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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1194148
審判番号 不服2006-5210  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-20 
確定日 2009-03-09 
事件の表示 平成 7年特許願第157265号「画像遊技装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月 7日出願公開、特開平 9- 687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成7年6月23日の出願であって、平成18年2月8日付けで拒絶の査定がされた(同日付けで平成17年12月19日付け手続補正は却下された。)ため、これを不服として同年3月20日付けで本件審判請求がされるとともに、同年4月19日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成18年4月19日付けの手続補正を却下するとともに、新たな拒絶の理由(いわゆる「最後の拒絶理由」である。)を通知したところ、請求人は平成20年12月15日付けで意見書及び手続補正書(この補正を、以下「本件補正」という。)を提出した。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年12月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、特許請求の範囲に限っていうと、補正前の請求項3,4を削除(これに伴い、請求項5,6の項番が繰り上がる。)するとともに、【請求項1】を次のように補正するものである。
「ゲームメダルの投入を条件に、画像表示画面上でスロットマシンゲームを開始可能とするメインゲーム開始判定手段と、
前記メインゲーム開始判定手段によって開始可能となった前記スロットマシンゲームにおいて、スタート信号の入力を条件に、前記メインゲームを行わせるメインゲーム制御手段と、
前記メインゲーム制御手段によって行われた前記スロットマシンゲームにおけるゲーム結果を判定するメインゲーム判定手段と、
前記メインゲーム判定手段によって利益が付与されたことを条件に、前記スロットマシンゲームとは異なる前記画像表示画面上でのサブゲームへの移行を遊技者の外部操作により選択させるサブゲーム移行選択手段と、
前記サブゲーム移行選択手段によって前記サブゲームへの移行が選択されたことを条件に、遊技者が選択したサブゲームを行わせるサブゲーム制御手段と、
前記サブゲーム制御手段によって行われたサブゲーム結果にもとづいて、前記メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる利益増減手段と
を備え、
上記サブゲームには、複数種類のサブゲームが設けられ、
上記サブゲーム移行選択手段は、遊技者の外部操作に基づいてサブゲームへの移行が選択されたことを条件に、前記複数種類のサブゲームから何れか一つのサブゲームを遊技者が選択可能に設定し、
前記サブゲームには、
遊技者に対して先に付与された利益を増加させる増加率を複数有する一のサブゲームと、
前記一のサブゲームにおける増加率とは異なる増加率を含む増加率を複数有する他のサブゲームとを含み、
前記利益増減手段は、遊技者によって選択されたサブゲーム結果に基づいて、選択されたサブゲームにおける複数の増加率のうちのいずれかの増加率が選択され、その増加率により先に付与された利益の増減を行うようにした、
ことを特徴とする画像遊技装置。」(下線部が補正箇所)

2.補正目的の検討
要するに、請求項1の補正は、遊技者が複数種類のサブゲームからその1つを選択可能とすることを主たる補正事項とするものである。
これは、広い意味では特許請求の範囲の減縮に該当するが、平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)17条の2第3項2号は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を無条件に認めているのではなく、「前号に規定する一の請求項に記載された発明(第一項第四号又は第五号の規定による補正前のものに限る。以下この号において「補正前発明」という。)と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において、その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものに限る。」との条件を付している。
