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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1193587 |
審判番号 | 不服2006-5759 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-29 |
確定日 | 2009-03-05 |
事件の表示 | 特願2002- 86720「未登記土地の測量登記方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月 2日出願公開、特開2003-280521〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年3月26日の出願であって、平成16年8月26日付けの拒絶理由通知に対して、同年10月29日付けで意見書と共に手続補正書が提出され、更に、平成17年7月12日付けの(最後の)拒絶理由通知に対して、同年9月14日付けで意見書と共に手続補正書が提出されたが、平成18年2月20日付けで、平成17年9月14日付けの手続補正について補正の却下の決定がなされると共に、拒絶査定がなされたものである。 この拒絶査定に対して、平成18年3月29日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 2.平成18年3月29日付けの手続補正による発明 平成18年3月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(以下、「本件補正発明」という。)。 「各自治体に無償で提供された民有地について、未登記土地を非課税処理するための未登記土地の測量登記方法であって、 各自治体より依頼された測量対象区域について、予めの現地測量を省略して課税対象の元とされている国土調査図及び実際土地の現況を示す現況図をディジタル化して次記(A)の如く構成された測量演算装置の地図データ入力部に入力し、 前記測量演算装置で、両図の同一縮尺化、分筆線の有無に基づく測量対象区域の推定、推定区域が課税されていることの自動判別による測量対象の特定化、特定区域の対象面積の計算及びその微調整、調整結果に基く整合図の作成までを実行させ、 整合可能なものに限って前記測量演算装置で得られた整合図に基いて現地測量を行うと共に、自動又は手動で地積測量図を作成し、登記処理を行うことを特徴とする未登記土地の測量登記方法。 (A) 課税対象の元とされている国土調査図及び実際土地の現況を示す現況図を入力する地図データ入力部と、 両図を同一縮尺化した上で重ね合わせ、分筆線の有無に基いて測量対象区域を推定する対象区域推定部と、 課税台帳の属性データを参照し、推定された区域が課税されていることを判別し、そこを測量対象として特定する測量対象特定部と、 特定された区域の対象面積を計算し、実務上の微調整を加えて整合図を作成する整合図作成部と、 特定された区域の測量、登記に必要な所要のデータを出力するデータ出力部と、を備えた未登記土地の測量演算装置。」 3.平成16年10月29日付けの手続補正による発明 本件補正発明の補正の基となる、平成16年10月29日付けの手続補正(以下、「第1補正」という。)による発明は、次のとおりのものである(以下、「第1補正発明」という。)。 なお、平成17年9月14日付けの手続補正(以下、「第2補正」という。)は、原審において却下されている。 「各自治体に無償で提供された民有地について、未登記土地を非課税処理するための未登記土地の測量登記方法であって、 各自治体より依頼された測量対象区域について、従来必ず行っていた予めの現地測量を省略して課税対象の元とされている国土調査図及び実際土地の現況を示す現況図をディジタル化して次記(A)の如く構成された測量演算装置の地図データ入力部に入力し、 前記測量演算装置で、両図の同一縮尺化、分筆線の有無に基づく測量対象区域の推定、推定区域が課税されていることの自動判別による測量対象の特定化、特定区域の対象面積の計算及びその微調整、調整可能の結果に基く整合図の作成までを実行させ、 整合可能なものに限って前記測量演算装置で得られた整合図に基いて1回限りの現地測量を行うと共に、自動又は手動で地積測量図を作成し、登記処理を行うことを特徴とする未登記土地の測量登記方法。 (A) 課税対象の元とされている国土調査図及び実際土地の現況を示す現況図を入力する地図データ入力部と、 両図を同一縮尺化した上で重ね合わせ、分筆線の有無に基いて測量対象区域を推定する対象区域推定部と、 課税台帳の属性データを参照し、推定された区域が課税されていることを判別し、そこを測量対象として特定する測量対象特定部と、 特定された区域の対象面積を計算し、実務上の微調整を加えて整合図を作成する整合図作成部と、 特定された区域の測量、登記に必要な所要のデータを出力するデータ出力部と、を備えた未登記土地の測量演算装置。」 4.両発明の対比 本件補正発明と第1補正発明とを対比すると、両者は、 (1)第1補正発明の特定事項であった「予めの現地測量」を修飾する「従来必ず行っていた」(上記3.「第1補正発明」3行)が、本件補正発明においては削除された点、 (2)第1補正発明の特定事項であった「整合図」を修飾する「調整可能の結果に基づく」(上記3.「第1補正発明」9?10行)が、本件補正発明では「調整結果に基づく」(上記2.「本件補正発明」9行)と補正された点、 (3)第1補正発明の特定事項であった「現地測量」を修飾する「1回限りの」(上記2.「第1補正発明」11?12行)が、本件補正発明では削除された点、 の3点で補正されている。 5.補正点に関する検討 (1)について 「予めの現地測量」に関して、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)を参酌すると、明細書の段落【0017】の「従来よりの未登記土地の登記処理方法では、…(略)…、未登記物件の判断、現地測量、面積算出、復元測量等々を行わなければならず、極めて多くの手間と費用を要していた。」なる記載、及び、図11からみて、従来の未登記土地の登記処理方法においては、「予めの現地測量」は「必ず」行われていたものであって、第1補正発明では、この点を強調するために、第1補正において、「従来必ず行っていた」と付記したものと解される。 しかしながら、上記のとおり、「予めの現地測量」は、従来の登記処理方法においては、必ず実施しなくてはならない必須の要件であったから、わざわざ、従来方法に関して「従来必ず行っていた」と付記しなければならない必然性は見当たらない。 してみると、「従来必ず行っていた」なる記載表現が有ろうと無かろうと、発明としての本質に変わりはなく、本件補正発明と第1補正発明は、その技術内容を何ら変えるものではない。 (2)について 第1補正発明における「調整可能の結果」について、検討する。 「調整可能」とは「調整(しようと思えば)できる」ことを意味する用語であって、「調整」という行為が「必ず」実行されることを意味するものではない。 他方、「結果」とは、「ある行為によって生じたもの」を意味するから、ある行為が実行されることは必須の要件である。 してみると、必ず実行されることが要件ではない「調整可能」なる用語を、ある行為が実行されることが必須の要件である「結果」なる用語の修飾語として用いることは、誤った用法であることは明らかである。 即ち、(2)の補正は誤記を訂正したものであって、誤った用法を「調整結果」と正しく表記するようにしたものであるから、発明としての本質は何ら変わるものではない。 (3)について 当初明細書等には、「現地測量」に関して、次のように記載されている。 a.段落【0017】「現地測量は基本的に1回で済む。」 b.段落【0027】「ステップ105で1回の現地測量を行い、ステップ106で境界杭を投設し、ステップ107で前記整合図に基いて作成された地籍測量図をもって登記することで、全作業を終了することができる。」 c.段落【0041】「ステップ150に示した1回の現地測量を行うことでステップ107に示す登記処理を行うことができる。」 (なお、当該記載の「ステップ150」は「ステップ105」の誤記であることは明らかである。) d.段落【0051】「該測量演算装置から出力される正確な整合図に基いて1回の現地測量を行うことにより、容易、迅速、確実に測量登記処理を終了することができる。」 これらの記載に上記(1)において例示した記載も併せ勘案すると、従来の登記処理方法では、「予めの現地測量」と「復元測量」との2回の現地測量が必要であり、そのため、多くの手間と費用を要していたが、第1補正発明の「測量登記方法」では、1回の現地測量で、容易、迅速、確実に登記処理を終了できるというものと解される。 即ち、第1補正発明では、現地測量が基本的に1回だけですむことを強調するために、第1補正において、「1回限りの」と付記したものと解される。 しかしながら、上記a?dに例示したとおり(本件補正は特許請求の範囲のみ補正されている。)