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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1193603
審判番号 不服2006-24868  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2009-03-05 
事件の表示 特願2004-189536「呼出システム及び呼出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 14008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年6月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年12月4日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「自装置の外線番号と内線番号を持つ発呼装置と、該発呼装置と通信可能な基地局とを備えた呼出システムであって、
前記発呼装置に、
被呼装置の外線番号、内線番号のうち少なくとも1つ以上を送出することによって発呼を行う発呼手段を設け、
前記基地局に、
前記発呼装置からの発呼に応じて前記被呼装置を呼び出す呼出手段と、
前記被呼装置に前記発呼装置の外線番号あるいは内線番号を通知する番号通知手段と、
前記被呼装置が内線による通信が可能な領域に存在するかどうかを検出する検出手段とを設け、
前記呼出手段に、
内線番号によって前記被呼装置を呼び出す内線呼出手段と、
外線番号によって前記被呼装置を呼び出す外線呼出手段と、
前記検出手段の検出の結果に基づいて、前記内線呼出手段によって前記被呼装置を呼び出すか、あるいは前記外線呼出手段によって前記被呼装置を呼び出すかを決定する手段とを設け、
前記番号通知手段に、
前記呼出手段が前記内線呼出手段と前記外線呼出手段のうちいずれによって前記被呼装置を呼び出すかに基づいて、前記発呼装置の外線番号あるいは内線番号のいずれかを前記被呼装置に通知する手段を設けたことを特徴とする呼出システム。」

