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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1194867
審判番号 不服2007-8397  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-22 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 特願2000-129994「合成樹脂製容器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月13日出願公開、特開2001-315740〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,平成12年4月28日の出願であって,平成19年2月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年3月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

II.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成18年12月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「内容物の充てん,注出を行う開口部を有する合成樹脂製の容器であって,前記容器は,容器本体胴部に,その周りに沿って規則的または不規則に蛇行を繰り返しながら伸延して容器の形状を形作り,かつ容器本体胴部の最大外径に位置する少なくとも1つの稜線を有する,ことを特徴とする合成樹脂製容器。」

2-1.引用例の記載事項
[引用例1]
原査定の拒絶の理由に引用された,特開平3-275431号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
a.記載a(2頁左上欄16行?同右上欄3行)
「本発明は,・・・合成樹脂製の二軸延伸成形された容器の胴部の中央より脚部の外側に面した接地平坦部を除く部分までの全体又は一部分を容器の最大膨出部及び隣接部より膨出させることにより,合成樹脂製容器の自立性,およびラインコンベア上の走行安定性を向上させた二軸延伸成形した耐圧自立型容器を見い出し,本発明を完成するに至った。」
b.記載b(2頁右上欄5?15行)
「すなわち本発明は,合成樹脂製の二軸延伸成形された容器であって,上端が開放口縁部とされている口頸部と該口頸部に連続する肩部と前記肩部に連続する横断面円形の胴部の下方開口部を閉塞する底部を有する自立型容器に於て,該容器のほぼ鉛直な横断面円形を形成する胴部中央より閉塞する底部中央へ伸びた凹部と接地平坦部を除いた脚部までの周囲の少なくとも一部分を容器の最大膨出部より直径で1?30%連続又は非連続して膨出させたことを特徴とする耐圧自立型容器である。」
c.記載c(2頁左下欄15行?同右下欄3行)
「すなわち,第2-1図から第2-8図は,本発明の容器の緩衝のための膨出部3部分の例を示す縦断面図である。本発明の容器は,緩衝のための膨出部3を設けることにより第3図に示すとおり,ラインコンベア上で容器同志は膨出部3のみが接触し,しかも膨出部3は,容器全体の中心部より接地平坦部6の方向に膨出されているので,押し合う際の重心が低いため走行安定性が良好となる。」

ここで,記載bの「連続又は非連続」「少なくとも一部分」との記載が選択的記載であり,図2-1ないし図2-3に示された膨出部3の状態,及び記載cの「ラインコンベア上で容器同志は膨出部3のみが接触し」という記載等を参酌すると,膨出部3は胴部全周に渡って連続して設けられていることが開示されている。
そこで記載a?c及び図示内容を総合し,本願発明の記載ぶりに則って整理すると,引用例1には,以下の発明が開示されている。
「口頸部を有する合成樹脂製の容器であって,容器の最大膨出部よりもさらに1?30%膨出する膨出部を胴部全周に渡って連続して設けられていることを特徴とする合成樹脂製の容器。」(以下,「引用発明1」という。)

[引用例2]
同じく引用された特開平11-208634号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
d.記載d.「【0010】
【発明の実施の形態】[作用]
本発明の容器は,(1)胴部軸方向に波打つ少なくとも4面以上の曲面が胴部の少なくとも一部の周囲に形成されていること,(2)この曲面は全体として胴部の軸方向に延びる一対の互いに交差することのない波線を稜線としていること,(3)前記波線は4本以上の偶数本であって,隣り合う対が胴部軸線を通る面に対して対称となるように形成されていること,及び(4)前記波線が実質上平面上に位置するように配置されていること,が顕著な特徴である。」

そうすると,引用例2に記載された発明(以下,「引用発明2」という。)には,「容器の胴部を波形曲線構造とする」点が記載されている。

2-2.対比
引用発明1の「口頸部」は,本願発明の「開口部」と同義である。また,引用発明1の膨出部が容器胴部から最も膨出した部分であり,且つ該膨出部が胴部全周に渡って連続して設けられていることを考慮すると,引用発明1の「容器の最大膨出部よりもさらに膨出する膨出部を胴部全周に渡って連続して設けられている」との構成は,本願発明の「容器本体胴部の最大外径に位置する稜線を有する」との構成のようにも表現できる。
さらに,引用発明1の「口頸部」が内容物の充てん,注出を行うための部材であることは明らかである(2-1.記載a.参照)。
そこで,本願発明と引用発明1とを対比すると,両者は,本願発明の用語を用いて表現すると下記の点で一致する。
「内容物の充てん,注出を行う開口部を有する合成樹脂製の容器であって,容器本体胴部の最大外径に位置する稜線を有する,ことを特徴とする合成樹脂製容器。」
そして,本願発明の「少なくとも1つの稜線」との構成が必須であることを考慮すれば,両者は下記の点で相違する(なお,対応する引用発明1記載の用語を括弧内に示す)。
稜線(膨出部)の形状に関して,本願発明の稜線は,容器の軸方向に蛇行し,円周方向に延伸した稜線である,すなわち,「容器本体胴部に,その周りに沿って規則的または不規則に蛇行を繰り返しながら伸延して」いるのに対して,引用発明1の膨出部は,容器の軸方向に蛇行せず直線的に円周方向に延伸している点で相違する。

2-3.相違点の判断
本願発明において稜線を蛇行させた目的が,容器に装飾的効果を与えることで,他の容器との識別化(個別化)を計ることなのは明らかである(平成19年4月23日付の審判請求書の手続補正書2頁28?45行の記載及び明細書の段落0016?0018の記載内容を参酌)。
また,引用発明2には,装飾的効果を目的とし,容器の径方向に蛇行し,軸方向に延伸した稜線を形成する波形曲線構造の成形方向について開示されている(2-1.記載d.参照)。
そして,引用発明1の膨出部(稜線)に,前述の引用発明2に開示された技術手段を適用することは当業者が容易に想到しうる事項である。
また,この適用に際し引用発明1の膨出部(稜線)がラインコンベア上での走行安定性を良好にするために設けられていること(記載c参照)を参酌すれば,蛇行の方向を,容器の径方向に蛇行し,軸方向に延伸することに代えて,容器の軸方向に蛇行し,円周方向に延伸するような設計変更を加えることは当業者が容易に想到しうる事項である。
そうすると,引用発明1に,引用発明2に記載の技術的事項を適用し本願発明のようにすることは,当業者が容易に想到しうる事項である。
そして,本願発明の効果も,引用発明1,2に記載されたものから当業者が予測し得た程度のものであって,格別のものとはいえない。
したがって,本願発明は,引用発明1,2に記載された技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

III.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
それゆえ,本願出願は,特許請求の範囲の請求項2?4に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-23 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-09 
出願番号 特願2000-129994(P2000-129994)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷治 和文  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 熊倉 強
村山 禎恒
発明の名称 合成樹脂製容器  
代理人 杉村 興作  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  
代理人 藤谷 史朗  

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