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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1194849
審判番号 不服2006-23800  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-19 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 平成11年特許願第128574号「統合ドキュメント管理システムおよびそれに用いられるドキュメント引出装置、ならびにドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月24日出願公開、特開2000-322303〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成11年5月10日の出願であって、平成18年9月14日付けで拒絶査定がなされ(発送日同年9月19日)、これに対し、平成18年10月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月20日付けで手続補正がなされたものである。




第2 平成18年11月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成18年11月20日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容

平成18年11月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、
本件補正前の特許請求の範囲第1乃至11項、すなわち、

「 【請求項1】 階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースとを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に接続され、前記ドキュメントの管理者側に設置されたサーバと、
前記サーバにネットワークを介して接続され、前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すクライアントと、
を備えることを特徴とする統合ドキュメント管理システム。
【請求項2】 前記管理情報は、同一階層の複数のドキュメントの集合および前記複数のドキュメントのそれぞれの版数を表す情報を含み、前記クライアントは、前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の各版数における同一階層の複数のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すことを特徴とする請求項1に記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項3】 前記サーバは、前記ドキュメントデータベースに登録されているドキュメントに改版があった場合、改版後のドキュメントを前記ドキュメントデータベースに登録するとともに、当該ドキュメントに関する前記管理情報における前記版数情報を更新することを特徴とする請求項1または2に記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項4】 前記クライアントは、前記ネットワークを介して、引き出し済みのドキュメントに関する引出情報を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、前記引出情報に対応するドキュメントに改版があった場合に、改版済みのドキュメントに関する改版情報を前記クライアントへ前記ネットワークを介して送信することを特徴とする請求項3に記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項5】 前記管理情報は、複数の前記ドキュメントにそれぞれ対応するセキュリティレベルに関する情報を含み、前記サーバは、前記セキュリティレベルに応じて、前記ドキュメントの引き出しを許可または禁止することを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項6】 階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースとを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に接続され、前記ドキュメントの管理者側に設置されたサーバとを備える統合ドキュメント管理システムに用いられるドキュメント引出装置であって、
ネットワークを介して前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すことを特徴とするドキュメント引出装置。
【請求項7】 前記管理情報は、同一階層の複数のドキュメントの集合および前記複数のドキュメントのそれぞれの版数を表す情報を含み、前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の各版数における同一階層の複数のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すことを特徴とする請求項6に記載のドキュメント引出装置。
【請求項8】 前記管理情報は、複数の前記ドキュメントにそれぞれ対応するセキュリティレベルに関する情報を含み、前記セキュリティレベルに応じた引き出し許可に基づいて、前記ドキュメントデータベースから前記ドキュメントを引き出すことを特徴とする請求項6または7に記載のドキュメント引出装置。
【請求項9】 階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースとを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に接続され、前記ドキュメントの管理者側に設置されたサーバとを備える統合ドキュメント管理システムに用いられるドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
ネットワークを介して前記サーバにアクセスさせることにより、前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出させる工程をコンピュータに実行させるためのドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】 前記管理情報は、同一階層の複数のドキュメントの集合および前記複数のドキュメントのそれぞれの版数を表す情報を含み、前記工程においては、前記サーバにアクセスさせることにより、前記管理情報に基づいて、所定の各版数における同一階層の複数のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出させることを特徴とする請求項9に記載のドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】 前記管理情報は、複数の前記ドキュメントにそれぞれ対応するセキュリティレベルに関する情報を含み、前記工程においては、前記セキュリティレベルに応じた引き出し許可に基づいて、前記ドキュメントデータベースから前記ドキュメントを引き出させることを特徴とする請求項9または10に記載のドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

