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審決分類 |
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:13 H04N |
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管理番号 | 1194927 |
審判番号 | 補正2008-500009 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2008-12-10 |
確定日 | 2009-03-25 |
事件の表示 | 特願2006-270266「撮像装置」において、平成20年9月16日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.経緯 本件出願は、平成5年3月25日に出願した特願平5-66878号の一部を数次に渡り新たな特許出願とした後に、平成18年10月2日に更に新たな特許出願としたものであって、平成20年9月16日付けで手続補正がなされたところ、該手続補正について平成20年10月31日付けで補正の却下の決定がなされたものである。 本件は、上記平成20年10月31日付け補正の却下の決定を不服として平成20年12月10日付けで請求された審判である。 2.原審決定 平成20年10月31日付け補正の却下の決定(以下、原審決定という)の理由は、次のとおりである。 [原審決定の理由] 補正後の請求項1に記載の「該撮像手段における該画像信号の生成が完了する前に」は、当初明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には記載も示唆もないし、当業者が当業者が当初明細書等の記載からみて自明な事項とも認められない。 当初明細書等(段落57-59参照)には、画像のデータを書き込む前段階に、このデータを書込み領域として割り当てられたメモリ領域に残っている画像データを一旦消去することについて記載されているが、「撮像手段における画像信号の生成」途中のタイミングにおいて、データの消去を開始するようなことは記載されているとは言えない。 よって、特許請求の範囲の記載を補正した結果、特許請求の範囲に記載した技術的事項が、当初明細書等に記載した事項の範囲内でないものとなるから、当該補正は明細書の要旨を変更するものとなる。 3.本件補正 平成20年9月16日付け手続補正(以下、本件補正という)は、次のとおり特許請求の範囲全文を補正するものである。 [補正前の特許請求の範囲] 【請求項1】 外部機器を接続可能な撮像装置であって、 光学像から画像信号を生成する撮像手段と、 該撮像手段で生成された画像信号を記憶するメモリ手段と、 該メモリ手段に記憶された画像信号を再生する再生手段と、 該記憶手段への画像信号の読み出し及び書き込みをする該外部機器を接続可能とする接続手段と、 該メモリ手段への画像信号の読み出し及び書き込みを制御する制御手段と、 を有し、 前記制御手段は、再生画像の更新のために前記メモリ手段から画像信号が読み出されているときに、前記接続手段を介して接続された前記外部機器によって読み出し指令が出力されても、前記メモリ手段から前記外部機器への画像信号の読み出しが行なわれないように制御すること を特徴とする撮像装置。 【請求項2】 請求項1において、 前記制御手段は、再生画像の更新のために前記メモリ手段から画像信号が読み出されていないときに、前記接続手段を介して接続された前記外部機器によって読み出し指令が出力されると、前記メモリ手段から前記外部機器への画像信号の読み出しが行なわれるように制御すること を特徴とする撮像装置。 【請求項3】 外部機器を接続可能であり、画像信号を記憶しているメモリ手段から画像信号の再生が可能な撮像装置であって、該撮像装置で画像信号の読み出しをしているときは外部機器から該画像信号の読出しが禁止されることを特徴とする撮像装置。 [補正後の特許請求の範囲] 【請求項1】 撮像装置であって、 光学像から画像信号を生成する撮像手段と、 該撮像手段で生成された画像信号を記録媒体に記録する記録手段と、 該記録媒体に記録された画像信号を再生する再生手段と、 該記録媒体における画像信号が記録される領域のデータの消去をする消去手段と、 該記録手段と該再生手段と該消去手段を制御する制御手段と、 記録を指示する記録スイッチと、 を有し、 該記録媒体がフラッシュ型メモリである場合に、前記制御手段が、該記録スイッチの操作に応じて、該撮像手段における該画像信号の生成が完了する前に、該フラッシュ型メモリにおける該画像信号が記憶される領域のデータの消去を開始するように制御することにより、使用者はフラッシュ型メモリの消去動作に煩わされることなく、重書きによる自動的な書替えが可能なメモリと同様に操作することができること、 を特徴とする撮像装置。 