• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1194485
審判番号 不服2006-5750  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-29 
確定日 2009-03-18 
事件の表示 特願2004-282658「画像形成装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-125762〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年9月28日(優先権主張:平成15年9月29日)に出願したものであって、平成18年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同18年3月29日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月27日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成18年4月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年4月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、補正前後それぞれにおいて、「画像形成方法」についての請求項は、補正後の請求項4及び補正前の請求項14のみであるから、補正後の請求項4は、補正前の請求項14に対応しており、それぞれの記載は、以下の通りである。
<補正前>(平成17年12月12日付け手続補正参照。)
「【請求項14】
少なくともシアン、マゼンタ、イエローを含む複数色の色材を使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
記録媒体上にシアンの記録画素を形成させる複数のシアン記録素子を有するシアン記録ヘッドと、
前記記録媒体上にマゼンタの記録画素を形成させる複数のマゼンタ記録素子を有するマゼンタ記録ヘッドと、
前記記録媒体上にイエローの記録画素を形成させる複数のイエロー記録素子を前記シアン記録素子及び前記マゼンタ記録素子のそれぞれの記録素子密度よりも低密度で配列させた構成を有するイエロー記録ヘッドと、
を用い、
前記イエロー記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度が前記シアン記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度よりも低く、かつ、前記イエローの記録画素のサイズが前記シアン及び前記マゼンタの記録画素のサイズよりも大きくなるように前記記録媒体上に各色の記録画素を形成することを特徴とする画像形成方法。」

<補正後>
「【請求項4】
少なくともシアン、マゼンタ、イエローを含む複数色の色材を使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
記録媒体上にシアンの記録画素を形成させる複数のシアン記録素子を有するシアン記録ヘッドと、
前記記録媒体上にマゼンタの記録画素を形成させる複数のマゼンタ記録素子を有するマゼンタ記録ヘッドと、
前記記録媒体上にイエローの記録画素を形成させる複数のイエロー記録素子を前記シアン記録素子及び前記マゼンタ記録素子のそれぞれの記録素子密度よりも低密度で配列させた構成を有するイエロー記録ヘッドと、
を用い、
前記イエロー記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度は300dpi以上600dpi以下であり、前記シアン記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度は1200dpi 以上であり、かつ、前記イエローの記録画素のサイズが前記シアン及び前記マゼンタの記録画素のサイズよりも大きくなるように前記記録媒体上に各色の記録画素を形成するとともに、前記イエローの記録画素は、記録画素サイズ変調及び濃度変調のうち少なくとも一方の制御によって前記記録媒体上に記録されることを特徴とする画像形成方法。」
(下線は補正箇所を示すために当審で付した。)
上記補正は、補正前の請求項14に記載した発明を特定するために必要な事項である「イエローの記録画素の記録密度」と、「シアンの記録画素の記録密度」及び「マゼンタの記録画素の記録密度」について、「前記イエロー記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度が前記シアン記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度よりも低く」と、相対関係で特定していたのを、「前記イエロー記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度は300dpi以上600dpi以下であり、前記シアン記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度は1200dpi 以上であり」と、それぞれの記録画素の記録密度を数値限定し、「イエローの記録画素」について、「記録画素サイズ変調及び濃度変調のうち少なくとも一方の制御によって前記記録媒体上に記録される」と限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項4に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-141714号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.【請求項1】 ドットを形成するためのドット形成要素を各色ごとに複数備えたヘッドにより、画像データに応じたドットを印刷媒体上に形成して、多色の画像を印刷する印刷装置であって、