そこで検討するに、「複数種類のサブゲームから何れか一つのサブゲームを遊技者が選択可能に設定」するための手段が、補正前から存在した「サブゲーム移行選択手段」であるかのように装って記載しているが、「サブゲーム移行選択手段」はあくまでも、サブゲームへ移行するかどうかだけを選択する手段であり、「サブゲームへの移行が選択されたことを条件に、前記複数種類のサブゲームから何れか一つのサブゲームを遊技者が選択」する手段が「サブゲーム移行選択手段」であると理解することは困難である。本願明細書に出願当初から一貫して「操作パネル12に、サブゲーム種類選択スイッチを別に設け、スロットマシンゲームで賞メダルが得られた場合に、サブゲームへの移行を選択した後に、前記種類選択スイッチを操作することで、上記第1から第5実施例のいずれか一つのサブゲームを、遊技者が選択することができるようにしてもよい。」(段落【0106】)と記載があることからみても、「サブゲームへの移行が選択されたことを条件に、前記複数種類のサブゲームから何れか一つのサブゲームを遊技者が選択」する手段は「サブゲーム移行選択手段」ではない。
加えて、本件出願の分割出願である特願2001-230754号において、本件補正と同日に補正がされたところ、同出願の【請求項1】には「前記メインゲーム判定手段によって利益が付与されたことを条件に、前記スロットマシンゲームとは異なる画像表示画面で行われるサブゲームへの移行を遊技者の外部操作により選択させるサブゲーム移行選択手段」、「複数種類設けられたサブゲームの中からいずれか一つのサブゲームを遊技者の外部操作により選択させるためのサブゲーム種類選択スイッチ」及び「前記サブゲーム移行手段によってサブゲームへの移行が選択されたこと及び前記サブゲーム種類選択スイッチの操作によっていずれか一つの種類のサブゲームが選択されたことを条件に、いずれか一つの種類の前記サブゲームを行わせるサブゲーム制御手段」との記載があり、請求人も「サブゲームへの移行が選択されたことを条件に、前記複数種類のサブゲームから何れか一つのサブゲームを遊技者が選択」する手段が「サブゲーム移行選択手段」ではないことを認識していると解すべきである。
すなわち、補正前発明の構成ではない「複数種類のサブゲームから何れか一つのサブゲームを遊技者が選択可能に設定」するための手段を新たに追加したものであるから、補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定したものではない。
さらに、解決しようとする課題についてみるに、本願明細書の「サブゲームの種類を選択することができるようにすることで、遊技者は自分の好みに応じたサブゲームを選択することができたり、サブゲームを行うごとに異なる種類のサブゲームを楽しむことができる。したがって、バラエティーに富む遊技ができ、また、遊技者の趣向にゲーム内容を合わせることができため、遊技者は長時間遊技を継続しても飽きることがない。」(段落【0108】)との記載からみて、新たな課題を追加したものと解さざるを得ない。
以上のとおりであるから、遊技者が複数種類のサブゲームからその1つを選択可能とすることを含む、本件補正は旧特許法17条の2第3項2号の規定に違反しており、同項1号、3号及び4号の規定にも該当しない。
そうではあるが、前示のとおり広い意味では特許請求の範囲の減縮に該当するため、仮に旧特許法17条の2第3項2号の規定に該当するとした場合の判断もしておく。

3.独立特許要件の判断その1又は新規事項追加その1
「前記一のサブゲームにおける増加率とは異なる増加率を含む増加率を複数有する他のサブゲーム」について検討する。
上記記載中「増加率を含む増加率」とあるがため、日本語として著しく不明確であり、その意味を一義的に解することができない。
そのため、何らかの誤記であると考えられ、想像できるのは次の3とおりのどれかである
(第1解釈)「前記一のサブゲームにおける増加率とは異なる増加率を含む他のサブゲーム」
(第2解釈)「前記一のサブゲームにおける増加率とは異なる増加率を複数有する他のサブゲーム」
(第3解釈)「前記一のサブゲームにおける増加率とは異なる増加率を含み、増加率を複数有する他のサブゲーム」
いずれの解釈が妥当なのかわからないから、本件補正後の請求項1の記載は著しく不明確であり、旧特許法36条5項に規定する要件を満たしておらず、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、本件補正は旧特許法17条の2第4項において読み替えて準用する同法126条3項の規定に違反する。
