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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1194969
審判番号 不服2004-19427  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-21 
確定日 2009-03-23 
事件の表示 平成 7年特許願第 62540号「医用画像診断装置通信システムおよび医用画像診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月11日出願公開、特開平 8-263570〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この出願は、平成7年3月22日の出願であって、平成16年9月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月21日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、これに対して、平成20年9月29日付で当審より拒絶理由を通知したところ、同年12月4日付で意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。


2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年12月4日付の手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
なお、アンダーラインは補正個所を示すものとして審判請求人が付したものを当審で援用したものである。

「 通信回線を介して、第1の医用画像診断装置と第2の医用画像診断装置とを接続してなる医用画像診断装置通信システムにおいて、
第1の医用画像診断装置は、患者をスキャンし、画像再構成処理を行って、画像を表示するとともに、通信回線を通じて第2の医用画像診断装置へ前記患者のスキャンに用いられたスキャンプロトコル及び前記表示された画像を送信するスキャンプロトコル送信手段を具備し、
第2の医用画像診断装置は、患者をスキャンし、画像再構成処理を行って、画像を表示するとともに、通信回線を通じて第1の医用画像診断装置から前記スキャンプロトコル及び前記画像を受信するスキャンプロトコル受信手段及び当該受信したスキャンプロトコルから所定のデータを抽出し当該データを当該装置のスキャンにおけるスキャンプロトコルに用いるスキャンプロトコル利用手段を具備し、
スキャンプロトコルは、スキャンパラメータ、画像再構成パラメータ及び患者情報を含んでいることを特徴とする医用画像診断装置通信システム。 」


3.当審における拒絶の理由について

当審における平成20年9月29日付で通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

『この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項:1-4
・引用文献等:引用例1-引用例6
・備考

引用例1には、予め設定した検査計画に従って所望のルーチン検査を行うX線CT装置であって、X線CT装置による第1検査(【0016】段落乃至【0026】段落参照。)を行うこと、曝射条件設定中断・入力ソース選択(【0027】段落乃至【0030】段落参照。)を行うことが記載されている。
ルーチン検査を行う場合には、図3に記載されるルーチンで、図6に記載される曝射条件で行われること、ルーチンにはスキャノグラムによるスキャン位置を決めること、設定された曝射条件に従いスキャンを行うこと、曝射条件として管電流・スライス幅・ピッチ・関数・繰り返し等の条件が設定されることが記載されている。
曝射条件設定中断・入力ソース選択を行う場合には、ステップの実行を中断し曝射条件を変更することが可能であること、対話方式で別のルーチン検査を生成すること、ルーチン検査を全面的に変更する場合には磁気ディスク11に格納されているルーチン検査の項目を書き込み直すこと、さらに、優れたルーチン検査を設定できるならば、この方法をオンラインデータ電送器を介して他のX線CT装置においても同じように使用することができ、磁気ディスクに格納してあるルーチン検査を広範囲に活用することが記載されている。

引用例2には、X線CT装置でスキャンする際、「プロトコル条件」として、スキャン部位、スキャン種類、スキャンFOV、スキャン開始又は終了時のテーブル位置、スキャン時間、管電圧、管電流等の「スキャンパラメータ」を含むようにすること、さらに患者名、性別等の「患者情報」を含むようにすることが記載されており、引用例3,4には、X線CT装置で画像を再構成する際、画像再構成の演算中心や画像再構成FOV、さらにはウインドウレベル等の「画像再構成パラメータ」を含むようにすることが記載されている。

してみると、引用例1に記載される、曝射条件を含むルーチンを変更し他のX線CT装置で当該情報を利用できるようにするという発明において、これらの「スキャンパラメータ」、「画像再構成パラメータ」、「患者情報」を他のX線CT装置へオンライン電送器にて送信して広範囲に活用することができるようにすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

なお、X線CT装置で撮像した画像を表示し、これを他の装置でも表示できるようにするために、画像診断装置間を通信回線で接続すること、あるいは複数の画像診断装置をデータベース装置と通信回線で接続することは、引用例5,6に記載されており、このようなX線CT装置において、引用例1乃至引用例4に記載される発明を組み合わせることもまた、当業者が容易に想到することができたものである。

引 用 文 献 等 一 覧

引用例1:特開平05-068680号公報
引用例2:特開平04-288151号公報
引用例3:特開平04-347143号公報
引用例4:特開平04-332539号公報
引用例5:特開平03-250378号公報
引用例6:特開昭63-109843号公報 』


