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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1194904 |
審判番号 | 不服2006-21570 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-27 |
確定日 | 2009-03-25 |
事件の表示 | 特願2002-374379「低反射損T型アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月22日出願公開、特開2004-207992〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、平成14年12月25日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年7月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 (本願発明) 「地板に対して平行な直線状の水平導体と、その中央位置から地板に向って垂直に延び地板に達する直線状の垂直導体とからなり、垂直導体の地板側から給電するT型アンテナと、その反射損を小さくするために前記垂直導体の、水平導体方向での両側又は一方側で地板から垂直導体と平行に立ち上り、水平導体との間隔が垂直導体との間隔と同じ寸法に達した位置で水平導体と平行になるよう屈曲し、水平導体の端部と同じ長さ位置まで延びる無給電L型素子を1個以上有することを特徴とする低反射損T型アンテナ。」 2.引用発明及び周知技術 A.これに対して、原審の拒絶の理由に引用された特開2002-33616号公報(平成14年1月31日公開、以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項1】 使用する複数の周波数帯の中で、最低の周波数帯に対応するアンテナを容量装荷型モノポールアンテナとし、その内部に、その他の使用する周波数帯に対応する複数のアンテナが収容されるように配設されるとともに、前記最低の周波数帯に対応する前記アンテナと複数の前記アンテナのうち、ひとつが給電されることを特徴とする多周波共用アンテナ装置。」(2頁1欄、請求項1) ロ.「【0018】本発明の多周波共用アンテナ装置は、以上のように構成され、その基本構成を、図1に示す。図1によれば、前記多周波共用アンテナ装置11は、使用する複数の周波数の中で最も低い周波数のアンテナの給電素子3aとして、円盤(または円板)状の容量装荷型モノポールアンテナ3を採用し、該給電素子3aは、前記接地板2の中心位置に形成された貫通穴2aを貫通して、該接地板2に垂設される垂直素子成分3bを介し、該接地板にほぼ同心で、かつ平行して配設されるとともに、同軸ケーブル等により給電される。そして、前記アンテナ3の垂直素子成分3bに近接して、前記最低の周波数より高い周波数の第1,第2の周波数帯で共振させる複数(図では2個)の容量装荷型モノポールアンテナ12,13が無給電で、前記接地板2に配設される構造である。 【0019】ここでは、該複数の容量装荷型モノポールアンテナ12,13は、使用されるそれぞれの周波数の1/4波長モノポールアンテナを途中で折り曲げた構造のL型モノポール素子を使用しており、該アンテナ12,13の垂直素子成分12b,13bは、前記アンテナ3の垂直素子成分3bにほぼ平行に設置される。 【0020】また、図1で、前記容量装荷型モノポールアンテナ3を給電し、前記第1,第2の周波数帯の容量装荷型モノポールアンテナ12,13を無給電としているが、本発明の多周波共用アンテナ装置は、これにかかわらず、前記モノポールアンテナ3と前記モノポールアンテナ12,13のうち、ひとつが給電されていればよい。すなわち、前記最低の周波数帯に対応する前記アンテナを含む全体の前記モノポールアンテナのうち、ひとつが給電されていればよい。この場合、給電する前記アンテナには、対応する周波数帯の電力が給電される。 【0021】前記高い周波数の第1,第2の周波数帯でそれぞれ共振させる前記アンテナ12,13の素子は、最も低い周波数の前記アンテナ3の給電素子3aに比べて、構造的に小さくできるため、該最低の周波数の該アンテナ3の給電素子3aの内部に完全に収容され、隠れる構造となる。このため、前記多周波数共用アンテナ11の全体積は、全く増えることはない。前記第1,第2の周波数用アンテナ12,13の平行素子成分(前記接地板2に平行な素子成分)12a,13aと垂直素子成分12b,13bのそれぞれの長さは、場合に応じて自由に設定できる。」(3頁4欄?4頁5欄、段落18?21) ハ.「【0033】本実施例の多周波共用アンテナ装置31のリターンロス特性(周波数対反射減衰量特性)の例を図3に示す。図3によれば、800MHz帯、1.5GHz帯および2GHz帯の3周波で共振が見られる。また、優先順位の最も低い1.5GHz帯の共振が、他の周波数帯に比べて低くなっており、期待通りの特性が得られている。」