第2解釈が正しいのだとすると、本件補正は新規事項追加に当たり、旧特許法17条の2第2項において準用する同法17条2項の規定に違反する。なぜなら、願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)には、サブゲームを複数種類設けた実施例は第6実施例しか記載されておらず、その第6実施例で用意されたサブゲームは、第1?第5実施例の各サブゲームであり、「利益を増加させる増加率を複数有するサブゲーム」は第3?第5実施例のサブゲームであって、増加率は0倍、1倍のほかに、第3実施例及び第5実施例では2倍,3倍及び4倍が設定され、第4実施例では2倍及び4倍が設定されているから,「一のサブゲーム」に該当しうるのは第4実施例だけであり、第4実施例における増加率と異なる増加率は3倍だけだからである。

4.新規事項追加その2
「前記利益増減手段は、遊技者によって選択されたサブゲーム結果に基づいて、選択されたサブゲームにおける複数の増加率のうちのいずれかの増加率が選択され、その増加率により先に付与された利益の増減を行うようにした」について検討する。
上記記載は、サブゲーム結果と増加率を対応づけることまでは特定していない。すなわち、「サブゲームにおける複数の増加率」としては、レース競技のように、オッズ(増加率)を設定しておき、遊技者が賭けた相手が勝つかどうか(これが「サブゲーム結果」)により、遊技者が選んだ増加率が選択される場合を含んでいる。この点については、当審の平成20年10月15日付け補正却下決定において、「「一のサブゲーム」又は「他のサブゲーム」の利益を増加させる増加率は、サブゲーム結果と無関係に選択決定され、選択決定された増加率を用いるかどうかがサブゲーム結果により定まると解すべきであり、そのように確定的に解釈できないとしても、そのような場合を含むことは明らかである。」と説示したにもかかわらず、改善されていない。さらに、前掲特願2001-230754号では「複数のサブゲーム結果に対して利益を増加する異なる増加率を割り当て、サブゲーム結果に対して割り当てられた増加率を用いて先に付与された利益の増減をサブゲーム結果に基づいて行う」と記載したことを併せ考慮すると、意図的に異なる表現をし、レース競技のようなサブゲームを含む意図と解さざるを得ない。
そして、当初明細書に記載されたサブゲームは、すべてサブゲーム結果と増加率を対応づけたものである。
したがって、本件補正は旧特許法17条の2第2項において準用する同法17条2項の規定に違反する。

5.引用刊行物の記載事項
原審における平成17年10月12日拒絶理由に引用され、当審における拒絶の理由にも引用した特開平5-237216号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?カの記載が図示とともにある。
ア.「複数種類の絵柄を行列状に配列して表示する配列表示手段と、前記配列表示手段が配列表示した状態を変更する配列変更手段と、前記配列変更手段が変更した配列状態が所定の絵柄の組合せであるか否かを検出する配列検出手段と、前記配列検出手段が所定の絵柄の組合せであることを検出したときに前記配列表示手段が配列表示した状態を再度変更する配列再変更手段と、前記配列検出手段が所定の絵柄の組合せであることを検出したときにプレイヤーが操作してゲームの終了または前記配列再変更手段の起動を選択指示する選択指示手段と、前記配列検出手段が所定の絵柄の組合せであることを検出したときに、前記配列再変更手段と連動して賭け率を変更する賭け率変更手段を具備することを特徴とするスロットゲームマシン。」(【請求項1】)
イ.「ベットとはコインを賭けることであり、図2に示すコイン投入口17からプレイヤーがコインを投入することを意味する。・・・プレイヤーがベットを行うと、CPU回路1は出力回路6およびモータードライバー7を介してステッピングモーターリール(図示せず)を駆動し、リール11a?cの回転駆動を始める。」(段落【0022】?【0023】)
ウ.「リール11a?cの回転を停止させると、CPU回路1はリール11a?cが停止したときの絵柄の縦、横、および斜めの列が予め決められた絵柄の組合せ(入賞の組合せ)であるか否かの判定を行う(ステップS3)。入賞が無い場合にはゲームを終了(GAME OVER)して、直ちにステップS2に戻る。入賞が有る場合には(ステップS5)、プレイヤーがダブルアップと払い出しとを選択できるように、その旨をディスプレー回路5を介してプレイヤーに知らせる。」(段落【0024】)
