• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1194857
審判番号 不服2007-762  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-11 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 平成10年特許願第187579号「画像処理方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月21日出願公開、特開2000- 22951〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は,平成10年7月2日の出願であって,平成18年10月31日付けで拒絶査定がされ,これに対して平成19年1月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして,当審により平成20年8月22日付けで拒絶理由が通知され,これに対して平成20年10月24日に意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は,平成20年10月24日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたものと認められるところ,その請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「 【請求項1】 画像データを入力する入力手段と,
前記入力手段により入力した画像データに誤差データを加算した誤差補正データを少なくとも2レベルのデータに量子化処理する処理手段と,
前記量子化処理の際発生する誤差データを,量子化処理されていない画像データに分散する分散手段とを有し,
前記処理手段は疑似輪郭の発生を防止するべく,前記誤差補正データのデータ値が第1のインデックス値群のうちの単一の第1のインデックス値になった場合に,該誤差補正データのデータ値に対し,該インデックス値に応じた本来の処理結果の第1のレベルよりも大きい第2のレベルを量子化処理結果として出力し,前記誤差補正データのデータ値が前記第1のインデックス値群のうちの前記第1のインデックス値を除くインデックス値になった場合に,該誤差補正データのデータ値に対し,前記本来の処理結果の第1のレベルを量子化処理結果として出力することを特徴とする画像処理装置。」

第2 引用例
当審の拒絶の理由で引用された特開平8-32805号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

ア 「【請求項1】 画像データを入力する入力手段と,
前記画像データを少なくとも3レベルのデータに量子化処理する処理手段と,
前記量子化処理の際発生する誤差データに重み付けを行ない,複数の画像データに誤差データを分散する分散手段とを有し,
前記分散手段は重み付けにより発生する丸め誤差の値を1未満とすることを特徴とする画像処理装置。」

イ 「【0019】本発明の第1実施例においては,濃淡の2色のインクを使って疑似階調を表現する例,つまり,入力画像データを3つのレベルに量子化する例を説明する。尚,本発明は入力画像データを4レベル以上に量子化する場合にも適用可能である。
【0020】図1において,左から入力される入力画像ピクセルデータは8ビットの多値画像データであり,まず1のルックアップテーブル(LUT)に入力される。LUT1は,疑似階調処理される入力データに対する出力の線形性を補償するためのテーブルで,8ビットの入力値に対して16ビットの値が出力される。
【0021】更にLUT1では入力データに誤差を配分する際の配分係数の分母の値(図3の配分係数の場合256)が掛け合わされている。2は加算器であり,LUT1からの16ビットデータに既に3レベルに量子化処理が終了した画素からの誤差データを加算する。
【0022】加算器2では,LUT1からの16ビットデータにラッチ7から出力される丸め誤差(誤差を配分する際発生する余りの誤差),誤差バッファ14から読み出された前ラインからの誤差,およびラッチ13から出力される左または右横ピクセルからの誤差を足し合わせる。」

ウ 「【0026】ラッチ6および7は丸め誤差を誤差配分テーブルで示される画素外に配分するためのもので2画素分のディレーが与えられた後,再び加算器2に入力される。加算器2から出力される上位9ビットデータである商は参照値として誤差配分テーブル8に入力される。誤差配分テーブル8はRAM(ランダムアクセスメモリ)またはROM(リードオンリーメモリ)によって構成されるルックアップテーブルであり,量子化誤差の値ごとにあらかじめ定められた重み係数の分母倍された値および濃淡のインクに対応したそれぞれの2値データが格納されている。誤差配分テーブル8は図2に示すような誤差配分窓に対応した値が格納されており,個々の値は量子化誤差の値に応じて誤差配分係数の分母倍されているので,それぞれが16ビットの数で表されている。
【0027】なお本実施例では図2に示すような左右対称な2つの誤差配分窓を処理方向に応じて1ラスタごとに切り替て使用しているが,誤差配分窓は左右対称なので誤差配分テーブルは1つで十分である。誤差配分テーブル8からは加算器から出力される商の値に応じてek0,ek1,ek2,ek3の4つの値が出力され,それぞれが図2に示される誤差配分窓e0,e1,e2,e3への値に対応している。従って出力ek0はラッチ13に入力され1ピクセル分のディレーが加えられた後再び加算器2に入力される。また,出力ek1はラッチ9に入力され1ピクセル分のディレーが加えられた後,加算器10に入力され出力ek2と足し合わされる。さらに加算器10の出力はラッチ11に入力され1ピクセル分のディレーが加えられた後,加算器12に入力され出力ek3と足し合わされる。そして加算器12の出力は誤差バッファ14に書き込まれる。
【0028】例えば,加算器2からの上位9ビットデータである商が1で下位8ビットデータである余りが50の時は,e0へ128,e1へ71,e2へ37,e3へ20の誤差データが配分され,e0の右隣りの画素へ50の誤差データが配分される。」