第2.引用発明
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された、特開平10-215471号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】使用周波数の異なる公衆と自営の移動体通信網の着信を同時に待ち受け可能な無線電話機と、公衆移動体通信網の電波を送受信可能な公衆アンテナ部と、この公衆アンテナ部に有線で結線され、移動局として前記公衆移動体通信網へ接続可能な公衆無線制御部と、前記無線電話機と自営周波数で無線通信を行う無線接続部と、この無線接続部に有線で結線されこの無線電話機を内線コードレス電話として収容する内線無線制御部と、前記公衆無線制御部と前記内線無線制御部をそれぞれ外線及び内線として扱い、回線接続、切断、発信ダイヤル分析等の呼処理を行う呼制御部と、この呼制御部の指示に従い前記公衆無線制御部と前記内線無線制御部の間の音声通話路を形成する通話路スイッチ部と、内線として収容される前記無線電話機の内線番号と公衆移動体通信網の移動局としての電話番号と自営サービス圏内に存在することを示す位置登録の有無を記録する無線子機登録部からなる主制御装置により構成され、前記無線電話機が自営サービスエリア内へ移動した時点で前記主制御装置へ自己の公衆移動体通信網における公衆電話番号を付加して位置登録を行い、公衆基地局からの公衆電話番号への着信を前記公衆無線制御部が受信すると、前記無線子機登録部により対応する内線番号を検索して内線着信させることにより、構外から構内の公衆サービスエリア外に滞在する移動局を公衆電話番号で直接呼び出すことを可能とし、構内に滞在する無線電話機から他の無線電話機を公衆電話番号で呼び出した場合、前記無線子機登録部により前記公衆電話番号を持つ無線電話機が内線電話として位置登録している場合、前記内線番号で内線着信を開始し、前記内線着信開始後宛先の無線電話機から応答がない場合、及び前記無線子機登録部に前記公衆電話番号を持つ無線電話機が位置登録されてない場合、前記公衆無線制御部を経由して公衆移動体通信網へ発信することを特徴とする構内自動交換機。」(2頁1欄2行?34行)
ロ.「【0013】図1において、10は、公衆移動体通信網の無線接続装置である公衆基地局であり、無線到達可能な範囲が公衆サービスエリアになる。公衆アンテナ部11は公衆基地局10のサービスエリア内に設置される無線送受信用アンテナであり、公衆無線制御部12と併せて構内自動交換機の主装置17の外線の1つとして公衆移動体通信網へ接続する機能を有する。16は無線接続部18と併せて第1の無線電話機19と第2の無線電話機20を内線電話として収容する内線無線制御部である。
【0014】13は、発信,着信などの制御、回線接続の切り替え等を行う呼制御部であり、14は呼制御部13の指示に従い公衆無線制御部12と内線無線制御部16間の通話路を形成する通話路スイッチ部である。また、15は無線電話機の位置登録状況と無線電話機の内線番号と公衆サービスにおける電話番号を記録する無線子機登録部である。」(3頁4欄9行?25行)
ハ.「【0020】次に図3により、第1の無線電話機303が構内に滞在する第2の無線電話機304を第2の無線電話機304の公衆サービスの電話番号で呼び出す場合を説明する。なお、2つの無線電話機303,304が滞在する構内は共に公衆サービスのエリア外であり、本手順はすべて自営の無線周波数を使用した内線電話としての動作である。
【0021】まず第1の無線電話機303からの第2の無線電話機304の公衆電話番号を宛先とする呼設定(305,306)を内線無線制御部302経由で受信した呼制御部300は宛先電話番号を解析して、それが外線発信であり、かつ公衆移動体通信網の電話番号であると判断して、電話番号を持つ無線電話機の内線番号と位置登録有無を無線子機登録部301へ問い合わせる(307)。
【0022】無線子機登録部301は前記公衆電話番号を持つ第2の無線電話機304が位置登録されていることを確認して呼制御部300へその内線番号を含めて応答を返す(308)。以降、呼制御部300と第2の無線電話機304との間で無線報知チャネルによる着呼(309)、呼設定(311,312)の手順を経由して、第1の無線電話機303から第2の無線電話機304の内線呼出が始まる(313、314)。
【0023】次に図4により、図3の場合で着信先の第2の無線電話機が自営サービス圏外である構外へ移動している場合に、内線着信ではなく、公衆移動体通信網への発信に切り替えられる場合の手順を説明をする。第1の無線電話機405から第2の無線電話機406への発信は図3と同じ手順で行われる(407?411)。ただし図4では第2の無線電話機406は自営サービス圏外へ移動しているため、報知チャネルによる着呼(411)に対する応答はなく内線無線制御部404でタイムアウトが発生する(412)。このタイムアウト発生により第2の無線電話機406が自営サービス圏外へ移動したことを内線無線制御部404は検出して呼制御部402へタイムアウト発生を示す解放通知を送信し、呼制御部402は宛先が公衆電話番号であることを解析して、公衆無線制御部401を経由して公衆基地局400への発信をおこなう(412)。
【0024】同時に、内線無線制御部404からの通知により、無線子機登録部403は第2の無線電話機406の位置登録を削除する(413)。この操作により、以降再度第2の無線電話機406が自営サービスエリアに戻って位置登録を行うまで、第2の無線電話機406宛の公衆電話番号による発信があった場合、自営サービスエリアへの着信報知(411)を行わず、即座に公衆基地局400へ発信するステップ413以降、前記公衆基地局400と前記第1の無線電話機405との間の呼設定(412,414)、認証(415,416)、呼出(417)を主装置(401?404)で中継して、第1の無線電話機405から構外にいる第2の無線電話機406への呼出が始まる。」(4頁5欄13行?6欄14行)

ここで、上記摘記事項ロ.の【0014】において、「15は無線電話機の位置登録状況と無線電話機の内線番号と公衆サービスにおける電話番号を記録する無線子機登録部である。」という記載があるから、無線電話機は自装置の公衆サービスにおける電話番号(摘記事項ハ.では「公衆電話番号」と言い換えられている)と、内線番号を持つことが開示されていると認められる。そしてこのことは、第1の無線電話機と第2の無線電話機のいずれにおいても該当することは明らかである。