補正前の特許請求の範囲では「再生画像の更新のために前記メモリ手段から画像信号が読み出されているときに、前記接続手段を介して接続された前記外部機器によって読み出し指令が出力されても、前記メモリ手段から前記外部機器への画像信号の読み出しが行なわれないように制御すること」を構成要件として有しているところ、補正後にあっては上記構成要件は削除され、「該記録媒体がフラッシュ型メモリである場合に、前記制御手段が、該記録スイッチの操作に応じて、該撮像手段における該画像信号の生成が完了する前に、該フラッシュ型メモリにおける該画像信号が記憶される領域のデータの消去を開始するように制御すること」を新たに構成要件としており、本件補正は特許請求の範囲を変更する補正である。 4.本件補正の検討 本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、当初明細書等という)には、撮像手段における画像信号の生成の完了とフラッシュ型メモリにおける画像信号が記憶される領域のデータの消去の開始に関係して、次の記載がある。 (当初明細書等の記載) 「カメラ信号処理回路17から出力されるベースバンドのディジタル画像情報信号DISは、スイッチ16を介して半導体メモリ12に供給される。また、このとき、半導体メモリ12には、タイミング発生回路2でカメラ信号処理用クロックCK3等と同期して発生されるクロックCLやアドレス信号Adが夫々、スイッチ10を介し、書込みクロックWCや書込みアドレス信号WAとして供給される。」(【0041】) 「図3(b)のP1,P2,P3,・・・・・・はこの画像情報信号DISでの順次の画像(テレビジョン信号のフィールド画あるいはフレーム画)を表わしている。半導体メモリ12に書き込まれる画像も同じ符号で表わしている。」(【0042】) 「図1及び図3において、時刻T1で電源スイッチ4が閉路されると、テレビジョンカメラ回路が前記した動作を開始し、画像情報信号DISが生成される。」(【0043】) 「半導体メモリ12への画像データの書込みは、時間順次で所定のデータ量(例えば、8ビット)ずつ、以前に書き込まれていた画像データを新しいデータに書き替えるようにして実行される。ここで、電子カメラ等で自然画を記録する場合、画像1枚当り少なくともキロビット単位以上のデータ量を要するので、1枚の画像データの書込みを開始した後であっても、この1枚の画像データの書込みが完了するまでは、その前に書き込まれた画像データが半導体メモリ内に残存することになる。即ち、例えば図3(b)において、P2を付した時間領域では、半導体メモリ12には画像P2のデータだけが記憶されているのではなく、その前に書き込まれた画像P1のデータと、今回書き込まれる画像P2のデータとが混在して記憶されることになる。」(【0044】) 「半導体メモリ12としてFIFO型半導体メモリを用いることにより、図2で説明したように、図3(b)の画像P4のデータの書込み期間の途中からでも、この画像P4のデータの読出しを開始させることができる。」(【0049】) 「図3(c)に示すように、P4を付して示す期間に圧縮された画像P4のデータがこの半導体メモリ13に書き込まれる。」(【0050】) 「フラッシュ型の不揮発メモリであるような場合、図3(c)での画像P4のデータの書込み時点以前には、時刻T1での電源スイッチ4の閉路によって開始された今回の撮影よりも前の撮影時に記録された画像Pxのデータが保持されている。」(【0054】) 「半導体メモリ13がフラッシュ型メモリの場合には、素子の構成上いわゆる重ね書きによる画像データの書き替えができない。このため、図3(c)における画像P4のタイミングで、この画像P4のデータを書き込む前段階に、画像P4のデータの書込み領域として割当てられたメモリ領域に残っている画像データを一旦消去する動作が実行される。この消去動作は、具体的には、半導体メモリにある所定の論理レベルのデータを書き込む動作であり、例えば図1におけるデータ圧縮回路21の出力側に、タイミング発生回路7から出力される図示しない制御信号によって所定レベルのデータを出力するように制御される論理ゲートを配し、画像P4のデータの書込みに先立ってこの所定レベルのデータを書き込むようにして実施できる。」(【0057】) (当初明細書等の記載、以上) これらの記載について、まず、画像信号の生成が完了する時点についてみる。 生成される画像情報信号DIS(【0043】)は、「カメラ信号処理回路17から出力されるベースバンドのディジタル画像情報信号DISは、スイッチ16を介して半導体メモリ12に供給される。また、このとき、半導体メモリ12には、タイミング発生回路2でカメラ信号処理用クロックCK3等と同期して発生されるクロックCLやアドレス信号Adが夫々、スイッチ10を介し、書込みクロックWCや書込みアドレス信号WAとして供給され」(【0041】)、「P1,P2,P3,・・・・・・はこの画像情報信号DISでの順次の画像」(【0042】)であって、「1枚の画像データの書込みを開始した後であっても、この1枚の画像データの書込みが完了するまでは、その前に書き込まれた画像データが半導体メモリ内に残存することになる。