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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1194313
審判番号 不服2008-10213  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-23 
確定日 2009-03-12 
事件の表示 特願2003- 29349「長尺ワーク材の曲げ加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月26日出願公開、特開2004-237318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯
本件出願は、平成15年2月6日の出願であって、同19年11月14日付けで拒絶の理由が通知されたが、指定期間内に意見書の提出及び手続補正がなされず、同20年3月17日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、同20年4月23日に本件審判の請求がされたものである。


2 本願発明
本件出願の請求項1ないし11に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。

[本願発明]
「可動ダイスを有する3次元曲げ加工ヘッドと、この曲げ加工ヘッドに長尺ワーク材を押し通し供給するワーク材供給装置と、前記曲げ加工ヘッドの3次元操作手段とを具備する長尺ワーク材の曲げ加工装置において、前記曲げ加工ヘッドより押し出された後の前記ワーク材の形状を測定する形状センサ手段と、前記形状センサ手段による前記ワーク材の形状測定値と形状目標値との偏差に基づいて前記3次元操作手段の駆動量を変化させる制御手段と、を備えたことを特徴とする、長尺ワーク材の曲げ加工装置であって、
前記形状センサ手段が、接触式変位測定手段で実現されたことを特徴とする長尺ワーク材の曲げ加工装置。」


3.引用刊行物及びその記載事項
[引用刊行物]
平成19年11月14日付けで通知した拒絶理由には、本件出願前に頒布された刊行物である次の刊行物1が引用されている。

刊行物1:特開平07-024533号公報

(1)刊行物1の記載事項
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

ア 段落【0001】?【0004】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長尺な被加工材を支持する支持装置から突出した部分の曲げ加工を行う軸線曲げ加工方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の軸線曲げ加工方法およびその装置としては、たとえば、図22に示されているようなものがある。この図22における(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。図において、軸線曲げ加工装置は、長尺な被加工材Wを長手方向へ送る送り装置101と、上記被加工材Wの長手方向への移動を許容して被加工材Wを支持する支持装置102と、支持装置102から突出した部分の被加工材Wの曲げ加工を行う曲げ装置110とを備える。
【0003】この曲げ装置110は、上記支持装置102に支持された曲げ加工前の直線状の被加工材Wの軸線とほぼ平行な第1の軸心を中心として、ベース103に回動自在に支持された第1の回動部材120と、上記第1の軸心と直交する方向の第2の軸心を中心として、回動自在に設けられた第2の回動部材130と、上記第1、第2の軸心に対して直交する方向の第3の軸心を中心として、回動自在に設けられた第3の回動部材140と、この第3の回動部材140に設けられ、被加工材Wと適宜に係合する係合部を備えた曲げ型150とより構成されている。さらに、第1、第2、第3の回動部材120、130、140をそれぞれ単独にまたは同時に回動させるための複数の駆動装置121、122、131、132、133、141、142と、その作動を制御するための制御装置104とが設けられている。
【0004】上述の軸線曲げ加工装置においては、送り装置101により被加工材Wを軸方向に移動させながら、上記第1、第2、第3の回動部材120、130、140をそれぞれ単独または複数同時に回動させることにより、被加工材Wの支持装置102より突出した部分をこれに適宜係合する係合部を備えた曲げ型150により順次連続的に曲げ、または、ねじり、およびこれらの複合的な曲げ加工を行うものである。これにより、上記の軸線曲げ加工装置は他の曲げ工法、たとえばドローベンダ、プレス曲げ、あるいはストレッチベンダなどではできない自由曲線曲げを順次連続的に行うことができる。」