、本件補正発明の「測量登記方法」にあっても、その特定された手順に従って測量登記を行った場合には、現地測量は基本的には1回だけですむのであることは自明であるから、「1回限りの」なる記載表現の有無に関わらず、発明の本質は何ら変わるものでない。 してみると、本件補正発明と第1補正発明とは、発明としての本質に変わりはなく、その技術内容を何ら変わるものではない。 (4)まとめ(本願発明) 以上のとおり、本件補正発明は、第1補正発明に比して、表記上、上記(1)?(3)のように補正されてはいるが、補正前の発明(第1補正発明)と補正後の発明(本件補正発明)とは、実質的にその技術内容は異なるものではない。 そうすると、本件補正が補正却下されるか否かにかかわらず、本件補正発明、明細書又は図面が、原審における拒絶の理由により特許を受けることができないものであれば、実質的に同一の内容である第1補正発明も同様であり、結局、本願は拒絶すべきものとなるから、以下、本件補正の補正却下については言及せずに、本件補正発明(以下、「本願発明」という。)、明細書又は図面について、以下、原審における拒絶査定が適法であるか否かを判断する。 なお、本件補正は、特許請求の範囲のみ補正されているので、明細書又は図面の検討は、第1補正の明細書又は図面に基づいて行う。 6.原審における拒絶の理由及び拒絶査定の理由 (1)原審における、本願に対する、平成17年7月12日付けの拒絶理由通知は、「最後の」拒絶理由通知であって、その理由は、第1補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものであり、その概略は、次のとおりである。 「本願出願人は意見書で、 『【0008】第1行目に「全ての場合」の文字を加入しました。 【0009】最下行の後に、「数字が現況に合わず、整合不可能の報告をせねばならぬ場合もある。」と現実の話を追加致しました。 【0012】第2行目に、「とにかくの予めの現地測量を行った上で」と加入しました。 【0017】第1行目に「予めの現地測量を省略でき」を加入すると共に、第2行目に「整合不可である場合には」と加入しました。当然事項の説明不足を補ったものであります。 【0023】第2行目に「予めの現地測量なしで」の語を加入しました。 【0026】第2行目に「整合不可の場合は、その理由を付けてここで中止する。」と実務に合わせた内容を加入しました。 【0027】第1行目に「整合可能の場合に限って」と加入しました。図11で示した作業内容の説明で当然事項の説明が抜けていたものを追加記入したものであります。 【0039】最下行に、「微調整不可能の場合には、ここで中止する。」と実際作業の内容を加入しました。 【0051】第1行目に「各自治体から依頼された測量対象区域についてやみくもな現地測量を行うことなく、」を加入しました。また、第2行目に「整合不可能の場合はここで終了し、整合可能な場合には」の説明を加入しました。』 と述べつつ、発明の詳細な説明を補正しているが、 『特許庁 審査基準 第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正 第I節 新規事項 3.基本的な考え方』には、 『(3)補正された事項が、「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには、当初明細書等に記載がなくても、これに接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項でなければならない(注1?3)。 (4)周知・慣用技術についても、その技術自体が周知・慣用技術であるということだけでは、これを追加する補正は許されず、補正ができるのは、当初明細書等の記載から自明な事項といえる場合、すなわち、当初明細書等に接した当業者が、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する場合に限られる。』と記載されているように、 たとえ「実務に合わせた内容を加入」、「当然事項の説明が抜けていたものを追加記入したもの」、「実際作業の内容を加入」するものであっても、『当初明細書等の記載』から自明な事項といえるものではなく、上記補正は、出願当初明細書又は図面に記載された事項の範囲内とは、認められない。」 (2)拒絶査定の理由は、次のとおりである。 「平成17年9月14日付けの手続補正は、本拒絶査定と同日付の補正却下により却下されたため、本願発明は平成17年7月12日付けの拒絶理由で指摘した拒絶の理由(特許法第17条の2第3項)を解消しておらず、意見書の主張も採用できない。」 