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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1195046
審判番号 不服2006-25082  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-06 
確定日 2009-04-03 
事件の表示 特願2002- 13722「入力文字情報変換方法、入力文字情報変換装置、モニタ装置、プログラムおよび記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月31日出願公開、特開2003-216604〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成14年1月23日の出願であって、平成18年10月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年12月5日付けで手続補正がなされたものである。




第2 平成18年12月5日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成18年12月5日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容

平成18年12月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、
「入力文字情報変換方法」に関する、本件補正前の特許請求の範囲第1乃至3項、すなわち、

「 【請求項1】
入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーションと、入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーションとを有すると共に、文字を入力する入力手段と、少なくとも入力された文字を表示する表示画面と、入力文字受付手段と、入力文字表示手段と、予測候補抽出手段と、変換候補抽出手段と、候補文字表示手段と、登録手段とを具備する入力文字情報変換装置における入力文字情報変換方法であって、
前記入力文字受付手段が、前記入力手段を通じて1文字ずつ入力された文字を受け付ける入力文字受付ステップと、
前記入力文字表示手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字を前記表示画面の所定位置に表示する入力文字表示ステップと、
前記予測候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記予測候補検索アプリケーションにより、予測される文字または文字列の候補である予測候補を前記予測候補検索用辞書から一つ以上抽出する予測候補抽出ステップと、
前記変換候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する変換候補抽出ステップと、
前記候補文字表示手段が、前記予測候補と前記変換候補とを出力候補として前記表示画面の所定位置に並べて表示する候補文字表示ステップと、
使用者による選択指示に応じて、前記選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列を選択する選択ステップと、
前記登録手段が、前記選択ステップで、前記出力候補の中から、前記変換候補の一つが、前記入力された文字に対応する文字または文字列として選択されたときは、前記選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書に登録して前記予測候補として用いられるようにする登録ステップと、
を有することを特徴とする入力文字情報変換方法。
【請求項2】
請求項1に記載の入力文字情報変換方法において、
前記予測候補検索用辞書に予め登録されている予測候補は、初期的に優先順位が付けられていると共に、前記仮名漢字変換用辞書に予め登録されている変換文字列も辞書作成者によって優先順位がつけられて登録されている
ことを特徴とする入力文字情報変換方法。
【請求項3】
請求項1に記載の入力文字情報変換方法において、
前記予測候補および前記変換候補からなる前記出力候補のそれぞれは、それぞれ使用者の1操作による選択操作により、独立に選択可能な状態で使用者に提示されている
ことを特徴とする入力文字情報変換方法。」

であったものを、「入力文字情報変換方法」に関する、本件補正後の特許請求の範囲第1乃至3項、すなわち、

「 【請求項1】
入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーションと、入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーションとを有すると共に、文字を入力する入力手段と、少なくとも入力された文字を表示する表示画面と、入力文字受付手段と、入力文字表示手段と、予測候補抽出手段と、変換候補抽出手段と、候補文字表示手段と、登録手段と、を具備する入力文字情報変換装置における入力文字情報変換方法であって、
前記入力文字受付手段が、前記入力手段を通じて1文字ずつ入力された文字を受け付ける入力文字受付ステップと、
前記入力文字表示手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字を前記表示画面の所定位置に表示する入力文字表示ステップと、
前記予測候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記予測候補検索アプリケーションにより、予測される文字または文字列の候補である予測候補を前記予測候補検索用辞書から一つ以上抽出する予測候補抽出ステップと、
前記変換候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する変換候補抽出ステップと、
前記候補文字表示手段が、前記予測候補と前記変換候補とを出力候補として前記表示画面の所定位置に並べて表示する候補文字表示ステップと、
使用者による選択指示に応じて、前記選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補を選択する選択ステップと、
前記登録手段が、前記選択ステップで選択された前記確定出力候補が、前記変換候補であるか否か判別し、前記変換候補であると判別したときには、前記確定出力候補として選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録して、前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする登録ステップと、
を有することを特徴とする入力文字情報変換方法。
【請求項2】
請求項1に記載の入力文字情報変換方法において、
前記予測候補検索用辞書に予め登録されている予測候補は、初期的に優先順位が付けられていると共に、前記仮名漢字変換用辞書に予め登録されている変換文字列も辞書作成者によって優先順位がつけられて登録されている
ことを特徴とする入力文字情報変換方法。
【請求項3】
請求項1に記載の入力文字情報変換方法において、
前記予測候補および前記変換候補からなる前記出力候補のそれぞれは、それぞれ使用者の1操作による選択操作により、独立に選択可能な状態で使用者に提示されている
ことを特徴とする入力文字情報変換方法。」

に変更する補正を含む。

つまり、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲第1項に対して、

(本件補正事項1)
「使用者による選択指示に応じて、前記選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列を選択する選択ステップ」という記載を、
本件補正によって、
「使用者による選択指示に応じて、前記選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補を選択する選択ステップ」という記載に補正すること、

(本件補正事項2)
「前記登録手段が、前記選択ステップで、前記出力候補の中から、前記変換候補の一つが、前記入力された文字に対応する文字または文字列として選択されたときは、前記選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書に登録して前記予測候補として用いられるようにする登録ステップ」という記載を、
本件補正によって、
「前記登録手段が、前記選択ステップで選択された前記確定出力候補が、前記変換候補であるか否か判別し、前記変換候補であると判別したときには、前記確定出力候補として選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録して、前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする登録ステップ」という記載に補正すること、

を含むものである。



2.本件補正について

本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)の規定された要件を満たしているか否かを以下に検討する。

(1)本件補正事項1について

「入力された文字に対応する文字または文字列」を本件補正事項1によって「入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補」と限定しているのであるから、
本件補正事項1は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当する。


(2)本件補正事項2について

「前記登録手段が、前記選択ステップで、前記出力候補の中から、前記変換候補の一つが、前記入力された文字に対応する文字または文字列として選択されたときは、前記選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書に登録して前記予測候補として用いられるようにする登録ステップ」という構成を、
本件補正事項2によって、
「前記登録手段が、前記選択ステップで選択された前記確定出力候補が、前記変換候補であるか否か判別し、前記変換候補であると判別したときには、前記確定出力候補として選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録して、前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする登録ステップ」という構成に限定しているのであるから、
本件補正事項2は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当する。


そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。



3.本願補正発明の認定

本願補正発明は、本件補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲第1項に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーションと、入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーションとを有すると共に、文字を入力する入力手段と、少なくとも入力された文字を表示する表示画面と、入力文字受付手段と、入力文字表示手段と、予測候補抽出手段と、変換候補抽出手段と、候補文字表示手段と、登録手段と、を具備する入力文字情報変換装置における入力文字情報変換方法であって、
前記入力文字受付手段が、前記入力手段を通じて1文字ずつ入力された文字を受け付ける入力文字受付ステップと、
前記入力文字表示手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字を前記表示画面の所定位置に表示する入力文字表示ステップと、
前記予測候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記予測候補検索アプリケーションにより、予測される文字または文字列の候補である予測候補を前記予測候補検索用辞書から一つ以上抽出する予測候補抽出ステップと、
前記変換候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する変換候補抽出ステップと、
前記候補文字表示手段が、前記予測候補と前記変換候補とを出力候補として前記表示画面の所定位置に並べて表示する候補文字表示ステップと、
使用者による選択指示に応じて、選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補を選択する選択ステップと、
前記登録手段が、前記選択ステップで選択された前記確定出力候補が、前記変換候補であるか否か判別し、前記変換候補であると判別したときには、前記確定出力候補として選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録して、前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする登録ステップと、
を有することを特徴とする入力文字情報変換方法。」

ただし、特許請求の範囲第1項の「使用者による選択指示に応じて、前記選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補を選択する選択ステップ」に関して「選択手段」は前記されておらず、「前記選択手段」は「選択手段」の誤記であることは明らかであるから、上記の如く認定した。



4.引用例の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-229156号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

(ア)
「【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、オペレーションシステムの管理下でワープロ,表計算などのアプリケーションプログラムによる情報処理を行う際に、文字入力システムとともに動いて実行中のアプリケーションへの文字入力処理を支援する方法、およびその方法を実施するためのプログラムが記録された記録媒体、ならびに入力支援機能付きの情報処理装置に関連する。」

(イ)
「【0002】
【従来の技術】
ウィンドウズ(マイクロソフト株式会社の登録商標)のようなオペレーションシステム(以下「OS」と略す)が組み込まれたコンピュータでは、日本語の仮名漢字変換のように変換処理を伴う文字をアプリケーションに入力する場合、日本語入力システム(「Input Method Editor(インプット・メソッド・エディタ)/以下「IME」と略す)と称される文字入力用のプログラムを使用している。」

(ウ)
「【0007】
さらに近年では、変換前の文字列の一部を入力するだけで、入力しようとしている変換後の文字列を予測してその予測結果を表示する「入力予測機能」を有するIMEも提供されている。この入力予測機能は、IMEにおいて、毎時の文字変換処理の結果を順次学習してその学習結果をデータベースに登録しておくことにより実現するものである。この機能により、ユーザは、すべての文字列を入力する必要なしに入力したい文字列を確定することができるので、文字入力の効率を大幅に向上することができる。」

(エ)
「【0008】
【発明が解決しようとする課題 】
上記の入力予測に用いられるデータベースは、IMEが独自で管理しており、外部からの利用は不可能である。したがって入力予測機能を持たないIMEを使用するユーザが入力予測機能を利用したい場合は、これまで使用していたIMEを捨てて入力予想機能を有するIMEに変更する必要がある。しかしながらIMEを変更すると、従来のIMEで使用していた辞書の登録内容や、変換,確定などの操作に対するキーの割付を踏襲できなくなり、ユーザは多大な不便を強いられるという問題が生じる。
【0009】
また上記したように、入力機能を有するIMEは、独自の入力予測用のデータベースを持つので、入力予測機能のあるIMEを使用していたユーザが別の入力予測機能を持つIMEに変更したり、2種類のIMEを切り替えて使用する場合、一方のIMEでの学習結果を他方のIMEで利用することは不可能である。
【0010】
この発明は上記問題点に着目してなされたもので、ユーザの慣れ親しんだIMEを捨てる必要なしに入力予測機能を利用できるようにし、また使用するIMEを変更したり、2種類のIMEを切り替えて使用するような場合も、他のIMEでの学習結果を引き継いで入力予測を行うことができるようになすことを目的とする。」

(オ)
「【0021】
【実施例】
図1は、この発明が適用された文書作成システムの概略構成を示す。このシステムは、ウィンドウズのようなOS1と、文章作成用のアプリケーション3(以下単に「アプリケーション3」という)と、このアプリケーション3に仮名漢字文字を入力するための日本語IME2(以下単に「IME2」という)とを、基本の構成とし、さらに前記IME2ともに動作してアプリケーション3に対する文字入力を支援するシステムを具備するものである。なお文字入力支援システムは、図中、符号4?9で示した各処理部および予測データベース10により構成される。
【0022】
上記の文書作成システムは、具体的には、図2に示すようなCPU11,ROM12,RAM13を制御主体とするパーソナルコンピュータ18により実現するもので、ハードディスク装置14内には、前記OS1,IME2,アプリケーション3を構築する各種プログラムファイルやデータファイルがあらかじめインストールされている。
【0023】
前記文字入力支援システムは、CD-ROMなどの記録媒体によるパッケージソフトとして提供される。記録媒体がCD-ROMである場合、このCD-ROMをCD-ROMドライブ15にセットして、所定のインストール作業を実行することにより、前記ハードディスク装置14内に、各処理部のためのプログラムファイルやデータファイル、および予測データベース10のためのデータファイルが組み込まれ、図1の文書作成システムが完成する。」

(カ)
「【0024】
図2中、入力部16は、文字を入力するためのキーボードや、選択,確定操作を行うためのマウスなどにより構成され、モニタ17は、CRT,LCDなどの表示装置により構成される。なお入力部16やモニタ17は、パーソナルコンピュータ18の本体と一体に設けられる場合と、外付けの装置として接続される場合とがある。このほかパーソナルコンピュータ18には、必要に応じて、プリンタ,モデムなどの周辺装置が接続される。」