であったものを、本件補正後の特許請求の範囲第1乃至11項、すなわち、

「 【請求項1】 階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に接続されておりドキュメントの管理者側に設置されたサーバ装置と、前記サーバ装置にネットワークを介して接続されており前記サーバ装置にアクセスすることによって前記ドキュメントデータベースからドキュメントを引き出すクライアント装置とでドキュメントを管理する統合ドキュメント管理システムであって、
前記サーバ装置は、
上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報およびドキュメントの版数情報を含む管理情報の入力を受け付けて前記記憶装置上に設けられた管理情報データベースへ登録する登録手段と、
前記管理情報データベースに登録された前記管理情報をドキュメントのインデックスとして前記クライアント装置へ提供するインデックス提供手段と
を備え、
前記クライアント装置は、
前記サーバ装置のインデックス提供手段によって提供された前記管理情報に基づき、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すドキュメント引出手段
を備えたことを特徴とする統合ドキュメント管理システム。
【請求項2】 前記管理情報は、同一階層の複数のドキュメントの集合および前記複数のドキュメントのそれぞれの版数を表す情報を含み、前記クライアント装置の前記ドキュメント引出手段は、前記サーバ装置のインデックス提供手段によって提供された前記管理情報に基づき、所定の各版数における同一階層の複数のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すことを特徴とする請求項1に記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項3】 前記サーバ装置は、前記ドキュメントデータベースに登録されているドキュメントに改版があった場合、改版後のドキュメントを前記ドキュメントデータベースに登録するとともに、当該ドキュメントに関する前記管理情報における前記版数情報を更新する更新手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項4】 前記クライアント装置は、前記ネットワークを介して、引き出し済みのドキュメントに関する引出情報を前記サーバ装置へ送信する引出情報送信手段を備え、前記サーバ装置は、前記引出情報に対応するドキュメントに改版があった場合に、改版済みのドキュメントに関する改版情報を前記クライアント装置へ前記ネットワークを介して送信する改版情報送信手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項5】 前記管理情報は、複数の前記ドキュメントにそれぞれ対応するセキュリティレベルに関する情報を含み、前記サーバ装置は、前記セキュリティレベルに応じて、前記ドキュメントの引き出しを許可または禁止する引出許可手段を備えたことを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の統合ドキュメント管理システム。
【請求項6】 階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に接続されておりドキュメントの管理者側に設置されたサーバ装置と、前記サーバ装置にネットワークを介して接続されており前記サーバ装置にアクセスすることによって前記ドキュメントデータベースからドキュメントを引き出すドキュメント引出装置とでドキュメントを管理する統合ドキュメント管理システムにおけるドキュメント引出装置であって、
前記サーバ装置において上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報およびドキュメントの版数情報を含む管理情報の入力が受け付けられて前記記憶装置上に設けられた管理情報データベースへ登録され、該管理情報がドキュメントのインデックスとして提供されたならば、提供された前記管理情報に基づき、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すドキュメント引出手段
を備えたことを特徴とするドキュメント引出装置。
【請求項7】 前記管理情報は、同一階層の複数のドキュメントの集合および前記複数のドキュメントのそれぞれの版数を表す情報を含み、前記ドキュメント引出手段は、前記サーバ装置によって提供された前記管理情報に基づき、所定の各版数における同一階層の複数のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すことを特徴とする請求項6に記載のドキュメント引出装置。
【請求項8】 前記管理情報は、複数の前記ドキュメントにそれぞれ対応するセキュリティレベルに関する情報を含み、前記ドキュメント引出手段は、前記サーバ装置が前記セキュリティレベルに応じて行った引出許可に基づいて、前記ドキュメントデータベースから前記ドキュメントを引き出すことを特徴とする請求項6または7に記載のドキュメント引出装置。
【請求項9】 階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に接続されておりドキュメントの管理者側に設置されたサーバ装置と、前記サーバ装置にネットワークを介して接続されており前記サーバ装置にアクセスすることによって前記ドキュメントデータベースからドキュメントを引き出すドキュメント引出装置とでドキュメントを管理する統合ドキュメント管理システムにおけるドキュメント引出装置に搭載されるドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記サーバ装置において上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報およびドキュメントの版数情報を含む管理情報の入力が受け付けられて前記記憶装置上に設けられた管理情報データベースへ登録され、該管理情報がドキュメントのインデックスとして提供されたならば、提供された前記管理情報に基づき、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すドキュメント引出手順
をコンピュータに実行させるドキュメント引出プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】 前記管理情報は、同一階層の複数のドキュメントの集合および前記複数のドキュメントのそれぞれの版数を表す情報を含み、前記ドキュメント引出手順は、前記サーバ装置によって提供された前記管理情報に基づき、所定の各版数における同一階層の複数のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すことを特徴とする請求項9に記載のドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】 前記管理情報は、複数の前記ドキュメントにそれぞれ対応するセキュリティレベルに関する情報を含み、前記ドキュメント引出手順は、前記サーバ装置が前記セキュリティレベルに応じて行った引出許可に基づいて、前記ドキュメントデータベースから前記ドキュメントを引き出すことを特徴とする請求項10または11に記載のドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

に変更する補正を含むものである。


つまり、本件補正は、例えば、

(本件補正事項1)
本件補正前の特許請求の範囲第1項に、サーバ(装置)の構成要素として、「上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報およびドキュメントの版数情報を含む管理情報の入力を受け付けて前記記憶装置上に設けられた管理情報データベースへ登録する登録手段」を追加する補正、

(本件補正事項2)
本件補正前の特許請求の範囲第1項の
「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースとを記憶する記憶手段」を、
本件補正によって、
「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースを記憶する記憶装置」と変更した上で、
「上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報およびドキュメントの版数情報を含む管理情報の入力を受け付けて前記記憶装置上に設けられた管理情報データベースへ登録する登録手段」を追加することにより、
管理情報データベースの構成要素である「複数の管理情報」を、(複数とは限らない)「管理情報」に変更する補正、

