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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1194940 |
審判番号 | 不服2007-11296 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-19 |
確定日 | 2009-03-27 |
事件の表示 | 平成9年特許願第226682号「補強注出口を有する液体用包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成11年3月2日出願公開、特開平11-59704〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯 本願は、平成9年8月22日の出願であって、平成18年8月30日付け拒絶理由通知に応答して、平成18年11月10日に明細書を対象とする手続補正がなされたが、平成19年3月8日付けで拒絶査定され、これに対して平成19年4月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2. 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、平成18年11月10日に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は、次のとおり記載されている。 「表裏二枚の合成樹脂フィルムの周辺をシールしてなる液体用包装袋であって、その周辺に突起状注出部を有し、該注出部には外側に膨出する形状の補強リブを有し、該補強リブは表裏二枚の合成樹脂フィルムのそれぞれに折り目を付して形成されたものであり、且つ表側合成樹脂フィルムの補強リブと裏側合成樹脂フィルムの補強リブとが互い違いに設けられていることを特徴とする補強注出口を有する液体用包装袋。」(以下この発明を「本願発明」という。) 3. 刊行物の記載事項 (3-1) 刊行物1に記載された発明 原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-002260号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 注出口3の部分に補強機構4、13、21を一個以上備えていること、この補強機構4、13、21がフィルム7を変形加工することによって形成された、実質的に一本のあるいは複数本の線状変形5、6であることを特徴とする袋。」 (b)「【請求項7】 袋の一方の面に、二つの補強機構4、13が互いに鋭角を成して配置されていることを特徴とする、請求項1あるいは6に記載の袋。」 (c)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、合成樹脂フィルム製の袋、特に詰め替え用の袋に関する。 (d)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】これに対して本発明は、袋の注出方式を改善することを課題として出発した。この場合に改善に当たって付随的な材料消費が生じないことを要件とする。すなわち袋の形成に必要な合成樹脂フィルム量が、従来量よりも増加しないことを要件とする。」 (e)「【0005】 【課題を解決するための手段】この課題は請求項1の特徴の項に記載の事項に従って解決される。すなわち本発明においては、袋の注出口部分に補強機構が一個以上設けられている。補強機構は袋のフィルムを変形加工することよって形成される実質的に一本あるいは複数本の線状変形である。」 (f)「【0007】本発明による袋の望ましい実施形態は、請求項2ないし16に記載の通りである。・・・本発明による補強機構のような固定化処置が施されていなければ、注出時、特に袋から中身を口の比較的小さい常用の備え付け容器に移し変えるような場合に、注出口部分が折れ曲がり、注出を中断しなければならない羽目になる。」 (g)「【0010】袋の一つの面に、互いに鋭角を成す二つの補強機構が設けられていることによって(請求項7)、袋の注出口はなお一層固定強化される。・・・」 (h)「【0013】 【実施例】次に図面に示した実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。立脚部を備えた袋1として形成された袋2は、注出口3の部分に、互いに鋭角を成す補強機構4が設けられている(図1)。補強機構4は袋2のフィルム7を変形加工することによって形成された二重の線状変形5、6である(図2)。注出口3が袋2の角に設けられていて、外郭を形成している(図1)。補強機構4は注出口3の外郭8、9の間に配置されている。補強機構4はそれぞれ溝10の形態を有し(図2)、加熱成形によって形成されている。袋2の外包を形成している両方のフィルム領域11、12に補強機構4、13がそれぞれ二つづつ、互いに合同に配置されている。」 (i)「【0015】・・・補強機構4、13を備えたフィルム7を折り曲げ線19に沿って折り曲げた後、周囲を接合することによって袋2が形成される(図3)。」 (j)「【0016】 【発明の効果】本発明では、フィルム製の袋で、注出口部分が折れ曲がったりすることなく、非常に扱い易い製品を、安価に提供できる。本発明の製品は詰め替え用の袋として、有用である。」 (下線は当審が付与したものである。) そして、上記各記載及び各図面から次の事項は明白である。 ・特に、摘記事項(a)、(b)、(e)から、必ずしも表裏二枚の合成樹脂フィルムの両方に補強機構を形成する必要はなく、一方のみに補強機構を形成することも可能であること。 したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「表裏二枚の合成樹脂フィルムの周辺を接合してなる詰め替え用の袋であって、その周辺に注出口部分を有し、該注出口部分には外側に膨出する形状の補強機構を有し、該補強機構は一方の合成樹脂フィルムのみに折り目を付して形成されたものである注出口を有する詰め替え用の袋。」 (3-2) 刊行物2に記載された発明 原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開昭56-13362号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (k)「本発明は内部の空気を排除して袋口をシールする所謂真空包装用袋に関するものである。 