エ 「【0032】また,誤差配分テーブル8には加算器2の上位9ビットの値に応じて予め量子化処理後のデータが格納されており加算器から出力される上位9ビットの商の値に応じてo0およびo1が出力され,それぞれが淡インク,濃インクに対応する2値データに対応している。」

前掲アないしエの記載及び図面によると,引用例1には,

「画像データを入力する入力手段と,
前記画像データに誤差データを加算した値を少なくとも3レベルのデータに量子化処理する処理手段と,
前記量子化処理の際発生する誤差データに重み付けを行ない,複数の前記画像データに誤差データを分散する分散手段とを有する画像処理装置。」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく,当審の拒絶の理由で引用された特開平9-247449号公報(以下,「引用例2」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

オ 「【0004】この従来の多値誤差拡散法においては,入力された画像データに,誤差メモリに蓄えられた注目画素に対する周辺画素からの誤差データを加算し,補正データを生成する。そして,生成した補正データを複数の区間に分割する。例えば0?255のデータが入力されたとき,0,64,128,192,255のような複数の区間に分割する。そしてこの分割した複数の区間に対して,量子化代表値を選択する。
【0005】この従来の量子化代表値の選択時における入出力の割当を図8に示す。上述したように図8に示す4つの区間に分割されたとし,出力可能な多値レベルを示す量子化代表値が図8に示す4値であったとき,その代表値が区間内に存在すればその代表値を選択する。
【0006】このとき問題となるのは,量子化代表値近辺のレベルを持つ入力データに対して多値誤差拡散処理を行った際,単一の濃度が連続してしまい,それが疑似輪郭として知覚されてしまう点である。これは,誤差拡散の濃度による追従性の違いの影響である。」

カ 「【0025】画像データ入力端子201から入力された画像データに,誤差メモリ203に蓄えられた注目画素に対する周辺画素からの誤差データが加算器202で加算される。このデータを補正データと呼ぶことにする。補正データが区間分割部205に入力され複数の区間に分割される。例えば0?255のデータが入力されたとき,0,64,128,192,255のような複数の区間に分割する。
【0026】なお,このように入力レベルを等間隔に分割する場合と,等間隔でない区間に分割する場合があり,本例においてはいずれの分割方法をも採用することができる。しかし,説明の簡略化のために入力レベルを等間隔に分割する場合を例として以下説明を行なう。そして,この分割した複数の区間に対して代表値選択部206で量子化代表値を選択する。
【0027】次に,以上の構成を備える本例の動作を説明する。本例においては,図2に示すように,まず0?255の入力データが入力され,誤差データが加算された後の補正データの値を64以下,64?128,128?192,192以上の4つの区間に分割する。さらに異なるディザ表現が発生することによる不連続点が発生する濃度128を中心にして,それぞれ正と負の方向にΔtの幅を持つ区間を設ける。よって区間数は全部で6つとなる。
【0028】これら6つの区間に対して,図2のように出力する量子化代表値を割り当てる。これにより128-Δt以下の区間では量子化代表値0と170のディザ表現となる。また128-Δtから128+Δtの区間では量子化代表値85と170のディザ表現となる。さらに128+Δt以上の区間では量子化代表値85と255のディザ表現となる。これにより不連続点の発生していた濃度128の近辺でもディザ表現が行われ,変化点は現れない。
【0029】このとき128-Δtと128+Δtの近辺でも図5と同じ理由でディザ表現は行われないが,ここではその隣接する区間で共通に発生する量子化代表値170が存在することで変化としては知覚されにくい。
【0030】一般にある中間濃度Dを境界とした隣接区間K1,K2において(K1≦D≦K2),量子化代表値がそれぞれQ1,Q2が割り当てられていたとき,Dを中心とした幅Δtの区間において,D-ΔtからDの区間は量子化代表値Q2を,DからD+Δtの区間は量子化代表値Q1を割り当てる。」

前掲オ及びカの記載及び図面によると,引用例2には,

「誤差拡散処理を行った際に知覚されてしまう擬似輪郭を問題とし,入力された画像データに誤差データを加算した補正データを入力して量子化代表値を選択する際,ある中間濃度Dを境界とした隣接区間K1,K2において(K1≦D≦K2),量子化代表値としてそれぞれQ1,Q2(Q1<Q2)が割り当てられていたとき,D-ΔtからDの区間は量子化代表値Q2を,区間K1におけるそれ以外の区間は量子化代表値Q1を割り当てる」