4.当審の判断

4-1.各引用例について

(1)引用例1について
平成20年9月29日付で通知した拒絶理由で引用した引用例1(特開平05-068680号公報)には、図面とともに以下のことが記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、予め設定した検査計画に従って所望のルーチン検査(決められた順序に従って定常的に行われる検査)を行うX線CT装置に関する。」

(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のごとく、従来X線CT装置において1回のボタン/キー操作で設定することができる曝射条件はただ1つだけである故、ルーチン検査を行うためにはオペレータが大量のキー操作を実行しなければならないと言う問題がある。さらに、像の収集に関する曝射条件だけしか設定することができないと言う問題がある。言い換えれば、オペレータはX線CTルーチン検査を行いつつ厄介な大量のキー/ボタン操作を行うことを強いられることになる。」

(ウ)「【0016】X線CT装置による第1検査
図1乃至図3を参照しつつX線CT装置による第1検査について説明する。被検体18のスライス位置頭部18Aの関係を図2に示す。
【0017】被検体18の頭部18Aに関するルーチン検査における各プロセス段階の一覧を図3に示す。
【0018】一般的にX線CT装置による検査は、被検体の撮影目的と撮影部位に適応するように各種機能を組み合わせて行う。前述のごとく、大部分の機能は各々独立して実行する故、従来X線CT装置においては各機能を検査目的に合わせて実行しなけらばならない。」

(エ)「【0020】図1に示すX線CT装置100においては、モニター4,キーボード2,マウス1,撮影目的に合った適切なルーチン検査などを入力手段として用いて対話式検査プロセスを実行し、撮影部位、すなわち被検体18の頭部18Aの像を生成し、外部格納媒体、すなわち磁気ディスク11に格納する。このルーチン検査は、図3に示すごとく1つの流れとして一連の機能と、各機能に対して設定されている一連の条件とで構成されている。本例においてはルーチン検査50の機能はX線CT装置100によって実行する検査における1つの操作(実行)に対応しているが、CT装置の性能によってはそうならない場合もあり得る。たとえば、曝射1つだけの曝射に対応しておらず、互いに区別される場合もある(たとえば単一曝射と連続曝射)。」

(オ)「【0027】曝射条件設定中断
図3に示すルーチン検査50のステップ14(曝射条件の設定)に戻り、曝射条件の項目について詳述することとする。ステップ14において設定すべき複数の曝射条件を図6に示す。
【0028】第1検査に従って、ステップ14の実行を中断し、前もって設定した曝射条件(図6参照)を変更することが可能である。
【0029】この中断の手順は次のとおりである。図1に示す装置において、キーボード2の“中断”スイッチ3Bを押せば中断インストラクションが対話式制御器6,曝射制御器12ならびにシステム制御器7を経て関連制御器12,13,15,16へ送られ、それに応じて実行中のプロセスが中断される。システム制御器7は自動的に中断命令を受け、対話方式で別のルーチン検査を生成する。ルーチン検査を一時的に変更する場合はメモリ8に格納されているこのルーチン検査の項目を書き込み直す。ルーチン検査を全面的に変更する場合は磁気ディスク11に格納されているこのルーチン検査の項目を書き込み直す。続いて起動スイッチ3Aを押せばルーチン検査が再開される。
【0030】入力ソース選択
さらに、第1ルーチン検査方法に従って、磁気ディスク11に前もって格納してあるルーチン検査を広範囲に活用することができる。一例として、優れたルーチン検査を設定できるならばこの方法を図1に示すオンラインデータ伝送器20を介して他のX線CT装置においても同じように使用することができる。」

上記摘記事項(ア)乃至(オ)の記載、及び図面の記載を参照すれば引用例1には以下の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されている。

「 オンラインデータ伝送器を介して、X線CT装置と他のX線CT装置とを接続してなる検査装置であって、
X線CT装置は、被検体を曝射し、像を生成して、格納するとともに、オンラインデータ伝送器を介して、他のX線CT装置へ、被検体を曝射し、像を生成するための検査計画を送信し、他のX線CT装置においても同様に検査計画を使用する検査装置。 」

(2)引用例2について
平成20年9月29日付で通知した拒絶理由で引用した引用例2(特開平04-288151号公報)には、以下のことが記載されている。

(カ)「【0004】図6は、従来装置のスキャン操作手順のフローチャートで、この図に示すように、まず装置電源をONし(ステップ601)、X線管をウォームアップする(ステップ602)。次に、患者名や患者コード、性別などの患者情報を登録し(ステップ603)、スキャノグラム撮影をする(ステップ604)。そして、得られたスキャノグラムからスキャンスタート点とスライス位置を設定し(ステップ605)、また1回のスキャンか、連続スキャンかのスキャンモードを設定する(ステップ606)。その後、頭部、腹部、脊椎などのスキャン部位や、有効視野(FOV)、管電圧、管電流、スキャン時間、連続スキャンの場合のスキャン回数などのスキャン条件を設定した後(ステップ607)、スキャンスタートする(ステップ608)。」

