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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B43K
管理番号 1194895
審判番号 不服2006-8439  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2009-03-25 
事件の表示 平成10年特許願第189771号「二重筒の内外筒の固定構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月11日出願公開、特開2000- 6577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年6月19日に出願したものであって、平成18年3月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月27日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1に係る発明は、平成18年1月10日付けで補正された特許請求の範囲(請求項数:5)の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「外筒の内孔に内筒を挿入し、両部材に形成した環状の突起を乗り越えることにより容易に抜け難いよう固定する二重筒体の内外筒の固定構造において、少なくとも一方の筒体の環状突起を環状に連続する頂部と、この頂部に一体に連接して、環状突起同士が乗り越える際に初めに当接する環状に配置された複数の傾斜壁とからなるものとし、環状突起同士が当接して嵌合することを特徴とする二重筒の内外筒の固定構造。」

3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願平5-13175号(実開平6-64952号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.【請求項1】 外キャップと内キャップの少なくとも2部材からなるキャップ体と、先端にペン先を有する筆記具本体とからなる筆記具において、前記内キャップは、前記外キャップと、この外キャップが周方向に回転可能な程度に比較的遊嵌状態で嵌合すると共に、前記キャップ体が前記筆記具本体に装着された状態で、この筆記具本体と比較的緊締状態で当接することを特徴とした筆記具。
イ.【0006】
【実施例】
添付図面に基づいて一例の説明をする。図1に示す例において、参照符号1は筆記具本体であり、先端に繊維収束体からなるペン先2を有する。参照符号3はキャップ体であり、側部にクリップ4を有する外キャップ5と、これに係合する内キャップ6とからなっている。外キャップ5の内孔7には、筆記具本体1に対する嵌合部8と、内キャップ6と係合する係合部9が形成されている。嵌合部8は内孔7の開口端近傍に形成され、筆記具本体1の乗り越え被嵌合部1aと嵌合する。また、内キャップ6と係合する係合部9は内孔7の底部分に内孔7の周方向へのフランジとして形成されている。この係合部9は、内キャップ6の外面10に形成した係合突起11と乗り越え嵌合をし、比較的遊嵌状態で係合する。つまり、外キャップ5の係合部9と内キャップ6の係合突起11とを係合させた状態で、外キャップ5の内孔7と内キャップ6の外面10とは若干の隙間12を形成する。この隙間12があることにより、外キャップ5と内キャップ6とは互いに周方向に回転可能となっている。なお、隙間12は2部材が部分的に接触するような微細なものであっても良い。

上記刊行物1は、筆記具に関するものであるが、外キャップ5と内キャップ6の固定構造を想定できる。上記イ.の「内キャップ6と係合する係合部9は内孔7の底部分に内孔7の周方向へのフランジとして形成されている」という記載から、「係合部9」は、環状突起であると認められる。刊行物1記載の「係合突起11」が環状突起であるか環状に配置された複数の突起であるか明示がないが、後記刊行物2の従来技術(後記オ.参照。)に記載のように環状突起が乗り越える対象は環状突起であるか環状に配置された複数の突起のいずれかが通常であり、刊行物1の外キャップ5と内キャップ6とは一旦固定した後、取り外すことを予定しておらず、強固な固定が求められるから、環状突起である「係合突起11」を想定できる。
よって、上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「外キャップ5の内孔7に内キャップ6を挿入し、両部材に形成した環状の突起を乗り越えることにより固定する外キャップ5と内キャップ6の固定構造。」(以下、「引用発明」という。)

(b)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願平4-9138号(実開平5-60882号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ウ.【請求項1】 筆記具のキャップと軸との嵌合に関するアンダ-カット係止部において、軸外壁面かこれに嵌合するキャップの内壁面のいずれか一方に係止リングを設け、これに接する他方の面に輪状に複数の係止突起を設けるとともに、該複数の係止突起の内の一部を、他の係止突起に比してキャップ挿入側において短寸とした筆記具とキャップの嵌合構造。
エ.【図3】から、複数の長寸係止突起4は、長寸の四角な壁とその(図面上)上下方向に2つの傾斜壁を有し、複数の短寸係止突起5は、短寸の四角な壁とその上下方向に2つの傾斜壁を有し、複数の長寸係止突起4の下方の傾斜壁は、複数の短寸係止突起5の下方の傾斜壁より下方に存在することが看取できる。
オ.【図6】、【図7】は、従来例を示すものであって、両図から係止リングCが乗り越える対象として、係止リングC及び環状に配置された複数の係止突起Dが看取できる。

