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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 E03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E03F
管理番号 1194996
審判番号 不服2007-7577  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-14 
確定日 2009-03-23 
事件の表示 平成 9年特許願第342112号「目詰まり防止材付きコンクリートブロック」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月15日出願公開、特開平11-158982〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成9年11月26日の出願であって、平成19年2月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成20年9月5日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったが、応答はなかった。

【2】平成19年3月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年3月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成19年3月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、以下のように補正しようとする補正事項を含むものである。
「【請求項1】底面と側壁とを備えたブロック本体と、該ブロック本体に設けられた排水路とから構成され、前記ブロック本体のいずれかの表面から前記排水路に連通する導水路が形成されてなるブロックであって、該導水路の入口部分を被覆する目詰まり防止材がブロック本体と一体的に設けられており、前記ブロック本体の上部が上面により覆われ且つ排水路がブロック本体内部に設けられてなり、上面の所要箇所に排水路と連通する導水路となる導水孔が設けられ、この導水孔を被覆するように目詰まり防止材が配設されており、前記導水孔がブロック本体の上面を横断するように形成された凹部に設けられてなるとともに、この凹部に目詰まり防止材が埋設されてなることを特徴とする目詰まり防止材付きコンクリートブロック。」

上記補正事項は、補正前の請求項1ないし9及び請求項11,12を削除し、請求項1を引用する請求項7をさらに引用する請求項10に係る発明を独立形式で記載するとともに、請求項10に係る発明を特定する「凹部」について「ブロック本体の上面を横断するように形成された」ものに限定しようとするものであるから、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平7-127118号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1a)「排水用コンクリート管であって、このコンクリート管は、
埋設時において地面から露出する上面に所要数設けてある通水孔と、
前記上面の実質的な全面に積層してあり粒状物を透水可能に結着してなる透水性部材と、を備えた、
排水用コンクリート管。」(【請求項2】)、
(1b)「透水性部材は、例えば天然石粒やフライアッシュ(火山灰などを小粒状に加工したもの)などを合成樹脂製の結着剤で固め、内部に多数の透水空隙部が形成されるようにして固体状にしたものなどである。」(段落【0006】)、
(1c)「透水性部材を上面に積層したものは、積層が塗布によるものでもよいし、パネル状のものを載置接着することによって形成してもよい。なお、後者の場合は通水孔には必ずしも透水性部材を充填する必要はない。」(段落【0007】)、
(1d)「また、透水性部材は水分は透過するが木の葉や小石あるいはゴミなどの固形物は透過せず分離されるので、内部の通水路にこれらが侵入して詰まることもなく、排水がスムーズにできる。」(段落【0009】)、
(1e)「図1は本発明にかかる排水用コンクリート管の一実施例を示す平面図、図2は正面図、図3は側面図、図4は縦断面図である。符号C1は排水用コンクリート管で、ほぼ四角筒状に形成してある。排水用コンクリート管C1は所要の長さを有し、上部壁1と側部壁2、3と底部壁4を備えており、内部は通水路6となっている。
上部壁1の幅方向における中央部には、通水孔10が上部壁1を貫通して軸線方向と平行に等間隔で四箇所に設けてある。」(段落【0011】、【0012】)、
(1f)「(作用)図1及び図2を参照して本実施例の作用を説明する。本発明にかかる排水用コンクリート管C1は上部壁1の表面が地面と面一となるように道路傍などに埋設施工される。・・・
また、透水性部材5は水分は透過するが木の葉や小石あるいはゴミなどの固形物は透過せず分離されるので、内部の通水路6にこれらが侵入することもなく、排水がスムーズにできる。」(段落【0014】、【0015】)、
(1g)「図5は本発明にかかる排水用コンクリート管の他の実施例を示す平面図、図6は側面図、図7は縦断面図である。本実施例における排水用コンクリート管C2には、上部壁1の表面に幅方向の両側端部を一部残して、ほぼ全面にわたり表面凹部15が形成してある。上部壁1には前記実施例と同様に通水孔10が四箇所に設けてある。そして、透水性部材5は表面凹部15の全面に塗布されて積層してあると共に各通水孔10の上部側の約2/3にあたる部分に充填してある。なお、図面において前記実施例と同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。」(段落【0016】)、(1h)「・・・本実施例にあっては、埋設施工時に表面にはコンクリート面がほとんど表われずに透水性部材5が表われるので、心地よい歩行感が得られ、意匠的にも美観に優れ周囲の環境に溶け込みやすい利点がある。」(段落【0017】)。
(1i)図5、6には、透水性部材5は、表面凹部15全体に埋設されていることが示されている。
上記記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「底部壁4と側部壁2,3とを備えた排水用コンクリート管C2と、該排水用コンクリート管C2内部に設けられた通水路6とから構成され、前記排水用コンクリート管C2の上部が上部壁1により覆われ、該上部壁1に前記通水路6に連通する通水孔10が形成された排水用コンクリート管であって、
該通水孔10は上部壁1表面に幅方向の両側端部を一部残して形成された表面凹部15に形成され、該表面凹部15には、該通水孔10の入口部分を被覆する透水性部材5が塗布積層されて埋設されている透水性部材付き排水用コンクリート管。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