(キ)
「【0025】
上記構成において、OS1の管理下でアプリケーション3が立ち上げられると、ユーザは、前記入力部16より変換前の仮名入力文字列の各構成文字を順に入力した後、順次、変換操作や選択・確定操作を実行する。OS1は、このような操作の都度、操作されたキーの示す文字や操作内容を知らせるメッセージをIME2に送出する。
【0026】
IME2では、文字入力時のOS1からのメッセージにより入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識するとともに、前記OS1からのメッセージに応じて、毎時、その時点までに認識した仮名入力文字列を知らせるメッセージをOS1に送出する。このメッセージを受けたOS1は、アプリケーション3に前記仮名入力文字列を出力し、アプリケーション3から与えられた文字入力位置に前記メッセージ内の文字列を未確定表示する。
【0027】
所定数の文字の入力後に変換操作が行われると、IME2は、OS1からのメッセージに応じて、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して、仮名や漢字の変換候補を抽出する処理を実行し、その処理結果を知らせるメッセージをOS1に送出する。以後、OS1からIME2にはユーザの操作内容を知らせるメッセージが、IME2からOS1には、その操作内容に対応する処理の結果を知らせるメッセージが、それぞれ出力され、互いにメッセージをやりとりしつつ、それぞれ与えられたメッセージに応じた処理を実行することにより、前記アプリケーション3の表示ウィンドウ内で仮名入力文字列が所定の変換候補の文字列に置き換えて表示されたり、複数の変換候補が一覧表示される。そして最終的な確定操作に応じて仮名入力文字列が所定の文字列に変換されると、IME2は、OS1に対し、確定した文字列を知らせるメッセージを送出する。OS1は、このメッセージから確定文字列を取り出して、アプリケーション3に出力するとともに、アプリケーション3からのメッセージに応じて、前記文字入力位置の未確定表示を消失させて、前記確定文字列を確定表示する。」

(ク)
「【0028】
前記文字入力支援システムは、上記の文字入力処理において仮名入力文字列に対する変換結果を逐次学習するとともに、仮名入力の過程で、現時点までに入力された仮名文字列により、ユーザの意図する変換後の文字列を予測し、予測した各文字列をモニタ画面上に一覧表示する。そしてこの一覧表示に対しユーザの選択操作がなされると、その選択された文字列を前記仮名文字列の変換結果として前記アプリケーション3へ出力する。
【0029】
この実施例の文字入力支援システムは、変換前文字列抽出部4,確定文字列抽出部5,予測データ学習部6,入力予測部7,予測結果表示部8,予測結果確定部9の各処理部を有する。変換前文字列抽出部4は、前記入力部16からの仮名文字列の入力時に、IME2が認識した仮名入力文字列をOS1に知らせるためのメッセージを参照する「フック処理」により、仮名入力文字列を抽出する。一方、確定文字列抽出部5は、IME2において仮名入力文字列に対する変換後の文字列を確定する際に、OS1に対して送出するメッセージをフックして、確定された文字列を抽出する。
【0030】
予測データ学習部6は、抽出された仮名入力文字列と確定文字列とを取り込んで、仮名入力文字列から予測される変換後の文字列を学習する。なおこの学習では、文字列の入力の際にIME2より出された毎時のメッセージより抽出した各仮名入力文字列が「見出し」として設定され、各見出しに前記確定文字列を対応づけた予測データが作成されて予測データベース10に格納される。たとえば、「おむろん」という仮名入力文字列が入力されて「オムロン」と変換された場合であれば、IME2からは、各文字の入力に応じて「お」「おむ」「おむろ」「おむろん」の各仮名入力文字列を、順にメッセージにして送出しているから、予測データ学習部6は、これら4種類の仮名入力文字列を見出しとして設定し、各見出しに対してそれぞれ前記確定文字列の「オムロン」を対応づけた予測データを作成する。
【0031】
また確定文字列が複数の単語や文節から成る場合、予測データ学習部6は、形態素解析により確定文字列の切れ目を認識し、切れ目毎にそれぞれ先頭文字から切れ目の位置までの文字列を切り出して、複数の予測データを設定する。たとえば、「オムロンソフトウェア株式会社」という確定文字列が得られた場合、意味の切れ目に応じて「オムロン」「オムロンソフトウェア」「オムロンソフトウェア株式会社」という3種類の予測データが作成される。」

(ケ)
「【0032】
さらにこの実施例では、同じ見出しに対して複数の予測データが記憶される場合、これらの予測データの使用頻度や使用履歴も学習して予測データベース10に記憶するようにしている。
【0033】
前記したように、変換前文字列抽出部4は、仮名文字が入力される都度、IME2からOS1へのメッセージをフックして、その時点までの仮名入力文字列を抽出するようにしている。入力予測部7は、この毎時の抽出結果を取り込んで、前記予測データベース10より前記仮名入力文字列を見出しとする予測データを抽出する。予測結果表示部8は、抽出された各予測データを一覧表示することを知らせるメッセージを作成してこれをOS1に送出することにより、各予測データの一覧表示を実現する。
【0034】
この一覧表示に対し、ユーザの選択操作が行われると、OS1は、その選択内容を知らせるメッセージを送出する。予測結果確定部9は、このメッセージおよび前記入力予測部7による予測データの検索結果を取り込んで、メッセージに応じた予測データを前記仮名入力文字列の変換後の文字列として確定し、その文字列をアプリケーション3への入力文字列として確定したことを知らせるメッセージをOS1に送出する。OS1は、このメッセージに応じてアプリケーション3への文字列の入力処理を実行する。この一連の処理により、予測した文字列によりIME2よりも先に変換後の文字列が確定されることになる。」

(コ)
「【0035】
図3は、上記文字入力支援システムによる一連の処理手順であって、以下、この図3の流れに沿って、OS1およびIME2の動作に連動した文字入力支援処理の詳細を説明する。」

(サ)
「【0036】
入力部16による文字入力処理が開始されると、前記したように、IME2は、OS1からのメッセージを用いて、1文字の入力がなされる都度、その時点までに入力された仮名文字列を認識し、その認識した文字列を知らせるメッセージをOS1側に送出する。最初の1文字の入力に対し、この1文字のみの仮名入力文字列を知らせるメッセージが送出されると、変換前文字列抽出部4は、このメッセージをフックして前記仮名入力文字列を抽出する(ST1,2)。なおこの後も、引き続いて文字入力が行われる場合は、順次メッセージが送出されるから、ST3,4またはST3?6を介してST10からST2へと戻り、新たなメッセージに含まれる仮名入力文字列が順に抽出される。
【0037】
所定数の仮名文字が入力された後に変換操作が行われると、IME2は、それまでに認識した仮名入力文字列についての変換候補を抽出し、その変換候補を知らせるメッセージをOS1に送出する。ついでいずれかの変換候補を選択して確定する操作が行われると、IME2からOS1に、確定された文字列を知らせるメッセージが送出される。文字入力支援システムでは、この一連の処理に応じて、ST10?12およびST14を経由してST15に進み、確定文字列抽出部5によりIME2の確定した文字列を抽出する。そして続くST16では、前記予測データ学習部6がこの確定文字列の抽出結果と前記仮名入力文字列の抽出結果とを取り込んで、予測データを作成し、予測データベース10内に記憶する。」