(本件補正事項3)
本件補正前の特許請求の範囲第1項の
「前記記憶手段に接続され、前記ドキュメントの管理者側に設置されたサーバと、
前記サーバにネットワークを介して接続され、前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すクライアント」を、
本件補正によって、
「 前記サーバ装置は、
・・・(中略)・・・
前記管理情報データベースに登録された前記管理情報をドキュメントのインデックスとして前記クライアント装置へ提供するインデックス提供手段と
を備え、
前記クライアント装置は、
前記サーバ装置のインデックス提供手段によって提供された前記管理情報に基づき、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すドキュメント引出手段」と変更する補正、
すなわち、クライアント(装置)がドキュメントをドキュメントデータベースから引き出す際、クライアント(装置)外にある管理情報を用いることから、クライアント(装置)内の管理情報を用いることに変更することを含む補正、

(本件補正事項4)
本件補正前の特許請求の範囲第11項の
「・・・を特徴とする請求項9または10に記載のドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」を、
本件補正によって、
「・・・を特徴とする請求項10または11に記載のドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」と変更する補正、
すなわち、請求項9を引用するかわりに、請求項11項を自己引用することに変更する補正、


を含むものである。



2.本件補正に対する判断

(1)本件補正事項1について

本件補正事項1は、請求項を削除するものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)第1号に規定された「請求項の削除」に該当しない。

また、本件補正事項1は、「上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報およびドキュメントの版数情報を含む管理情報の入力を受け付けて前記記憶装置上に設けられた管理情報データベースへ登録する登録手段」という構成をサーバ(装置)に新たに追加する補正なのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、本件補正事項1については、構成を新たに追加する補正であって、「誤記」の有無を判断する対象がそもそも無いのであるから、
本件補正事項1は、特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」に該当しない。

しかも、本件補正事項1に関して、明りようでない記載に関する拒絶理由通知は通知されていないので、
本件補正事項1は、特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当しない。

つまり、本件補正事項1は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。


(2)本件補正事項2について

本件補正事項2は、請求項を削除するものではないので、特許法第17条の2第4項第1号に規定された「請求項の削除」には該当しない。

また、本件補正事項2は、管理情報データベースの構成要素である「複数の管理情報」を、(複数とは限らない)「管理情報」に変更する補正なのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、本件補正前の「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースとを記憶する記憶手段」という記載には誤記はないのであるから、
本件補正事項2は、特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」に該当しない。

しかも、本件補正事項2に関して、明りようでない記載に関する拒絶理由通知は通知されていないので、
本件補正事項2は、特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当しない。

つまり、本件補正事項2は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。


(3)本件補正事項3について

本件補正事項3は、請求項を削除するものではないので、特許法第17条の2第4項第1号に規定された「請求項の削除」には該当しない。

また、本件補正事項3は、クライアント(装置)がドキュメントをドキュメントデータベースから引き出す際、クライアント(装置)外にある管理情報を用いることから、クライアント(装置)内の管理情報を用いることに変更することを含む補正なのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、本件補正前の
「前記記憶手段に接続され、前記ドキュメントの管理者側に設置されたサーバと、
前記サーバにネットワークを介して接続され、前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すクライアント」
という記載には誤記はないのであるから、
本件補正事項3は、特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」に該当しない。

しかも、本件補正事項3に関して、明りようでない記載に関する拒絶理由通知は通知されていないので、
本件補正事項3は、特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当しない。

つまり、本件補正事項3は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。


(4)本件補正事項4について

本件補正事項4は、請求項を削除するものではないので、特許法第17条の2第4項第1号に規定された「請求項の削除」には該当しない。

また、本件補正事項4は、請求項9を引用するかわりに、請求項11項を自己引用することに変更する補正なのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。

更に、本件補正前の「・・・を特徴とする請求項9または10に記載のドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」という記載には誤記はないのであるから、
本件補正事項4は、特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」に該当しない。

しかも、本件補正事項4に関して、明りようでない記載に関する拒絶理由通知は通知されていないので、
本件補正事項4は、特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当しない。

つまり、本件補正事項4は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。



3.むすび

したがって、本件補正事項1乃至4を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。




第3 本願発明について

1.本願発明の認定

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至11に係る発明は、平成11年5月10日付けの明細書の特許請求の範囲第1乃至11項に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】 階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースとを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に接続され、前記ドキュメントの管理者側に設置されたサーバと、
前記サーバにネットワークを介して接続され、前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すクライアントと、
を備えることを特徴とする統合ドキュメント管理システム。」