7.当審の判断 (1)補正事項について 原審における拒絶の理由(最後)は、請求人が行った第1補正に関し、特に、【発明の詳細な説明】に関する補正事項を例示して、それらの事項が当初明細書等に記載した事項の範囲内とは認められない、というものである。 そこで、上記6.に示した「拒絶の理由」において、「当初明細書等に記載した事項の範囲内でない」事項(以下、「新規事項」という。)と認定された補正事項について、検討する。 原審において、新規事項と認定された補正事項を、技術的に区分して記載すると、次のア、イのとおりである。 ア.【0017】に「予めの現地測量を省略でき」を、【0022】に「予めの現地測量なしで」を、【0049】に「各自治体から依頼された測量対象区域についてやみくもな現地測量を行うことなく、」を付加した点。 イ.【0017】に「整合不可である場合には」を、【0024】に「整合不可の場合は、その理由を付けてここで中止する。」を、【0025】に「整合可能の場合に限って」を、【0037】に「微調整不可能の場合には、ここで中止する。」を、【0049】に「整合不可能の場合はここで終了し、整合可能な場合には」を付加した点。 なお、上記【0008】?【0012】に関する補正事項は、【従来の技術】として、従来の手作業による「登記処理方法」に関して、実際の測量実務に関する現実の話を付記するものであるので、特に検討しない。 又、上記6.に示した意見書の段落番号は誤っているため、上記ア、イに示す段落番号は、第1補正により全文補正された明細書の段落番号によるものとした。 (2)アについて 上記アに示した補正事項は、従来行われていた「予めの現地測量」を省略すること、「やみくもな現地測量」を行わないことを明記するものである。 即ち、これらの補正事項は、第1補正発明について「1回限りの」なる記載表現を付加したことに関連して、明細書においてもその説明のために付記したものである。 この「1回限りの」については、上記5.(3)に記載したとおりであり、結局、この「1回限りの」なる記載表現を説明するために、上記アに係る補正事項を付記しても、測量のステップ等を変えるものではないから、当該補正事項は、新規事項と言う程のものではない。 (3)イについて 上記イに示した補正事項の内、特に、段落【0024】、段落【0025】、段落【0037】に係る補正事項について、検討する。 当該段落は、本願発明の「測量演算装置」の処理フローについて記載されている部分であり、第1補正により、段落【0024】は「ステップ104で示す自動測量演算装置では、両図を比較処理し、面積の微調整までを行った整合図を出力させることができる。整合不可の場合は、その理由を付けてここで中止する。」と、段落【0025】は「従って、整合可能の場合に限って、ステップ105で1回の現地測量を行い、ステップ106で境界杭を投設し、ステップ107で前記整合図に基いて作成された地籍測量図をもって登記することで、全作業を終了することができる。」と、段落【0037】は「ステップ309では、対象面積を計算し、台帳上の面積に誤差が生じたらステップ310で微調整を行い、ステップ311で面積の合致が得られる整合図(7)〔図10〕を作成する。微調整不可能の場合には、ここで中止する。」との記載に補正されたものである。 なお、下線は補正箇所を示し、第1補正による明細書に付されたとおりである。 上記補正箇所は、図1に示される「測量登記手段を示すフローチャート」のステップ104における処理、更に、ステップ104のサブルーティンである、図3に示される「測量演算装置の処理内容を示すフローチャート」のステップ310の処理を説明している部分である。 具体的に言えば、上記補正事項により、本願発明及び明細書等における「測量演算装置」の「整合図の作成」を行う処理フローは、対象面積を計算し(ステップ309)、台帳上の面積に誤差が生じた場合、微調整を行い(ステップ310)、「微調整不可能の場合」、その時点(ステップ310)で処理を中止するものとなったから、本願発明及び明細書等における「測量演算装置」の「整合図の作成」を行う処理フローは、「微調整」を行うステップ310において「微調整不可能の場合」の処理を、その処理内容に含むものとなった。 即ち、当初明細書等の段落【0039】及び図3におけるステップ310における処理は、イの補正事項により、単なる微調整処理から、微調整可能か不可能かを判断する判断処理となったから、「測量演算装置」の「整合図の作成」を行う処理フローにおけるステップ310の処理内容が変更されたことは明らかである。 