即ち、例えば図3(b)において、P2を付した時間領域では、半導体メモリ12には画像P2のデータだけが記憶されているのではなく、その前に書き込まれた画像P1のデータと、今回書き込まれる画像P2のデータとが混在して記憶され」(【0044】)るから、画像P1,P2,P3・・・・・・は生成と共に半導体メモリ12に順次記憶され、撮像手段における該画像信号(画像P4)の生成が完了するのは、P4の記憶が完了する図3(b)のP4の最後の時点であるといえる。 次に、フラッシュ型メモリにおける画像信号が記憶される領域のデータの消去の開始時点についてみる。 「図3(c)に示すように、P4を付して示す期間に圧縮された画像P4のデータがこの半導体メモリ13に書き込まれる。」(【0050】)と説明され、圧縮された画像のデータは図3(c)のP4を付して示す期間に書き込まれるとしているところ、フラッシュ型メモリにあっては、 「図3(c)における画像P4のタイミングで、・・・画像データを一旦消去する動作が実行される。」(【0057】)」とあり、フラッシュ型メモリにおける画像信号が記憶される領域のデータの消去の開始時点が図3(c)のP4の初めの時点であると読める。このことは、 ・「フラッシュ型の不揮発メモリであるような場合、図3(c)での画像P4のデータの書込み時点以前には、時刻T1での電源スイッチ4の閉路によって開始された今回の撮影よりも前の撮影時に記録された画像Pxのデータが保持されている。」(【0054】)ことから、図3(c)で画像Pxの保持が終了する時点でフラッシュ型メモリは書き込み状態となると理解される。 ・「半導体メモリ13がフラッシュ型メモリの場合には、・・(略)・・図3(c)における画像P4のタイミングで、この画像P4のデータを書き込む前段階に、画像P4のデータの書込み領域として割当てられたメモリ領域に残っている画像データを一旦消去する動作が実行される。」(【0057】)ことから、画像データを書き込む前に画像データを消去する。 ・「この消去動作は、具体的には、半導体メモリにある所定の論理レベルのデータを書き込む動作」(【0057】)との記載から、画像データの消去が書き込みであることが理解される。 ことから、フラッシュ型メモリが書き込み状態になった図3(c)で画像Pxの保持が終了する時点で、書き込みである画像データを書き込む前の画像データの消去が行われる、と理解されることとも符合している。したがって、画像信号が記憶される領域のデータの消去の開始は、図3(c)で画像Pxの保持が終了する時点、すなわち、図3(c)のP4の初めの時点であると理解される。 そして、図3(b)のP4の最後の時点と図3(c)のP4の初めの時点との関係についてみる。 「図3(b)の画像P4のデータの書込み期間の途中からでも、この画像P4のデータの読出しを開始させることができる。」(【0049】)とあって、データの読み出しに伴うデータの書き込みが、画像P4のデータの書込み期間の途中からでも、開始させることができることが理解され、図3で図3(b)のP4の途中から図3(c)のP4が開始していることが図示されていることから、図3(c)のP4の初めの時点は図3(b)のP4の最後の時点より前にあることが記載されているといえる。 そうすると、撮像手段における画像信号の生成の完了する時点の前に、フラッシュ型メモリにおける画像信号が記憶される領域のデータの消去の開始時点があることが、当初明細書等に記載されているということができる。 したがって、当初明細書等には、本件補正に係る「該記録媒体がフラッシュ型メモリである場合に、前記制御手段が、該記録スイッチの操作に応じて、該撮像手段における該画像信号の生成が完了する前に、該フラッシュ型メモリにおける該画像信号が記憶される領域のデータの消去を開始するように制御すること」が記載されていたということができる。 以上のようであるから、本件補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を変更する補正であって、平成5年法律第26号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第41条の規定により明細書の要旨を変更しないものとみなされるべきものである。 5.まとめ 以上のようであるから、本件補正は明細書の要旨を変更するものではないので、平成20年9月16日付け手続補正を明細書の要旨を変更するものとして却下した原決定は取り消しを免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2009-03-02 |
出願番号 | 特願2006-270266(P2006-270266) |
審決分類 |
P
1
7・
13-
W
(H04N)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 梅岡 信幸 |
特許庁審判長 |
奥村 元宏 |
特許庁審判官 |
乾 雅浩 五貫 昭一 |
発明の名称 | 撮像装置 |
代理人 | 井上 学 |