2.引用例の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、特開平3-161864号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(なお、以下、表記上、丸数字をカッコで囲まれた数字で代用している。例として、「○」で囲まれた「1」を「〔1〕」で代用している。)

(ア)
「〔産業上の利用分野〕
本発明は,クライアントとサーバとの連携システム等において,サーバ側に論理構造で多数の文書群を管理するデータベースを持たせ,マルチメディア対応の文書を自由に扱うことができるようにした文書管理処理方式に関する。」
(第2頁左上欄第5乃至10行)

(イ)
「〔発明が解決しようとする課題〕
・・・(中略)・・・
本発明は上記問題点の解決を図り,文書または文書要素間の論理的関係を自由に操作し,長大文書の管理や版数管理,共用管理などの文書の管理を体系的に行うことができるようにすることを目的としている。」
(第3頁右上欄第5行から同頁左下欄第4行)

(ウ)
「〔実施例〕
第2図は,本発明の一実施例に係る文書データベースの論理構造の例,第3図は本発明の一実施例による木構造の管理テーブルの例,第4図は本発明の一実施例による動的リンク管理テーブルの例,第5図は本発明の一実施例による版数管理テーブルの例,第6図は本発明の一実施例による共用管理テーブルの例,第7図は本発明の一実施例における格納構造を管理するデータ構造の例,第8図は本発明の一実施例システム構成を示す。」
(第4頁左下欄第17行から同頁右下欄第7行)

(エ)
「本発明による文書データベースの論理構造は,例えば第2図に示すような木構造により,管理されるようになっている。第2図において,●はシステムクラスであって,システムが定義するもの,○はクラスまたはサブクラスであって,利用者が定義するもの,□はエンティティであって,1文書の全体または文書の1要素に対応するものを表す。エンティティは,基本的にデータの実体であり,また,実体のある所在情報を示す場合もある。
・・・(中略)・・・
第2図(a)に示すように,あるクラスの配下に,エンティティをまとめて,文書同士を関連付けることができる。」
(第4頁右下欄第8行から第5頁左上欄第6行)

(オ)
「第3図は,クラスの木構造を管理するリレーショナルデータベースによる部品展開型テーブルの例を示している。第3図に示す例は,第2図に示すクラスZのサブクラスZ2についてのテーブルの構成例である。
この部品展開型テーブルは,システムが固定に用意する項目と,利用者が指定する項目からなる。システム固定の項目は,次の意味を持つ。
-「識別名」は,クラス,サブクラスまたはエンティティのいずれかを示し,システム生成の一意名である。
-「所属名」は,サブクラスまたはエンティティが所属する識別名である。あるサブクラス配下のすべてのサブクラス名やエンティティ名を検索する処理を高速化するために,所属名は複数個持つことがある。
-「種別」は,値1がクラス,値2がサブクラス,値3がエンティティを表す。
-「格納位置」は,各エンティティの格納位置を,入れ物名で示す。
-「論理名」は,利用者が指定した名前である。
サブクラス名,エンティティ名は,クラス内で一意である。」
(第5頁右上欄第2行から同頁左下欄第4行)

(カ)
「第4図は,第2図に示す木構造におけるクラスXの文書同士を動的にリンクするための動的リンク管理テーブルの例を示している。この部品展開型テーブルの構成は,第3図の例と同様である。
関連付けられる文書の元の文書は,常に1つであり,この例では,文書B,C,E,Fが関係付けられた文書である。」
(第5頁左下欄第14乃至20行)

(キ)
「第2図に示す版数管理のために用意されたシステムクラスWは,第5図に示すような版数管理テーブルで表わされる。
システムが固定で管理する項目として,第3図に示す部品展開型テーブルの項目の他に,「版数」および「派生名」の追加がある。
-「版数」は,版数管理されるエンティティ(文書)の版数である。
-「派生名」は,当該版数の派生元のエンティティ(文書)を識別名で示す。
-「種滅」の値4は,版数管理されたエンティティ(文書)を意味する。」
(第5頁右下欄第1乃至12行)

(ク)
「以上のような文書データベースが動作するシステムの全体構成は,例えば第8図に示すようになっている。
第8図において,30はワークステーション(WS),31は文書処理を行う応用プログラム,32はクライアントインタフェース,40はホスト処理装置,41はモニタ(OS),42は文書管理機能を提供する文書管理サーバ,43はSQLインタフェース,44はリレーショナルデータベース管理サブシステム,45はキャビネット管理インタフェース,46はキャビネット管理部,47はテキスト検索インタフェース,48はテキスト検索部,50は本発明に係る文書データベース,51は構造管理ファイル,52はキャビネット等の入れ物,53は検索用の単語情報などが格納された検索ファイルを表す。」
(第6頁左下欄第13行から同頁右下欄第8行)

