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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
管理番号 1194604
審判番号 不服2006-20959  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2009-03-19 
事件の表示 特願2004-105864「制御方法及び機器制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月 7日出願公開、特開2004-282770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成10年11月25日(優先権主張平成9年11月27日)に出願した特願平10-334400号の一部を平成16年3月31日に新たな特許出願としたものであって、平成18年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年9月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成20年9月18日付けで拒絶理由通知がなされ、平成20年11月18日付けで手続補正がなされたものである。

第2.特許法第29条第2項について

1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「複数の人の属性を監視し、前記監視された複数の人の属性から予め登録した個人の属性を検出し、前記検出された個人の属性を用いて対象者を決定し、前記検出された予め登録した個人の属性を用いて、複数の機器のうち、制御対象の機器の候補及び制御内容の候補を決定し、前記決定した制御対象の機器の候補の選択肢及び前記制御内容の候補の選択肢を提示し、前記提示後、人の属性を監視し、当該監視結果に基づいて制御対象の機器及び制御内容を決定し、制御対象の機器の制御を行う制御方法。」

2.引用例に記載された発明
当審で通知した拒絶の理由に引用された特開平6-186996号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(イ)「【請求項1】 操作者の音声を認識する音声認識手段と、
複数の操作者の優先順位を記憶する記憶手段と、
複数の操作者が前記音声認識手段を介して矛盾した操作を指示したときに、前記記憶手段を参照して、優先順位の高い者の指示を優先させる制御手段とを備えることを特徴とする電子機器。」(2頁1欄)

