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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1193508
審判番号 不服2006-18032  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-17 
確定日 2009-03-02 
事件の表示 特願2001-257433「移動棚」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 5日出願公開、特開2003- 63620〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成13年8月28日の出願であって、平成18年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月14日付けで拒絶査定がなされ、同年8月17日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月19日付けで手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がされ、平成20年9月16日付けで審尋がなされ、同年11月25日付けで審尋に対する回答書が提出されたものである。



第2.平成18年9月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年9月19日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
1.本件補正の内容
平成18年9月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 正逆回転可能な駆動源と、この駆動源によって正逆回転駆動される駆動輪と、この駆動輪と移動方向に並ぶ従動輪とを有し、駆動輪が正逆回転駆動されることにより往復移動する移動棚であって、
駆動輪と従動輪は移動棚の移動方向に対し直交する方向に複数配置され、
全ての上記駆動輪は一つの駆動軸で一体に連結され、
全ての上記従動輪は一つの従動軸で一体に連結され、
上記駆動輪と従動輪はこれら駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられかつ駆動軸方向に対して直角方向をなすように調整された帯状の無限軌道部材によって連結され、
上記無限軌道部材は、下側の面が移動棚設置床面に面接触して移動棚の荷重を支え、床面との摩擦力により駆動力を床面に伝え移動棚を床面上で無限軌道部材の方向に移動させるとともに、床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルトであり、
上記駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成され、
上記駆動輪と従動輪および無限軌道部材の組が複数組配置されている移動棚。
【請求項2】 移動棚は手動による回転操作ハンドルの回転力を駆動輪に伝達することによって駆動される回転操作ハンドル式移動棚であって、歯付きベルトが巻き掛けられた駆動輪は駆動軸によって一体に連結されている請求項1記載の移動棚。」


2.本件補正の適否の検討
2-1.特許請求の範囲の補正の目的要件の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項として、さらに「全ての上記駆動輪は一つの駆動軸で一体に連結され」る点、「全ての上記従動輪は一つの従動軸で一体に連結され」る点、及び「上記駆動輪と従動輪および無限軌道部材の組が複数組配置され」る点を付加する補正を含んでいる。
ここで,上記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.本願補正発明の独立特許要件の適否

2-2-1.本願補正発明の認定
本願補正発明は,上記「1.本件補正の内容」において示された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2-2-2.引用刊行物1記載の発明
(1)本件出願の出願日前に頒布された刊行物である特公昭61-1322号公報(以下、「引用刊行物1」という。)に記載された事項
引用刊行物1には、以下の事項が図面とともに記載されている。
ア.「本発明は、走行棚式の無人倉庫に関する。」(公報第1ページ第1欄第10行)
イ.「本発明は、この現状にかんがみなされたもので、走行棚を無限軌道として、倉庫に無人のフオークリフトを導入し、走行棚式倉庫に無人化を計ることを目的とする。」(公報第1ページ第2欄第5行ないし第8行)
ウ.「図中1は倉庫で、その内部に図面第1図及び第2図に示す様に隅の固定棚2と幾つかの走行棚3を1条の通路4を残して並べ、之等走行棚3を移動させると、任意の走行棚3の間又は走行棚3と固定棚2との間へ前記通路4が選択的に設けられる様にして、倉庫1内の通路空間を最少限に減らし、倉庫1内の物品収容効率が限界迄高められる様にしてある。尚、この倉庫1は物品の冷凍、冷蔵等を行う場合は、荷役中は走行棚3の間又は走行棚3と固定棚2との間に1条の通路を設けて置くが、荷役を終れば前記通路4を走行棚3の間隔数に按分し、各走行棚3と固定棚2に対し冷媒が一律に作用する様にする。5,5は走行棚3における台部6の下部前後に設けた一対の車輪軸で、所望の間隔で複数の鎖車7,7を対応的に取付け、之等鎖車7,7に無限軌道8を懸張して走行部を形成させる。9は一方の車輪軸5を駆動するモータで、台部6の長さの中央部に取付け、減速機10を介して車輪軸5の長さの中央部へ伝動させ、各鎖車7に一定した回転を与えさせる。」(公報第1ページ第2欄第11行ないし第2ページ第3欄第1行。なお、原文では「迄」の字は二点しんにょうとなっている。)
エ.「本発明に関する無人倉庫は、前記実施例の通りで、倉庫1内に1条の通路4を残して並べられた走行棚3における台部6に車輪軸5,5に支持される複数組の鎖車7,7を装備し、之等鎖車7,7に夫々無限軌道8を懸張し、この無限軌道8により走行棚3の誘導と荷重負担とを行わせて、床面から定置軌条を省いたから、床面に前記移動棚3の移動により各移動棚3の間及び走行棚3と固定棚2との間に形成される通路4に合せて図面第1図に示す様に無人フオークリフト12用の誘導路11を自由に設置することが出来る。」(公報第2ページ第3欄第16行ないし第26行)

