ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C04B |
---|---|
管理番号 | 1194332 |
審判番号 | 不服2006-13861 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-30 |
確定日 | 2009-03-11 |
事件の表示 | 特願2002-253079「電子部品焼成用治具」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 91245〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年8月30日の出願であって、平成18年5月24日付けで拒絶査定が起案され、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月28日付けで手続補正がなされ、平成20年10月7日付けで特許法第164条第3項に基づく報告書を引用した審尋が起案され、同年12月2日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成18年7月28日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年7月28日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 平成18年7月28日付けの手続補正は、平成17年11月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲 「【請求項1】 基材、該基材表面に被覆された酸化アルミニウムを含んで成る中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成ることを特徴とする電子部品焼成用治具において、 中間層は、アルミナと、酸化イットリウムを除く希土類酸化物、酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物、酸化バリウム、或いはこれらの複合酸化物から選択される1種以上の金属酸化物と、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化ナトリウム、酸化珪素から選択される1種以上の不純物とを焼成して形成してなるものであることを特徴とする電子部品焼成用治具。 【請求項2】 ジルコニア表面層は、平均粒径30μm?500μmのジルコニア粗粒子と平均粒径0.1μm?10μmのジルコニア微粒子とを焼成して形成してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の電子部品焼成用治具。」を 「【請求項1】 基材、該基材表面に被覆された酸化アルミニウムを含んで成る中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成ることを特徴とする電子部品焼成用治具において、 中間層は、アルミナと、酸化イットリウムを除く希土類酸化物、酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物、酸化バリウム、或いはこれらの複合酸化物から選択される1種以上の金属酸化物と、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化ナトリウム、酸化珪素から選択される1種以上の不純物とからなり、該不純物は、アルミナ及び金属酸化物に対して5wt%以下含有する電子部品焼成用治具。 【請求項2】 ジルコニア表面層は、平均粒径30μm?500μmのジルコニア粗粒子と平均粒径0.1μm?10μmのジルコニア微粒子とを焼成して形成してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の電子部品焼成用治具。 【請求項3】 前記金属酸化物は、アルミナに対して0.1wt%?20wt%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品焼成用冶具。」と補正(以下、「本件補正」という。)することを含むものである。 すなわち、本件補正は、新たに請求項1又は2を引用する請求項3を付加するものである。 この補正事項を検討すると、請求項3は、補正前の請求項1において「アルミナと、酸化イットリウムを除く希土類酸化物、酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物、酸化バリウム、或いはこれらの複合酸化物から選択される1種以上の金属酸化物」としか記載のなかった「金属酸化物」について「金属酸化物は、アルミナに対して0.1wt%?20wt%含有する」として含有量を追加したもので、n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更する場合に該当しないことは明らかであるから(「審査基準第III部第III節4.3.1(1)特許請求の範囲の減縮に該当しない具体例の項参照)、当該補正をいわゆる増項補正として取り扱わざるを得ない。 そして、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に掲げる事項を目的とするものではないことは明らかである。 以上のとおり、平成18年7月28日付け手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 (1)平成18年7月28日付けの明細書の記載に係る手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年11月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「基材、該基材表面に被覆された酸化アルミニウムを含んで成る中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成ることを特徴とする電子部品焼成用治具において、 中間層は、アルミナと、酸化イットリウムを除く希土類酸化物、酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物、酸化バリウム、或いはこれらの複合酸化物から選択される1種以上の金属酸化物と、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化ナトリウム、酸化珪素から選択される1種以上の不純物とを焼成して形成してなるものであることを特徴とする電子部品焼成用治具。」 (2)引用発明の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した本願の出願前に頒布された刊行物2(特開2000-143354号公報)には、次の記載がある。 (イ)「【請求項1】 アルミナ-シリカ質基材の表面に、TiO_(2)を0.5?20重量%含有する、アルミナを主成分とするコーティング層を有し、さらにその上にジルコニアを主成分とするコーティング層を有してなることを特徴とする電子部品焼成用治具。」(特許請求の範囲)、 (ロ)「本発明者らは鋭意検討を行った結果、中間層のアルミナのコーティング層中にTiO_(2)を適正量含有させることにより、上述の問題を解決することに成功し、本発明を完成させたものである。」(【0006】)、 (ハ)「アルミナ-シリカ質基材の表面にTiO_(2)を0.5?20重量%含有する、アルミナを主体とするコーティング層を形成させるには、Al_(2)O_(3)原料とTiO_(2)原料を所望の割合に混合して使用することもできるが、TiO_(2)・Al_(2)O_(3)鉱物原料とAl_(2)O_(3)原料とを混合して使用しても良い。Al_(2)O_(3)、TiO_(2)以外の不純物はできるだけ少ない方が望ましい。このコーティング層中のTiO_(2)含有量が20重量%を越えると、熱膨張係数が高くなり、基材とコーティング層の接着性が低下し、治具の変形やコーティング層の剥離が生じやすくなる。