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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1194838
審判番号 不服2006-16693  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-03 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 平成 9年特許願第 77156号「データ転送方式」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月 9日出願公開、特開平10-269134〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成9年3月28日の出願であって、平成17年4月18日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月27日付けで手続補正がなされたが、平成18年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月3日に審判請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年6月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「少なくとも制御対象の状態を表す状態データと制御対象を制御するための制御データとを格納するメモリと、
上記メモリに格納された状態データに基づいて制御対象の制御データを求める計算機と、
上記メモリに格納された状態データを読み出すと共に、上記読み出した状態データに上記計算機で求められたデータを書き込み上記メモリに格納するメモリコントローラと、
制御内容を変更するために上記メモリコントローラにより書き換えられたデータをメモリのアクセス単位毎に上記メモリから読み出して送信するデータ転送装置とを有することを特徴とする制御装置。」

2.引用文献
A.原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-95718号公報(以下、「引用文献」という。)には以下の事項が記載されている。(注:下線部は当審で便宜上付与したもの。)

(ア)「(57)【要約】
【目的】 ポーリングサイクルタイムを小さくして親局と小局との間のデータ交換を高速にする。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プログラマブル・コントローラ(以下、PCという)に接続される親局と、当該親局に接続される小局とからなるPCのリモートI/Oシステムに関する。」

(ウ)「【0003】PCのリモートI/Oシステムは、CPUユニット(以下、PC本体という)1や入出力ユニット(I/Oユニット)1a,1b等と同様にPCに組込まれ、PC本体1等にCPUバスを介して直接接続される親局2と、この親局2と同軸ケーブルや光ファイバ等の通信ケーブル4を介して接続される1台あるいは複数台の小局3とから構成される。
【0004】各小局3は、通常、データバスを介して複数台の入出力ユニット3a,3bが接続されており、各入出力ユニット3a,3bにモータやスイッチ(SW)、センサ等の被制御機器が接続され、PC本体1が遠隔の非制御機器を制御できるように構成されている。
【0005】このように構成されたPCのリモートI/Oシステムでは、PC本体1が親局2を介し小局3上の入出力ユニット3a,3bを制御する場合、小局3上の入力データを親局2を介しPC本体1に、PC本体1の出力データを親局2を介し小局3上の出力ユニット3bに出力する必要がある。」

(エ)「【0011】
【作用】本発明では、親局では、出力データメモリに記憶されたPC本体から今回小局へ送信すべき出力データと、記憶しておいた前回のポーリング時に送信した出力データとを比較して、データの値が変化している場合にのみ当該出力データをポーリングフレームに設定して送信して、データの値が変化してない場合には当該出力データをポーリングフレームに設定せずに送信する。
【0012】小局では、入力ユニットを介し取り込み入力データメモリに記憶した入力データと、記憶しておいた前回のポーリング時に返送した入力データとを比較して、データの値が変化している場合にのみ当該入力データをレスポンスフレームに設定して返送し、データの値が変化してない場合には当該入力データをレスポンスフレームに設定せずに返送する。」

(オ)「【0016】PC本体1は、PCに直接組込まれた入出力ユニット(図8参照)や、本システムに接続された入出力ユニット3a,3bを介してモータ等の機械や装置を制御するように構成されており、この図では本システムとの間の通信、すなわちリモートリフレッシュを実行するMPU11のみを示している。
【0017】親局2は、PC本体1とCPUバスを介しデータの送受信を行うと共に、出力変化フラグ設定手段およびポーリング手段として通信ケーブル4を介し小局3とのポーリング/セレクションによる通信制御を行うMPU21と、PC本体1との間で出力データおよび入力データの受け渡しを行う共有RAM22と、送受信バッファ(図示せず)を内蔵して小局3との通信を行う通信LSI23とを有する。なお、A0は親局2がPC本体1へ入出力データの書込み及び読出しを要求するリモートリフレッシュ要求信号、A1 は共有RAM22へのアクセスが完了した際にPC本体1から親局2へ送信されるリモートリフレッシュ完了信号である。
【0018】小局3は、通信ケーブル4を介し入力変化フラグ設定手段およびレスポンス手段として親局2との通信および入出力ユニット3a,3bとのデータ送受信を制御するMPU31と、送受信バッファ(図示せず)を内蔵して親局2と通信を行う通信LSI32と、入力ユニット3aを介し入力する入力パルスの値を取り込んで入力データとして記憶する入力データメモリ33とを有する。」

(カ)【図1】には、子局3が、入出力ユニット3aを介してセンサ等からのパルスを入力データメモリ33に入力する様子が記載されている。

ここで、(イ)における記載、(ウ)における記載、及び(エ)における記載からすると、引用文献には、被制御機器を制御するための出力データを求めるPC本体と、被制御機器の制御内容を変更するためにPC本体の出力した出力データを前記被制御機器が接続されている子局に送信する親局とを有することを特徴とするプログラマブル・コントローラのリモートI/Oシステムが記載されていると解される。

そして、(ウ)の段落【0005】における記載「このように構成されたPCのリモートI/Oシステムでは、PC本体1が親局2を介し小局3上の入出力ユニット3a,3bを制御する場合、小局3上の入力データを親局2を介しPC本体1に、PC本体1の出力データを親局2を介し小局3上の出力ユニット3bに出力する必要がある。」及び(オ)の段落【0016】における記載「PC本体1は、PCに直接組込まれた入出力ユニット(図8参照)や、本システムに接続された入出力ユニット3a,3bを介してモータ等の機械や装置を制御するように構成されており」からすると、引用文献に記載されている「PC本体」は、被制御機器の状態を表す入力データに基づいて被制御機器を制御するための出力データを求めることは、当業者にとって自明である。