(5頁7欄、段落33) 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 上記「容量装荷型モノポールアンテナ3」は、「地板に対して平行な円板状の水平導体と、その中央位置から地板に向って垂直に延び地板に達する直線状の垂直導体とからなり、垂直導体の地板側から給電する円板型アンテナ」であり、 また、上記「複数の容量装荷型モノポールアンテナ12,13」は、「使用されるそれぞれの周波数の1/4波長モノポールアンテナを途中で折り曲げた構造のL型素子」であり、図1から明らかなように「前記垂直導体の、水平導体方向での両側又は一方側で地板から垂直導体と平行に立ち上り、水平導体との間隔が所定寸法に達した位置で水平導体と平行になるよう屈曲し、水平導体の内部に完全に収容されるように延びる無給電L型素子を1個以上有し」ている。 また、図3から明らかなように「前記アンテナ及びL型素子が共振する周波数における反射損は小さく」なっている。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「地板に対して平行な円板状の水平導体と、その中央位置から地板に向って垂直に延び地板に達する直線状の垂直導体とからなり、垂直導体の地板側から給電する円板型アンテナと、前記垂直導体の、水平導体方向での両側又は一方側で地板から垂直導体と平行に立ち上り、水平導体との間隔が所定寸法に達した位置で水平導体と平行になるよう屈曲し、水平導体の内部に完全に収容されるように延びる無給電L型素子を1個以上有し、前記アンテナ及びL型素子が共振する周波数において反射損を小さくした円板型アンテナ。」 また上記引用例の上記ロ.(【0021】末尾)には、「前記第1,第2の周波数用アンテナ12,13の平行素子成分(前記接地板2に平行な素子成分)12a,13aと垂直素子成分12b,13bのそれぞれの長さは、場合に応じて自由に設定できる。」ことも記載されている。 B.例えば、特開平6-209205号公報(以下、「周知例1」という。)又は、特開2000-124735号公報(以下、「周知例2」という。)又は、特開平9-181525号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 (周知例1) イ.「【0024】図2は、図1に示される本発明アンテナ構造体基本的構成の変形態様を示す。(・・・中略・・・)また(b)および(f)においては、L/4-モノポール1がそのT字状形態のために容量的に縮少されている。(・・・中略・・・)」(5頁7欄、段落24) (周知例2) イ.「【0017】プリント基板20の表面の導体パターン22に接続されたT字形導体パターン24が形成される。これは1/4波長棒状パターンアンテナで、T字形に折り曲げられて横棒の部分が容量パターンとなる容量装荷パターンとしてアンテナ長を短縮したものである。」(3頁4欄、段落17) (周知例3) イ.「【請求項1】 T字形アンテナ及びこのT字形アンテナより対象周波数帯域の高い少なくとも1つの逆L字形アンテナとをその下部を結合して一体に形成した金属平板よりなるアンテナ素子と、 このアンテナ素子を立設し、少なくとも一面に形成した金属箔のギャップ部より上記アンテナ素子に給電する地板とを具備したことを特徴とする車載用アンテナ装置。」(2頁1欄、請求項1) 上記周知例1?3に開示されているように、「T型アンテナ」自体は周知であり、また上記周知例1?2に開示されているように、「T型アンテナが容量装荷型モノポールアンテナ」であることも周知である。 C.例えば特開2002-100915号公報(以下、「周知例4」という。)又は特開2001-284954号公報(以下、「周知例5」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 (周知例4) イ.「【0009】該誘電体アンテナによれば、前記本体には2つ以上のアンテナエレメントが設けられており、各アンテナの給電点は同一外部端子或いは異なる外部端子に接続されている。さらに、少なくとも2つのアンテナエレメントは同一周波数帯内の異なる周波数に共振するように設定されている。例えば、前記周波数帯域内で該アンテナエレメントのうちの1つのアンテナエレメントにおいて反射損失が大きくなる周波数で、他のアンテナエレメントの反射損失が小さくなるように設定される。従って、これらの2つ以上のアンテナエレメントを用いることにより前記周波数帯域内で反射損失の小さい周波数範囲を拡大することができる。」(2頁2欄?3頁3欄、段落9) (周知例5) イ.「【0029】ところで、図2には上記給電放射電極3と無給電放射電極4による良好な複共振のリターンロス(反射損失)特性の一例が示されている。この図2では、破線Aは給電放射電極3のリターンロス特性を表し、点線Bは無給電放射電極4のリターンロス特性を表し、実線Cは上記給電放射電極3のリターンロス特性と無給電放射電極4のリターンロス特性の合成リターンロス特性つまり表面実装型アンテナ1のリターンロス特性を表している。 【0030】この図2に示されるような良好な複共振とは、給電放射電極3の共振周波数f1と無給電放射電極4の共振周波数f2が近接しても、給電放射電極3と無給電放射電極4の各共振波が減衰することなく複共振している(重合している)状態であり、周波数帯域の広帯域化等の要求されるアンテナ特性条件を満たすことができるものである。」(5頁8欄、段落29?30) 上記周知例4?5に開示されているように、「2つのアンテナエレメントの共振周波数を近接させることにより所望帯域内の反射損失を低下させアンテナの広帯域化を図ること」は周知である。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明の「直線状の水平導体」、「(低反射損)T型アンテナ」と、引用発明の「円板状の水平導体」、「円板型アンテナ」は、いずれもそれぞれ「所定形状の水平導体」、「容量装荷型アンテナ」である点で一致している。 