また、上記摘記事項ハ.の【0021】には、呼制御部は第1の無線電話機からの第2の無線電話機の公衆電話番号を宛先とする呼設定を受信する旨の記載がある。この記載内容によれば、第1の無線電話機は呼制御部に第2の無線電話機の公衆電話番号を宛先とする呼設定を送信していることが分かり、さらに技術常識を考慮すれば、相手側電話機の公衆電話番号を宛先とする呼設定の送信は、発呼を行っていることに他ならないから、第1の無線電話機には「第2の無線電話機の公衆電話番号を送出することによって発呼を行う発呼手段」が設けられていることは明らかである。

また、上記摘記事項ロ.ハ.と共に図3、図4を参酌すれば、主装置は、第1の無線電話機と通信可能であることは自明である。

また、図3、図4のシーケンス図、特に図3の(309)と図4の(412)の動作によると、呼制御部は、「第1の無線電話機からの発呼に応じて第2の無線電話機を呼び出す呼出手段」、「内線番号によって前記第2の無線電話機を呼び出す内線呼出手段」、「外線番号によって前記第2の無線電話機を呼び出す外線呼出手段」として機能していることは明らかである。
さらに、上記摘記事項イ.のうち、公報2頁1欄16行?17行の「自営サービス圏内に存在することを示す位置登録」という記載、図3の(307)、(309)?(314)、図4の(409)、(412)?(417)の動作、及び、上記摘記事項ハ.のうち、【0024】の「同時に、内線無線制御部404からの通知により、無線子機登録部403は第2の無線電話機406の位置登録を削除する(413)。この操作により、以降再度第2の無線電話機406が自営サービスエリアに戻って位置登録を行うまで、第2の無線電話機406宛の公衆電話番号による発信があった場合、自営サービスエリアへの着信報知(411)を行わず、即座に公衆基地局400へ発信するステップ413以降、前記公衆基地局400と前記第1の無線電話機405との間の呼設定(412,414)、認証(415,416)、呼出(417)を主装置(401?404)で中継して、第1の無線電話機405から構外にいる第2の無線電話機406への呼出が始まる。」という記載からすれば、呼制御部は、第2の無線電話機が自営サービス圏内に存在することを示す位置登録がなされているかを検索して、位置登録がなされていれば内線番号で呼び出しを行い、一方で、位置登録が削除されており、検索の結果、位置登録がなされていないと判断された場合には、公衆電話番号によって公衆基地局を経由して構外への呼び出しを行う制御をしているから、「第2の無線電話機が内線による通信が可能な領域に存在するかどうかを検出する検出手段」、「検出手段の検出の結果に基づいて、内線呼出手段によって第2の無線電話機を呼び出すか、あるいは外線呼出手段によって第2の無線電話機を呼び出すかを決定する手段」として機能していることも明らかである。
そして、呼制御部は主装置に備えられているものであるから、結局、上記各手段は主装置ないし主装置に備えられた手段にさらに設けられるものであると言い得る。

また、第1の無線電話機と主装置とを備えた構成は、総称して「呼出システム」と言えるものである。

したがって、この記載事項によると、引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「自装置の公衆電話番号と内線番号を持つ第1の無線電話機と、該第1の無線電話機と通信可能な主装置とを備えた呼出システムであって、
前記第1の無線電話機に、
第2の無線電話機の公衆電話番号を送出することによって発呼を行う発呼手段を設け、
前記主装置に、
前記第1の無線電話機からの発呼に応じて前記第2の無線電話機を呼び出す呼出手段と、
前記第2の無線電話機が内線による通信が可能な領域に存在するかどうかを検出する呼制御部検出手段とを設け、
前記呼出手段に、
内線番号によって前記第2の無線電話機を呼び出す内線呼出手段と、
外線番号によって前記第2の無線電話機を呼び出す外線呼出手段と、
前記検出手段の検出の結果に基づいて、前記内線呼出手段によって前記第2の無線電話機を呼び出すか、あるいは前記外線呼出手段によって前記第2の無線電話機を呼び出すかを決定する手段と
を設けた呼出システム。」

第3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明では「第1の無線電話機」から「第2の無線電話機」に電話がかけられているので、それぞれ発呼する装置、被呼される装置であるから、本願発明の「発呼装置」、「被呼装置」と一致している。