(ロ)「【0019】
【実施例】図1は、本発明をテレビジョン受像機に適用した場合の一実施例の構成を示す。前面パネルに設けられた操作部1の釦を操作すると、インターフェース3および内部バス20を介してCPU4に所定の指令が入力される。また、リモコン12が操作されると、受信部2がリモコン12からの光を受信し、これに対応した指令を、インターフェース3および内部バス20を介してCPU4に供給する。CPU4は、受けた指令に応じた処理を行い、内部バス20に接続された種々の構成要素に命令を出力したり、これらの構成要素を制御する。
【0020】CPU4は、内部バス20を介して、前述のインターフェース3のほか、ROM5、RAM6、不揮発性メモリ7、クロックタイマ8、チューナ10、信号処理回路13、音声認識回路16、および音声認識用メモリ17に接続されている。
【0021】ROM5は、CPU4が動作する上で必要なプログラムを記憶している。RAM6は、CPU4の処理の結果得られるデータ等を記憶する。不揮発性メモリ7は、電源オフ後も記憶する必要のあるデータを記憶する。クロックタイマ8は、計時動作を行っており、時刻情報を発生する。
【0022】チューナ10は、CPU4からの選局命令に応じたテレビジョン信号を受信して信号処理回路13に供給する。信号処理回路13は、受けたテレビジョン信号が示す画像をCRT14に表示する。
【0023】音声認識回路16は、音声受信部15で受けた音声の特徴を抽出するフィルタを有し、認識結果をCPU5に供給する。CPU4は、音声認識回路16からの音声認識結果を、動作モードに応じて音声認識メモリ17に記憶させ、あるいは音声認識結果に基づいて種々の処理を行う。
【0024】図2は、図1の音声認識用メモリ17の記憶内容の一例を示す。図2に示されているように、メモリ17は、複数の操作者、この例では、ユーザA,BおよびCのそれぞれに対して、登録語1についての特徴データA1,B1およびC1、登録語2についての特徴データA2,B2およびC2、登録語3についての特徴データA3,B3およびC3、優先順位、ならびに操作許可時間帯が記憶される。この例では、ユーザA,BおよびCのそれぞれに対して、優先順位1,優先順位2および優先順位3が与えられ、また操作許可時間帯としてTA,TAおよびTCが与えられている。
【0025】図3は、図1の実施例における音声操作指示許容者すなわち音声による操作命令を許可する者の登録処理の一例を示す。まず、CPU4は、動作モードを音声操作指示許容者登録モードにする。そして、音声受信部15は、予め設定した「言葉」の音声を、操作指示許容者から受信し(ステップS15)、音声認識回路16は、音声受信部15が受信した音声の特徴を抽出し、それを認識結果として出力する。CPU4は、この認識結果をメモリ17に記憶する(テップS2)。
【0026】図4は、図1の実施例における優先順位設定処理の一例を示す。まず、CPU4は、動作モードを優先順位設定モードにする。そして、操作指示許容者として登録された者は、名前をマイクすなわち音声受信部15から入力する(ステップS11)。これに応じて、音声認識回路16は、音声受信部15が受信した名前の音声の特徴を抽出し、それを認識結果として出力する(ステップS12)。CPU4は、この認識結果をメモリ17に記憶する(ステップS13)。これが、図2のメモリ17の記憶内容である例えばユーザAとなる。
【0027】次に、操作部1またはリモコン12から、優先順位(例えば、優先順位1)が入力され、CPU4は、入力された優先準順位をメモリ17に記憶する(ステップS14)。次に、図4には示されていないが、操作部1またはリモコン12から、許可時間帯(例えば、TA)が入力され、CPU4は、入力された許可時間帯をメモリ17に記憶する。次に、これも図4には示されていないが、操作部1またはリモコン12から、操作許容範囲、例えば許可チャンネルがが入力され、CPU4は、入力された操作許容範囲をメモリ17に記憶する。
【0028】次に、操作指示許容者として登録された者は、各種の「言葉」すなわち例えば図2の登録語1,2および3をマイクすなわち音声受信部15から入力し、音声認識回路16は、この音声の特徴を抽出して認識結果として出力し、CPU4は、この認識結果をメモリ17に記憶する(ステップS15)。
【0029】図4の処理は、各操作指示許容者について行われる。
【0030】図5は、図1の実施例における音声入力によるチャンネル設定処理の一例を示す。まず、CPU4は、音声受信部15から入力された音声命令に対する音声認識回路16の認識結果とメモリ17の記憶内容とを比較し、音声命令が許可された者からのものか判断し(ステップS21)、そうでなければ、信号処理回路13を介してCRT14に警告メッセージを表示する(ステップS22)。音声命令が許可された者からのものであれば、CPU4は、ステップS23の処理に進み、タイマ8からの現在の時刻とメモリ17に記憶された許可時間帯とを比較し、許可時間帯内の操作指示か判断し(ステップS23)、そうでなければ、信号処理回路13を介してCRT14に警告メッセージを表示する(ステップS24)。
【0031】現在時刻が許可時間帯内であれば、CPU4は、ステップS25の処理に進み、音声受信部15から入力された音声命令に対する音声認識回路16の認識結果であるチャンネルとメモリ17に記憶された許可チャンネルとを比較し、音声命令が許可チャンネルか判断し(ステップS25)、そうでなければ、信号処理回路13を介してCRT14に警告メッセージを表示する(ステップS26)。音声命令が許可チャンネルであれば(ステップS25)、CPU4は、音声命令によって指定されたチャンネルにチューナ10を設定する(ステップS27)。
【0032】なお、複数の操作者(例えばユーザAとユーザB)が、音声受信部15および音声認識回路16を介して矛盾した操作(例えば、チャンネル1の設定操作とチャンネル3の設定操作)を指示したときには、CPU4は、優先順位の高い者(図2の例では、ユーザA)の指示を優先させる。従って、複数の操作者が音声により矛盾した操作を指示しても問題が生じることがない。」(3頁3欄?4頁5欄)

引用例1の(イ)(ロ)の記載、及び技術常識を参酌すると、以下の事項を認めることができる。
ユーザがテレビジョン受信機等の電子機器を制御するためには、予め、ユーザの名前と登録語の音声を入力して、その認識結果を特徴データとしてメモリに記憶させておく。そのようなユーザは、操作が許可された者として登録される。
そして、音声命令が入力されると、電子機器の制御部は、その音声が操作が許可された者の音声かどうか判断して、操作が許可された者の音声命令のみを受け付ける。音声が操作が許可された者の音声かどうかの判断は、メモリの記憶内容を参照して行なわれるが、メモリには、操作が許可された者として複数のユーザが登録されているわけであるから、当該判断において、入力された音声がどのユーザの音声であるかの識別が行われていることは自明のことである。さらに、複数のユーザが音声により矛盾した操作を指示したときには、優先順位の高いユーザの指示を優先させるようにしていることから、操作者の決定が行われているということができる。