エ.「プレイヤーがダブルアップボタン13(図2参照)を押してダブルアップを選択すると(ステップS6)、CPU回路1は出力回路6およびモータードライバー7を介してリール11aのみ回転駆動を始める。その後、一定時間後にCPU回路1はリール11aの回転を停止させる(ステップS8)。・・・リール11aの回転を停止させると、CPU回路1はリール11aが入賞であるか否か、即ち絵柄が出たかゴースト(空白)が出たかの判定を行う(ステップS8)。入賞が無い場合にはダブルアップ負けとしてゲームを終了(GAMEOVER)し、ステップS2に戻る。入賞が有る場合には(ステップS10)、プレイヤーがダブルアップと払い出しとを選択できるように、その旨をディスプレー回路5を介してプレイヤーに再度知らせる。」(段落【0025】?【0026】)
オ.「このようにして、ダブルアップ勝ちが続く限りは、プレイヤーは繰り返してダブルアップを選択でき、ダブルアップを選択しなかった場合の2倍の枚数のコインを得ることができる。逆に、ダブルアップで負けた場合には、それまでに獲得した所定枚数のコインの支払いを受けることができない。」(段落【0028】)
カ.「上述した実施例においては、複数列のリールを回転および停止させるメカ式のスロットゲームマシンとして説明したが、メカ式に限定されることはなく、陰極線管に絵柄を表示するようにしたスロットゲームマシンにも本発明を適用することが可能である。」(段落【0030】)

6.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載カによれば、記載アの「複数種類の絵柄」は陰極線管に表示してもよい。その場合、記載イの「ステッピングモーターリール(図示せず)を駆動」は、陰極線管上でゲームが開始されることを意味する。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「プレイヤーがコインを投入するとゲームを開始するスロットゲームマシンであって、
複数種類の絵柄を行列状に配列して陰極線管に表示する配列表示手段と、前記配列表示手段が配列表示した状態を変更する配列変更手段と、前記配列変更手段が変更した配列状態が所定の絵柄の組合せであるか否かを検出する配列検出手段と、前記配列検出手段が所定の絵柄の組合せであることを検出したときに前記配列表示手段が配列表示した状態を再度変更する配列再変更手段と、前記配列検出手段が所定の絵柄の組合せであることを検出したときにプレイヤーが操作してゲームの終了または前記配列再変更手段の起動を選択指示する選択指示手段と、前記配列検出手段が所定の絵柄の組合せであることを検出したときに、前記配列再変更手段と連動して賭け率を変更する賭け率変更手段を具備することを特徴とするスロットゲームマシン。」

7.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「コイン」及び「プレイヤーが操作してゲームの終了または前記配列再変更手段の起動を選択指示する」前までのゲームは、補正発明の「ゲームメダル」及び「スロットマシンゲームであるメインゲーム」にそれぞれ相当し、「プレイヤーがコインを投入するとゲームを開始する」以上、引用発明1は「ゲームメダルの投入を条件に、画像表示画面上でスロットマシンゲームを開始可能とするメインゲーム開始判定手段」及び「前記メインゲーム開始判定手段によって開始可能となった前記スロットマシンゲームにおいて、スタート信号の入力を条件に、前記メインゲームを行わせるメインゲーム制御手段」を備える。
引用発明1の「配列変更手段が変更した配列状態が所定の絵柄の組合せであるか否かを検出する配列検出手段」及び「配列検出手段が所定の絵柄の組合せであることを検出したときにプレイヤーが操作してゲームの終了または前記配列再変更手段の起動を選択指示する選択指示手段」(実施例では、記載エの「ダブルアップボタン13」)は、補正発明の「前記メインゲーム制御手段によって行われたゲームの結果を判定するメインゲーム判定手段」及び「前記メインゲーム判定手段によって利益が付与されたことを条件に、前記スロットマシンゲームとは異なる前記画像表示画面上でのサブゲームへの移行を遊技者の外部操作により選択させるサブゲーム移行選択手段」に相当し、引用発明1の「配列表示手段が配列表示した状態を再度変更」が補正発明の「サブゲーム」に相当し、引用発明1は補正発明でいうところの「前記サブゲーム移行手段によってサブゲームへの移行が選択されたことを条件に、サブゲームを行わせるサブゲーム制御手段」を備える。
引用発明1の「賭け率を変更」とは、引用例1の記載オによれば、メインゲームの配当を倍増することであり、倍増されるかどうかは、「配列表示した状態を再度変更」した結果、すなわち、サブゲーム結果により定まるから、「サブゲーム制御手段によって行われたサブゲーム結果にもとづいて、前記メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる利益増減手段」は引用発明1にも備わっている。