(2)上記(1)及び第1図、第2図、第4図、第5図からわかること。
(a)上記(1)のウ.には、「9は一方の車輪軸5を駆動するモータで、台部6の長さの中央部に取付け、減速機10を介して車輪軸5の長さの中央部へ伝動させ、各鎖車7に一定した回転を与えさせる」とあることから、一方の車輪軸5はモータ9により駆動される駆動軸としての車輪軸5であり、他方の車輪軸5は従動軸としての車輪軸5であることがわかる。
(b)また、上記(1)のウ.には、「5,5は走行棚3における台部6の下部前後に設けた一対の車輪軸で、所望の間隔で複数の鎖車7,7を対応的に取付け」るとあることから、駆動軸としての車輪軸5には駆動輪としての鎖車7が一体に連結され、従動軸としての車輪軸5には従動輪としての鎖車7が一体に連結されることがわかる。
(c)上記(1)のウ.には、「固定棚2と幾つかの走行棚3を1条の通路4を残して並べ、之等走行棚3を移動させると、任意の走行棚3の間又は走行棚3と固定棚2との間へ前記通路4が選択的に設けられる」とあること及び第1図、第2図から、走行棚3は1つの方向に関して往復移動が可能であるとわかる。
(d)第4図、第5図から、1つの走行棚3に設けられるモータ9は1つであることがわかる。それに加えて、上記(a)より駆動軸としての車輪軸5はモータ9で駆動されるとあること、上記(c)より走行棚3は1つの方向に関して往復移動が可能であるとあることから、モータ9は正逆回転可能なものであること、モータ9により駆動される駆動軸としての車輪軸5及び駆動輪としての鎖車7は正逆回転可能なものであること、走行棚3は駆動輪としての鎖車7が正逆回転駆動されることにより往復移動することがわかる。

(3)引用刊行物1に記載された発明
上記(1)、(2)及び図面の記載を総合すると、引用刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「正逆回転可能なモータ9と、このモータ9によって正逆回転駆動される駆動輪としての鎖車7と、この駆動輪としての鎖車7と移動方向に並ぶ従動輪としての鎖車7とを有し、駆動輪としての鎖車7が正逆回転駆動されることにより往復移動する走行棚3であって、駆動輪としての鎖車7と従動輪としての鎖車7は走行棚3の移動方向に対し直交する方向に複数配置され、全ての上記駆動輪としての鎖車7は一つの駆動軸としての車輪軸5で一体に連結され、全ての上記従動輪としての鎖車7は一つの従動軸としての車輪軸5で一体に連結され、上記駆動輪としての鎖車7と従動輪としての鎖車7はこれら駆動輪としての鎖車7と従動輪としての鎖車7の外周面に巻き掛けられかつ駆動軸としての車輪軸5方向に対して直角方向をなすように調整された無限軌道8によって連結され、
上記無限軌道8は、下側の面が走行棚設置床面に接触して走行棚3の荷重を支え、床面との摩擦力により駆動力を床面に伝え走行棚3を床面上で無限軌道8の方向に移動させるものであり、上記駆動輪としての鎖車7と従動輪としての鎖車7および無限軌道8の組が複数組配置されている走行棚3。」(以下、「引用発明1」という。)

2-2-3.対比
本願補正発明と引用発明1を対比すると,両者の対応関係は次のとおりである。引用発明1における「モータ9」は、その機能からみて、本願補正発明における「駆動源」に相当し、同様に「駆動輪としての鎖車7」は「駆動輪」に、「従動輪としての鎖車7」は「従動輪」に、「走行棚3」は「移動棚」に、「駆動軸としての車輪軸5」は「駆動軸」に、「従動軸としての車輪軸5」は「従動軸」にそれぞれ相当する。
引用発明1における「無限軌道8」と本願補正発明における「帯状の無限軌道部材」は、「無限軌道部材」である限りにおいて共通である。
引用発明1における「接触して」と本願補正発明における「面接触して」は、「接触して」という限りにおいて共通である。