また、TiO_(2)含有量が0.5重量%未満では本発明の効果が得られない。」(【0009】)、 (ニ)「TiO_(2)を含有する、アルミナを主成分とするコーティング層の形成は溶射による方法や、材料を塗布後焼成する方法がある」(【0010】)、 (ホ)「【発明の効果】本発明の電子部品焼成用治具を用いると、被焼成部品との反応が極めて少なく治具の亀裂やコーティング層の剥離が生じにくいため、長期間の安定使用が可能となり、製造コストの低減に寄与する。特にTiO_(2)化合物を主原料としたセラミックコンデンサの焼成用治具として好適である。」(【0017】)。 (3)引用発明の認定 記載事項(イ)には「アルミナ-シリカ質基材の表面に、TiO_(2)を・・・含有する、アルミナを主成分とするコーティング層を有し、さらにその上にジルコニアを主成分とするコーティング層を有してなることを特徴とする電子部品焼成用治具。」が記載され、記載事項(ロ)には「中間層のアルミナのコーティング層中にTiO_(2)を適正量含有させること」が記載され、記載事項(ハ)には「コーティング層を形成させるには、・・・TiO_(2)・Al_(2)O_(3)鉱物原料とAl_(2)O_(3)原料とを混合して使用しても良い。」こと、及び「不純物はできるだけ少ない方が望ましい」ことが記載され、記載事項(ニ)には「コーティング層の形成は・・・材料を塗布後焼成する方法がある」ことが記載されている。 したがって、これら記載事項を本願発明の記載に則って整理すると、刊行物2には、「アルミナ-シリカ質基材の表面に、TiO_(2)を含有する、アルミナを主成分とする中間層のコーティング層をTiO_(2)・Al_(2)O_(3)鉱物原料とAl_(2)O_(3)原料とを混合して使用して焼成することにより形成し、さらにその上にジルコニアを主成分とするコーティング層を有してなることを特徴とする電子部品焼成用治具。」の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているといえる。 (4)対比 本願発明と刊行物2発明とを対比すると、刊行物2発明における「アルミナ-シリカ質基材」、「基材の表面(の)アルミナを主成分とする中間層」及び「その上(の)ジルコニアを主成分とするコーティング層」は、それぞれ、本願発明における「基材」、「基材表面に被覆された酸化アルミニウムを含んで成る中間層」及び「中間層上に形成されたジルコニア表面層」に相当し、刊行物2発明における「基材の表面に、・・・中間層のコーティング層を・・・形成し、さらにその上にジルコニアを主成分とするコーティング層を有してなること」は、本願発明の「基材、該基材表面に被覆された酸化アルミニウムを含んで成る中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成ること」に相当する。そして、Tiが遷移金属であることは自明で、TiO_(2)は遷移金属酸化物ということができるから、刊行物2発明における「TiO_(2)」は、本願発明の「酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物」ということができる。したがって、本願発明の「中間層は、アルミナと、酸化イットリウムを除く希土類酸化物、酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物、酸化バリウム、或いはこれらの複合酸化物から選択される1種以上の金属酸化物を焼成して形成してなる」のうちの「中間層は、アルミナと、酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物を焼成して形成してなる」に相当するということができる。さらに、刊行物2発明における「電子部品焼成用治具」は、本願発明の「電子部品焼成用治具」に相当することは明らかである。 したがって、本願発明と刊行物2発明とは、「基材、該基材表面に被覆された酸化アルミニウムを含んで成る中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、 中間層は、アルミナと、酸化ジルコニウムを除く遷移金属酸化物を焼成して形成してなるものであることを特徴とする電子部品焼成用治具。」で一致し、以下の(A)の点で一応相違する。 (A)本願発明は、中間層に「酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化ナトリウム、酸化珪素から選択される1種以上の不純物」を焼成するのに対して、刊行物2発明は、中間層の焼成に「TiO_(2)・Al_(2)O_(3)鉱物原料とAl_(2)O_(3)原料とを混合して使用して」いる点。 (5)判断 TiO_(2)・Al_(2)O_(3)鉱物原料が不純物を有することは、記載事項(ハ)で不純物に言及されていることからも当然の事項にすぎない。そして、このような鉱物原料が地殻において多量に存在する元素である珪素の酸化物のSiO_(2)成分を有することは当業者において周知の事項にすぎない。したがって、両発明において酸化珪素からなる不純物は共通すると認めることができるから、両発明における不純物は、本質的に相違するとは認められない。 したがって、相違点(A)は実質的な相違点でない。 よって、本願発明は、刊行物2に記載された発明である。 また、たとえ、この相違点が実質的なものであるとしても、上記相違点(A)に係る構成を特定することは、当業者であれば容易になし得ることであり、本願発明の効果も平成18年9月13日付け手続補足書により添付された実験成績証明書の実験結果が特定成分における不純物の単独添加による効果を証明するものではなく、依然として効果を確認することができないので、審判請求人の発明の効果の顕著性に関する主張を採用することはできず、本願発明の効果は、刊行物2発明の効果と比しても格別のものとすることはできない(上記記載事項(ホ)参照)。 よって、本願発明は、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。 (6)平成20年12月2日付け回答書の主張について 審判請求人は、上記回答書において、「 請求項3は、請求項1又は2に従属するものであり、特許請求の範囲を拡張するものではありません。 しかし、拒絶査定不服審判時の補正において、増項補正は原則認められておりません。そこで、このような補正が認められないのであれば、請求項3は削除いたしますので、請求項1又は2に特許性があると判断される場合は、補正の機会を下さいますようお願いいたします。 」旨回答している。 しかしながら、本件補正は、請求項1に「不純物は、アルミナ及び金属酸化物に対して5wt%以下含有する」と臨界的意義のない不純物の上限を定めるものであり、このような不純物の上限を特定しても、通常含まれる微量の不純物を依然として包含する以上、技術的意義に変動はなく、本件補正による各請求項に特許性を見いだすことは困難であるから、別途補正の機会を設けることはできない。 (7)むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定に該当し特許を受けることができない。 また、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-22 |
結審通知日 | 2009-01-06 |
審決日 | 2009-01-19 |
出願番号 | 特願2002-253079(P2002-253079) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C04B)
P 1 8・ 113- Z (C04B) P 1 8・ 57- Z (C04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横島 重信 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
大工原 大二 木村 孔一 |
発明の名称 | 電子部品焼成用治具 |
代理人 | 市澤 道夫 |
代理人 | 竹内 三郎 |