(キ)「【0008】本発明の目的は、専任の操作者であるか否かに拘わらず、緊急時においてスキャンを円滑,迅速にスタート可能とし、操作者における操作上の、患者における時間(拘束時間)上の、負担を軽減することのできるX線CT装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、通常時のスキャン起動手段とは別個に設けられた緊急スキャン起動手段と、緊急スキャンしようとする部位に応じて予め定めた部位別プロトコル条件を格納したメモリと、前記緊急スキャン起動手段の操作によって起動され、スキャンに先立って選択されたスキャン部位に応じて前記メモリから読み出した部位別プロトコル条件に従ってスキャンを行わせる制御手段とを設けることにより達成される。」

(3)引用例3について
平成20年9月29日付で通知した拒絶理由で引用した引用例3(特開平04-347143号公報)には、以下のことが記載されている。

(ク)「【要約】【目的】スキャノグラム像を撮影、表示可能なX線CT装置において、表示されたスキャノグラム像で被検体の診断対象部位の三次元空間上の位置が把握でき、三次元空間上の演算中心やFOVを各スキャン位置毎に任意かつ簡単に設定可能で、関心領域の断層像迅速、省メモリに得る。」

(ケ)「【0007】本発明の目的は、被検体の診断対象部位の三次元空間上の位置が表示画像上、把握でき、三次元空間上の演算中心を表示画像上で視認可能なX線CT装置を提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、被検体の診断対象部位の三次元空間上の位置が表示画像上、把握でき、かつ三次元空間上の演算中心やFOVを各スキャン位置毎に任意かつ簡単に設定でき、各スキャン位置での関心領域の断層像を得るまでの時間やメモリのマトリックスサイズを大幅に節約できるX線CT装置を提供することにある。」

(4)引用例4について
平成20年9月29日付で通知した拒絶理由で引用した引用例4(特開平04-332539号公報)には、以下のことが記載されている。

(コ)「【0002】
【従来の技術】X線CT装置等により得られた画像データの画素値の全階調範囲を表示明るさ値の全階調範囲に対応させて表示させると、画像読影時にその表示画像の画素間の明るさが微細な差となる場合があり、ユーザが判別不能となる可能性がある。これを防止する技術として、画像データの中の所望の階調範囲のみを表示装置の階調範囲に対応させることが行なわれている。ここで、この階調部分の中心がウインドウレベル、階調部分の範囲がウインドウ幅と呼ばれる。」

(5)引用例5について
平成20年9月29日付で通知した拒絶理由で引用した引用例5(特開平03-250378号公報)には、以下のことが記載されている。

(サ)「〔産業上の利用分野〕
本発明は濃度変換機能を有する画像処理装置に係り、特に表示手段と、表示手段に表示される画像の画像データを濃度変換する濃度変換手段とを有する画像処理装置に関する。
このような画像処理装置には例えば医用画像処理装置がある。近年医療業界では医療用画像データを電子ファイル化しておき、そのデータを何時何処でも任意の人が医用画像処理装置により容易に検索可能としたPACS(Picture Archiving and Communication System)と呼ばれるシステムの必要性が増してきた。このため各医用画像処理装置を、医用画像データを発生する医用電子装置や全体を制御する計算機等と通信回線で接続し、そのデータを各装置間で転送するようにしている。」 (第1ページ右下欄第11行-第2ページ左上欄第6行)

(6)引用例6について
平成20年9月29日付で通知した拒絶理由で引用した引用例6(特開昭63-109843号公報 )には、以下のことが記載されている。

(シ)「(作用)
診断装置で得た生データを画像再構成して画像表示すると共に通信網を経由してデータベースに送って保存させ、又、必要に応じて生データに復元して前記通信網によって原診断装置に画像再構成パラメータと共に送り、所望特定領域の画像再構成をさせて、任意に所望の画像表示を行わせる。」