[3]対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「底部壁4」、「側部壁2,3」、「排水用コンクリート管C2」、「通水路6」、「上部壁1」、「表面凹部15」、「通水孔10」は、それぞれ、補正発明の「底面」、「側壁」、「ブロック本体」、「排水路」、「上面」、「凹部」、「導水路となる導水孔」に相当する。
また、引用文献1記載の発明の「透水性部材5」は、木の葉や小石あるいはゴミなどの固形物が内部の通水路に詰まることを防止するものであるから、補正発明の「目詰まり防止材」に相当し、同様に「透水性部材付き排水用コンクリート管」は「目詰まり防止材付きコンクリートブロック」に相当する。
さらに、引用文献1記載の発明において、透水性部材5は、コンクリートブロック表面に塗布積層されており、コンクリートブロックと一体的に設けられていることは明らかである。

そうすると、両者は、
「底面と側壁とを備えたブロック本体と、該ブロック本体に設けられた排水路とから構成され、前記ブロック本体のいずれかの表面から前記排水路に連通する導水路が形成されてなるブロックであって、該導水路の入口部分を被覆する目詰まり防止材がブロック本体と一体的に設けられており、前記ブロック本体の上部が上面により覆われ且つ排水路がブロック本体内部に設けられてなり、上面の所要箇所に排水路と連通する導水路となる導水孔が設けられ、この導水孔を被覆するように目詰まり防止材が配設されており、前記導水孔がブロック本体の上面に形成された凹部に設けられてなるとともに、この凹部に目詰まり防止材が埋設されてなる目詰まり防止材付きコンクリートブロック。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点>
通水孔を設けるとともに目詰まり防止材を埋設する凹部が、補正発明では、ブロック本体の上面を横断するように形成されるのに対して、引用文献1記載の発明では、ブロック本体の上面の両側端部を残して形成される点 。

[4]判断
上記相違点について検討する。
補正発明において、凹部をブロック本体の上面を横断するように形成することについて、審判請求書において「ブロックの左右両側から集水することができる」ためであると主張しているが、排水用ブロックにおいて、ブロック側方の路面上の水及び路面内部に浸透した水をブロックに導水するためにブロックの側方から集水する導水部を設けることは、本願出願前周知の技術である(前置審尋において提示した実願昭63-76980号(実開平1-180580号)のマイクロフイルム(特に第6図参照)、原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3039939号公報(特に図10?12参照)参照。)。
また、水を導水孔に導くためにブロック本体の上面を横断するように凹部を形成することも、周知の技術である(前置審尋において提示した特開平5-331904号公報参照)。
引用文献1記載の発明において、凹部をブロック本体の上面の両側端部を残して形成し、目詰まり防止材(透水性部材5)をブロック本体のほぼ全面に設けたのは、歩行感や意匠性を考慮したものであり(記載事項(1h))、引用文献1の図1の実施例に示されるように、目詰まり防止材は、導水路の入口部分に設けられてさえいれば、目詰まり防止効果を奏することは明らかであるから、凹部の形状を変更することに阻害要因はない。
そうすると、引用文献1記載の発明において、ブロックの左右両側の路面内部に浸透した水を集水するために、上記周知技術を適用し、通水孔を設ける凹部をブロック本体の上面を横断するように形成することは当業者が容易に想到しうることである。
そして、補正発明全体の効果は、引用文献1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができないから、補正発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
[1]本願発明
平成19年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「底面と側壁とを備えたブロック本体と、該ブロック本体に設けられた排水路とから構成され、前記ブロック本体のいずれかの表面から前記排水路に連通する導水路が形成されてなるブロックであって、該導水路の入口部分を被覆する目詰まり防止材がブロック本体と一体的に設けられていることを特徴とする目詰まり防止材付きコンクリートブロック。」(以下、「本願発明」という。)