(シ)
「【0038】
またST1?10での仮名入力文字列の抽出過程において、入力予測部7は、文字が入力される毎に、ST2で抽出された仮名入力文字列を用いて前記予測データベース10を検索し、所定数の予測データが見つかると、これら予測データを予測結果表示部8へと受け渡す。予測結果表示部8は、抽出された予測データを一覧表示することを知らせるメッセージをOS1に送出することにより、モニタ画面上への予測データの一覧表示を実行する(ST3?5)。なお上記の手順によれば、IME2が新たな文字入力により仮名入力文字列を認識し直す都度、その最新の仮名入力文字列による予測データベース10の検索が行われるから、文字入力が進むにつれて予測データは絞り込まれることになる。またST5で複数の予測データを一覧表示する際には、各データは、それぞれの使用頻度や使用履歴に応じた順序で表示される。」

(ス)
「【0039】
ST5の予測候補の一覧表示に対し、ユーザの選択操作が行われると、OS1は、その選択内容を示すメッセージを作成して予測結果確定部9に送出する。予測結果確定部9は、そのメッセージにより前記選択された予測データを認識すると、その予測データを前記仮名入力文字列の変換文字列として確定する旨を知らせるメッセージを作成して、これをOS1に送出する(ST6,7)。OS1は、このメッセージを受けて、IME2に保持されている仮名入力文字列のデータおよびモニタ画像上の未確定表示をクリアした後、前記予測データによる文字列をアプリケーション3に出力し、アプリケーション3からの応答に応じてその表示ウィンドウ内の文字入力位置に、前記予測データによる文字列を表示する。
【0040】
さらにST8では、予測データ学習部6により、前記変換前文字列抽出部4により抽出された仮名入力文字列と前記予測データの選択結果とを用いて、予測データの使用頻度や使用履歴の学習が行われる(ST8)。」

(セ)
「【0041】
なお抽出された仮名入力文字列により予測データが抽出されて表示されているにも関わらず、ユーザがいずれの予測データも選択せずに文字入力処理を進め、所定の時期に変換操作を行った場合は、予測結果表示部8は、IME2からOS1への変換候補を知らせるメッセージを確認して前記予測データの一覧表示を終了する(ST11?13)。そして以下のST14?16により、IME2が確定した文字列を抽出し、予測データの学習を行う。」

(ソ)
「【0042】
図4および図5は、上記図3の手順が実行されている状態下でのモニタ表示の具体例を示す。図4は、「おむ」という仮名文字列の入力を受けて、予測処理機能により文字列を入力する例であって、図中、20は、アプリケーション3の表示ウィンドウを、21は文字列の入力行を、それぞれ示す。図4(1)は、前記ST5の手順が実行された時点での表示状態を示すもので、前記入力行21では、これまでに入力された仮名入力文字列が未確定表示された状態にある。また所定位置には、予測データの表示ウィンドウ22(以下「予測データウィンドウ22」という)が立ち上げられて、このウィンドウ22内に予測データベース10から抽出された予測データが一覧表示されている。」

(タ)
「【0043】
図4(2)は、前記予測データウィンドウ22に対する選択操作の過程で、ユーザが4番目の予測データに選択用のカーソルを合わせた状態を示す。図4(3)は、前記図4(2)で前記カーソルが設定された予測データが選択されたことに応じた表示状態であって、入力行21の未確定表示や予測データウィンドウ22が消失して、前記入力行21に、選択された予測データの示す文字列が確定表示されている。なおこの選択操作に応じたST8の処理により、選択された予測データの使用頻度や使用履歴が更新されるので、つぎに同じ仮名入力文字列による検索処理が行われたときは、予測データウィンドウ22には、前記選択された4番目の予測データが1番上に表示される可能性が生じる。」

(チ)
「【0044】
図5は、図4と同様の予測データの表示に対し、ユーザが予測データを選択せずにIME2の変換機能を使用した場合の表示例を示す。この場合、仮名文字列の入力に応じて各予測データが一覧表示された図5(1)の状態下でユーザが予測データを選択せずに変換操作を行うと、図5(2)に示すように、予測データウィンドウ22が消失して,代わりにIME2により抽出された変換候補の一覧表示ウィンドウ23が立ち上がる。また文字列の入力行21には、仮名入力文字列に代わってIME2が初期選択した変換候補の示す変換文字列が未確定表示される。」

(ツ)
「【0045】
なお上記実施例では、IME2による変換候補の一覧表示が行われた段階で予測データの一覧表示を終了するようにしているが、これに限らず、変換操作の後も、予測データの一覧表示を続けて、変換候補,予測データの両方の選択を受け付けるようにしてもよい。ただしこの場合、各一覧表示のウィンドウ22,23は重ならない位置に設定するのが望ましい。」


以上の引用例の記載によれば、引用例には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例の上記(オ)の「なお文字入力支援システムは、図中、符号4?9で示した各処理部および予測データベース10により構成される。」という記載、

引用例の上記(ク)の「この実施例の文字入力支援システムは、変換前文字列抽出部4,確定文字列抽出部5,予測データ学習部6,入力予測部7,予測結果表示部8,予測結果確定部9の各処理部を有する。」という記載から、

引用例には、「予測データ学習部、入力予測部、予測結果表示部、予測データベースを含む文字入力支援システム」が開示されていると認められる。

(b)
引用例の上記(イ)の「ウィンドウズ(マイクロソフト株式会社の登録商標)のようなオペレーションシステム(以下「OS」と略す)が組み込まれたコンピュータでは、日本語の仮名漢字変換のように変換処理を伴う文字をアプリケーションに入力する場合、日本語入力システム(「Input Method Editor(インプット・メソッド・エディタ)/以下「IME」と略す)と称される文字入力用のプログラムを使用している。」という記載、

引用例の上記(カ)の「図2中、入力部16は、文字を入力するためのキーボードや、選択,確定操作を行うためのマウスなどにより構成され」るという記載、

引用例の上記(キ)の、
「上記構成において、OS1の管理下でアプリケーション3が立ち上げられると、ユーザは、前記入力部16より変換前の仮名入力文字列の各構成文字を順に入力した後、順次、変換操作や選択・確定操作を実行する。OS1は、このような操作の都度、操作されたキーの示す文字や操作内容を知らせるメッセージをIME2に送出する。・・・(中略)・・・IME2では、文字入力時のOS1からのメッセージにより入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識するとともに、前記OS1からのメッセージに応じて、毎時、その時点までに認識した仮名入力文字列を知らせるメッセージをOS1に送出する。このメッセージを受けたOS1は、アプリケーション3に前記仮名入力文字列を出力し、アプリケーション3から与えられた文字入力位置に前記メッセージ内の文字列を未確定表示する。・・・(中略)・・・所定数の文字の入力後に変換操作が行われると、IME2は、OS1からのメッセージに応じて、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して、仮名や漢字の変換候補を抽出する処理を実行し、その処理結果を知らせるメッセージをOS1に送出する。」という記載、