4-2.対比

本願発明と上記引用例1発明とを比較する。
引用例1発明の「X線CT装置」は「検査」に用いられるものであることから、本願発明の「医用画像診断装置」に相当する。
引用例1発明の「X線CT装置」と「他のX線CT装置」とは、オンラインデータ伝送器を介して接続され、検査計画が送信されるものであることから、「通信回線を介して接続」されている。
以上のことから、引用例1発明の「検査装置」は、本願発明の「医用画像診断装置通信システム」に相当する。
引用例1発明の「被検体の曝射」は、図2の記載を参照すれば、本願発明の「患者をスキャンする」ことに相当する。
引用例1発明は「像を生成して格納する」ものであることから、本願発明の「画像再構成処理」と同様の処理を行っているものと考えるのが自然である。
図2のスライス位置、図3の検査方法の流れ、図6の爆射条件の項目に係る記載内容を参酌すれば、引用例1発明の「検査計画」と、本願発明の「スキャンプロトコル」とは、「スキャンに係る検査に必要なプロトコル」という概念に包摂される。
引用例1発明の「他のX線CT装置」は、「X線CT装置」から「検査計画」を受信するものであることから、「X線CT装置」と同様の「検査計画」、即ち「スキャンに係る検査に必要なプロトコル」で、「スキャン」に係る「検査」を行うものであると考えるのが自然である。
してみると、当該「他のX線CT装置」は、
「患者をスキャン」し「画像再構成処理」するものであり、
「検査計画」即ち「スキャンに係る検査に必要なプロトコル」を受信する手段を有するものであり、
「検査計画」即ち「スキャンに係る検査に必要なプロトコル」から所定のデータを抽出し、当該データを当該装置のスキャンにおけるプロトコルに用いるものであり、
そのようにするための手段、即ちプロトコル利用手段を具備するものである、
と考えるのが自然である。

そうすると、両者は、

「 通信回線を介して、第1の医用画像診断装置と第2の医用画像診断装置とを接続してなる医用画像診断装置通信システムにおいて、
第1の医用画像診断装置は、患者をスキャンし、画像再構成処理を行い、通信回線を介して第2の医用画像診断装置へ、患者のスキャンに用いられた、スキャンに係る検査に必要なプロトコルを送信する手段を具備し、
第2の医用画像診断装置は、患者をスキャンし、画像再構成処理を行うとともに、通信回線を通じて第1の医用画像診断装置から、スキャンに係る検査に必要なプロトコルを受信する手段を有し、当該受信したスキャンに係る検査に必要なプロトコルから所定のデータを抽出し、当該データを当該装置のスキャンにおけるプロトコルに用いるプロトコル利用手段を具備する
医用画像診断装置通信システム。 」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明の「スキャンに係る検査に必要なプロトコル」である「スキャンプロトコル」は、「スキャンパラメータ」、「画像再構成パラメータ」、「個人情報」を含んでいるのに対し、引用例1発明の「スキャンに係る検査に必要なプロトコル」である「検査計画」は、その点が明確ではない点。

[相違点2]
本願発明は「第1の医用画像診断装置」が「画像再構成処理」を行って「画像を表示」し、通信回線を通じて「第2の医用画像処理診断装置」へ「表示された画像」を送信するとともに、「第2の医用画像診断装置」は通信回線を通じて「第1の医用画像処理診断装置」から「表示された画像」を受信するものであるのに対し、引用例1発明ではそのようになっていない点。


4-3.判断

[相違点1]について。
引用例2の前記摘記事項(カ)(キ)を参照すれば、X線CT装置でスキャンする際、「プロトコル」として、スキャン部位、スキャン種類、スキャンFOV、スキャン開始又は終了時のテーブル位置、スキャン時間、管電圧、管電流等の「スキャンパラメータ」を含むようにすること、さらに患者名、性別等の患者の「個人情報」を含むようにすることが周知の事項(以下「周知事項1」という。)であったものと認められる。
引用例3の前記摘記事項(ク)(ケ)及び引用例4の前記摘記事項(コ)を参照すれば、X線CT装置で画像を再構成する際の「プロトコル」として、画像再構成の演算中心や画像再構成FOV、さらにはウインドウレベル等の「画像再構成パラメータ」を含むようにすることが周知の事項(以下「周知事項2」という。)であったものと認められる。
してみると、引用例1発明にこれらの周知事項1,2を適用し、もって「スキャンプロトコル」に「スキャンパラメータ」、「画像再構成パラメータ」、「個人情報」を含むようにすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

[相違点2]について。
引用例5の前記摘記事項(サ)及び引用例6の前記摘記事項(シ)を参照すれば、X線CT装置で撮像した画像を表示し、これを他の装置でも表示できるようにするために、画像診断装置間を通信回線で接続することは、周知の事項(以下「周知事項3」という。)であったものと認められる。
してみると、引用例1発明に周知事項3を適用し、もって「第1の医用画像診断装置」が「画像再構成処理」を行って「画像を表示」し、通信回線を通じて「第2の医用画像処理診断装置」へ「表示された画像」を送信するとともに、「第2の医用画像診断装置」は通信回線を通じて「第1の医用画像処理診断装置」から「表示された画像」を受信するよう構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。