また、本願発明の「垂直導体との間隔と同じ寸法」と、引用発明の「所定寸法」は、いずれも「所定寸法」である点で一致しており、 本願発明の「水平導体の端部と同じ長さ位置まで延びる」構成と、引用発明の「水平導体の内部に完全に収容されるように延びる」構成は、いずれも「水平導体の内部に収容されるように延びる」構成である点で一致している。 また、本願発明の「その反射損を小さくするため」及び「低反射損」という構成と、引用発明の「前記アンテナ及びL型素子が共振する周波数において反射損を小さくした」構成は、いずれも「反射損を小さくした」構成の点で一致している。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「地板に対して平行な所定形状の水平導体と、その中央位置から地板に向って垂直に延び地板に達する直線状の垂直導体とからなり、垂直導体の地板側から給電する容量装荷型アンテナと、前記垂直導体の、水平導体方向での両側又は一方側で地板から垂直導体と平行に立ち上り、水平導体との間隔が所定寸法に達した位置で水平導体と平行になるよう屈曲し、水平導体の内部に収容されるように延びる無給電L型素子を1個以上有し、反射損を小さくした容量装荷型アンテナ。」 <相違点> (1)「所定形状の水平導体」及び「容量装荷型アンテナ」に関し、本願発明は「直線状の水平導体」を有する「T型アンテナ」であるのに対し、引用発明は「円板状の水平導体」を有する「円板型アンテナ」である点。 (2)「所定寸法」及び「水平導体の内部に収容されるように延びる」構成に関し、本願発明はそれぞれ「垂直導体との間隔と同じ寸法」位置で屈曲し「水平導体の端部と同じ長さ位置まで延びる」構成であるのに対し、引用発明はそれぞれ「所定寸法」位置で屈曲し「水平導体の内部に完全に収容されるように延びる」構成である点。 (3)「反射損を小さくした」構成に関し、本願発明は「その反射損を小さくするため」及び「低反射損(T型アンテナ)」という構成を備えているのに対し、引用発明は「前記アンテナ及びL型素子が共振する周波数において反射損を小さくした」構成である点。 4.判断 そこで、まず、上記相違点(1)の「所定形状の水平導体」及び「容量装荷型アンテナ」について検討するに、 例えば上記周知例1?3に開示されているように、「T型アンテナ」自体は周知であり、 また例えば上記周知例1?2に開示されているように、「T型アンテナが容量装荷型モノポールアンテナ」であることも周知であり、 当該「T型」の「容量装荷型モノポールアンテナ」を、引用発明の「円板型」の「容量装荷型アンテナ」に代えて用いる上での阻害要因は何ら見あたらないから、 当該周知技術に基づいて、引用発明の「円板状の水平導体」を有する「円板型アンテナ」を、本願発明のような「直線状の水平導体」を有する「T型アンテナ」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 ついで、上記相違点(3)の「反射損を小さくした」構成について検討するに、 例えば上記周知例4?5に開示されているように、「2つのアンテナエレメントの共振周波数を近接させることにより所望帯域内の反射損失を低下させアンテナの広帯域化を図ること」は周知であり、 当該周知技術を引用発明に適用する上での損害要因もまた何ら見あたらないから、 当該周知技術に基づいて引用発明の共振周波数を近接させることにより、本願発明のような「その反射損を小さくするため」及び「低反射損(T型アンテナ)」という構成を付加する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。 ついで、上記相違点(2)の「所定寸法」及び「水平導体の内部に収容されるように延びる」構成について検討するに、 上記引用例の記載によれば「前記第1,第2の周波数用アンテナ12,13の平行素子成分(前記接地板2に平行な素子成分)12a,13aと垂直素子成分12b,13bのそれぞれの長さは、場合に応じて自由に設定できる」ものであるところ、 上記相違点(3)の項で検討した「共振周波数を近接させる」構成は、具体的には無給電L型素子の実効長を容量装荷型アンテナの実効長よりも若干短くすることであるから、これらの周知技術ないしは必要とされる自明の実効長に基づいて、屈曲位置(即ち、無給電L型素子の垂直成分の長さ)を全高から「垂直導体との間隔と同じ寸法」を減じた寸法とし、平行成分の長さを「水平導体の内部に完全に収容される」最大の長さである「水平導体の端部と同じ長さ位置まで延びる」構成とする程度のことは単なる設計的事項であり、当業者であれば適宜なし得ることである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術ないしは自明な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-25 |
結審通知日 | 2009-01-06 |
審決日 | 2009-01-30 |
出願番号 | 特願2002-374379(P2002-374379) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 圭一郎 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
小宮 慎司 竹井 文雄 |
発明の名称 | 低反射損T型アンテナ |
代理人 | 八幡 義博 |
代理人 | 八幡 義博 |
代理人 | 八幡 義博 |