したがって、引用例1には、
「複数の人の音声を音声受信部で受信し、受信した音声から予めメモリに記憶されたユーザの特徴データを検出し、検出された特徴データを用いて操作者を決定し、前記検出された予め記憶された特徴データを用いて、電子機器の制御を行う制御方法。」
(以下、「引用例1発明」という。)が開示されているものと認められる。

また、当審で通知した拒絶の理由に引用された特開平5-7385号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(ハ)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は電気機器を遠隔操作するためのリモコン装置に関し、特に、音声入力により複数の電気機器を遠隔操作するための音声認識リモコン装置に関する。」(2頁1欄)

(ニ)「【0020】図1は、この発明の一実施例である音声認識リモコン装置の全体の構成を機能的に示すブロック図である。図1において、音声認識リモコン装置は、基本音声認識結果(単語)と各基本音声認識結果(単語)に応じて発生される制御信号とを表形態で格納する機器-単語対応表11と、操作対象となる電気機器の状態を示す情報を格納する書換え可能な機器状態用メモリ12と、マイク2を介して入力された音声を認識し、この認識結果に対応する制御信号を機器-単語対応表11から検索する音声認識部10とを含む。
【0021】音声認識部10は、マイク2から与えられた音声を認識する第1の音声認識部101と、第1の音声認識部10からの認識結果に従って機器-単語対応表11から対応の制御信号を検索する第2の音声認識部102とを含む。第2の音声認識部102は、また、機器状態用メモリ12に格納された機器状態情報を初期設定する機能を備える。
【0022】機器-単語対応表11に予め記憶される基本音声認識結果(単語)は、予めこの音声認識リモコン装置が制御可能な動作に対応して生成される。操作者は、この基本音声認識結果(単語)に対応するいずれかを発声することにより遠隔操作制御情報を与える。この機器-単語対応表11のデータ格納形態については後に詳細に説明する。
【0023】機器状態用メモリ12には、各電気機器の動作状態を示す情報が格納される。この機器状態指示データは書換え可能であり、リモコン装置による制御操作に従ってその内容が書換えられる。この機器状態用メモリの内容を遠隔操作状況に応じて書換え可能とすることにより、リモコン装置がその使用が進行するにつれて制御対象となる電気機器の種類を判断することが可能となり、音声認識結果と電気機器制御信号の変換用マップの切換えを等価的に行なうことになる。
【0024】音声認識リモコン装置は、さらに、各制御信号と、操作対象電気機器と、各制御信号に対応して予め設定される送信禁止条件データ(フラグ)とを互いに関連付けて表形態で格納する制御信号-機器状態対応表14と、音声認識部10(第2の音声認識部102)から与えられる制御信号に従って機器状態用メモリの内容の変更および制御信号-機器状態対応表14の送信禁止条件データ(フラグ)を検索し、送信可能なときに制御信号を通信処理部3へ与える機器制御部3とを含む。
【0025】通信処理部3は、第2の音声認識部102からの認識結果を表示部4へ表示し、スイッチ部5を介して操作者が送信許可情報を入力した場合にその制御信号を送信する。
【0026】この場合、スイッチ部5からの確認情報の入力を待たずに、通信処理部3は、機器制御部13から与えられる送信可能な制御信号を送出する構成とされてもよい。通信処理部3からの通信方式の形態は、上述のように赤外線方式に従ってもよく、またレーザ光線を用いた光信号が用いられてもよい。またこの送信される信号の種類および符号化方式等についてはどのようなものであってもよく、制御信号が操作対象となる電気機器により確認可能なものであればいずれであってもよい。次に各部の構成および動作について詳細に説明する。」(4頁5欄?6欄)