(ケ)
「ワークステーション30上では,文書を作成,編集,印刷する応用プログラム31が動作する。クライアントインタフェース32は,応用プログラム31に対して,文書データベース50のアクセスインタフェース(〔1〕)を提供する。」
(第6頁右下欄第9乃至13行)

(コ)
「クライアントが,文書データベース50のアクセスを依頼すると,ホスト処理装置40は,文書管理サーバ42によって,文書データベース50をアクセスして,結果を応答する。これを,依頼と応答のプロトコル(〔2〕)と呼ぶ。」
(第6頁右下欄第14乃至18行)

(サ)
「これまでの文書管理システムを発展させて,文書データベースシステムとするため,ホスト処理装置40側に文書データベースの論理構造を実現する構造管理ファイル51とテキスト検索を実現する検索ファイル53を用意する。構造管理ファイル51には,第3図ないし第7図で説明したような論理構造および格納構造を管理するための部品展開型テーブルが格納されている。
文書管理サーバ42は,文書データベース50のアクセス法として,SQLインタフェース43,キャビネット管理インタフェース45,テキスト検索インタフェース47を使用する。なお,テキスト検索インタフェース47,テキスト検索部48,検索ファイル53は,なくてもよい。」
(第6頁右下欄第19行から第7頁左上欄第12行)

(シ)
「階層検索の場合,例えば次のような処理となる。第2図に示す木構造のクラスZのサブクラスZ2の次の階層一覧を求めるものとする。以下の〔1〕,〔2〕,〔3〕は,第8図に示す〔1〕?〔3〕のインタフェースに対応する。
・・・(中略)・・・
〔2〕依頼プロトコル
回線上のデータストリームは,以下のとおりである。
・・・(中略)・・・
〔2〕応答プロトコル
回線上のデータストリームは,以下のとおりである。」
(第7頁右上欄第1行から同頁左下欄第8行)

(ス)
「〔発明の効果〕
ホスト・ワークステーション連携システムにおいて,現在の実用レベルの文書処理は,個人のオフィスワーカの利用が中心であり,扱う文書も少量で共用性も低い場合が多い。しかしながら,今後は,オフィスだけでなく,研究開発部門や設計・製造部門にも,文書処理が適用されてくることが予想される。この分野では,少量文書を扱うオフィス分野とは異なり,長大文書や多数文書群を扱うことが多いと考えられる。長大文書は,複数人が共同で作成する論理的にひとまとまりの文書で,例えば製品のマニュアルなどである。長大文書は,構造化されており,この構造の最小単位での操作が,長大文書の管理機能として要求される。また,多数文書群は,組織内で運用している各種の規格文書の集合のようなもので,組織の多部門で作成される文書を体系的に管理することが必要とされる。
本発明によれば,このような要求に応ずることができるようになり,クライアント/サーバ型のシステムなどに適用して,文書管理における新しいニーズを満たす環境を実現することが可能になる。」
(第7頁左下欄第15行から同頁右下欄第18行)


以上の引用例の記載によれば、引用例には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例の上記(ウ)の「第2図は,本発明の一実施例に係る文書データベースの論理構造の例,第3図は本発明の一実施例による木構造の管理テーブルの例,第4図は本発明の一実施例による動的リンク管理テーブルの例,第5図は本発明の一実施例による版数管理テーブルの例,第6図は本発明の一実施例による共用管理テーブルの例,第7図は本発明の一実施例における格納構造を管理するデータ構造の例,第8図は本発明の一実施例システム構成を示す。」という記載、
(なお、「第3図の「木構造の管理テーブル」、第4図の「動的リンク管理テーブル」、第5図の「版数管理テーブル」、第6図の「共用管理テーブル」という、各種管理テーブルは『管理情報』の一種であることは明らかである。)

引用例の上記(エ)の「本発明による文書データベースの論理構造は,例えば第2図に示すような木構造により,管理されるようになっている。第2図において,●はシステムクラスであって,システムが定義するもの,○はクラスまたはサブクラスであって,利用者が定義するもの,□はエンティティであって,1文書の全体または文書の1要素に対応するものを表す。エンティティは,基本的にデータの実体であり,また,実体のある所在情報を示す場合もある。・・・(中略)・・・第2図(a)に示すように,あるクラスの配下に,エンティティをまとめて,文書同士を関連付けることができる。」という記載、

引用例の上記(オ)の「第3図は,クラスの木構造を管理するリレーショナルデータベースによる部品展開型テーブルの例を示している。第3図に示す例は,第2図に示すクラスZのサブクラスZ2についてのテーブルの構成例である。・・・(中略)・・・-「格納位置」は,各エンティティの格納位置を,入れ物名で示す。」という記載、

