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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1194869
審判番号 不服2007-10399  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-12 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 特願2004-215533「移動距離導出方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日出願公開、特開2004-294452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成8年5月2日に出願した特願平8-111703号の一部を平成16年7月23日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年5月11日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「移動に伴ってパルス信号を生成する移動体の移動速度を算出する速度算出手段と、
前記算出された移動速度を、当該移動速度を算出した際に用いた単位時間当たりの前記パルス信号のパルス数で除することにより算出される1パルス当たりの移動距離である単位移動距離を所定タイミング毎に算出する距離算出手段と、
前記算出した単位移動距離を当該算出時の移動状態に応じて別個複数に分けて記憶する記憶手段と、
移動時に、前記記憶された複数の単位移動距離のうち当該移動における移動状態に対応した前記単位移動距離を選択する選択手段と、
前記移動時に、前記選択した単位移動距離及び前記パルス信号に基づいて前記移動体の移動距離を導出する導出手段と、
を備えたことを特徴とする移動距離導出装置。」

なお、上記手続補正書において、請求項1については補正がなされていない。

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-240659号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走行距離検出装置に係り、とくに、ナビゲーションシステムにおける自車の移動距離検出用等として好適な走行距離検出装置に関する。」

・「【0010】図1には、本発明に係る走行距離検出装置の一実施例であるナビゲーションシステムの構成が示されている。この図1のナビゲーションシステムは、自車位置の検出や表示・操作部15の制御等を行なう演算手段としてのナビゲーション制御部11と、地図情報が予め格納された地図情報収納部12と、車輪速検出手段としての車輪速センサ13と、地磁気センサ等の絶対方位センサ14と、地図画面とともに自車位置を表示する表示部及び各種操作スイッチが配置された操作部から成る表示.操作部15と、タイヤ空気圧情報を出力する空気圧情報出力手段としての空気圧センサ1とから構成されている。即ち、空気圧センサ1が設けられている点を除けば、前述した従来例のものと同様の構成である。
【0011】ここで、車輪速センサ13は、車両の車輪部に設けられ、当該車輪の回転数Nに応じたパルス信号を出力するセンサである。また、空気圧センサ1は、車輪に取り付けられ、タイヤの空気圧を検出するセンサであり、この空気圧センサ1で検出されたタイヤ空気圧情報は、車両の停車中にナビゲーション制御部11により読み込まれるようになっている。
【0012】ナビゲーション制御部11では、車輪速センサ出力信号値と変換係数k(これについては、更に後述する。)とを用いて、次式により走行距離を計算する。
【0013】
l=n×k …………………〔1〕(注:丸数字とすべきところ、便宜上このように表記した。以下同様。)
【0014】上式において、lは単位時間内走行距離を、nは単位時間内車輪速センサ出力信号値(パルス数)を、それぞれ示す。
【0015】ナビゲーション制御部11の内部メモリには、図7に示すような走行速度とタイヤ空気圧とタイヤ動荷重半径との関係から求まる図2に示すような走行速度とタイヤ空気圧と変換係数との関係が、図3に示すマップの形で、予め記憶されている。そして、ナビゲーション制御部11では、単位時間内車輪速センサ出力信号値から求めた車両の走行速度と空気圧センサ1から出力されたタイヤ空気圧とに基づき変換係数をマップから求めるようになっている。」

・「【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、演算手段が、車輪速検出手段の出力信号値に基づいて車両の走行速度を算出し、この算出された走行速度情報と空気圧情報出力手段から出力されるタイヤ空気圧情報とに基づき予め内部メモリ内にマップあるいは近似式の形で記憶された走行速度とタイヤ空気圧と変換係数との関係から走行距離算出のための変換係数を算出し、この算出された変換係数を車輪速検出手段の出力信号値に乗じて車両の走行距離を算出することから、車両走行距離を算出する為の変換係数を車両の走行速度とタイヤ空気圧に応じて適切な値となるように変化させることができ、変換係数を一定とした場合にタイヤ動荷重半径の変動により生じる実際の走行距離と計算により求めた走行距離との誤差を減少せしめることができ、これによりナビゲーションシステムに使用した場合には該システムの走行距離検出の精度ひいては道路トレース性能をさせることができるという従来にない優れた走行距離検出装置を提供することができる。」