(ホ)「次に通信処理部3の動作をその動作フロー図である図11参照して説明する。
【0066】通信処理部3においては、図示しないバッファレジスタが設けられており、機器制御部13からの送信可能制御信号がこのバッファレジスタに格納される。バッファレジスタのポインタはmで与えられ、バッファレジスタポインタmの値が機器制御部13から与えられた制御信号の数を示す。まず機器制御部13から与えられた制御信号の数、すなわちバッファレジスタポインタmの値が0であるか否かの判別が行なわれる(ステップS30)。この機器制御部13から与えられた制御信号の数mが0の場合には通信処理部3は何ら通信動作を行なわない。
【0067】次に、ステップS30において、ポインタmの値が0でないと判定された場合には、通信処理部3はさらにこのポインタmの値が1であるか否かの判別を行なう(ステップS31)。ポインタmの値が1である場合には、送出すべき制御信号は1個のみであり、この場合、操作対象電気機器は1つであるため、音声認識部10から与えられた認識結果(図4に示す表示用データ)が通信処理部3へ与えられており、この表示用データを表示部4を介して操作者に提示する(ステップS32)。
【0068】操作者はこの表示部4に表示された認識結果を見て、入力音声情報に対応する制御信号が示されている場合にはスイッチ部5に含まれるOKスイッチ5bを押下することにより送信許可信号を与える(ステップS33)。またこの表示部4を介して提示された認識結果が誤っている場合にはスイッチ部5に含まれる取消スイッチ5aを押下することにより制御信号の取消しを指示する(ステップS33)。
【0069】通信処理部3は、ステップS33において送信許可が与えられた場合にはこの制御信号を送信する(ステップS34)。
【0070】一方、ステップS33において取消スイッチ5aが押下された場合には、通信処理部3はこの与えられた制御信号を無効化し、制御信号の送信を行なわない(ステップS35)。
【0071】ステップS31において、制御信号の数を示すポインタmの値が1より大きいと判断された場合には通信処理部3は、操作可能な電気機器名を操作者に提示し、電気機器名の特定を操作者に促す(ステップS40)。このステップS40における操作可能電気機器名の操作者への提示は、図1に示す表示部4を介して行なわれてもよく、また音声合成部60およびスピーカ6を介して行なわれてもよい。この場合、目視情報および音声情報のいずれか一方のみが用いられてもよく、両者が用いられてもよい。音声合成部60の構成は任意である。
【0072】このステップS40における操作可能機器名の提示は、以下のようにして行なわれる。制御信号はそれぞれ電気機器を特定する情報を含んでいる。たとえばビデオテープレコーダをオン状態とするための制御信号vonにおいて“v”のコードはビデオテープレコーダを示す。したがってこの電気機器名コードを通信処理部13が見ることにより操作可能機器名を操作者に提示する。ここで、複数の操作可能機器が存在する場合は、上述のチャネル切換えの場合に加えて、「予約」がある。図4に示す単語「予約」においては、この予約操作を行なうことのできるのはビデオテープレコーダ、テープデッキ、エアコンである。この場合、1つの電気機器のみが操作制御を受けるため、操作対象となる電気機器を特定する必要がある。したがってこの場合、表示部4には「電気機器Aですか、電気機器Bですか」が表示される。同じ内容が音声合成部60およびスピーカ6を介して発音されてもよい。
【0073】操作者はこれに応答して、操作対象となる電気機器名を音声で入力する(ステップS41)。この操作者が入力した音声情報は電気機器名のみを含んでいる。音声認識部10においては、電気機器名の単語辞書を含んでおり、この入力された音声情報に対応する電気機器名情報を通信処理部3へ与える(この径路は示さず)。この場合、機器-単語対応表11において単語および表示用データが格納されており、その対応の制御信号欄SRにおいては制御信号が存在しないように“0”の値が配列されており、音声認識部10が入力音声情報の認識結果に基づいて識別電気機器データを検索する構成としてもよい。
【0074】通信処理部3は、この音声認識部10から与えられた電気機器特定情報に基づいて操作対象となる電気機器を特定する(ステップS41)。この操作機器の特定は、たとえば、前述のごとく、音声認識部10から与えられる機器コードを各送信可能な制御信号の機器特定コードと比較することにより行なわれる。通信処理部3は、この操作対象となる機器が特定されると、操作者に確認を求めるために、特定された機器を提示する(ステップS42)。この特定された機器の提示は表示部4へ表示される。このとき併せて音声合成部60およびスピーカ6を介して音声情報で操作者にこの提示を与えてもよい。
【0075】操作者はこのステップS41において提示された電気機器名を確認し、選択された電気機器が提示されている場合にはスイッチ部5のOKスイッチ5bを押下することにより送信確認信号を与える(ステップS43)。
【0076】ステップS43においてスイッチ部5の取消ボタンスイッチ5aが押下された場合ステップS40へ戻り、再び操作者に複数の電気機器名を提示する。ステップS43においてOKボタンスイッチ5bが押下された場合には、ステップS34へ移り、選択された電気機器に対応する制御信号が送信される。」(8頁13欄?9頁15欄)
引用例2の(ハ)の記載を参照すると、引用例2は音声認識により複数の電気機器を遠隔操作するものに関するものであるといえる。
また、引用例2の(ホ)には、操作可能な電気機器名の提示について記載されている。
したがって、引用例2には、技術常識を参酌すると、
「音声認識により複数の電気機器を遠隔操作する方法において、
音声認識により制御信号を決定し、制御信号に対応する操作可能な電気機器が複数である場合には、操作可能な電気機器名を決定し、前記決定した操作可能な電気機器名を提示し、この提示に応答して操作者が操作対象となる電気機器名を音声で入力して操作対象の電気機器を決定し、操作対象の電気機器の制御を行う制御方法。」
(以下、「引用例2発明」という。)が開示されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。
本願明細書の【0013】段落には、「図1において、監視部1は人の属性及び人の周囲の環境を継続的に監視する。人の属性としては、人の位置、人の姿勢、人の顔、人の表情、人の視線、人の頭の向き、人の動き、人の音声、人の生理状態、特定個人であること、人の体型、人の体重、人の性別、人の年齢、人の心身的不自由度、人の付帯物などを監視する。」と記載されている。したがって、人の音声は「人の属性」の一種である。
また、本願明細書の【0014】段落には、「監視する手段としてはカメラ(可視光、赤外線などに感度を持つもの)、マイク、圧力センサ、超音波センサ、振動センサ、化学センサ、光センサなどを用いる。」と記載されている。引用例1発明の音声受信部としてマイクが使用されることは自明であるから、引用例1発明の「人の音声を音声受信部で受信」することは、「人の属性を監視」することであるといえる。
引用例1発明の「メモリに記憶された」、「ユーザの特徴データ」、「操作者」、「電子機器」は、本願発明の「登録した」、「個人の属性」、「対象者」、「制御対象の機器」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は
「複数の人の属性を監視し、前記監視された複数の人の属性から予め登録した個人の属性を検出し、前記検出された個人の属性を用いて対象者を決定し、前記検出された予め登録した個人の属性を用いて、制御対象の機器の制御を行う制御方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
制御対象の機器が、本願発明では複数であるのに対して、引用例1発明では、単数である点。
[相違点2]
制御対象の機器の制御を行うために、本願発明は「制御対象の機器の候補及び制御内容の候補を決定し、前記決定した制御対象の機器の候補の選択肢及び前記制御内容の候補の選択肢を提示し、前記提示後、人の属性を監視し、当該監視結果に基づいて制御対象の機器及び制御内容を決定」するものであるのに対し、引用例1発明は、そのような処理を行うものではない点。