引用例の上記(カ)の「第4図は,第2図に示す木構造におけるクラスXの文書同士を動的にリンクするための動的リンク管理テーブルの例を示している。この部品展開型テーブルの構成は,第3図の例と同様である。」という記載、

引用例の上記(キ)の「第2図に示す版数管理のために用意されたシステムクラスWは,第5図に示すような版数管理テーブルで表わされる。・・・(中略)・・・-「版数」は,版数管理されるエンティティ(文書)の版数である。」という記載、

引用例の上記(ク)の「以上のような文書データベースが動作するシステムの全体構成は,例えば第8図に示すようになっている。・・・(中略)・・・,50は本発明に係る文書データベース,51は構造管理ファイル,52はキャビネット等の入れ物,53は検索用の単語情報などが格納された検索ファイルを表す。」という記載、

引用例の上記(サ)の「これまでの文書管理システムを発展させて,文書データベースシステムとするため,ホスト処理装置40側に文書データベースの論理構造を実現する構造管理ファイル51とテキスト検索を実現する検索ファイル53を用意する。構造管理ファイル51には,第3図ないし第7図で説明したような論理構造および格納構造を管理するための部品展開型テーブルが格納されている。」という記載から、

引用例には、「階層構造をなす複数の文書からなるキャビネット等の入れ物、上位階層の文書と下位階層の文書の関係を示す動的リンク管理テーブルに格納された情報、および文書の版数を示す版数管理テーブルに格納された情報を含む複数の管理情報からなる構造管理ファイルが格納されている文書データベース」が開示されていると認められる。


(b)
上記(a)の「階層構造をなす複数の文書からなるキャビネット等の入れ物、上位階層の文書と下位階層の文書との関係を示す動的リンク管理テーブルに格納された情報、および文書の版数を示す版数管理テーブルに格納された情報を含む複数の管理情報からなる構造管理ファイルが格納されている文書データベース」という開示、

引用例の上記(ク)の「以上のような文書データベースが動作するシステムの全体構成は,例えば第8図に示すようになっている。・・・(中略)・・・,40はホスト処理装置,41はモニタ(OS),42は文書管理機能を提供する文書管理サーバ,43はSQLインタフェース,44はリレーショナルデータベース管理サブシステム,45はキャビネット管理インタフェース,46はキャビネット管理部,47はテキスト検索インタフェース,48はテキスト検索部,50は本発明に係る文書データベース,51は構造管理ファイル,52はキャビネット等の入れ物,53は検索用の単語情報などが格納された検索ファイルを表す。」という記載、
(なお、「ホスト処理装置」は「文書管理機能を提供する文書管理サーバ」を備えているのであるから、「ホスト処理装置」が「文書管理機能を提供する」といえることは明らかである。)

引用例の上記(コ)の「クライアントが,文書データベース50のアクセスを依頼すると,ホスト処理装置40は,文書管理サーバ42によって,文書データベース50をアクセスして,結果を応答する。これを,依頼と応答のプロトコル(〔2〕)と呼ぶ。」という記載から、
(なお、「ホスト処理装置40は,文書管理サーバ42によって,文書データベース50をアクセスして,結果を応答する。」のであるから、「文書データベース」と「ホスト処理装置」が接続されていることは明らかである。)

引用例には、「前記文書データベースに接続され、文書管理機能を提供するホスト処理装置」が開示されていると認められる。


(c)
上記(a)の「階層構造をなす複数の文書からなるキャビネット等の入れ物、上位階層の文書と下位階層の文書との関係を示す動的リンク管理テーブルに格納された情報、および文書の版数を示す版数管理テーブルに格納された情報を含む複数の管理情報からなる構造管理ファイルが格納されている文書データベース」という開示、
(なお、当該開示から、版数管理テーブルによって、文書の版数が管理されていることは明らかである。)

上記(b)の「前記文書データベースに接続され、文書管理機能を提供するホスト処理装置」という開示、

引用例の上記(ク)の「以上のような文書データベースが動作するシステムの全体構成は,例えば第8図に示すようになっている。第8図において,30はワークステーション(WS),31は文書処理を行う応用プログラム,32はクライアントインタフェース,40はホスト処理装置,41はモニタ(OS),42は文書管理機能を提供する文書管理サーバ,43はSQLインタフェース,44はリレーショナルデータベース管理サブシステム,45はキャビネット管理インタフェース,46はキャビネット管理部,47はテキスト検索インタフェース,48はテキスト検索部,・・・(中略)・・・を表す。」という記載、

引用例の上記(ケ)の「ワークステーション30上では,文書を作成,編集,印刷する応用プログラム31が動作する。クライアントインタフェース32は,応用プログラム31に対して,文書データベース50のアクセスインタフェース(〔1〕)を提供する。」
という記載、