前記ヘッドは、画質への影響が小さい一部の特定色のドット形成要素の数が、その他の色のドット形成要素の数よりも少ないヘッドである印刷装置。
イ.【請求項15】 請求項7記載の印刷装置に用いられるインクカートリッジであって、
少なくともシアン、マゼンタ、イエロのインクを蓄え、かつ、インクが供給されるドット形成要素数が少ない色のインクについては、前記3色のドット形成要素数が等しい場合の濃度よりも高い濃度のインクを蓄えるインクカートリッジ。
ウ.【0009】ドット形成要素の数が少ない特定色は、その他の色に比べて形成されるドットの数が少なくなる。この結果、特定色では、その他の色ほどの高い階調表現または解像度での印刷を実現することはできない。しかし、本印刷装置では、画質への影響が小さい一部の特定色につき、ドット形成要素の数を減らしている。従って、ドット形成要素の数を減らすことによって生じる画質への影響は、ほとんど視認されない。この結果、本印刷装置では、印刷された画像の画質を極端に損ねることなく、ヘッドの小型化を図ることができる。
エ.【0014】かかる印刷装置では、各色ごとにドット形成要素数に基づいて設定された解像度でドットを形成する。つまり、ドット形成要素数が多い一般色については高い解像度でドットを形成し、ドット形成要素数が少ない特定色については低い解像度でドットを形成する。ドット形成要素数が少ない特定色の解像度を低くすることにより、特定色で形成すべきドットの数を減らすことができるから、印刷速度を低下させることなく画像を印刷することができる。
オ.【0021】少なくともシアン、マゼンタ、イエロの3色のドットを形成可能なヘッドを備える印刷装置においては、シアン、マゼンタ、イエロの各色のインクは、ドット形成要素数に応じた割合でドットを形成した際に該領域が黒色として視認し得る濃度比に調整されたインクとすることが望ましい。
【0022】かかる濃度比に調整されたインクを用いるものとすれば、特定色たるイエロのドット形成要素数が少なくても、前記3色の混色により適切に黒色を表現することができる。従って、黒色の階調表現を損なうことなく、特定色のドット形成要素数を減らすことができる。
カ.【0030】一般色が特定色の2倍のドット形成要素を有している場合には、該その他の色のドット形成要素は、千鳥状に配列されることになる。こうすれば、各ドット形成要素の副走査方向の間隔を非常に小さくすることができるため、ヘッドのさらなる小型化を図ることができる。また、かかるヘッドに対して色数を増やしたインクカートリッジを取り付けた場合、隣接する列上のドット形成要素は副走査方向の位置がずれているから、同じラスタ上に異なる色のインクのドットが非常に短い間隔で形成されることを回避でき、にじみを回避することができる。一般色のドット形成要素が特定色の3倍以上ある場合も同様の効果を得ることができる。
キ.【0058】図7および図8は、印字ヘッド28におけるノズルの配置および各インクとの対応関係を示す説明図である。図7が4色カートリッジ72Aを搭載した場合に対応し、図8が6色カートリッジ72Bを搭載した場合に対応する。4色カートリッジ72Aを搭載した場合、図7に示す通り、ノズルの配置は、各色ごとにインクを吐出する4組のノズルアレイから構成される。ブラック、シアン、マゼンタの各色のノズルは48個のノズルが千鳥状に配列されており、副走査方向に隣接するノズルの間隔はk1である。イエロのノズルは他の色の半分の24個のノズルが一列に配列されており、副走査方向の間隔は、k1の2倍の間隔k2である。シアン、マゼンタ、イエロのカラーインクについては、インクカートリッジ72Aから副走査方向に並んだ列を単位として導入管からインクが供給される。つまり、マゼンタを吐出する2列のノズル列には、導入管76,77からそれぞれインクが供給される。シアンを吐出する2列のノズル列には、導入管74,75からそれぞれインクが供給される。
ク.【0061】本実施例における2種類のインクカートリッジ72A,72Bの構成について説明する。4色カートリッジ72Aを搭載した場合、図7に示すように、イエロのノズル数は他色の半分となる。本実施例では、後述する通り、ノズル数に応じてインクごとに異なる解像度で印刷を実行する。従って、4色カートリッジ72Aを搭載して印刷を行うと、イエロのドット数は他色に比べて少なくなる。各色のドット数は印刷する画像に応じて異なるが、平均すればノズル数に比例すると考えられる。従って、イエロのドット数は他色のドット数の約半分となる。4色カートリッジ72Aは、かかる点を考慮し、イエロのインク容量を他色の約半分としている。これに対し、6色カートリッジ72Bでは、5色に対応するノズルが同じ数である。従って、各色のインク容量をほぼ等しくしている。こうすることにより、各色のインクを均等に使用することができ、印刷時の無駄を抑制することができる。