よって、本願補正発明と引用発明1とは、
「正逆回転可能な駆動源と、この駆動源によって正逆回転駆動される駆動輪と、この駆動輪と移動方向に並ぶ従動輪とを有し、駆動輪が正逆回転駆動されることにより往復移動する移動棚であって、駆動輪と従動輪は移動棚の移動方向に対し直交する方向に複数配置され、全ての上記駆動輪は一つの駆動軸で一体に連結され、全ての上記従動輪は一つの従動軸で一体に連結され、上記駆動輪と従動輪はこれら駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられかつ駆動軸方向に対して直角方向をなすように調整された無限軌道部材によって連結され、上記無限軌道部材は、下側の面が移動棚設置床面に接触して移動棚の荷重を支え、床面との摩擦力により駆動力を床面に伝え移動棚を床面上で無限軌道部材の方向に移動させるものであり、上記駆動輪と従動輪および無限軌道部材の組が複数組配置されている移動棚。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
・本願補正発明においては無限軌道部材が「帯状の無限軌道部材」であり「下側の面が移動棚設置床面に面接触し」「床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルトであり、」また「上記駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成され」ているのに対して、引用発明1においては無限軌道部材、駆動輪及び従動輪がそのように構成されているのか明らかではない点。(以下、「相違点」という。)

2-2-4.判断
上記相違点について検討する。
駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられる無限軌道部材により平面移動を実現する移動体において、該無限軌道部材を帯状の無限軌道部材とし、その下側の面が床面に面接触し、床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルトで構成するとともに上記駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成されるものは周知技術(例えば、実願平2-35578号(実開平3-125673号)のマイクロフィルム(明細書第3ページ第4行ないし第8行及び第1図ないし第5図)、国際公開第98/38885号(上記国際公開に対応する国内公表である特表2001-513729号公報の第9ページ第25行ないし第27行及び図1ないし図3)を参照。以下、「周知技術1」という。)である。
そして、引用発明1の移動棚も駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられる無限軌道部材により平面移動を実現する移動体であるから、引用発明1における駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられる無限軌道部材に上記周知技術1を適用して無限軌道部材を、帯状の無限軌道部材であるとともに下側の面が移動棚設置床面に面接触し、床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルトで構成し、上記駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成されるようにすることは当業者にとって格別に困難なことであるとは認められない。
したがって、引用発明1において、周知技術1を適用することにより上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものである。

また、本願補正発明は全体としてみても引用発明1及び周知技術1から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

2-2-5.独立特許要件に関する結論
したがって,本願補正発明は,引用発明1及び周知技術1に基づいて当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。


3.むすび
本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって結論のとおり決定する。



第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成18年9月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成18年6月26日付けで提出された手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 正逆回転可能な駆動源と、この駆動源によって正逆回転駆動される駆動輪と、この駆動輪と移動方向に並ぶ従動輪とを有し、駆動輪が正逆回転駆動されることにより往復移動する移動棚であって、
駆動輪と従動輪は移動棚の移動方向に対し直交する方向に複数配置され、 上記駆動輪と従動輪はこれら駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられかつ駆動軸方向に対して直角方向をなすように調整された帯状の無限軌道部材によって連結され、
上記無限軌道部材は、下側の面が移動棚設置床面に面接触して移動棚の荷重を支え、床面との摩擦力により駆動力を床面に伝え移動棚を床面上で無限軌道部材の方向に移動させるとともに、床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルトであり、
上記駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成されている移動棚。」