引用例の上記(コ)の「クライアントが,文書データベース50のアクセスを依頼すると,ホスト処理装置40は,文書管理サーバ42によって,文書データベース50をアクセスして,結果を応答する。これを,依頼と応答のプロトコル(〔2〕)と呼ぶ。」という記載、

引用例の上記(サ)の「文書管理サーバ42は,文書データベース50のアクセス法として,SQLインタフェース43,キャビネット管理インタフェース45,テキスト検索インタフェース47を使用する。なお,テキスト検索インタフェース47,テキスト検索部48,検索ファイル53は,なくてもよい。」という記載、

引用例の上記(シ)の
「階層検索の場合,例えば次のような処理となる。第2図に示す木構造のクラスZのサブクラスZ2の次の階層一覧を求めるものとする。以下の〔1〕,〔2〕,〔3〕は,第8図に示す〔1〕?〔3〕のインタフェースに対応する。
・・・(中略)・・・
〔2〕依頼プロトコル
回線上のデータストリームは,以下のとおりである。
・・・(中略)・・・
〔2〕応答プロトコル
回線上のデータストリームは,以下のとおりである。」という記載から、
(なお、第8図に図示された〔2〕から、〔2〕依頼プロトコル及び〔2〕応答プロトコルは、「クライアント」と「ホスト処置装置」との間の「回線」上に情報を流すためのものであることは明らかである。)

引用例には、「前記ホスト処理装置に回線を介して接続され、前記ホスト処理装置にアクセスすることにより、所定の版数における文書を作成,編集,印刷するクライアント」が開示されていると認められる。


(d)
引用例の上記(ア)の「本発明は,クライアントとサーバとの連携システム等において,サーバ側に論理構造で多数の文書群を管理するデータベースを持たせ,マルチメディア対応の文書を自由に扱うことができるようにした文書管理処理方式に関する。」という記載、

引用例の上記(イ)の「本発明は上記問題点の解決を図り,文書または文書要素間の論理的関係を自由に操作し,長大文書の管理や版数管理,共用管理などの文書の管理を体系的に行うことができるようにすることを目的としている。」という記載から、

引用例には、「文書または文書要素間の論理的関係を自由に操作し,長大文書の管理や版数管理,共用管理などの文書の管理を体系的に行う連携システム」が開示されていると認められる。


以上の引用例の記載によれば、引用例には下記の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「階層構造をなす複数の文書からなるキャビネット等の入れ物、上位階層の文書と下位階層の文書との関係を示す動的リンク管理テーブルに格納された情報、および文書の版数を示す版数管理テーブルに格納された情報を含む複数の管理情報からなる構造管理ファイルが格納されている文書データベースと、
前記文書データベースに接続され、文書管理機能を提供するホスト処理装置と、
前記ホスト処理装置に回線を介して接続され、前記ホスト処理装置にアクセスすることにより、所定の版数における文書を作成,編集,印刷するクライアントと、
を備えることを特徴とする、文書または文書要素間の論理的関係を自由に操作し,長大文書の管理や版数管理,共用管理などの文書の管理を体系的に行う連携システム。」



3.本願発明と引用例発明との対比

(1)
引用例発明の「文書」、「回線」は、それぞれ、

本願発明の「ドキュメント」、「ネットワーク」に相当する。


(2)
引用例発明の「キャビネット等の入れ物」は、「文書データベース」に格納されているのであるから、データベースの一種であることは明らかであることを鑑みれば、

引用例発明の「階層構造をなす複数の文書からなるキャビネット等の入れ物」は、

本願発明の「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベース」に相当する。


(3)
引用例発明の「構造管理ファイル」は、「文書データベース」に格納されているのであるから、データベースの一種であることは明らかであることを鑑みれば、

引用例発明の「上位階層の文書と下位階層の文書との関係を示す動的リンク管理テーブルに格納された情報、および文書の版数を示す版数管理テーブルに格納された情報を含む複数の管理情報からなる構造管理ファイル」は、

本願発明の「上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベース」に相当する。


(4)
引用例発明の
「階層構造をなす複数の文書からなるキャビネット等の入れ物、上位階層の文書と下位階層の文書との関係を示す動的リンク管理テーブルに格納された情報、および文書の版数を示す版数管理テーブルに格納された情報を含む複数の管理情報からなる構造管理ファイルが格納されている文書データベースと、
前記文書データベースに接続され、文書管理機能を提供するホスト処理装置」と、

本願発明の
「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースとを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に接続され、前記ドキュメントの管理者側に設置されたサーバ」とは、