ケ.【0062】一方、インク濃度については、その関係が逆転する。図9は、各インクで形成されるドットの記録率と明度との関係を示したグラフである。明度の値は、各インクの濃度に応じて変動する。各インクの濃度はそれぞれ独立にいかなる値にも設定可能であるが、シアン、マゼンタ、イエロの3色を同じ比率で形成した場合に、3色の混食により黒色(以下、コンポジットブラックという)が表現される濃度に調整しておくことが望ましい。こうすれば、ブラックのインクと、コンポジットブラックとを使い分けることで、黒について滑らかな階調表現を実現することができる。
【0063】本実施例のインクカートリッジ72A,72Bもそれぞれコンポジットブラックを表現可能な濃度に調整されている。インクカートリッジ72Bについては、既に説明した通り、シアン、マゼンタ、イエロのノズルが同数になるため、ほぼ同じドット数を記録した場合にコンポジットブラックが表現可能な濃度に調整されている。かかる濃度でドットを記録した際の明度が、図9中のC,M,Y2で示されたグラフである。
【0064】一方、インクカートリッジ72Aについては、イエロのノズルが少ない。従って、各インクは、イエロのドットをシアン、マゼンタの約半分の記録率で形成した場合にコンポジットブラックが表現可能な濃度に調整されている。つまり、図9に示す通り、4色カートリッジ72Aのイエロを約50%の記録率で記録した場合に、6色カートリッジ72Bのイエロを100%の記録率で記録した場合に表現される明度とほぼ等しくなるように、イエロのインク濃度が設定してある。この結果、4色カートリッジ72Aのイエロのインク濃度は、6色カートリッジ72Bのイエロのインク濃度よりも濃くなっている。但し、ドットを形成した際に表現される明度と、インク中に含まれる染料の濃度とは必ずしも比例しない。従って、4色カートリッジ72Aのイエロの染料濃度が6色カートリッジ72Bのイエロの染料濃度の倍になるとは限らない。
コ.【0074】ここで、本実施例では、インクカートリッジの種別に応じて各色ごとに異なる解像度で印刷を実行している。カートリッジの種別と解像度との関係を図13に示した。4色カートリッジ72Aが搭載されている場合には、イエロを主走査方向に720DPI(ドット・パー・インチ)、副走査方向に360DPIの解像度で印刷し、その他の色は両方向にそれぞれ720DPIの解像度で印刷する。4色カートリッジ72Aの場合には、イエロのノズル数が他色の半分になるため、イエロのみ解像度を低くするのである。これに対し、6色カートリッジ72Bが搭載されている場合には、全てのカラーインクにつきノズル数が等しくなるため、主走査方向、副走査方向ともに720DPIの解像度で印刷を実行する。CPU81は、ステップS30では、インクカートリッジの種別に応じて、図13に示す通り解像度を設定し、それぞれの解像度にデータを変換する。
【0075】本実施例における画素の様子を図14に示す。図中の実線または破線で示されたマスが画素を意味している。図14(a)に示す通り、画素は印刷用紙Pに主走査方向および副走査方向に2次元的に配列されている。破線を含む小さいマスは、主走査方向に720DPI、副走査方向に720DPIの画素を示しており、実線のみで構成される大きいマスは、主走査方向に720DPI、副走査方向に360DPIの画素を示している。先に説明した通り、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、イエロのインクは360DPIの大きい画素を単位としてドットが形成され、その他の色のインクは小さい画素を単位としてドットが形成される。
【0076】ドットの形成の様子を拡大して示したのが図14(b)である。イエロのインクは360DPIの画素を単位として形成されるが、ドットの形成位置は720DPIの画素を基準としている。従って、図14(b)に示す通り、ドットD1,D2がイエロを含む全てのインクによって形成可能なドットとなり、その下に隣接するドットD3,D4はイエロ以外のインクによって形成可能なドットとなる。本実施例では、かかる態様でドットを形成するため、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、全ての画素にドットを形成すると、イエロのドットの記録率がその他の色の記録率の約半分となる。
サ.【0105】以上で説明した本実施例の印刷装置によれば、各画素ごとにドットのオン・オフを判定する、いわゆる2値化によりハーフトーン処理を行った。これに対し、インク量の異なる複数種類のドットを形成可能とし、各画素ごとに3値以上の多値化を行うものとしてもよい。かかる場合において、全ての色で多値化の階調値を一致させる必要はなく、画質に影響の少ないイエロのみ2値化を行い、その他の色については多値化を行うものとしてもよい。逆に、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、粗い解像度となることを補償するため、イエロのみを多値化するものとしてもよい。