イ 段落【0010】?【0012】
「【0010】
【実施例】図1は、本発明の第1の実施例を示す軸線曲げ加工装置の説明図である。軸線曲げ加工ユニットBには、供給された被加工材Wを軸方向に移動させる送り装置1が設けられ、この被加工材Wと適宜に係合し被加工材Wの軸方向のみへの移動を許容して支持する支持装置2がベース3に設けられるとともに、被加工材Wの支持装置2から突出した部分の曲げ加工を行う曲げ装置10が装備されている。
【0011】曲げ装置10は、支持装置2に支持された曲げ加工前の直線状の被加工材Wの軸線とほぼ平行な図示しない第1の軸心を中心として、ベース3に回動自在に支承された第1の回動部材20と、上記第1の軸心と直交する方向の第2の軸心29を中心として、回動自在に設けられた第2の回動部材30と、第3の軸心39を中心として、回動自在に設けられた第3の回動部材40と、この第3の回動部材40に設けられ、被加工材Wと適宜に係合する係合部50aを備えた曲げ型50により構成される。
【0012】さらに、第1、第2、第3の回動部材20、30、40をそれぞれ単独にまたは同時に回動させるための駆動装置21、31、41と、その作動を制御するための制御装置6とが設けられている。なお、上記駆動装置21、31、41はそれぞれタイミングベルトおよび歯車による伝導装置22、32、42と、駆動モータ23、33、43とから構成されている。」

ウ 段落【0019】
「これにより、回動部材20、30、40は指令された加工条件に従い、所定の角度で回動しながら、被加工材Wが送り装置1により連続的、または継続的に移動して、支持装置2から突出した部分の被加工材Wの曲げ加工が行われる。」

エ 段落【0040】?【0042】
「【0040】本実施例では、所定の長さに切断された被加工材Wが、軸線曲げ加工ユニットB”’に供給され、送り装置1により連続的に送り出される。そして、曲げ装置10において曲げ加工が施されるが、特定部位の曲げ加工後、形状測定装置90においてスプリングバック量が測定され、さらに、この測定データが制御装置6””に送られる。制御装置では、送られて来たスプリングバック量データから、その被加工材Wに最適な加工条件が、予め登録されたデータファイル5”から呼び出されて実行指令が出される。
【0041】これにより、回動部材20、30、40は指令された最適加工条件に従い、所定の角度で回動しつつ、被加工材Wが送り装置1より連続的、または断続的に移動して支持装置2’から突出した部分の被加工材Wの曲げ加工が行われる。そして、これらの曲げ加工は、各々の被加工材Wに対して、図17に示すようにその素材耐力からスプリングバック量およびその他のばらつきを見込んだ最適加工条件で加工されるために、所定の成形品形状精度範囲内に維持された曲げ加工を行うことができる。
【0042】次に、本実施例の適用例をドアーサッシュの例をあげてより具体的に説明する。ここでは第3の実施例とは逆方向に、図18に示されるように、ドアーサッシュが曲げ部a、b、cの順で曲げ加工が施されるものとする。このとき、曲げ部aの角度αaの精度は厳しく要求されておらず、曲げ部b、cの角度αb、αcについては精度が厳しく要求されているものとする。本実施例では、曲げ部aで曲げ加工が施された後、そのスプリングバック量が形状測定装置90で測定されることにより、その被加工材Wの耐力が判明する。そして、精度が厳しく要求される曲げ部b、cにおいては、その被加工材Wの耐力値から図17に示すように要求精度範囲、たとえば±0.5mm、内に入る最適加工条件が、予め数種類のプログラムが登録されたデータファイル5”から呼び出されて曲げ加工が実行される。」