2.引用刊行物2記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願日前に頒布された刊行物である特開平4-16408号公報(以下、「引用刊行物2」という。)に記載された事項
引用刊行物2には、以下の事項が図面とともに記載されている。
ア.「本発明は、たとえば倉庫内や工場内に設置され、複数台の移動棚を有する移動棚設備に関するものである。」(公報第1ページ左下欄第15行ないし第17行)
イ.「第4図?第6図において1は前後一対の固定棚で、これら固定棚1間に、固定棚間方向に往復移動自在な複数の移動棚2を配設している。」(公報第2ページ左上欄第18行ないし第20行)
ウ.「各可動棚2は、左右両端の側下部フレーム4、ならびに内側に位置する左右一対の中間下部フレーム5の下部に、それぞれ移動装置10が設けられる。すなわち第1図?第4図において移動装置10は、門型材状の前記下部フレーム4,5内に設けられるものであって、その長さ方向の両端部には、左右方向の駆動軸11と従動軸12とがそれぞれ軸受13を介して回転自在に設けられ、そして駆動軸11には駆動鎖輪14が、従動軸12には従動鎖輪15がキーなどを介して固定される。」(公報第2ページ右上欄第2行ないし第11行)
エ.「無端体の一例であるローラチェン16は、多数のリンク17ならびに連結ピン18と、この連結ピン18に外嵌したローラ19とからなり、両鎖輪14,15間に掛張させることで上位経路部20と下位経路部21とを形成する。」(公報第2ページ右上欄第12行ないし第16行)
オ.「前記ローラチェン16におけるリンク17の一部は外側へ折曲して取付け部17aを形成し、左右で対向した取付け部17aの外面間に亘って、当接部材25が固定具(ボルト・ナット)26を介して固定される。この当接部材25をウレタンゴムなどにより四角棒状に形成され、その表面側に長形状の当接面25aを形成する。この当接面25aは床面6上に当接自在であって、その際に長形状の長さ方向が移動方向とは直交状となるように配設される。前記ローラチェン16に連動する駆動部27はモータなどからなり、下部フレーム4,5側にブラケット28を介して取付けられる。そして出力軸29と前記駆動軸11とを巻掛伝動装置30を介して連動連結している。」(公報第2ページ左下欄第4行ないし第17行)
カ.「上記実施例においては、区画収納室間3に格納した物品など移動棚2側の荷重は、各下部フレーム4,5、ガイド体23、下位経路部21に位置している当接部材25などを介して床面6側に受け止められている。この状態で、駆動部27の作動により巻掛伝動装置30などを介して駆動軸11を駆動することで、ローラチェン16を強制回転させて移動棚2を一定経路7上で往復移動させ得る。その際に無端履体状に床面6に当接する当接部材25は、その長形状の当接面25aが移動方向に対して直交状であることから、左右に傾斜することなく当接(着地)することになり、したがって移動棚2に直進性が発生することになる。」(公報第2ページ左下欄第18行ないし右下欄第10行)

(2)上記(1)及び第1図ないし第6図からわかること。
上記(1)のエ.には「無端体の一例であるローラチェン16は、多数のリンク17ならびに連結ピン18と、この連結ピン18に外嵌したローラ19とからな」るとある。また、上記(1)のオ.には「リンク17の一部は外側へ折曲して取付け部17aを形成し、左右で対向した取付け部17aの外面間に亘って、当接部材25が固定具(ボルト・ナット)26を介して固定される。この当接部材25をウレタンゴムなどにより四角棒状に形成され、その表面側に長形状の当接面25aを形成する。この当接面25aは床面6上に当接自在であ」るとある。更に、上記(1)のカ.には「移動棚2側の荷重は、各下部フレーム4,5、ガイド体23、下位経路部21に位置している当接部材25などを介して床面6側に受け止められている」とある。よって、ローラチェン16及び当接部材25は無限軌道部材を構成し、その下側の面が床面2に面接触して移動棚2の荷重を支えていることがわかる。

(3)引用刊行物2に記載された発明
上記(1)、(2)及び図面の記載を総合すると、引用刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「回転可能な駆動部27と、この駆動部27によって回転駆動される駆動鎖輪14と、この駆動鎖輪14と移動方向に並ぶ従動鎖輪15とを有し、駆動鎖輪14が回転駆動されることにより往復移動する移動棚2であって、
駆動鎖輪14と従動鎖輪15は移動棚2の移動方向に対し直交する方向に複数配置され、上記駆動鎖輪14と従動鎖輪15はこれら駆動鎖輪14と従動鎖輪15の外周面に巻き掛けられかつ駆動軸11方向に対して直角方向をなすように調整されたローラチェン16及び当接部材25からなる無限軌道部材によって連結され、上記無限軌道部材は、下側の面が床面2に面接触して移動棚2の荷重を支え、床面2との摩擦力により駆動力を床面に伝え移動棚2を床面2上で無限軌道部材の方向に移動させる移動棚2。」(以下、「引用発明2」という。)