技術が記載されていると認められる。

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「画像データに誤差データを加算した値」は,本願発明の「入力手段により入力した画像データに誤差データを加算した誤差補正データ」に相当する。
引用発明は「少なくとも3レベルのデータに量子化処理する」ものであるのに対し,本願発明は「少なくとも2レベルのデータに量子化処理する」ものであるから,両者は「少なくとも複数レベルのデータに量子化する」点で共通する。
したがって,引用発明と本願発明とは「入力手段により入力した画像データに誤差データを加算した誤差補正データを少なくとも複数レベルのデータに量子化処理する処理手段」を有する点で共通するものといえる。

引用発明において「複数の画像データに誤差データを分散する」とあるが,分散される「複数の画像データ」が量子化されていない画像データを表すことは明らかである(つまり,3つのレベルに量子化されている画像データに対して誤差データを分散するのでは,3つのレベルではないレベルに変化してしまい,量子化が終わったはずの画像データが,量子化されていない状態になってしまうため)。
したがって,引用発明の「量子化処理の際発生する誤差データに重み付けを行ない,複数の画像データに誤差データを分散する分散手段」は,本願発明の「量子化処理の際発生する誤差データを,量子化処理されていない画像データに分散する分散手段」に相当する。

以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。
【一致点】
画像データを入力する入力手段と,
前記入力手段により入力した画像データに誤差データを加算した誤差補正データを少なくとも複数レベルのデータに量子化処理する処理手段と,
前記量子化処理の際発生する誤差データを,量子化処理されていない画像データに分散する分散手段とを有する画像処理装置。

【相違点】
(1)量子化レベルが,本願発明においては,少なくとも「2」レベルであるのに対し,引用発明において,少なくとも「3」レベルである点。

(2)「処理手段」が,本願発明においては「疑似輪郭の発生を防止するべく,誤差補正データのデータ値が第1のインデックス値群のうちの単一の第1のインデックス値になった場合に,該誤差補正データのデータ値に対し,該インデックス値に応じた本来の処理結果の第1のレベルよりも大きい第2のレベルを量子化処理結果として出力し,前記誤差補正データのデータ値が前記第1のインデックス値群のうちの前記第1のインデックス値を除くインデックス値になった場合に,該誤差補正データのデータ値に対し,前記本来の処理結果の第1のレベルを量子化処理結果として出力する」のに対し,引用発明においては,そのような処理を行っていない点。

第4 当審の判断
まず,上記相違点(1)について検討する。
量子化処理の際に,量子化レベルをいくつに設定するかは,当業者が適宜採用し得る設計的な事項にすぎず,またこのことにより,本願発明特有の格別の効果を奏するものではない。したがって,引用発明において,量子化レベルを,少なくとも「2」レベルに設定することは,当業者が容易になし得たことである。
次に,上記相違点(2)について検討する。
前記「第2」で認定したように,引用例2には,誤差拡散処理を行った際に知覚されてしまう擬似輪郭を問題とし,入力された画像データに誤差データを加算した補正データ(本願発明の「誤差補正データのデータ値」に相当する。)を入力して量子化代表値を選択する際,ある中間濃度Dを境界とした隣接区間K1(本願発明の「第1のインデックス値群」に相当する。),K2において(K1≦D≦K2),量子化代表値としてそれぞれQ1(本願発明の「第1のレベル」に相当する。),Q2(本願発明の「第2のレベル」に相当する。)(Q1<Q2)が割り当てられていたとき,D-ΔtからDの区間(本願発明の「第1のインデックス値」に相当する。)は,量子化代表値Q2を,区間K1におけるそれ以外の区間は量子化代表値Q1を割り当てる技術が記載されており,区間K1において量子化代表値Q2を割り当てる濃度を区間として設定するか,単一のインデックス値として設定するかは,当業者が適宜採用し得る設計的事項である。
そして,引用発明と引用例2とは,ともに誤差拡散法を用いた量子化処理という共通の技術分野に属するものであり,かつ擬似輪郭の問題は,誤差拡散法を用いた量子化処理における通常の技術課題であるから,引用発明における量子化処理の際に,引用例2に記載された技術を適用することは,当業者が容易になし得たことである。

そして,これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず,本願発明の奏する効果を検討してみても,引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術それ自体の効果であって各相違点の組合せによって新たな効果を奏するものではない。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって,原査定を取り消す,本願は特許をすべきものであるとする審判請求の趣旨は認められないから,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-21 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願平10-187579
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大室 秀明加内 慎也  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 原 光明
廣川 浩
発明の名称 画像処理方法及び装置  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