4.当審の判断
[相違点1、2]について
引用例2発明の「電気機器」、「制御信号」、「操作可能な電気機器名」は、本願発明の「制御対象の機器」、「制御内容」、「制御対象の機器の候補(の選択肢)」にそれぞれ相当する。また、人の音声は「人の属性」の一種であるから、「音声認識」は「人の属性の監視」であるといえる。
したがって、引用例2発明は、
「音声認識により複数の機器を遠隔操作する方法において、
人の属性を監視することにより制御内容を決定し、複数の機器のうち、制御対象の機器の候補を決定し、前記決定した制御対象の機器の候補の選択肢を提示し、前記提示後、人の属性を監視し、当該監視結果に基づいて制御対象の機器を決定し、制御対象の機器の制御を行う制御方法。」と表現することができる。
引用例1発明は、音声認識により機器を遠隔操作するものといえるから、引用例1発明と引用例2発明とは、音声認識により機器を遠隔操作するという基本的思想を共通とするものである。そして、遠隔操作において、操作対象の機器を単数から複数に拡張することが当業者における自明の課題であることを考慮すれば、操作対象の機器が単数である引用例1発明に、操作対象の機器が複数である引用例2発明とを組み合わせることに困難性は認められない。
また、本願発明は、制御対象の機器の候補と同時に、制御内容の候補を決定し、前記決定した前記制御内容の候補の選択肢を提示し、前記提示後、人の属性を監視し、当該監視結果に基づいて制御内容を決定するという構成を採用しているが、音声認識した内容の候補を決定し、認識した候補の選択肢を提示し、操作者により選択肢を選択して認識した内容を決定することは、例えば、特開平5-307790号公報、特開平4-204700号公報、特開平3-51898号公報等に示されているように、音声認識の分野の周知事項と認められ、本願発明の前記構成は、周知事項を単に適用したものにすぎず、格別の事項とは認められない。
したがって、相違点1、2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願発明の作用効果も、引用例1発明、引用例2発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3.特許法第36条について