引用例の上記(サ)の「入力部16による文字入力処理が開始されると、前記したように、IME2は、OS1からのメッセージを用いて、1文字の入力がなされる都度、その時点までに入力された仮名文字列を認識し、その認識した文字列を知らせるメッセージをOS1側に送出する。最初の1文字の入力に対し、この1文字のみの仮名入力文字列を知らせるメッセージが送出されると、変換前文字列抽出部4は、このメッセージをフックして前記仮名入力文字列を抽出する(ST1,2)。なおこの後も、引き続いて文字入力が行われる場合は、順次メッセージが送出されるから、ST3,4またはST3?6を介してST10からST2へと戻り、新たなメッセージに含まれる仮名入力文字列が順に抽出される。」という記載から、

引用例には、
「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIMEと、
文字を入力するための入力部とを具備し、
前記IMEが、前記入力部を通じて1文字ずつ入力された文字を認識する認識ステップ、
前記IMEが、前記認識ステップで認識した文字から、前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換処理ステップ」
が開示されていると認められる。


(c)
上記(b)の
「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIMEと、
文字を入力するための入力部とを具備し、
前記IMEが、前記入力部を通じて1文字ずつ入力された文字を認識する認識ステップ、
前記IMEが、前記認識ステップで認識した文字から、前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換処理ステップ」
という開示、

引用例の上記(カ)の「図2中、入力部16は、文字を入力するためのキーボードや、選択,確定操作を行うためのマウスなどにより構成され、モニタ17は、CRT,LCDなどの表示装置により構成される。」という記載、

引用例の上記(ソ)の「図4および図5は、上記図3の手順が実行されている状態下でのモニタ表示の具体例を示す。図4は、「おむ」という仮名文字列の入力を受けて、予測処理機能により文字列を入力する例であって、図中、20は、アプリケーション3の表示ウィンドウを、21は文字列の入力行を、それぞれ示す。図4(1)は、前記ST5の手順が実行された時点での表示状態を示すもので、前記入力行21では、これまでに入力された仮名入力文字列が未確定表示された状態にある。」という記載から、
(なお、図4及び図5には、モニタ表示された「画面」、すなわち「モニタ表示画面」が図示されている。)

引用例には、
「少なくとも入力された文字を表示するモニタ表示画面とを具備し、
前記認識ステップで入力された文字を前記モニタ表示画面の文字列の入力行に表示するステップ」
が開示されていると認められる。


(d)
上記(a)の「予測データ学習部、入力予測部、予測結果表示部、予測データベースを含む文字入力支援システム」という開示、

上記(b)の
「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIMEと、
文字を入力するための入力部とを具備し、
前記IMEが、前記入力部を通じて1文字ずつ入力された文字を認識する認識ステップ、
前記IMEが、前記認識ステップで認識した文字から、前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換処理ステップ」
という開示、

引用例の上記(サ)の「入力部16による文字入力処理が開始されると、前記したように、IME2は、OS1からのメッセージを用いて、1文字の入力がなされる都度、その時点までに入力された仮名文字列を認識し、その認識した文字列を知らせるメッセージをOS1側に送出する。最初の1文字の入力に対し、この1文字のみの仮名入力文字列を知らせるメッセージが送出されると、変換前文字列抽出部4は、このメッセージをフックして前記仮名入力文字列を抽出する(ST1,2)。なおこの後も、引き続いて文字入力が行われる場合は、順次メッセージが送出されるから、ST3,4またはST3?6を介してST10からST2へと戻り、新たなメッセージに含まれる仮名入力文字列が順に抽出される。」という記載、

引用例の上記(シ)の「またST1?10での仮名入力文字列の抽出過程において、入力予測部7は、文字が入力される毎に、ST2で抽出された仮名入力文字列を用いて前記予測データベース10を検索し、所定数の予測データが見つかると、これら予測データを予測結果表示部8へと受け渡す。予測結果表示部8は、抽出された予測データを一覧表示することを知らせるメッセージをOS1に送出することにより、モニタ画面上への予測データの一覧表示を実行する(ST3?5)。なお上記の手順によれば、IME2が新たな文字入力により仮名入力文字列を認識し直す都度、その最新の仮名入力文字列による予測データベース10の検索が行われるから、文字入力が進むにつれて予測データは絞り込まれることになる。またST5で複数の予測データを一覧表示する際には、各データは、それぞれの使用頻度や使用履歴に応じた順序で表示される。」という記載から、
(なお、「予測データベース」に格納されたデータによっては予測データがひとつも得られないことは有り得るものの、通常、予測データベースに抽出可能な予測データがあれば、予測データベースから一つ以上抽出されることは明らかである。)

引用例には、「前記入力予測部が、前記認識ステップで認識された文字から、予測される文字又は文字列の候補である予測データを、前記予測データベースから一つ以上抽出する入力予測ステップ」が開示されていると認められる。


(e)
上記(a)の「予測データ学習部、入力予測部、予測結果表示部、予測データベースを含む文字入力支援システム」という開示、

上記(b)の
「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIMEと、
文字を入力するための入力部とを具備し、
前記IMEが、前記入力部を通じて1文字ずつ入力された文字を認識する認識ステップ、
前記IMEが、前記認識ステップで認識した文字から、前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換処理ステップ」
という開示、

引用例の上記(チ) の「図5は、図4と同様の予測データの表示に対し、ユーザが予測データを選択せずにIME2の変換機能を使用した場合の表示例を示す。この場合、仮名文字列の入力に応じて各予測データが一覧表示された図5(1)の状態下でユーザが予測データを選択せずに変換操作を行うと、図5(2)に示すように、予測データウィンドウ22が消失して,代わりにIME2により抽出された変換候補の一覧表示ウィンドウ23が立ち上がる。また文字列の入力行21には、仮名入力文字列に代わってIME2が初期選択した変換候補の示す変換文字列が未確定表示される。」という記載から、
(なお、図5(2)には、変換候補が一覧表示ウィンドウに一覧表示されていることは、図示されている。)