また、引用発明の「公衆電話番号」は、本願発明の「外線番号」に相当する。

また、引用発明の「主装置」は、「呼出手段」、「検出手段」が設けられている点で、本願発明の「基地局」と一致している。

したがって、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「自装置の外線番号と内線番号を持つ発呼装置と、該発呼装置と通信可能な基地局とを備えた呼出システムであって、
前記発呼装置に、
被呼装置の外線番号、内線番号のうち少なくとも1つ以上を送出することによって発呼を行う発呼手段を設け、
前記基地局に、
前記発呼装置からの発呼に応じて前記被呼装置を呼び出す呼出手段と、
前記被呼装置が内線による通信が可能な領域に存在するかどうかを検出する検出手段とを設け、
前記呼出手段に、
内線番号によって前記被呼装置を呼び出す内線呼出手段と、
外線番号によって前記被呼装置を呼び出す外線呼出手段と、
前記検出手段の検出の結果に基づいて、前記内線呼出手段によって前記被呼装置を呼び出すか、あるいは前記外線呼出手段によって前記被呼装置を呼び出すかを決定する手段とを設けた呼出システム。」

(相違点)
本願発明には「前記被呼装置に前記発呼装置の外線番号あるいは内線番号を通知する番号通知手段」が設けられ、この番号通知手段にはさらに「前記呼出手段が前記内線呼出手段と前記外線呼出手段のうちいずれによって前記被呼装置を呼び出すかに基づいて、前記発呼装置の外線番号あるいは内線番号のいずれかを前記被呼装置に通知する手段」が設けられているのに対し、引用発明ではこのような手段が設けられていない点

第4.当審の判断
上記相違点について検討する。
被呼装置に発呼装置の内線番号や外線番号を通知する機能は周知であり、引用発明が当該機能を備えるようにすること、またそのために、引用発明に当該機能を実現する手段を設けるようにすることは、適宜なし得ることである。
しかしその際、公衆通信網を使用した着信において外線番号以外の番号を通知したり、あるいは、内線着信において内線番号以外の番号を通知したりすると不都合が生じることは、課題として周知である。例えば、特開平6-269034号公報の3頁3欄16行?23行の「したがって、呼設定メッセージの中に含まれる発信者番号は各端末装置で設定している電話番号であるために、内線通信を行った場合でも、着信端末装置には通常の電話番号が表示される。そのため、リダイヤル等の機能を使用した場合、公衆網を通して前回の発信者につながるため、公衆網利用に伴う通話料金を負担することになるという問題がある。」という記載、特開平6-181489号公報の2頁1欄34行?43行の「内線端末間の通信(通話)と外線端末との通信(通話)において、相手端末に通知する自機端末情報が同一のものとなり、たとえば登録した端末情報が内線用のものであれば、外線端末との通信において、相手端末やISDN網に対して通知される端末情報が不正なものとなり、通信ができなくなったり、相手端末の通信管理情報(通信管理レポート、受信文書のヘッダなど)として、相手ユーザにとって理解できない情報が残ることになり、ユーザの混乱を招くという不具合が発生する。」という記載等を参照すれば明らかである。
したがって、このような周知の課題に対し、公衆通信網を使用した着信においては外線番号を通知し、内線着信においては内線番号を通知することで不都合を避けるようにすることは、当業者であれば自然に発想できることであり、そのための具体的構成として、呼出システムに「前記被呼装置に前記発呼装置の外線番号あるいは内線番号を通知する番号通知手段」を設け、この番号通知手段にさらに「前記呼出手段が前記内線呼出手段と前記外線呼出手段のうちいずれによって前記被呼装置を呼び出すかに基づいて、前記発呼装置の外線番号あるいは内線番号のいずれかを前記被呼装置に通知する手段」を設けるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる程度のものである。

第5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-24 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-20 
出願番号 特願2004-189536(P2004-189536)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸次 一夫  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 小宮 慎司
山本 春樹
発明の名称 呼出システム及び呼出方法  
代理人 大澤 敬  

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