・図3には、内部メモリに、走行速度とタイヤ空気圧とに対応した変換係数をマップの形で記憶する態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「車輪の回転数に応じたパルス信号を出力する車輪速検出手段の出力信号値に基づいて車両の走行速度を算出する演算手段と、
走行速度とタイヤ空気圧とタイヤ動荷重半径との関係から走行速度とタイヤ空気圧とに対応した変換係数の関係を求める手段と、
前記変換係数の関係を求める手段により求められた走行速度とタイヤ空気圧とに対応した変換係数をマップの形で記憶する内部メモリと、
前記マップの形で記憶された変換係数のうち前記車輪速検出手段の出力信号値に基づいて算出した車両の走行速度とタイヤ空気圧とに対応した前記変換係数を前記マップから求める手段と、
前記マップから求めた変換係数と前記車輪速検出手段の出力信号値とを用いて前記車両の走行距離を計算する手段と、
を備えた走行距離検出装置。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
まず、後者における「車輪の回転数に応じたパルス信号を出力する車輪速検出手段の出力信号値に基づいて車両の走行速度を算出する演算手段」が前者における「移動に伴ってパルス信号を生成する移動体の移動速度を算出する速度算出手段」に相当する。
また、後者の「変換係数」は前者の「1パルス当たりの移動距離である単位移動距離」に相当するから、後者の「走行速度とタイヤ空気圧とタイヤ動荷重半径との関係から走行速度とタイヤ空気圧とに対応した変換係数の関係を求める手段」と前者の「算出された移動速度を、当該移動速度を算出した際に用いた単位時間当たりの前記パルス信号のパルス数で除することにより算出される1パルス当たりの移動距離である単位移動距離を所定タイミング毎に算出する距離算出手段」とは、「1パルス当たりの移動距離である単位移動距離を算出する距離算出手段」との概念で共通している。
そして、後者の「走行速度とタイヤ空気圧」は前者の「移動状態」を表す要素に該当すると共に、後者の「マップの形で記憶する」態様は前者の「別個複数に分けて記憶する」態様と等価であるから、後者の「変換係数の関係を求める手段により求められた走行速度とタイヤ空気圧とに対応した変換係数をマップの形で記憶する内部メモリ」が前者の「算出した単位移動距離を当該算出時の移動状態に応じて別個複数に分けて記憶する記憶手段」に相当する。
次に、後者の「車輪速検出手段の出力信号値」は車両の走行時に出力されるものであると共に、後者の「変換係数をマップから求める手段」は前者の「単位移動距離を選択する選択手段」に相当するから、後者の「マップの形で記憶された変換係数のうち車輪速検出手段の出力信号値に基づいて算出した車両の走行速度とタイヤ空気圧とに対応した変換係数を前記マップから求める手段」が前者の「移動時に、記憶された複数の単位移動距離のうち当該移動における移動状態に対応した単位移動距離を選択する選択手段」に相当する。
さらに、後者の「マップから求めた変換係数と車輪速検出手段の出力信号値とを用いて車両の走行距離を計算する手段」が前者の「移動時に、選択した単位移動距離及びパルス信号に基づいて移動体の移動距離を導出する導出手段」に相当する。
加えて、後者の「走行距離検出装置」が前者の「移動距離導出装置」に相当する。

したがって、両者は、
「移動に伴ってパルス信号を生成する移動体の移動速度を算出する速度算出手段と、
1パルス当たりの移動距離である単位移動距離を算出する距離算出手段と、
前記算出した単位移動距離を当該算出時の移動状態に応じて別個複数に分けて記憶する記憶手段と、
移動時に、前記記憶された複数の単位移動距離のうち当該移動における移動状態に対応した前記単位移動距離を選択する選択手段と、
前記移動時に、前記選択した単位移動距離及び前記パルス信号に基づいて前記移動体の移動距離を導出する導出手段と、
を備えた移動距離導出装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
距離算出手段に関し、本願発明が、「算出された移動速度を、当該移動速度を算出した際に用いた単位時間当たりのパルス信号のパルス数で除することにより算出される」1パルス当たりの移動距離である単位移動距離を「所定タイミング毎に」算出するとしているのに対し、引用発明は、かかる特定がなされていない点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。
例えば、特開平8-14928号公報(【0030】の「車速換算係数算出手段104は、受け取ったGPS速度と速度センサ102からの速度信号として、GPS速度算出時のパルス数を受けとり、車速換算係数の算出を行なう。例として、GPS速度がVg[m/sec]、受信の瞬間の1秒間の合計パルス数をVp[パルス/sec]とすれば、車速換算係数F[m/パルス]は、F=Vg/Vpで求めることができる。」なる記載参照。)にも開示されているように、算出された移動速度(「GPS速度Vg 」が相当)を、当該移動速度を算出した際に用いた単位時間当たりのパルス信号のパルス数(「GPS速度算出時の1秒間の合計パルス数Vp 」が相当)で除することにより算出される1パルス当たりの移動距離である単位移動距離(「車速換算係数F」が相当)を算出することは、移動距離導出装置の分野における周知技術であり、また、かかる単位移動距離の算出をどのような頻度で行うかは、要求すべき算出精度のレベルに応じて当業者が適宜設定し得る事項であるから、引用発明において、上記周知技術を適用し、単位移動距離の算出を所定タイミング毎に行うことにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-26 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-09 
出願番号 特願2004-215533(P2004-215533)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 大河原 裕
小川 恭司
発明の名称 移動距離導出方法及び装置  
代理人 奥 和幸  
代理人 石川 泰男  

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