【0106】本実施例では、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、イエロについて他色の半分の解像度で印刷を実行した。イエロの解像度はこれに限らず種々の解像度に設定可能である。例えば、主走査方向、副走査方向の双方に他色の半分の解像度で印刷するものとしてもよい。かかる解像度で印刷を実行する場合には、解像度が低くなった分、イエロのインクを更に濃いものにすることが望ましい。
(上記刊行物には、「イエロ」と表記されているが、本願の表記に合わせ「イエロー」と表記することがある。)

上記刊行物は、印刷装置に関するものであるが、上記キ.、コ.等の記載から、少なくともシアン、マゼンタ、イエローを含む複数色の色材を使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法を認識できる。
ノズルは、インクを吐出させるための記録素子の一部であるから、上記キ.に記載のシアンインクを吐出する48個のノズルをそれぞれ含んだ48個の記録素子が認識でき、該48個の記録素子の部分をシアン記録ヘッド部と称することができる。同様に、マゼンタインクを吐出する48個のノズルをそれぞれ含んだ48個の記録素子の部分をマゼンタ記録ヘッド部、イエローインクを吐出する24個のノズルをそれぞれ含んだ24個の記録素子の部分をイエロー記録ヘッド部と称することができ、各ヘッド部は、記録媒体上に各色の記録画素を形成させるものであること明らかである。
上記キ.には、「イエロのノズルは他の色の半分の24個のノズルが一列に配列されており、副走査方向の間隔は、k1の2倍の間隔k2である。」と、ノズルの間隔で記載されているが、ノズルは、インクを吐出させるための記録素子の一部であるから、記録素子も同様の間隔であるといえる。
上記コ.に「イエロを主走査方向に720DPI(ドット・パー・インチ)、副走査方向に360DPIの解像度で印刷し」と記載され、上記サ.に「主走査方向、副走査方向の双方に他色の半分の解像度で印刷するものとしてもよい。」と記載されているから、イエローを主走査方向、副走査方向いずれにも360DPIの解像度で印刷することが認識できる。
上記サ.の記載から、イエローの記録画素は、インク量の異なる複数種類のドットを形成することにより、3値以上の多値の階調を表現する制御によって記録媒体上に記録されることが認識できる。
よって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「 少なくともシアン、マゼンタ、イエローを含む複数色の色材を使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
記録媒体上にシアンの記録画素を形成させる48個のシアン記録素子を有するシアン記録ヘッド部と、
前記記録媒体上にマゼンタの記録画素を形成させる48個のマゼンタ記録素子を有するマゼンタ記録ヘッド部と、
前記記録媒体上にイエローの記録画素を形成させる24個のイエロー記録素子を前記シアン記録素子及び前記マゼンタ記録素子のそれぞれの副走査方向の記録素子間隔k1の2倍の間隔k2で配列させた構成を有するイエロー記録ヘッド部と、
を用い、
前記イエロー記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるイエローの解像度は主走査方向、副走査方向いずれにも360DPIであり、前記シアン記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるシアンの解像度及び前記マゼンタ記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの解像度は主走査方向、副走査方向いずれにも720DPIであり、かつ、イエローのインク濃度が3色のドット形成要素数が等しい場合の濃度よりも高い濃度であるとともに、
イエローの記録画素は、インク量の異なる複数種類のドットを形成することにより、3値以上の多値の階調を表現する制御によって記録媒体上に記録される画像形成方法。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「シアン記録ヘッド部」、「マゼンタ記録ヘッド部」、「イエロー記録ヘッド部」と、本願補正発明の「シアン記録ヘッド」、「マゼンタ記録ヘッド」、「イエロー記録ヘッド」とは、それぞれ「シアン記録ヘッド部」、「マゼンタ記録ヘッド部」、「イエロー記録ヘッド部」を限度として一致している。
引用発明の「イエロー記録素子」の配列構成は、「前記シアン記録素子及び前記マゼンタ記録素子のそれぞれの副走査方向の記録素子間隔k1の2倍の間隔k2で配列させ」ているから、本願補正発明の「前記シアン記録素子及び前記マゼンタ記録素子のそれぞれの記録素子密度よりも低密度で配列させ」に含まれる。