「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースと、
サーバ」を有する点で一致し、

・本願発明では、ドキュメントデータベース及び管理情報データベースを、サーバと接続された「記憶手段」が記憶するのに対し、引用例発明では、ドキュメントデータベース及び管理情報データベースを、サーバと接続された「文書管理データベース」が格納している点、

・本願発明では、「サーバ」が「ドキュメントの管理者側に設置された」ものであるのに対し、引用例発明では、「サーバ」が「文書管理機能を提供する」ものである点、

で相違する。


(5)
引用例発明の「前記ホスト処理装置に回線を介して接続され、前記ホスト処理装置にアクセスすることにより、所定の版数における文書を作成,編集,印刷するクライアント」は、

本願発明の「前記サーバにネットワークを介して接続され、前記サーバにアクセスすることにより、前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出すクライアント」とは、

「前記サーバにネットワークを介して接続され、前記サーバにアクセスするクライアント」である点で一致し、

本願発明の「クライアント」は「前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出す」のに対し、引用例発明の「クライアント」は「所定の版数における文書を作成,編集,印刷する」点、

で相違する。


(6)
引用例発明の「文書または文書要素間の論理的関係を自由に操作し,長大文書の管理や版数管理,共用管理などの文書の管理を体系的に行う連携システム」は、

本願発明の「統合ドキュメント管理システム」に相当する。


(7)
したがって、本願発明と引用例発明とは、

「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベースと、
サーバと、
前記サーバにネットワークを介して接続され、前記サーバにアクセスするクライアントと、
を備えることを特徴とする統合ドキュメント管理システム。」

である点で一致し、

(相違点1)
本願発明では、ドキュメントデータベース及び管理情報データベースを、サーバと接続された「記憶手段」が記憶するのに対し、引用例発明では、ドキュメントデータベース及び管理情報データベースを、サーバと接続された「文書管理データベース」が格納している点、

(相違点2)
本願発明では、「サーバ」が「ドキュメントの管理者側に設置された」ものであるのに対し、引用例発明では、「サーバ」が「文書管理機能を提供する」ものである点、

(相違点3)
本願発明の「クライアント」は「前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出す」のに対し、引用例発明の「クライアント」は「文書を作成,編集,印刷する」点、


で相違する。



4.相違点の判断

(1)相違点1について

各種データベースを記憶手段に格納せしめることは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
ドキュメントデータベース及び管理情報データベースを、サーバと接続された「記憶手段」が記憶するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

引用例発明には、「ドキュメントデータベース」(文書データベース)に接続され、管理者が管理しているか否かは不明であるものの「文書管理機能を提供する」「サーバ」(ホスト処理装置)が開示されている。

そして、サーバ自体だけでなく、サーバに接続されたデータベース内の各種コンテンツ(例:ドキュメント(文書))を管理するするために、「管理者」が管理することは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって
、サーバに接続されたドキュメントデータベース内のドキュメント(文書)を管理者に管理させるべく、
「サーバ」を「ドキュメントの管理者側に設置された」ものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。


(3)相違点3について

引用例には明記されていないものの、引用例発明の「クライアント」が「所定の版数における文書を作成,編集,印刷する」ためには、編集や印刷の対象となる「所定の版数におけるドキュメントをドキュメントデータベースから引き出す」必要があることは明らかである。

そして、引用例発明では、「管理情報」がドキュメントを管理しているのであるから、編集や印刷の対象となる「所定の版数におけるドキュメントをドキュメントデータベースから引き出す」ためには、「管理情報に基づいて、所定の版数におけるドキュメントをドキュメントデータベースから引き出す」必要があることも明らかである。

更に、引用例発明におけるドキュメント(文書)は、「階層構造をなす複数のドキュメントからなるドキュメントデータベースと、上位階層のドキュメントと下位階層のドキュメントとの関係を示す情報、およびドキュメントの版数情報を含む複数の管理情報からなる管理情報データベース」を備えているのであるから、
引用例発明は、階層関係にある上位階層のドキュメント及び下位階層のドキュメントを引き出すことを可能とするための構成を備えていることは明らかであり、
しかも、階層関係にある上位階層のドキュメント及び下位階層のドキュメントを引き出す需要があることは周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-110391号公報(特に、段落【0073】及び【図27】)を参照)である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
引用例発明の「クライアント」を「前記管理情報に基づいて、所定の版数における前記上位階層のドキュメントおよび下位階層のドキュメントを前記ドキュメントデータベースから引き出す」ように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。



5.むすび

したがって、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-23 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-09 
出願番号 特願平11-128574
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桜井 茂行  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 手島 聖治
和田 財太
発明の名称 統合ドキュメント管理システムおよびそれに用いられるドキュメント引出装置、ならびにドキュメント引出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 酒井 宏明  

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