引用例には、「前記IMEが、前記変換候補を一覧表示ウィンドウに並べて表示するステップ」が開示されていると認められる。


また、上記(d)の「前記入力予測部が、前記認識ステップで認識された文字から、予測される文字又は文字列の候補である予測データを、前記予測データベースから一つ以上抽出する入力予測ステップ」という開示、

引用例の上記(シ)の「またST1?10での仮名入力文字列の抽出過程において、入力予測部7は、文字が入力される毎に、ST2で抽出された仮名入力文字列を用いて前記予測データベース10を検索し、所定数の予測データが見つかると、これら予測データを予測結果表示部8へと受け渡す。予測結果表示部8は、抽出された予測データを一覧表示することを知らせるメッセージをOS1に送出することにより、モニタ画面上への予測データの一覧表示を実行する(ST3?5)。なお上記の手順によれば、IME2が新たな文字入力により仮名入力文字列を認識し直す都度、その最新の仮名入力文字列による予測データベース10の検索が行われるから、文字入力が進むにつれて予測データは絞り込まれることになる。またST5で複数の予測データを一覧表示する際には、各データは、それぞれの使用頻度や使用履歴に応じた順序で表示される。」という記載、

引用例の上記(ソ)の「図4および図5は、上記図3の手順が実行されている状態下でのモニタ表示の具体例を示す。図4は、「おむ」という仮名文字列の入力を受けて、予測処理機能により文字列を入力する例であって、図中、20は、アプリケーション3の表示ウィンドウを、21は文字列の入力行を、それぞれ示す。図4(1)は、前記ST5の手順が実行された時点での表示状態を示すもので、前記入力行21では、これまでに入力された仮名入力文字列が未確定表示された状態にある。また所定位置には、予測データの表示ウィンドウ22(以下「予測データウィンドウ22」という)が立ち上げられて、このウィンドウ22内に予測データベース10から抽出された予測データが一覧表示されている。」という記載から、

引用例には、「前記予測結果表示部が、前記予測データを予測データウィンドウに使用頻度や使用履歴に応じた順序で一覧表示する候補表示ステップ」が開示されていると認められる。


更に、引用例の上記(ツ)の「なお上記実施例では、IME2による変換候補の一覧表示が行われた段階で予測データの一覧表示を終了するようにしているが、これに限らず、変換操作の後も、予測データの一覧表示を続けて、変換候補,予測データの両方の選択を受け付けるようにしてもよい。ただしこの場合、各一覧表示のウィンドウ22,23は重ならない位置に設定するのが望ましい。」 という記載から、
(すなわち、先の「前記IMEが、前記変換候補を一覧表示ウィンドウに並べて表示するステップ」及び「前記予測結果表示部が、前記予測データを予測データウィンドウに使用頻度や使用履歴に応じた順序で一覧表示する候補表示ステップ」は同時に行われても良いことになる。)

引用例には、「前記IMEが、前記変換候補を一覧表示ウィンドウに並べて表示し、前記予測結果表示部が、前記予測データを予測データウィンドウに使用頻度や使用履歴に応じた順序で一覧表示する候補表示ステップ」が開示されていると認められる。


(f)
上記(b)の
「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIMEと、
文字を入力するための入力部とを具備し、
前記IMEが、前記入力部を通じて1文字ずつ入力された文字を認識する認識ステップ、
前記IMEが、前記認識ステップで認識した文字から、前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換処理ステップ」
という開示、

上記(e)の「前記IMEが、前記変換候補を一覧表示ウィンドウに並べて表示し、前記予測結果表示部が、前記予測データを予測データウィンドウに使用頻度や使用履歴に応じた順序で一覧表示する候補表示ステップ」という開示、

引用例の上記(カ)の「図2中、入力部16は、文字を入力するためのキーボードや、選択,確定操作を行うためのマウスなどにより構成され」るという記載、

引用例の上記(ス)の「ST5の予測候補の一覧表示に対し、ユーザの選択操作が行われると、OS1は、その選択内容を示すメッセージを作成して予測結果確定部9に送出する。予測結果確定部9は、そのメッセージにより前記選択された予測データを認識すると、その予測データを前記仮名入力文字列の変換文字列として確定する旨を知らせるメッセージを作成して、これをOS1に送出する(ST6,7)。OS1は、このメッセージを受けて、IME2に保持されている仮名入力文字列のデータおよびモニタ画像上の未確定表示をクリアした後、前記予測データによる文字列をアプリケーション3に出力し、アプリケーション3からの応答に応じてその表示ウィンドウ内の文字入力位置に、前記予測データによる文字列を表示する。」という記載、

引用例の上記(セ)の「なお抽出された仮名入力文字列により予測データが抽出されて表示されているにも関わらず、ユーザがいずれの予測データも選択せずに文字入力処理を進め、所定の時期に変換操作を行った場合は、予測結果表示部8は、IME2からOS1への変換候補を知らせるメッセージを確認して前記予測データの一覧表示を終了する(ST11?13)。そして以下のST14?16により、IME2が確定した文字列を抽出し、予測データの学習を行う。」 という記載、

引用例の上記(ツ)の「なお上記実施例では、IME2による変換候補の一覧表示が行われた段階で予測データの一覧表示を終了するようにしているが、これに限らず、変換操作の後も、予測データの一覧表示を続けて、変換候補,予測データの両方の選択を受け付けるようにしてもよい。ただしこの場合、各一覧表示のウィンドウ22,23は重ならない位置に設定するのが望ましい。」 という記載から、

引用例には、「ユーザの選択操作又は変換操作に応じて、前記候補表示ステップで表示された前記予測データと前記変換候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列を選択する選択ステップ」が開示されていると認められる。


(g)
上記(a)の「予測データ学習部、入力予測部、予測結果表示部、予測データベースを含む文字入力支援システム」という開示、

上記(f)の「ユーザの選択操作又は変換操作に応じて、前記候補表示ステップで表示された前記予測データと前記変換候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列を選択する選択ステップ」という開示、

引用例の上記(サ)の「所定数の仮名文字が入力された後に変換操作が行われると、IME2は、それまでに認識した仮名入力文字列についての変換候補を抽出し、その変換候補を知らせるメッセージをOS1に送出する。・・・(中略)・・・そして続くST16では、前記予測データ学習部6がこの確定文字列の抽出結果と前記仮名入力文字列の抽出結果とを取り込んで、予測データを作成し、予測データベース10内に記憶する。」という記載、