さらに、引用発明1の「配列表示手段」は「複数種類の絵柄を行列状に配列して陰極線管に表示する」ものであるから、「画像表示画面」と称することができ、そうである以上引用発明1の「スロットゲームマシン」を「画像遊技装置」と称することには何の問題もない。
したがって、補正発明と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりである。
〈一致点〉
「ゲームメダルの投入を条件に、画像表示画面上でスロットマシンゲームを開始可能とするメインゲーム開始判定手段と、
前記メインゲーム開始判定手段によって開始可能となった前記スロットマシンゲームにおいて、スタート信号の入力を条件に、前記メインゲームを行わせるメインゲーム制御手段と、
前記メインゲーム制御手段によって行われた前記スロットマシンゲームにおけるゲーム結果を判定するメインゲーム判定手段と、
前記メインゲーム判定手段によって利益が付与されたことを条件に、前記スロットマシンゲームとは異なる前記画像表示画面上でのサブゲームへの移行を遊技者の外部操作により選択させるサブゲーム移行選択手段と、
前記サブゲーム移行選択手段によって前記サブゲームへの移行が選択されたことを条件に、サブゲームを行わせるサブゲーム制御手段と、
前記サブゲーム制御手段によって行われたサブゲーム結果にもとづいて、前記メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる利益増減手段と
を備える画像遊技装置。」
〈相違点1〉サブゲームに関連して、補正発明が「上記サブゲームには、複数種類のサブゲームが設けられ」及び、「上記サブゲーム移行選択手段は、遊技者の外部操作に基づいてサブゲームへの移行が選択されたことを条件に、前記複数種類のサブゲームから何れか一つのサブゲームを遊技者が選択可能に設定し」と限定し、サブゲーム制御手段に行わせるものが「遊技者が選択したサブゲーム」と限定しているのに対し、引用発明1はこのような構成を有さない点。
〈相違点2〉同じくサブゲームに関連して、補正発明が「前記サブゲームには、遊技者に対して先に付与された利益を増加させる増加率を複数有する一のサブゲームと、前記一のサブゲームにおける増加率とは異なる増加率を含む増加率を複数有する他のサブゲームとを含み、前記利益増減手段は、遊技者によって選択されたサブゲーム結果に基づいて、選択されたサブゲームにおける複数の増加率のうちのいずれかの増加率が選択され、その増加率により先に付与された利益の増減を行うようにした」と限定するのに対し、引用発明1ではサブゲーム選択の余地がそもそもなく、唯一のサブゲームも「遊技者に対して先に付与された利益を増加させる増加率を複数有する」ゲームではない点。

8.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断その2
(1)相違点1について
原審における平成17年10月12日拒絶理由に引用され、当審における拒絶の理由にも引用した特開昭62-236579号公報(以下「引用例2」という。)は発明の名称を「回胴式遊戯機」とする公開公報であり、「通常ゲームで入賞したばあい、さらに別のゲームをやらせて、入賞配当を倍増させたり、「当り」をとると配当メダルを払い出したり、さらには通常ゲームで入賞しないばあいも低配当の得点を積み立てるチャンスを与えれば、さらに面白いゲームができるであろうことを見出した。」(3頁左上欄11?17行)及び「倍増ゲーム用の停止ボタン(29)を押したときは(112)、倍増ゲームに移行し、・・・遊戯者が、停止ボタン(29)を押したときは(112)、その停止信号がCPUに取りこまれる。それによってCPUは点滅制御を停止し、停止操作された時点に点灯していた、いずれか一方のランプ(51)または(52)のみを点灯させ、他方のランプ(51)または(52)を消灯させる。このとき奇数字が表示されているランプ(51)、が点灯していたとすれば、ターゲット(28)位置に停止しているディスク(4)上の数字が「1」または「3」であれば「当り」あり、そうでなければ「外れ」となる。また偶数字が表示されているランプ(52)が点灯していたとすれば、ターゲット(28)位置に停止しているディスク(4)上の数字が「2」または「4」であれば「当り」であり、そうでなければ「外れ」となる。」(7頁右上欄末行?左下欄18行)との各記載があり、引用例2記載の「倍増ゲーム」は引用発明1の「配列表示手段が配列表示した状態を再度変更」同様、補正発明の「サブゲーム」に相当する。