引用発明の「解像度」は、本願補正発明の「記録画素の記録密度」に相当し、引用発明の「前記イエロー記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるイエローの解像度は主走査方向、副走査方向いずれにも360DPIであり」と、本願補正発明の「前記イエロー記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度は300dpi以上600dpi以下であり」とは、「前記イエロー記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度が特定され」ている点で共通し、引用発明の「前記シアン記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるシアンの解像度及び前記マゼンタ記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの解像度は主走査方向、副走査方向いずれにも720DPIであり」と、本願補正発明の「前記シアン記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度は1200dpi 以上であり」とは、「前記シアン記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度が特定され」ている点で共通する。
引用発明の「イエローの記録画素は、インク量の異なる複数種類のドットを形成することにより、3値以上の多値の階調を表現する制御によって記録媒体上に記録される」と、本願補正発明の「イエローの記録画素は、記録画素サイズ変調及び濃度変調のうち少なくとも一方の制御によって前記記録媒体上に記録される」は、いずれも「イエローの記録画素は、特定の変調制御によって前記記録媒体上に記録される」点で共通する。
よって、両者は、
「 少なくともシアン、マゼンタ、イエローを含む複数色の色材を使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
記録媒体上にシアンの記録画素を形成させる複数のシアン記録素子を有するシアン記録ヘッド部と、
前記記録媒体上にマゼンタの記録画素を形成させる複数のマゼンタ記録素子を有するマゼンタ記録ヘッド部と、
前記記録媒体上にイエローの記録画素を形成させる複数のイエロー記録素子を前記シアン記録素子及び前記マゼンタ記録素子のそれぞれの記録素子密度よりも低密度で配列させた構成を有するイエロー記録ヘッド部と、
を用い、
前記イエロー記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度が特定され、前記シアン記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッド部によって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度が特定され、前記イエローの記録画素は、特定の変調制御によって前記記録媒体上に記録されることを特徴とする画像形成方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]シアン記録ヘッド部、マゼンタ記録ヘッド部及びイエロー記録ヘッド部に関し、本願補正発明は、「シアン記録ヘッド」、「マゼンタ記録ヘッド」及び「イエロー記録ヘッド」と、それぞれ特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がない点。
[相違点2]イエローの記録画素の記録密度と、シアンの記録画素の記録密度及びマゼンタの記録画素の記録密度に関し、本願補正発明は、「イエローの記録画素の記録密度は300dpi以上600dpi以下」、「シアンの記録画素の記録密度及び・・・マゼンタの記録画素の記録密度は1200dpi 以上」と、それぞれ特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がない点。
[相違点3]イエローの記録とシアン及びマゼンタの記録との関係に関し、本願補正発明は、「イエローの記録画素のサイズが前記シアン及び前記マゼンタの記録画素のサイズよりも大きくなるように前記記録媒体上に各色の記録画素を形成する」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がない点。
[相違点4]特定の変調制御に関し、本願補正発明は、「記録画素サイズ変調及び濃度変調のうち少なくとも一方の制御」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がない点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
本願補正発明が「シアン記録ヘッド」、「マゼンタ記録ヘッド」及び「イエロー記録ヘッド」と表現されていることにより、それぞれのヘッド部が別体に形成されていることを意味しているか否か必ずしも明らかではないが、ヘッド部が別体に形成されていることを意味していないのであれば、上記相違点1は、表現上の差に過ぎない。仮に、それぞれのヘッド部が別体に形成されていることを意味しているとしても、ヘッドを色毎に別体に形成することは例示するまでもなく周知技術であるから、引用発明に該周知技術を適用して、本願補正発明の上記相違点1のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
本願補正発明の「記録画素の記録密度」が主走査方向、副走査方向の二方向について特定しているのか、いずれか一方向が特定されればよいのか必ずしも明らかではないが、引用発明は、二方向について特定しているから、「記録画素の記録密度」の一方向か二方向かについては、実質的に相違しない。