引用例の上記(ス)の「さらにST8では、予測データ学習部6により、前記変換前文字列抽出部4により抽出された仮名入力文字列と前記予測データの選択結果とを用いて、予測データの使用頻度や使用履歴の学習が行われる(ST8)。」という記載、

引用例の上記(ツ)の「なお上記実施例では、IME2による変換候補の一覧表示が行われた段階で予測データの一覧表示を終了するようにしているが、これに限らず、変換操作の後も、予測データの一覧表示を続けて、変換候補,予測データの両方の選択を受け付けるようにしてもよい。ただしこの場合、各一覧表示のウィンドウ22,23は重ならない位置に設定するのが望ましい。」 という記載から、

引用例には、「前記予測データ学習部が、前記選択ステップで選択された前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列が、前記変換候補である場合には、前記確定文字列の抽出結果と前記仮名入力文字列の抽出結果とを取り込んで、予測データを作成し、予測データベースに記憶する一方、前記選択ステップで選択された前記確定文字列が、前記予測データである場合には、前記仮名入力文字列と前記予測データの選択結果とを用いて、予測データの使用頻度や使用履歴の学習を行う学習ステップ」が開示されていると認められる。


(h)
引用例の上記(ア)の「この発明は、オペレーションシステムの管理下でワープロ,表計算などのアプリケーションプログラムによる情報処理を行う際に、文字入力システムとともに動いて実行中のアプリケーションへの文字入力処理を支援する方法、およびその方法を実施するためのプログラムが記録された記録媒体、ならびに入力支援機能付きの情報処理装置に関連する。」という記載、

引用例の上記(イ)の「ウィンドウズ(マイクロソフト株式会社の登録商標)のようなオペレーションシステム(以下「OS」と略す)が組み込まれたコンピュータでは、日本語の仮名漢字変換のように変換処理を伴う文字をアプリケーションに入力する場合、日本語入力システム(「Input Method Editor(インプット・メソッド・エディタ)/以下「IME」と略す)と称される文字入力用のプログラムを使用している。」という記載、

引用例の上記(エ)の「この発明は上記問題点に着目してなされたもので、ユーザの慣れ親しんだIMEを捨てる必要なしに入力予測機能を利用できるようにし、また使用するIMEを変更したり、2種類のIMEを切り替えて使用するような場合も、他のIMEでの学習結果を引き継いで入力予測を行うことができるようになすことを目的とする。」という記載、

引用例の上記(オ)の「図1は、この発明が適用された文書作成システムの概略構成を示す。」という記載から、

引用例には、「入力された文字の仮名漢字変換を行う文書作成システムにおける入力された文字の仮名漢字変換方法」が開示されていると認められる。


以上の引用例の記載によれば、引用例には下記の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「予測データ学習部、入力予測部、予測結果表示部、予測データベースを含む文字入力支援システムと、
入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIMEとを有すると共に、
文字を入力するための入力部と、少なくとも入力された文字を表示するモニタ表示画面と、を具備する入力された文字の仮名漢字変換を行う文書作成システムにおける入力された文字の仮名漢字変換方法であって、
前記IMEが、前記入力部を通じて1文字ずつ入力された文字を認識する認識ステップと、
前記認識ステップで入力された文字を前記モニタ表示画面の文字列の入力行に表示するステップと、
前記入力予測部が、前記認識ステップで認識された文字から、予測される文字又は文字列の候補である予測データを、前記予測データベースから一つ以上抽出する入力予測ステップと、
前記IMEが、前記認識ステップで認識した文字から、前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換処理ステップと、
前記IMEが、前記変換候補を一覧表示ウィンドウに並べて表示し、前記予測結果表示部が、前記予測データを予測データウィンドウに使用頻度や使用履歴に応じた順序で一覧表示する候補表示ステップと、
ユーザの選択操作又は変換操作に応じて、前記候補表示ステップで表示された前記予測データと前記変換候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列を選択する選択ステップと、
前記予測データ学習部が、前記選択ステップで選択された前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列が、前記変換候補である場合には、前記確定文字列の抽出結果と前記仮名入力文字列の抽出結果とを取り込んで、予測データを作成し、予測データベースに記憶する一方、前記選択ステップで選択された前記確定文字列が、前記予測データである場合には、前記仮名入力文字列と前記予測データの選択結果とを用いて、予測データの使用頻度や使用履歴の学習を行う学習ステップと、
を有することを特徴とする入力された文字の仮名漢字変換方法。」


5.先行例の認定

原査定の拒絶の理由の「先行技術文献調査結果の記録」の欄で提示された、特開2000-285112号公報(以下、「先行例」という)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

(ア)
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、予測入力装置及び予測入力方法並びに記録媒体に関するもので、より具体的には、文字入力装置において入力しようとする文字列を予測する技術に関する。」

(イ)
「 【0006】
本発明は、上記した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記した問題を解決し、文字入力装置を用いて文章を作成・入力するに際し、ユーザが入力しようとする文字列を予測するとともに、その予測した予測候補を出力表示し、選択された予測候補を作成文書中に挿入等するような入力支援システムにおいて、その入力予測の精度を向上させ、より効率の良い入力を実現することができる予測入力装置及び予測入力方法並びに記録媒体を提供することにある。」
(ウ)
「 【0033】
予測データ作成部14は、テキスト情報を形態素解析して名詞を抽出し、話題予測データを作成する機能と、確定文字列とその読み文字列とから、履歴予測データを作成する機能を有する。ここでまず各予測データについて説明すると、この予測データは、操作者が必要とする文字を予測するために使用するデータで、「読み」と「漢字」と「優先度」を関連付けたテーブルから構成される。そして、優先度は、値が小さい方が優先度が高いものとしている。さらに、予測データには、「基本予測データ」,「履歴予測データ」,「話題予測データ」の3種類がある。」

(エ)
「 【0034】
「基本予測データ」は、基本的な名詞からなる辞書であり、優先度は、一般的に使用される頻度を表す。つまり、かな漢字変換システムに用いられる辞書(学習辞書)等であり、頻度が高いものほど優先度の値は小さくなる。一例を示すと、図3のようになっている。そして、係る基本予測データは、基本予測データ記憶部19aに格納されている。なお、ここに記憶されるデータは、あらかじめ初期設定として登録したまま、つまり、かな漢字変換システムにおける辞書の初期値等と等価のものでもよいし、かな漢字変換システムにおける辞書の学習のように使用に伴い優先順位が変わるようにしてもよい。