しかしながら、当初明細書等には、上記のように変更されたところの、判断処理を含むステップ310については何ら記載がなく、又、それを窺わせるような記載も見あたらず、まして、当初明細書等の記載を総合しても、そこから自明とも言えない。 結局、上記イに係る補正事項は、新規事項と言わざるを得ない。 なお、付言すれば、当初明細書等の記載からみて、ステップ310の「微調整」は、次のステップ311における「整合図作成」のための、即ち、計算した面積と台帳上の面積とを整合させる(段落【0037】及び当初明細書等の段落【0039】参照)ための前処理と解されるから、当初明細書等に記載された「測量演算装置」の「整合図の作成」を行う処理フローにおいては、微調整不可能な場合が発生することを想定しているとは認められない。 (4)請求人の説明について 請求人は、第1補正と同日付けの平成16年10月29日付け意見書において、「整合不可能」に関して、『【0009】最下行の後に、「数字が現況に合わず、整合不可能の報告をせねばならぬ場合もある。」と現実の話を追加致しました。このような場合は、現に多く、その旨とその内容を付して各自治体に報告せねばなりません。このような場合は、数的には全体の30?40%程度であろうかと思料しますが、何らかの形で途中トラブルとなったものを全て含めると50%近くに達するものと思われます。』(同意見書3頁10?14行)と説明する。 請求人の説明は、測量登記の現実にあっては、「整合不可能」は、全体の30?40%程度生じるというものである(他のトラブルは、「整合不可能」とは関係のないトラブルと解される。)。 ところで、上記説明は、その記載箇所からみても、従来の登記処理方法において発生する「整合不可能」に関するものであって、従来方法において「整合不可能」となるのは、人が、国土調査図と道路台帳現況図について、図面の拡大縮小作業を繰り返し同一縮尺にするため誤差が生じ易いこと、又、予めの現地測量が必ずしも正しく行われるとは限らないこと等、その他諸々の理由が相俟って、登記台帳の面積と整合しない状況が発生するため、と解される。 他方、本願発明においては、予めの現地測量もなく、又、国土調査図と道路台帳現況図とは電子データとして「測量演算装置」に取り込まれるものであり、当初明細書等の段落【0026】、【0035】?【0045】及び図1、図3の記載からみて、少なくとも整合図を作成するまでは、人手を介することなく、「測量演算装置」が処理を行うもの(図3の処理フロー参照)であるから、従来方法のように、多数の整合不可能な状況が発生するとは認め難く、又、前記のように当初明細書等の記載を総合したとしても、そこから、「測量演算装置」が「整合図の作成」を行う処理フローにおいて「整合不可能」に対する処理を行うことが自明である、とも認められない。 したがって、請求人の説明を参酌しても、第1補正に関して、上記イに係る補正事項に関する認定(上記(3)参照)を覆すことはできない。 (5)原審における補正の却下の決定について 拒絶査定の適法性を検討するについて、原審における補正の却下の決定についても、その適法性を検討する。 (5-1)却下の理由 原審における却下の理由は、概略、次のとおりである。 本願出願人は、『「従来必ず行っていた」の語を削除し(却下の1)、「整合可能なものに限って」の語と「1回限りの」との語を削除した(却下の2)』が、単に削除した結果、請求項1の記載内容が拡張され、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない補正を行ったこととなり、この補正は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下する。 なお、原審における却下の理由は、特にその前段において、意味不明な箇所があるため、請求人が、却下についてまとめた部分を援用し、上記のとおり、援用部分を『』で示した(審判請求書3頁最下行?4頁11行参照)。 (5-2)請求人の釈明 請求人の、原審における補正の却下の決定に対する釈明は、概略、次のとおりである(審判請求書4頁12行?5頁9行参照)。 却下の1において、「従来必ず行っていた」を削除したのは、明りょうでない記載の解釈であること明らかです。…(略)…この記載の有無によって技術的範囲に何ら実質的な変化はなく、不明瞭となる修飾文を削除しただけでありますから、明瞭でない記載の釈明に属します。 