また、(オ)の段落【0017】における記載「PC本体1との間で出力データおよび入力データの受け渡しを行う共有RAM22と、」からすると、引用文献に記載されている「プログラマブル・コントローラのリモートI/Oシステム」は、少なくとも被制御機器の状態を表す入力データと被制御機器を制御するための出力データとを格納する共有RAMを有すると解される。なお、その際に、前記「プログラマブル・コントローラのリモートI/Oシステム」が、上記共有RAMに格納された被制御機器の状態を表す入力データを読み出すと共に、上記読み出した入力データに対して上記PC本体で求められた被制御機器を制御するための出力データを書き込み上記共有RAMに格納する制御手段(以下、簡単のため「入出力データの書き込み及び読み出し制御手段」という。)を有することは、当業者にとって自明である。

また、(エ)の段落【0011】における記載「本発明では、親局では、出力データメモリに記憶されたPC本体から今回小局へ送信すべき出力データと、記憶しておいた前回のポーリング時に送信した出力データとを比較して、データの値が変化している場合にのみ当該出力データをポーリングフレームに設定して送信して、データの値が変化してない場合には当該出力データをポーリングフレームに設定せずに送信する。」からすると、前記引用文献に記載された「親局」は、被制御機器の制御内容を変更するために上記入出力データの書き込み及び読み出し制御手段により書き換えられたデータを上記共有RAMから読み出して送信することは、明らかである。

したがって、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

少なくとも被制御機器の状態を表す入力データと被制御機器を制御するための出力データとを格納する共有RAMと、
上記共有RAMに格納された入力データに基づいて被制御機器を制御するための出力データを求めるPC本体と、
上記共有RAMに格納された被制御機器の状態を表す入力データを読み出すと共に、上記読み出した入力データに対して上記PC本体で求められた被制御機器を制御するための出力データを書き込み上記共有RAMに格納する入出力データの書き込み及び読み出し制御手段と、
被制御機器の制御内容を変更するために上記入出力データの書き込み及び読み出し制御手段により書き換えられたデータを上記共有RAMから読み出して送信する親局とを有することを特徴とするプログラマブル・コントローラのリモートI/Oシステム。

3.対比
ここで、本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「被制御機器」、「被制御機器の状態を表す入力データ」、「被制御機器を制御するための出力データ」、「共有RAM」、「PC本体」、「入出力データの書き込み及び読み出し制御手段」、「親局」、及び「プログラマブル・コントローラのリモートI/Oシステム」は、それぞれ本願発明の「制御対象」、「状態データ」、「制御データ」、「メモリ」、「計算機」、「メモリコントローラ」、「データ転送装置」、及び「制御装置」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
少なくとも制御対象の状態を表す状態データと制御対象を制御するための制御データとを格納するメモリと、
上記メモリに格納された状態データに基づいて制御対象の制御データを求める計算機と、
上記メモリに格納された状態データを読み出すと共に、上記読み出した状態データに上記計算機で求められたデータを書き込み上記メモリに格納するメモリコントローラと、
制御内容を変更するために上記メモリコントローラにより書き換えられたデータを上記メモリから読み出して送信するデータ転送装置とを有することを特徴とする制御装置。

(相違点)
本願発明の「データ転送装置」は、メモリコントローラにより書き換えられたデータをメモリのアクセス単位毎に上記メモリから読み出して送信するのに対して、引用発明の「親局」が、入出力データの書き込み及び読み出し制御手段により書き換えられたデータを共有RAMのアクセス単位毎に上記共有RAMから読み出して送信するものではない点。

4.判断
相違点について検討する。
本願の出願の日前の昭和63年5月28日に頒布された刊行物である特開昭63-125034号公報に、
「転送データ長が、この装置のアクセスデータ長と等しい場合はデータ内容全体を主記憶装置へ展開する必要はなく、1回のデータ転送毎に記憶装置中のデータを参照すればよい。送出側の差分データ抽出装置2は新データと送信済の旧データの内容をアクセス単位(通常はセクター単位)毎に比較し、等しい場合は何も送信せずに次の差分データの抽出を行なう。比較の結果、異なる場合は、そのデータを通信回線4を経由してデータ受信手段5へ転送し、差分データ復元手段6により旧データの該当パケット位置へ格納され、受信データ記憶装置7へ格納される。
第3図はデータ通信回線4上のデータ形式であり、データアクセス単位の長さを持つデータ本体9とその直前に、データを識別するためのパケット番号8を持つ形式となっている。
・・・(中略)・・・
発明の効果
以上のように、本発明は送信済の旧データとこれから送ろうとする新データとを比較し異なる部部のみを転送するようにしたデータ転送装置で、データ転送における転送データ量が大幅に削減され、データ転送の効率化を図ることができる。」(注:下線部は当審で便宜上付与したもの。)(2頁右上欄8行目?左下欄16行目。)と記載されているように、データ転送の効率化を図るために、データ値の変化の有無をアクセス単位毎に行い、書き換えられたデータをアクセス単位毎に読み出して送信するデータ転送装置は、当業者にとって、周知の技術である。
してみると、書き換えられたデータのみを送信することでデータ交換の効率化を図ることを目的とする引用発明において、親局が、入出力データの書き込み及び読み出し制御手段により書き換えられたデータを共有RAMのアクセス単位毎に上記共有RAMから読み出して送信するように構成することは、当業者であれば、適宜なし得たことである。
よって、相違点は格別のものではない。

上記で検討したごとく、相違点は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.結び
以上のとおり、本願発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、上記結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2009-01-21 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願平9-77156
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多賀 実  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 冨吉 伸弥
石田 信行
発明の名称 データ転送方式  
代理人 井上 学  

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