そうすると、残る相違点は、数値限定のみであるが、本願の明細書の段落【0096】?【0109】には、該数値限定により肉眼で高品質の画像が得られる旨記載されている。画像形成方法において、肉眼で高品質の画像を形成することは、当然の要求であり、記録画素の記録密度は、ノズルの配列密度、記録ヘッドと記録媒体との相対移動、ノズルからの吐出タイミング等様々な条件で容易に変更できるものであるから、実験等により、それぞれの記録画素の記録密度の好適な範囲を決定し、本願補正発明の上記相違点2のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点3について検討する。
一般に、インクは、主に顔料や染料等の色材と溶媒から成り、カラーの記録をする場合、シアン、マゼンタ、イエローそれぞれの色材を適切な量で記録媒体に記録することにより適切な色が再現できるものである。
刊行物のオ.、ケ.には、イエローの解像度を低くすると、色材量が不足するのでそれを補うために、イエローのインク濃度を高い濃度にする旨記載されている。即ち、引用発明は、イエローのインク濃度を高くすることにより、シアン、マゼンタの記録に対し不足するイエローの記録の色材量を補っているものである。色再現性を良好にするために、イエローのインクのドット径を大きくすること(ドット径が大きくなれば記録画素のサイズが大きくなることは当然である。)は、周知技術(特開昭63-264358号公報参照。)であるから、引用発明に該周知技術を適用して、本願補正発明の上記相違点3のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点4について検討する。
引用発明は、インク量の異なる3値以上の多値の階調を表現する制御を行うものであり、インク量が異なれば、少なくとも記録画素サイズが異なることは明らかであるから、上記相違点4は、表現上の相違に過ぎず、実質的に相違しない。

引用発明において本願補正発明の相違点1?4に係る構成を備えることは、刊行物の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたことであり、係る発明特定事項を採用することによる本願補正発明の効果も当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年4月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項14に係る発明は、平成17年12月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項14に記載された事項により特定されるものであり、その請求項14に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 少なくともシアン、マゼンタ、イエローを含む複数色の色材を使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
記録媒体上にシアンの記録画素を形成させる複数のシアン記録素子を有するシアン記録ヘッドと、
前記記録媒体上にマゼンタの記録画素を形成させる複数のマゼンタ記録素子を有するマゼンタ記録ヘッドと、
前記記録媒体上にイエローの記録画素を形成させる複数のイエロー記録素子を前記シアン記録素子及び前記マゼンタ記録素子のそれぞれの記録素子密度よりも低密度で配列させた構成を有するイエロー記録ヘッドと、
を用い、
前記イエロー記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるイエローの記録画素の記録密度が前記シアン記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるシアンの記録画素の記録密度及び前記マゼンタ記録ヘッドによって前記記録媒体上に形成されるマゼンタの記録画素の記録密度よりも低く、かつ、前記イエローの記録画素のサイズが前記シアン及び前記マゼンタの記録画素のサイズよりも大きくなるように前記記録媒体上に各色の記録画素を形成することを特徴とする画像形成方法。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「イエローの記録画素の記録密度」及び「シアンの記録画素の記録密度及びマゼンタの記録画素の記録密度」についての数値限定を省いて相対関係のみを残し、「イエローの記録画素」についての限定事項である「記録画素サイズ変調及び濃度変調のうち少なくとも一方の制御によって前記記録媒体上に記録される」との構成を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-20 
結審通知日 2009-01-21 
審決日 2009-02-03 
出願番号 特願2004-282658(P2004-282658)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 陽子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅藤 政明
江成 克己
発明の名称 画像形成装置及び方法  
代理人 松浦 憲三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