3.対比
本願発明と引用発明2を対比すると,両者の対応関係は次のとおりである。
引用発明2における「従動鎖輪15」は、その機能からみて、本願発明における「従動輪」に相当し、同様に「移動棚2」は「移動棚」に、「床面2」は「移動棚設置床面」にそれぞれ相当する。
引用発明2における「回転可能な駆動部27」と本願発明における「正逆回転可能な駆動源」は、「回転可能な駆動源」である限りにおいて共通である。
引用発明2における「回転駆動される駆動鎖輪14」と本願発明における「正逆回転駆動される駆動輪」は、「回転駆動される駆動輪」である限りにおいて共通である。
引用発明2における「ローラチェン16及び当接部材25からなる無限軌道部材」と本願発明における「帯状の無限軌道部材」は、「無限軌道部材」である限りにおいて共通である。
よって、本願発明と引用発明2とは、
「回転可能な駆動源と、この駆動源によって回転駆動される駆動輪と、この駆動輪と移動方向に並ぶ従動輪とを有し、駆動輪が回転駆動されることにより往復移動する移動棚であって、駆動輪と従動輪は移動棚の移動方向に対し直交する方向に複数配置され、上記駆動輪と従動輪はこれら駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられかつ駆動軸方向に対して直角方向をなすように調整された無限軌道部材によって連結され、上記無限軌道部材は、下側の面が移動棚設置床面に面接触して移動棚の荷重を支え、床面との摩擦力により駆動力を床面に伝え移動棚を床面上で無限軌道部材の方向に移動させる移動棚。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(1)本願発明においては駆動源が「正逆回転可能」であり、駆動輪が「この駆動源によって正逆回転駆動される駆動輪」であって、移動棚が「駆動輪が正逆回転駆動されることにより往復移動する」ように構成されているのに対し、引用発明2においては駆動源、駆動輪、及び移動棚がそのように構成されているのか明らかではない点。(以下、「相違点1」という。)
(2)本願発明においては無限軌道部材が「帯状の無限軌道部材」であるとともに「床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルト」で構成されるものであり、更に「駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成されている」ように構成されるものであるに対して、引用発明2においては無限軌道部材が「ローラチェン16及び当接部材25からなる無限軌道部材」で構成されるものであり、また、「駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成されている」ように構成されるものであるのか明らかではない点。(以下、「相違点2」という。)


4.判断
上記相違点1について検討する。
駆動源によって回転駆動される駆動輪の駆動トルクにより移動する移動体において、駆動源として電動モータ等の正逆回転可能な駆動源を用いることにより駆動輪を正逆回転駆動させて上記移動体の往復移動を実現することは例示するまでもなく周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明2において、往復移動する移動棚における駆動源及び駆動輪に上記周知技術2を適用して正逆回転可能な駆動源と、この駆動源によって正逆回転駆動される駆動輪と、駆動輪が正逆回転駆動されることにより往復移動する移動棚を当業者が想到することは格別困難なものであるとは認められない。
したがって、引用発明2において、上記周知技術2を適用することにより上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものである。

上記相違点2について検討する。
上記「第2.平成18年9月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理 由]における「2-2-4.判断」において「周知技術1」として述べたように、駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられる無限軌道部材により平面移動を実現する移動体において、該無限軌道部材を帯状の無限軌道部材とし、その下側の面が床面に面接触し、床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルトで構成するとともに上記駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成されるものは周知技術(例えば、実願平2-35578号(実開平3-125673号)のマイクロフィルム(明細書第3ページ第4行ないし第8行及び第1図ないし第5図)、国際公開第98/38885号(上記国際公開に対応する特表2001-513729号公報の第9ページ第25行ないし第27行及び図1ないし図3)を参照)である。
そして、引用発明2の移動棚も駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられる無限軌道部材により平面移動を実現する移動体であるから、引用発明2における駆動輪と従動輪の外周面に巻き掛けられる無限軌道部材に上記周知技術1を適用して無限軌道部材を、帯状の無限軌道部材であるとともに床面と駆動輪および従動輪との間に介在してクッションの役目を果たす歯付きベルトであるもので構成し、駆動輪および従動輪の外周面には上記歯付きベルトの歯が噛み合う凹部が形成されるようにすることは当業者にとって格別に困難なことであるとは認められない。
したがって、引用発明2において、上記周知技術1を適用することにより上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものである。

また、本願発明は全体としてみても引用発明2、周知技術1、及び周知技術2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


5.むすび
以上から、本願発明は、引用発明2、周知技術1、及び周知技術2に基づいて当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のように審決する。
 
審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-19 
出願番号 特願2001-257433(P2001-257433)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
P 1 8・ 575- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 見目 省二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 大谷 謙仁
金澤 俊郎
発明の名称 移動棚  
代理人 石橋 佳之夫  

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