覚プロフィールが、化粧品産業で用いられる市販のシリコーン製品の感覚プロフィールに匹敵することが示されたとして、粘着性、湿気、拡展性、光沢、滑らかさ、滑りやすさ、粘性、残留物、油っこさ、脂っこさ、及び蝋質の各感覚プロフィールの平均値が図1に示されている。(段落【0028】?【0031】、【図1】、11頁11行?12頁3行、14頁)

(2)対比、判断
引用例Aには、「50%のトリメチルシロキシシリケートと50%のn-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(31M60)を含有する組成物」(摘示事項(A-4))が記載されている。ここに、「%」は、請求項9,10の「%(w/w)」との記載からみて、重量%と解するのが相当であり、「n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン」は、「(b)揮発性または不揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体」に相当するものである(摘示事項(A-1)の請求項5,6参照)。
そして、引用例Aには、「(a)トリメチルシロキシシリケート樹脂と、(b)揮発性または不揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体とを含む非毒性の化粧品配合物。」(摘示事項(A-1)の請求項15参照)が記載されている。加えて、「(a)トリメチルシロキシシリケート樹脂と、(b)揮発性または不揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体とを含む」組成物(即ち混合物)((摘示事項(A-1)の請求項1参照)について、「このような混合物に長鎖脂肪族炭化水素やエステルなどの有機物質を包含する当業者に公知の他の化粧品成分を添加して、皮膚や毛髪のコンディショニング製品、モイスチャライザ、ローションおよび洗浄剤等の化粧品配合物に配合することができる」(摘示事項(A-3))と記載され、公知の他の化粧品成分とともに化粧品配合物に配合して用いられるものであるから、化粧品配合物中には、公知の他の化粧品成分の配合量に応じて、50重量%未満のn-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(31M60)が配合されることは明らかである。
したがって、引用例Aには、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「トリメチルシロキシシリケートと50重量%未満のn-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(31M60)を含有する化粧品配合物。」

そこで本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン」は、{(CH_(3))_(3)SiO}_(3)SiR^(1)(ここでR^(1)は炭素数8の1価アルキル基であるn-オクチル)」であり、本願発明の一般式(1)のシリコーン化合物に相当する。
(b)引用発明の「化粧品配合物」は、本願発明の「化粧料」に相当する。

してみると、両発明は、
「下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を含有する化粧料。
{(CH_(3))_(3)SiO}_(3)SiR^(1) (1)
(ここでR^(1)は炭素数8の1価アルキル基であるn-オクチル)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
一般式(1)で示されるシリコーン化合物の含有量に関し、本願発明では、「3?53.5重量%で含有する」のに対し、引用発明では「50重量%未満含有する」ことが記載されているにとどまる点。

そこで、この相違点について検討する。
引用例Aには、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(本願発明の一般式(1)で示されるシリコーン化合物)を具体例とする「揮発性または不揮発性のシリコーン炭化水素ハイブリッド流体」の化粧品配合物中の配合量について、「本発明は、アルキルシロキサンの流体の存在下でエチルポリシリケートの加水分解によって調製される分散性の範囲の狭いトリメチルシリル化シリカの混合物に関する。このような混合物は、アルキルシロキサン中のトリメチルシロキシシリケートの広範囲にわたる比率で配合される」(摘示事項(A-2))と記載されていて、アルキルシロキサンとトリメチルシロキシシリケートとは広範囲にわたる比率で配合できること、即ち、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シランの配合量が広範囲にわたる比率で混合物中に配合されることが記載されている。
そして、シリコーン化合物の含有量に関し、引用例発明の「50重量%未満含有する」ことは、本願発明の「?53.5重量%で含有する」との上限の規定を満たしている。
一方、化粧料に配合する成分の含有量の範囲を所望により設定することは通常の事項であり、引用例Aには、「50%のトリメチルシロキシシリケートと50%のn-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(31M60)を含有する組成物」(摘示事項(A-4))が、化粧品産業で用いられる市販のシリコーン製品の感覚プロフィールに匹敵する(摘示事項(A-4))こと、すなわち化粧品成分として好ましい特性を有することが記載されているから、かかる特性を発揮させることを意図すれば、含有量の範囲の下限の値として3重量%よりも多い量が容易に設定されるものと認められる。
そうすると、引用発明において、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(本願発明の一般式(1)で示されるシリコーン化合物に相当)を化粧料中に「3?53.5重量%で含有する」ように設定することは、当業者であれば容易に想到し得たものというべきであり、本願発明の効果も当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は平成20年8月13日付の審尋に対する平成20年10月10日付の回答書において、補正案を提示し、特許請求の範囲の補正を希望しているが、次の理由でその要請は受け入れられない。
(i)特許法では審判請求に際して補正できる期間を定めているところ、その期間内に既に補正書を手続補正書を提出しているのであるから、それ以上の補正の機会を与えることは法律の想定するところではない。また、(ii)そもそも前記「2.」で検討したように一般式(1)で示されるシリコーン化合物の含有量の上限の値として「46.0重量%」と特定することの根拠となる記載が当初明細書には無いところ、前記特許請求の範囲の補正案においても、依然として一般式(1)で示されるシリコーン化合物の含有量の上限の値が「46.0重量%」と記載されているものであって適法な補正とは言えず、採用できるものではない。

したがって、本願発明は引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-07 
結審通知日 2009-01-08 
審決日 2009-01-20 
出願番号 特願2003-147135(P2003-147135)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保倉 行雄  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
発明の名称 化粧料  
代理人 松井 光夫  

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