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、登録実用新案第3039939号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2a)「上面一端部に道路境界ブロック(B)を載置可能な切欠部(20)と傾斜面(25)を形成し、道路境界ブロック(B)載置位置寄りの延長線上に、路面水が中空部(30)内に流入する任意形状複数の流入孔(40)を設け、中空部(30)の底面部(35)を、低水位時の沈殿物の掃流作用を向上するためV形に設け、車道側の側面上部寄りの延長線上に、排水性舗装に浸透した雨水を中空部(30)内に流入させる任意形状複数の流入孔(60)を設け、該流入孔(60)入り口に排水性舗装時の細骨材の侵入を防止するフィルター部材(80)を覆設した、ことを特徴とする排水性舗装用暗渠ブロック。」(【請求項1】)
(2b)「以下、図1乃至図3により実施例1を説明する。
この実施例1は、既知の道路境界ブロックBを載置可能な排水性舗装用暗渠ブロック100Aであって、・・・車道側(排水性舗装側)側面の上部寄り・・・の延長線上に中空部30内に開口する複数の流入孔60を設け、流入孔60の入り口に窪みbを設け、窪みb内に舗装時の細骨材の流入を防止する透水かつ耐熱性のフィルター部材80を接着材・粘着テープtまたはスプリング板sp等により装着(図22参照)している。」(段落【0016】)。
(2c)図1ないし3には、排水性舗装用暗渠ブロック100Aは、底面と側面とを備え、流入孔60の入り口部分を被覆する透水かつ耐熱性のフィルター部材80が排水性舗装用暗渠ブロック100A側面の窪みbに装着されていることが示されている。
上記記載事項及び図面を含む引用文献2全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「底面と側壁とを備えた排水性舗装用暗渠ブロック100Aと、該排水性舗装用暗渠ブロック100Aに設けられた中空部30とから構成され、前記排水性舗装用暗渠ブロック100Aの車道側(排水性舗装側)側面から前記中空部30に連通する流入孔60が形成されてなる排水性舗装用暗渠ブロックであって、該流入孔60の入口部分を被覆する舗装時の細骨材の流入を防止する透水かつ耐熱性のフィルター部材80が接着材等により排水性舗装用暗渠ブロック100Aと一体的に設けられているフィルター部材付き排水性舗装用暗渠ブロック。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

[3]対比・判断
本願発明と、引用文献2記載の発明を比較すると、引用文献2記載の発明の「排水性舗装用暗渠ブロック100A」、「中空部30」、「車道側(排水性舗装側)側面」、「流入孔60」、「フィルター部材80」、「排水性舗装用暗渠ブロック」は、それぞれ、本願発明の「ブロック本体」、「排水路」、「いずれかの表面」、「導水路」、「目詰まり防止材」、「ブロック」に相当し、一般的に排水性舗装用暗渠ブロックをコンクリートブロックとすることは慣用技術にすぎないから、両者は、実質的に同一である。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-20 
結審通知日 2009-01-21 
審決日 2009-02-04 
出願番号 特願平9-342112
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E03F)
P 1 8・ 113- Z (E03F)
P 1 8・ 121- Z (E03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田畑 覚士  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
家田 政明
発明の名称 目詰まり防止材付きコンクリートブロック  
代理人 清原 義博  

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