また、本件発明の効果についてみても、上記引用例1発明及び周知事項1乃至周知事項3から予測される範囲のものにすぎない。


したがって、本願発明は、上記引用例1発明及び周知事項1乃至周知事項3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


以上判断したとおり、本願発明における上記[相違点1]乃至[相違点2]に係る発明特定事項は、いずれも当業者が容易に想到することができたものであり、上記各相違点を総合しても、想到することが困難な格別の事項は見いだせない。また、本願発明の作用効果も、引用例1発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。


4-4.審判請求人の主張について。

審判請求人は意見書において以下のとおり主張している。

「引用例1?6のうち本願の請求項1,3に係る各発明に最も近いのは引用例1の発明であるが、引用例1の発明は検査計画を他のCT装置に送ることはできても、本願の請求項1,3に係る各発明のように、そのX線CT装置でスキャンして得た画像を他のCT装置に送信することができないし、他のCT装置からの画像を受信することもできない。又、引用例5の医用画像処理装置及び引用例6の独立診断用画像表示保存装置DC6は、本願の請求項1,3に係る各発明のように、患者をスキャンし、画像再構成処理を行って、画像を表示する医用画像診断装置ではない。したがって、本願の請求項1,3に係る各発明が引用例1?6の発明と異なることは明らかである。
本願の請求項1,3に係る各発明は、患者のスキャンに用いられたスキャンプロトコル及び表示された画像を送信することができるとともに、他の画像診断装置から患者のスキャンに用いられたスキャンプロトコル及び表示された画像を受信することができるので、受信したスキャンプロトコルを利用することができるとともに受信した画像を表示することができる、という引用例1?6に基づく発明に対して有利な効果を奏する。」

上記審判請求人の主張について検討する。
第一に、「引用例1の発明は検査計画を他のCT装置に送ることはできても、本願の請求項1,3に係る各発明のように、そのX線CT装置でスキャンして得た画像を他のCT装置に送信することができない」との主張に関しては、上記「4-3.判断」の「[相違点2]について。」で判断したとおりである。
第二に、「引用例5の医用画像処理装置及び引用例6の独立診断用画像表示保存装置DC6は、本願の請求項1,3に係る各発明のように、患者をスキャンし、画像再構成処理を行って、画像を表示する医用画像診断装置ではない」との主張に関しては、上記「4-2.対比」及び 「4-3.判断」にて対比・判断したとおりである。

ここで念のため、上記第一の主張点に関して発明の詳細な説明の記載を参照する。
【0019】段落乃至【0029】段落の記載を参照すると、「X線CT装置でスキャンして得た画像を他のCT装置に送信する」との事項を、「検査計画を他のCT装置に送る」との事項に対して付加した場合に、奏し得る作用効果に係る記載は以下のとおりである。

「 【0026】
上記第1実施例の医用画像診断装置通信システムS1によれば、ネットワークNを介して他のX線CT装置との間でスキャンプロトコルを容易に交換することが出来る。
【0028】
上記第2実施例の医用画像診断装置通信システムS11によれば、ネットワークNおよびデータベース30を介して他のX線CT装置との間でスキャンプロトコルを容易に交換することが出来る。
【0029】
【発明の効果】
この発明の医用画像診断装置通信システムおよび医用画像診断装置によれば、複数の画像診断装置の間で通信回線を介して撮像条件を容易に交換することが出来る。この結果、全系列病院で撮像条件を共有できる。また、新たに開発された撮像条件を迅速に試行することが出来る。特に、ヘリカルスキャンのような複雑なスキャンプロトコルを交換するのに有用である。 」

以上のとおりであることから、「X線CT装置でスキャンして得た画像を他のCT装置に送信する」との事項を、「検査計画を他のCT装置に送る」との事項に対して付加することにより新たな作用効果を奏し得たものであるとは認められない。


4-5.まとめ
以上のとおり本願発明は、引用例1発明及び周知事項1乃至周知事項3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、発明の効果についてみても、引用例1発明及び周知事項1乃至周知事項3から予測される範囲のものにすぎない。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-05 
結審通知日 2009-01-14 
審決日 2009-01-28 
出願番号 特願平7-62540
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 貝塚 涼  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 久保田 健
小山 和俊
発明の名称 医用画像診断装置通信システムおよび医用画像診断装置  

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