オ 段落【0044】?【0047】
「【0044】図20は、第6の実施例として前実施例に用いられた形状測定装置の他の例を示す。この実施例では、軸線曲げ加工ユニットB””に前実施例におけるレーザ変位計のかわりに、ストロークセンサ96を備えたものである。ストロークセンサ96を備える形状測定装置95とデータファイル5”’のほかは、第5の実施例と同様である。
【0045】この第6実施例の適用例として、図21にサイドメンバの曲げ加工を示す。このサイドメンバの場合は、曲げ角度の精度については厳しくないが、部品の取り付け面となる軸線間距離Hの精度が厳しく要求される。このような部材は、まず曲げ部eを成形して、次に曲げ部fを成形する。このときの理想形状はg点で角度θの曲げ加工を行い、g点から距離sの位置h点でも角度θの曲げを行った形状である。しかし、スプリングバック量を考慮しない曲げ加工条件で成形すると、曲げ部eのスプリングバック量Δθの影響を受け、g点から(θ+Δθ)の角度で長さsの位置h’点で曲げ加工が行われる。したがって、図21のように精度が要求される軸線間距離HがΔHだけばらつく結果となる。
【0046】本実施例では、上記軸線間距離のばらつきΔHを要求精度範囲内に入れるため、g、h’間距離はg、h”間距離に修正される。つまり、曲げ部eのスプリングバック量Δθの影響によるh’h”間距離Δsが修正されればよい。それには先ず、曲げ部eに曲げ加工が施された後、ストロークセンサ96で曲げ部eのスプリングバック量Δθが測定される。このデータが制御装置6”’に送られると、軸線間距離Hが要求精度範囲、たとえば±0.5mm、内に入るように、曲げ部間距離g、h”で成形できる最適加工条件が、予め登録しておいたデータファイル5”’から選定されて呼び出され、h”点で曲げ部fの曲げ加工が行われる。
【0047】また先の図16のように、スプリングバック量と被加工材Wの耐力とは相関していることから、一本の被加工材Wから成形されるこの部材の曲げ部fのスプリングバック量は、曲げ部eのスプリングバック量と同様にΔθとなり、h”点で曲げ加工が行われても、軸線間が平行に保たれ、要求精度を満たすことが可能となる。」

カ 第20図
被加工材に接触させるストロークセンサ96を備えた、軸線曲げ加工ユニットB””が記載されている。

(2)引用発明
上記摘記事項イの段落【0011】?【0012】の記載及び上記摘記事項エの段落【0040】?【0041】の記載からみて、刊行物1記載の制御装置がスプリングバック量に基づいて、第1、第2、第3の回動部材20、30、40をそれぞれ単独にまたは同時に回動させるための駆動手段21、31、41の駆動量を変化させることは明らかである。

してみるに、上記摘記事項を技術常識を勘案しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「曲げ型50を有する曲げ装置10と、この曲げ装置10に長尺な被加工材を押し通し供給する送り装置1と、前記曲げ装置10の第1、第2、第3の回動部材20、30、40をそれぞれ単独にまたは同時に回動させるための駆動手段21、31、41とを具備する長尺な被加工部材の軸線曲げ加工装置において、
前記曲げ装置10より押し出された後の前記被加工部材のスプリングバック量Δθを測定する形状測定装置95と、
前記形状測定装置95によるスプリングバック量Δθに基づいて前記第1、第2、第3の回動部材20、30、40をそれぞれ単独にまたは同時に回動させるための駆動手段21、31、41の駆動量を変化させる制御装置6'''とを備えた長尺な被加工部材の軸線曲げ加工装置であって、前記形状測定装置95が、ストロークセンサ96で実現された長尺な被加工部材の軸線曲げ加工装置。」


4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「曲げ型50」は、上記摘記事項イの段落【0011】及び摘記事項ウの記載からみて、可動であることは明らかであるから、本願発明の「可動ダイス」に相当する。
同様に、「曲げ装置10」は、上記摘記事項アの段落【0004】及び摘記事項ウの記載からみて、第1の回動部材、第2の回動部材及び第3の回動部材を単独または複数同時に回動させることで、3次元の曲げ加工を行うことが可能なことは明らかであるから、「3次元曲げ加工ヘッド」に相当する。
同様に、「長尺な被加工材」は「長尺ワーク材」に、「送り装置1」は「ワーク材供給装置」に、「第1、第2、第3の回動部材20、30、40をそれぞれ単独にまたは同時に回動させるための駆動手段21、31、41」は「3次元操作手段」に、「軸線曲げ加工装置」は「曲げ加工装置」に、それぞれ相当する。
同様に、「形状測定装置95」は、その文言どおり形状に関する値を測定する機能を有する装置という限りにおいて「形状センサ手段」に相当し、「ストロークセンサ96」は、上記摘記事項カの記載及び技術常識からみて、接触式であって、ストロークすなわち変位を測定する機能を有する手段という限りにおいて、「接触式変位測定手段」に相当する。