1.特許法第36条についての拒絶理由
当審において、平成20年9月18日付けで特許法第36条について、以下の拒絶の理由が通知された。

「【理由B】本件出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項、第6項第1項及び第2項に規定する要件を満たしていない。

1.請求項1における「前記検出された個人に関する所定の属性を用いて、複数の機器のうち、制御対象の機器の候補及び制御内容の候補を決定し」との記載は、「前記検出された個人に関する所定の属性」の意味内容が不明確であり、「制御対象の機器の候補及び制御内容の候補」がどのような条件により決定されるのか明らかでない。
(以下略)」

2.請求人の対応
上記拒絶理由通知に対して、請求人は、平成20年11月18日付けで意見書と手続補正書を提出した。前記指摘事項に対して、請求項1の「前記検出された個人に関する所定の属性」という記載を「前記検出された予め登録された個人の属性」とする補正がなされた。

3.当審の判断
補正された「前記検出された予め登録された個人の属性」という記載における「個人の属性」という用語について検討すると、本願明細書において「個人の属性」について明確な説明は認められず、「個人の属性」という用語の意味が不明瞭である。また、「個人の属性」は「予め登録された」ものであるが、登録がどのように行われるかについての開示もされていない。
したがって、請求項1の「前記検出された予め登録された個人の属性」という記載は不明瞭であり、発明の詳細な説明に記載されたものでもない。
また、請求項1に係る発明は「前記検出された予め登録された個人の属性」を用いて、「複数の機器のうち、制御対象の機器の候補及び制御内容の候補を決定」するものであるが、「前記検出された予め登録された個人の属性」をどのように用いて、当該決定を行うかについて、発明の詳細な説明において、当業者が実施することができる程度に記載されていない。

したがって、本件出願は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、本件出願は、明細書の記載に不備があり、特許法第36条第4項、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-14 
結審通知日 2009-01-20 
審決日 2009-02-02 
出願番号 特願2004-105864(P2004-105864)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04Q)
P 1 8・ 121- WZ (H04Q)
P 1 8・ 536- WZ (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 小宮 慎司
石井 研一
発明の名称 制御方法及び機器制御装置  
代理人 特許業務法人松田国際特許事務所  
代理人 松田 正道  

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