食品や精密部品等は真空包装する場合が多い。これは包装袋内の空気を排除して袋口をシールすることによって内容物品を空気から隔絶し、これによって空気中の含有酸素による酸化を防ぐと共に包装袋内の微生物の発生を抑制して内容物品の変質を防止しようとするものである。」(第1頁左欄第8?15行) (l)「図中符号11は包装用袋であって、このものは例えばポリエチレン-ナイロンラミネートフィルム等の非透気性材料を用いて形成されるものである。 包装用袋11の内面には通気溝12が形成される。 この通気溝12は袋の頸部の密着を防止し、袋の内部と吸引ポンプとを導通するものであるから、袋の内面の前面又は一部に、少なくとも袋の頸部に形成するものとする。 この通気溝12は・・・袋材を折り曲げて成形するのがよく、・・・該通気溝は袋内の空気の殆んど全てが排出し終わるまで大気圧によって圧しつぶされる虞れがないのである。」(第2頁右上欄第5行?左下欄第1行) 上記摘記事項及び図面の記載から、刊行物2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「表裏二枚のポリエチレン-ナイロンラミネートフィルムよりなる真空包装用袋であって、該袋の頸部には通気溝が形成されており、該通気溝は表裏二枚のポリエチレン-ナイロンラミネートフィルムのそれぞれを折り曲げて形成されたものであり、且つ表側のフィルムの通気溝と裏側のフィルムの通気溝とが互い違いになるように設けられている真空包装用袋。」 4. 対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、その文言上の意義、構造及び機能等からみて、引用発明1における「接合」は、本願発明の「シール」に相当し、以下同様に、「注出口部分」は「突起状注出部」に、「補強機構」は「補強リブ」に、「注出口」は「補強注出口」にそれぞれ相当する。 また、引用発明1の「詰め替え用の袋」は、内容物を注出することにより詰め替えを行う袋であるものの、その内容物の種類に関して特に限定はないことから、本願発明における「液体用包装袋」と、引用発明1における「詰め替え用の袋」とは包装袋である限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「表裏二枚の合成樹脂フィルムの周辺をシールしてなる包装袋であって、その周辺に突起状注出部を有し、該注出部には外側に膨出する形状の補強リブを有し、該補強リブは一方の合成樹脂フィルムに折り目を付して形成されたものである補強注出口を有する包装袋。」 〈相違点1〉 本願発明は、液体を包装対象とした液体用包装袋であるのに対して、引用発明1は、内容物を注出することにより詰め替えを行う袋であるものの、液体を包装対象とした包装袋であるか否か不明である点。 〈相違点2〉 本願発明は、補強リブは表裏二枚の合成樹脂フィルムのそれぞれに折り目を付して形成されたものであり、且つ表側合成樹脂フィルムの補強リブと裏側合成樹脂フィルムの補強リブとが互い違いに設けられているのに対して、引用発明1では、一方の合成樹脂フィルムに補強機構が折り目を付して形成されているものの、他方の合成樹脂フィルムには補強機構が形成されていない点。 5. 相違点についての検討及び判断 (1)相違点1について 液体を包装対象とした液体用包装袋は、特開平9-24956号公報、特開平8-324590号公報、特開平8-2538号公報に記載されているように従来より周知の技術である。 したがって、引用発明1の詰め替え用の袋に、上記周知技術を適用して、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について 本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリエチレン-ナイロンラミネートフィルム」は、本願発明の「合成樹脂フィルム」に相当し、以下同様に「表側のフィルム」は「表側合成樹脂フィルム」に、「裏側のフィルム」は「裏側合成樹脂フィルム」にそれぞれ相当する。 また、引用発明2の「通気溝」は、袋内の空気を吸引する際に、袋の頸部が大気圧により押し潰され密着した状態になることを防止するためのものであり、袋の頸部の強度を高める補強作用を有していることは明らかであるから、引用発明2の「通気溝」は、本願発明の「補強リブ」に相当する。 してみると、引用発明2は、本願発明に倣い、「表裏二枚の合成樹脂フィルムよりなる真空包装用袋であって、該袋の頸部には補強リブが形成されており、該補強リブは表裏二枚の合成樹脂フィルムのそれぞれを折り曲げて形成されたものであり、且つ表側合成樹脂フィルムの補強リブと裏側合成樹脂フィルムの補強リブとが互い違いになるように設けられている真空包装用袋」と言い換えることができる。 そして、引用発明1と引用発明2とは、袋からの排出対象は異なるものの、「二枚の合成樹脂フィルムにより形成された流体排出口の形状が変形して流路が閉塞する現象を防止する」という点で共通の技術的課題を有している。 したがって、引用発明1の補強機構に代えて、引用発明2における表裏二枚の合成樹脂フィルムのそれぞれを折り曲げて補強リブを形成し、且つそれらの補強リブが互い違いになるように配設する技術を適用して、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 6. むすび 本願発明を全体構成でみても引用発明1、2及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、上記刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-15 |
結審通知日 | 2009-01-20 |
審決日 | 2009-02-02 |
出願番号 | 特願平9-226682 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 裕一、渡邊 真 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
遠藤 秀明 熊倉 強 |
発明の名称 | 補強注出口を有する液体用包装袋 |
代理人 | 田中 宏 |
代理人 | 樋口 榮四郎 |