上記エ.の複数の長寸の四角な壁と複数の短寸の四角な壁は、不連続ではあるが頂部といえる。上記エ.の複数の長寸係止突起4の下方の傾斜壁(以下、「最下傾斜壁」という。)は、複数の長寸係止突起4及び複数の短寸係止突起5が係止リング6を乗り越える際に初めに当接するものであることは明らかで、前記「最下傾斜壁」は、複数の長寸係止突起4のみに設けられているから、不連続な頂部の一部に一体に連接して環状に配置されているものといえる。
よって、上記記載及び図面を含む刊行物2全体の記載から、刊行物2には、以下の事項が開示されていると認められる。
「係止リング6と、環状に配置された複数の係止突起4、5が乗り越え嵌合する嵌合構造であって、不連続な頂部の一部に一体に連接して環状に配置された複数の最下傾斜壁を設けた嵌合構造。」

4.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「外キャップ5」、「内キャップ6」がそれぞれ筒部を有していることは明らかであるから、それぞれの筒部が本願発明の「外筒」及び「内筒」に相当し、引用発明の「外キャップ5と内キャップ6の固定構造」が本願発明の「二重筒の内外筒の固定構造」に相当する。
よって、両者は、
「外筒の内孔に内筒を挿入し、両部材に形成した環状の突起を乗り越えることにより固定する二重筒体の内外筒の固定構造。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]固定に関し、本願発明は、「容易に抜け難いよう固定する」、「少なくとも一方の筒体の環状突起を環状に連続する頂部と、この頂部に一体に連接して、環状突起同士が乗り越える際に初めに当接する環状に配置された複数の傾斜壁とからなるものとし、環状突起同士が当接して嵌合する」と特定されているのに対し、引用発明は、本願発明のような特定がなされていない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
上記引用文献1のイ.には、「外キャップ5と内キャップ6とは互いに周方向に回転可能となっている」という記載があるが、外キャップ5と内キャップ6が外れてはならないことが明らかであるから、引用発明の外キャップ5と内キャップ6に形成した環状の突起容易を抜け難いよう固定することは当然のことである。
引用発明は、2つの部材に形成した環状の突起を乗り越えるものであるから、それぞれの環状の突起には、環状に連続する頂部が存在していることが明らかであり、双方の環状の突起を容易に乗り越えるために、いずれかの頂部を他方の頂部が乗り越えるように案内する案内面が少なくともいずれかの環状の突起に存在することは明らかである。
一方、刊行物2には、「係止リング6と、環状に配置された複数の係止突起4、5が乗り越え嵌合する嵌合構造であって、不連続な頂部の一部に一体に連接して環状に配置された複数の最下傾斜壁(本願発明の「傾斜壁」に相当。)を設けた嵌合構造。」が記載されており、頂部の全てではなく、頂部の一部(係止突起4の長寸の四角な壁のみ)に最下傾斜壁を一体に連接して環状に配置することが示されているから、引用発明の案内面として刊行物2記載の事項を適用して、環状に連続する頂部の全てではなく、頂部の一部に傾斜壁を一体に連接して環状に配置し、本願発明のように、少なくとも一方の筒体の環状突起を環状に連続する頂部と、この頂部に一体に連接して、環状突起同士が乗り越える際に初めに当接する環状に配置された複数の傾斜壁とからなるものとすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。 また、嵌合構成において、環状突起の頂部と環状に配置された複数の傾斜壁を一体に連接することは、実願平5-19483号(実開平6-71164号)のCD-ROM(【図3】に記載された「内向突起5」、「テーパ部63」が本願発明の「環状突起」、「傾斜壁」に相当する。)に例示されるとおり周知技術でもある。
上記相違点の内、環状突起同士が当接して嵌合する点に関し、引用発明の環状の突起が乗り越え嵌合後、当接するか否か明らかではないが、刊行物2の【図1】、実願平5-19483号(実開平6-71164号)のCD-ROMの段落【0018】に記載のように、環状突起同士が当接して嵌合することは、周知技術であるから、引用発明に該周知技術を適用して、環状突起同士が当接して嵌合するようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
よって、上記相違点に係る本願発明のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

以上のように、引用発明に本願発明の相違点に係る構成を備えることは、刊行物1、2の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたことであり、係る発明特定事項を採用することによる本願発明の効果も当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-16 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-09 
出願番号 特願平10-189771
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B43K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 佐藤 宙子
酒井 進
発明の名称 二重筒の内外筒の固定構造  

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