却下の2において、「整合可能なものに限って」を削除したのは、…(略)…これも当然の修飾的用語で特許請求の範囲に馴染まない言葉であるとして削除したものであります。 さらに、「1回限りの」を削除した点についても同様です。…(略)…「1回限りの」という用語は説明的な部分であり、これを残すと不明瞭な部分であると捉えられかねないと、明瞭化のため削除したものであります。 平成14年(17年の誤記である。)9月14日付けの手続補正は、特許法第17条の2第4項d(明りょうでない記載の釈明)に相当するものであります。 (5-3)補正却下についての当審の判断 請求人は、「従来必ず行っていた」及び「1回限りの」を削除したのは、「明りょうでない記載の解釈であること明らかです。」と主張する(審判請求書4頁12?13行)。 なお、上記「解釈」は「釈明」の誤記である。 ところで、最後の拒絶理由に対する手続補正について、「明りょうでない記載の釈明」を目的とする場合は、「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項に限る。」なる追加規定がある(平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号参照)ところ、最後の拒絶理由通知において、削除された上記2つの記載表現について、明りょうでない、との指摘はないから、「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正はできず、目的に関する請求人の釈明は、失当である。 しかしながら、上記5.(1)及び(3)に記載したように、「従来必ず行っていた」及び「1回限りの」なる記載表現が有ろうと無かろうと、本願発明の技術内容に変わりはなく、この記載表現を削除しても、本願発明の本質に影響を及ぼすものではないから、請求人の釈明は失当ではあるが、上記記載表現の削除によっては、本願発明は拡張されたものとしては扱わない。 次に、「整合可能なものに限って」を削除した点について検討する。 第2補正により削除された「整合可能なものに限って」なる記載表現は、第1補正により付加されたものであり、同じく第1補正により、「整合可能なものに限って」なる記載表現に関連して、明細書も補正されているところ、明細書に係る補正事項は、上記7.(3)に記載したとおり、本願発明の「測量演算装置」が「整合図の作成」を行う処理フローについて、「微調整」を行うステップ310の処理に際して「判断」を行う処理を付加するものであるから、第1補正により付加された「整合可能なものに限って」なる記載表現は、第1補正発明の技術内容に影響を及ぼす記載表現と言わざるを得ない。 してみると、第2補正による「整合可能なものに限って」なる記載表現の削除は、第1補正発明の技術内容に影響を及ぼすものを削除するわけであるから、特許請求の範囲を拡張するものと言うべきである。 しかしながら、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定によれば、特許請求の範囲の拡張は許されるものではないから、第2補正は、同法同項の規定に違反するもの、と言わざるを得ない。 以上のとおり、第2補正により「整合可能なものに限って」なる記載表現を削除したことを限度として、第2補正についての、原審における補正の却下の決定は適法である。 (6)まとめ 以上検討したように、上記イに係る補正事項は新規事項と言わざるを得ず、又、原審における補正の却下の決定は適法である。 そして、上記イに係る補正事項は、本件補正によっても解消されておらず本願の明細書(第1補正による明細書)に依然として記載されている。 8.むすび 以上のとおり、原審における、本願明細書についてした補正(第1補正)は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、との最後の拒絶理由に関し、該拒絶理由において指摘した点は解消していない、としてなされた拒絶査定は適法であるから、本件補正が補正却下されるか否かにかかわらず、本願は拒絶すべきものであって、原査定を取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-17 |
結審通知日 | 2009-01-06 |
審決日 | 2009-01-19 |
出願番号 | 特願2002-86720(P2002-86720) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
江成 克己 上田 正樹 |
発明の名称 | 未登記土地の測量登記方法 |
代理人 | 三好 秀和 |