同じく引用した実願平3-41304号(実開平5-88590号)のCD-ROM(以下「引用例3」という。)には、「図2に於いて、まず、1はメインゲームの場合図示しない複数個の疑似リールを表示し、一方、サブゲームの場合ダブルアップ回路3の出力に基づいて次に出てくるカードの数字が大きいかまたは小さいかを当てるダブルアップゲームを表示する表示装置4が設けられ、かつ、中央処理装置5を内蔵するゲーム機本体である。」(段落【0013】)との記載があり、「複数個の疑似リール」とあることから、「メインゲーム」は「スロットマシンゲーム」であると認識することができ、「サブゲーム」又は「ダブルアップゲーム」は、「メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる」ゲームであり、補正発明の「サブゲーム」に相当する。
このように、補正発明のサブゲームに相当するゲームは、引用例1?3の何れにも記載されており、それらは異なるゲームである。要するに、補正発明の「サブゲーム」に相当するゲームとしては、複数種類が知られている。
さらに、本件出願の相当以前に頒布された特開平1-124481号公報には、「遊技球の遊技結果に基づいて遊技者が選択できるゲームの種類として複数種用意することが、ゲームの興趣を高める意味から大切である」(2頁左上欄1?4行)との記載があり、ここでいう「遊技者が選択できるゲーム」は「メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる」ゲームではないけれども、「メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる」ゲームを複数用意することも、ゲームの興趣を高める点で有用なことは明らかである。
そうであれば、引用発明1を出発点として、サブゲームを複数種類設け、遊技者が外部操作により1つのサブゲームを選択可能とすること、すなわち、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
引用例1の記載オにあるとおり、引用発明1においては、ダブルアップ勝ちが続く限り繰り返してダブルアップを選択できることが予定されており、最終的な増加率はダブルアップ選択回数により異なる。
他方、1回のゲームでの利益として複数の利益を用意し、ゲーム結果に基づいて、複数の利益のうちのいずれかの利益が選択されるようなゲームは、周知である。その1つは、「第2[理由]4」で述べたレース競技を模したゲームであるが、本願明細書に実施例として示されたような、ゲーム結果と利益を対応づけたゲームは周知である。例えば、原審における平成17年10月12日拒絶理由に引用され、当審における拒絶の理由にも引用した特開平1-126991号公報には「買い物を済ませた顧客がゲーム式の景品配当を当て」(2頁左下欄2?3行)及び「11は前記支払い金額読取り部5へ連係する景品配当率の表示部で、ルーレット式によるものを示し、回転体12の表面を複数に区分して、その区分した部分に異なる景品配当率の数字13を例えば2%、3%、5%。10%等と順次表わし、後記景品配当率の判定操作部の操作により回転体12を回転始動し、これの回転停止によって規定指標14位置に対応する数字13が当り景品配当率となる。」(3頁左上欄17行?右上欄5行)との各記載があり、景品配当率はゲーム結果と利益を対応づけたゲームにより決定されている。また、本件出願より相当以前に頒布された特公平1-57592号公報には、「第1競争ゲームの予想登録は1着と2着の組合わせを当てる、いわゆる連勝複式であり、第2競争ゲームは第1競争ゲームで獲得したメダルを賭ける変形連勝式、すなわち7頭のうちの1頭をあらかじめ選択し、その馬がたとえば4着以内に入着したとき、その馬の着順に対応する配当率で第1競争ゲームの獲得メダルを払戻す方式である。」(5欄17?23行)との記載があり、第2競争ゲームはゲーム結果と利益を対応づけたゲームであるばかりか、「第1競争ゲームで獲得したメダルを賭ける」ゲームであるから、「第1競争ゲーム」が「メインゲーム」であり、第2競争ゲームは「サブゲーム」に位置づけられる。
引用発明1においても最終的な増加率は複数とおりあるのだから、上記周知技術を採用して、遊技者に対して先に付与された利益を増加させる増加率を複数有するサブゲームを用意することは当業者にとって想到容易である。さらに、相違点1に係る補正発明の構成を採用することが想到容易な以上、「利益増減手段は、遊技者によって選択されたサブゲーム結果に基づいて、選択されたサブゲームにおける複数の増加率のうちのいずれかの増加率が選択され、その増加率により先に付与された利益の増減を行う」ことも容易である。