してみるに、両者の一致点と相違点は以下のとおりと認められる。

[一致点]
「可動ダイスを有する3次元曲げ加工ヘッドと、この曲げ加工ヘッドに長尺ワーク材を押し通し供給するワーク材供給装置と、前記曲げ加工ヘッドの3次元操作手段とを具備する長尺ワーク材の曲げ加工装置において、形状センサ手段と、前記3次元操作手段の駆動量を変化させる制御手段とを備えたことを特徴とする、長尺ワーク材の曲げ加工装置であって、前記形状センサ手段が、接触式変位測定手段で実現されたことを特徴とする長尺ワーク材の曲げ加工装置。」

[相違点]
本願発明は、形状センサ手段が「曲げ加工ヘッドより押し出された後の前記ワーク材の形状を測定」し、制御手段が「前記形状センサ手段による前記ワーク材の形状測定値と形状目標値との偏差に基づいて前記3次元操作手段の駆動量を変化させる」のに対し、引用発明では、形状センサ手段が「スプリングバック量Δθを測定」し、制御手段が「前記形状センサ手段による前記スプリングバック量Δθに基づいて前記3次元操作手段の駆動量を変化させる」点。


5 判断
上記相違点について検討する。

刊行物1には、形状センサ手段によりいかにスプリングバック量Δθを測定するのか、具体的なスプリングバック量の求め方について明示がないが、上記摘記事項オの段落【0045】?【0046】の記載からみて、引用発明のスプリングバック量Δθは、曲げ加工を施された曲げ角度(θ+Δθ)と理想形状の曲げ角度θとの偏差と等価の量、すなわちワーク材の形状測定値と形状目標値との偏差と等価の量ということができる。
そして、制御装置の技術分野において、制御装置においてセンサ手段による測定値と目標値との偏差を計算することは、例示するまでもなく普通に行われていることである。
してみるに、引用発明において、スプリングバック量Δθを求めるに際し、形状センサ手段によりスプリングバック量Δθを測定するのに換えて、形状センサにより曲げ加工された後の長尺ワーク材の形状である曲げ角度(θ+Δθ)を測定し、制御装置において形状目標値θとの偏差を求めるようにし、相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく容易に想到し得たことである。

なお、審判請求人は、平成20年5月28日付けの手続補正書(方式)において、出願人が希望する補正内容を示した上で、引用文献1(刊行物1)
では、テストサンプルの特性と成型品形状精度の相関を予め試験によって測定しておき、当該試験で得られた相関を用いて、テストサンプルとは別の被加工材Wを加工する際の3次元操作手段の駆動量を変化させることが開示されているものであり、出願人が希望する補正内容における特徴(B)である「前記形状センサ手段による前記ワーク材の前記形状測定値と形状目標値との偏差に基づいて、前記形状測定値が測定された部位よりも基端側における前記ワーク材の部位の曲げ加工を行うための前記3次元操作手段の駆動量を変化させる制御手段とを備えた」点が開示されていない旨主張している。
しかしながら、刊行物1における上記摘記事項エの段落【0042】の記載及び上記摘記事項オの段落【0046】の記載からみて、引用発明も形状測定値が測定された部位(例えば、第21図における曲げ部eを参照)よりも基端側における前記ワーク材の部位(第21図における曲げ部fを参照)の曲げ加工を行うための前記3次元操作手段の駆動量を変化させる制御手段を備えており、刊行物1には上記特徴(B)が開示されている。
したがって、上記出願人が希望する補正内容を検討してみても、当該補正内容に係る発明は刊行物1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 結び
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願の請求項1?9、11に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-27 
出願番号 特願2003-29349(P2003-29349)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 健一  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 佐々木 一浩
菅澤 洋二
発明の名称 長尺ワーク材の曲げ加工装置  
代理人 井上 満  

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