残る検討項目は、「前記一のサブゲームにおける増加率とは異なる増加率を含む増加率を複数有する他のサブゲームとを含」むことだけである。この構成が不明確であることは「第2[理由]3」で述べたとおりであり、その際3つの解釈を示した。サブゲームを複数種類用意すること、1つのサブゲームの増加率を複数設けることが容易である以上、異なるサブゲームにおける増加率を異ならせることが、遊技者の選択幅を広げることは明らかであるから、何れの解釈であっても、設計事項というよりない。
したがって、相違点2に係る補正発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1、引用例2,3記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、本件補正は旧特許法17条の2第4項において読み替えて準用する同法126条3項の規定に違反する。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおりであるから、旧特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.特許請求の範囲の記載
平成17年12月19日付け手続補正は原審において却下され、平成18年4月19日付けの手続補正及び本件補正は当審において却下されたから、特許請求の範囲は、平成16年6月14日付けで補正されたとおりのものであり、特に【請求項1】及び【請求項3】は次のとおりである。
【請求項1】 ゲームメダルの投入を条件に、画像表示画面上でスロットマシンゲームを開始可能とするメインゲーム開始判定手段と、
前記メインゲーム開始判定手段によって開始可能となった前記スロットマシンゲームにおいて、スタート信号の入力を条件に、前記メインゲームを行わせるメインゲーム制御手段と、
前記メインゲーム制御手段によって行われた前記スロットマシンゲームにおけるゲーム結果を判定するメインゲーム判定手段と、
前記メインゲーム判定手段によって利益が付与されたことを条件に、前記スロットマシンゲームとは異なる前記画像表示画面上でのサブゲームへの移行を遊技者の外部操作により選択させるサブゲーム移行選択手段と、
前記サブゲーム移行選択手段によって前記サブゲームへの移行が選択されたことを条件に、前記サブゲームを行わせるサブゲーム制御手段と、
前記サブゲーム制御手段によって行われたサブゲーム結果にもとづいて、前記メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる利益増減手段と
を備え、
前記利益増減手段は、遊技者に対して先に付与された利益を増加させる増加率を複数パターンを備え、
複数パターンある増加率のうち、いずれかの増加率を用いて先に付与された利益の増減を行うようにしたことを特徴とする画像遊技装置。
【請求項3】 サブゲーム制御手段は、
画像表示画面上に、所定範囲内の数字を順次高速で変動表示する基本数字表示部と、前記基本数字表示部とは別に設けられ、所定範囲内の数字を高速で変動表示する選択数字表示部とを表示するとともに、
前記基本数字表示部における数字の変動表示を、遊技者の外部操作により停止させる基本数字変動停止手段と、
前記選択数字表示部による数字の変動表示を、遊技者の外部操作により停止させる選択数字変動停止手段とを備え、
利益増減手段は、
前記基本数字表示部に停止表示された基本数字と、前記選択数字表示部に停止表示された選択数字とを比較して、遊技者に対して先に付与された利益を増加させるか又は遊技者に対して先に付与された利益を没収するかを判定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の画像遊技装置。

2.記載不備又は新規事項追加その1
上記のとおり、請求項1には「複数パターンある増加率のうち、いずれかの増加率を用いて先に付与された利益の増減を行うようにした」との記載がある。
上記記載が「複数ある増加率のうち、いずれかの増加率を用いて先に付与された利益の増減を行うようにした」であれば、その意味は明確であるが、「複数ある増加率」ではなく「複数パターンある増加率」とされており、「複数パターンある増加率のうち」のうちのそれぞれは「パターン」であり、増加率そのものなのかどうか不明確である。
「複数パターンある増加率」が「複数ある増加率」の趣旨であるならば著しく不明確な記載であるし、そうでないならば「複数パターンある増加率のうち、いずれかの増加率を用いて先に付与された利益の増減を行うようにした」との事項は当初明細書に記載されていないとともに、「パターン」との文言が何を意味するのか不明確である。
したがって、特許請求の範囲の記載は旧特許法36条5項に規定する要件を満たしていないとともに、解釈次第では同法17条の2第2項で準用する同法17条2項に規定する要件を満たさない補正がされている。

3.新規事項追加その2
以下では、「利益を増加させる増加率を複数パターンを備え」及び「複数パターンある増加率」が「利益を増加させる増加率を複数備え」及び「複数ある増加率」の趣旨であるとして検討する。
請求項3は「前記基本数字表示部に停止表示された基本数字と、前記選択数字表示部に停止表示された選択数字とを比較して、遊技者に対して先に付与された利益を増加させるか又は遊技者に対して先に付与された利益を没収するかを判定するようにした」ものである。
当初明細書には、サブゲームとして第1?第5実施例の記載があるところ、2つの数字の大小比較に該当するのは第1又は第2実施例のみである。そして、第1及び第2実施例では、「利益を増加させる増加率」は2倍のみであって、「遊技者に対して先に付与された利益を増加させる増加率を複数備え」るものではない。
そうである以上、請求項3に係る発明が当初明細書に記載されていないことは明らかであり、平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項に規定する要件を満たさない補正がされている。

4.進歩性欠如
請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記請求項1に記載されたとおりのもの(ただし、「利益を増加させる増加率を複数パターンを備え」及び「複数パターンある増加率」は、「利益を増加させる増加率を複数備え」及び「複数ある増加率」の趣旨に解する。)であり、これと引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「ゲームメダルの投入を条件に、画像表示画面上でスロットマシンゲームを開始可能とするメインゲーム開始判定手段と、
前記メインゲーム開始判定手段によって開始可能となった前記スロットマシンゲームにおいて、スタート信号の入力を条件に、前記メインゲームを行わせるメインゲーム制御手段と、
前記メインゲーム制御手段によって行われた前記スロットマシンゲームにおけるゲーム結果を判定するメインゲーム判定手段と、
前記メインゲーム判定手段によって利益が付与されたことを条件に、前記スロットマシンゲームとは異なる前記画像表示画面上でのサブゲームへの移行を遊技者の外部操作により選択させるサブゲーム移行選択手段と、
前記サブゲーム移行選択手段によって前記サブゲームへの移行が選択されたことを条件に、前記サブゲームを行わせるサブゲーム制御手段と、
前記サブゲーム制御手段によって行われたサブゲーム結果にもとづいて、前記メインゲーム判定手段によって先に付与された利益を増加又は減少させる利益増減手段と
を備える画像遊技装置。」
〈相違点〉本願発明が「前記利益増減手段は、遊技者に対して先に付与された利益を増加させる増加率を複数備え、複数ある増加率のうち、いずれかの増加率を用いて先に付与された利益の増減を行うようにした」としているのに対し、引用発明1の増加率は1とおりである点。

「第2[理由]8(2)」で述べたとおり、引用発明1においては、ダブルアップ勝ちが続く限り繰り返してダブルアップを選択できることが予定されており、最終的な増加率はダブルアップ選択回数により異なるとともに、1回のゲームでの利益として複数の利益を用意し、ゲーム結果に基づいて、複数の利益のうちのいずれかの利益が選択されるようなゲームは、周知である。
引用発明1においても最終的な増加率は複数とおりあるのだから、上記周知技術を採用して、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、そのことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-06 
結審通知日 2009-01-08 
審決日 2009-01-20 
出願番号 特願平7-157265
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 55- WZ (A63F)
P 1 8・ 534- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 川島 陵司
有家 秀郎
発明の名称 画像遊技装置  
代理人 竹山 宏明  

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