(オ)
「 【0035】
「履歴予測データ」は、これまでに利用者が入力した名詞からなる辞書であり、優先度は、入力した時期が現在時間に近い方を高くしている。一例を示すと図4のようになっている。そして、ある時期における履歴予測データの内容が図4に示すようになっているとし、その次に「履歴」という確定文字列(読みは「りれき」)が入力された場合には、図5に示すように「りれき、履歴」が履歴予測データの先頭に追加されて優先度は1となり、それまで登録された各データの優先度は1ずつ加算された新たな履歴予測データが作成・更新される。そして、係る履歴予測データは、履歴予測データ記憶部19bに格納されている。」

(カ)
「 【0039】
また、履歴予測データを作成する機能は、かな漢字変換システムによって変換行が確定されるたびに処理される。そして具体的には、図7に示すフローチャートのようになっている。すなわち、文字情報入力部11は、かな漢字変換システムで変換行が確定された場合にその確定された変換行(確定文字列)を読み文字列とともに取得するので、文字情報入力部11から与えられた確定文字列とその読み文字列を取得する(ST1)。そして、その取得した最新の確定文字列に関する情報を履歴予測データの先頭に格納した新たな履歴予測データを作成する(ST2)。次いで、予測候補表示がされている場合(後述する)は、その表示を消去する(ST3)。」

(キ)
「 【0040】
一方、予測データ作成部14で作成した各予測データは、次段の予測処理部15に与えられる。実際には、履歴予測データ記憶部19b,話題予測データ記憶部19cに格納された各予測データを読み出すようになる。
【0041】
そして、この予測処理部15は、文字情報入力部11より与えられる現在入力中の文字列と、これまでの入力履歴から作成された履歴予測データ・話題予測データと、あらかじめ用意された基本予測データ(基準予測記憶部19aに格納)に基づいて、操作者Bが入力しようとしている文字の予測候補を決定し、その決定した予測候補を予測表示部17に送り、ディスプレイに出力表示するようになっている。」

(ク)
「 【0042】
そして、具体的には、図8に示すフローチャートのようになっている。なお、このフローチャートは、かな漢字変換システムの変換行の内容が変化するたびに処理される。
【0043】
まず、入力文字列を取得する(ST10)。これは、かな漢字変換システムから変換行の文字列を入力文字列として得るもので、具体的には、該当する入力文字列は、文字情報入力部11から与えられる。
【0044】
次いで、話題予測データを前方一致検索する(ST11)。つまり、取得した入力文字列をキーにして話題予測データ記憶部19c内の話題予測データをアクセスし、話題予測データの読みに対して入力文字列の前方一致検索を行う。そして、一致した予測データは、予測候補として優先度の高い順に予測候補リストに追加する。
【0045】
この話題予測データに対する検索をした結果、抽出された予測候補数が、あらかじめ設定した最大予測表示数以上になったか否かを判断し(ST12)、Yes(最大予測表示数以上)の場合にはステップ18に飛び、抽出した予測候補を表示する(ST18)。実際には、予測処理部15が予測候補リストから必要なデータを予測表示部17に送り、予測表示部17が出力表示することになる。
【0046】
一方、予測候補数が最大予測表示数より小さい場合は、ステップ13に進み履歴予測データ記憶部19bをアクセスし、ステップ11と同様に入力文字列をキーにして履歴予測データ記憶部19b内の履歴予測データをアクセスし、履歴予測データの読みに対して入力文字列の前方一致検索を行う。そして、一致した予測データは、予測候補として優先度順の高い順に予測候補リストに追加する。つまり、ステップ11で抽出し格納した予測候補リストの末尾に、今回抽出した予測データを予測候補として追加する。
【0047】
なお、このように履歴予測データを末尾に追加するため、話題予測データで一致した予測データ(予測候補)の優先度の方が、履歴予測データに基づいて抽出された予測データ(予測候補)の優先度よりも高いことを意味する。
【0048】
次いで、ステップ13を実行して得られた予測候補数(ステップ11とステップ13でそれぞれ抽出された予測候補数の総和)が最大予測表示数以上か否かを判断する(ST14)。そして、予測候補のテータの数が、最大予測表示数以上の場合は、ステップ18に飛び、それまで抽出された予測候補を表示する。
【0049】
一方、最大予測表示数より小さい場合は、ステップ15へ進み、基本予測データに対して前方一致検索を行う。つまり、入力文字列をキーに基本予測データ記憶部19aをアクセスし、基本予測データの読みに対して入力文字列の前方一致検索を行う。そして、一致した予測データは、優先度順の高い順に予測候補リストの末尾に追加する。つまり、基本予測データに基づく予測候補の優先度が、他の2つの予測データに基づく予測候補の優先度よりも低いように設定した。
【0050】
そして、係る処理を実行後、予測候補数が1以上であるか否かを判断する(ST16)。すなわち、予測候補のデータ数が1以上の場合は、少なくともいずれか1つの予測データで入力文字列と前方一致した予測候補が存在することになるので、ステップ18に進み予測候補の表示をする。」

(ケ)
「 【0053】
具体例をあげて説明すると、現在の基本予測データ,履歴予測データ並びに話題予測データが、それぞれ図3,図4,図6のようになっているとする。また、最大予測表示数を3とする。
【0054】
まず、「よそく」という文字列が入力された場合は、入力文字列として「よそく」が得られる(ST10)。これにしたがい、ステップ11を実行し、まず話題予測データの読みに対して「よそく」という文字列を前方一致検索する。その結果、「予測入力」が得られるので、これを予報候補リストに追加する(図9(a)参照)。仮に、話題予測データには該当するデータがこの「予測入力」の1つだけとすると、予測候補リストの予測候補数が1で最大予測表字数の3以上でないので(ST12)、ステップ13を実行し履歴予測データの読みに対して「よそく」という文字列を前方一致検索する。その結果、「予測候補」が得られる。これを予測候補リストの末尾に追加する。これにより、予測候補リストは図9(b)のように変更される。
【0055】
そして、履歴予測データには該当するデータがこの「予測候補」の1つだけとすると、現在の予測候補リストの予測候補数が2となり、最大予測表字数3以上でないので(ST14)、ステップ15を実行し基本予測データの読みに対して「よそく」という文字列を前方一致検索する。その結果、「予測」が得られる。これを予測候補リストの末尾に追加することにより、図9(c)に示すように変更される。
【0056】
すると、予測候補数が3になり、1以上であるので(ST16)、予測候補リスト順に予測候補を表示する(図10参照)。この時、予測候補リストに格納された予測候補数が最大予測表示数の3となっているので、全て表示することになる。
【0057】
一方、予測表示部17に表示された予測候補のうち、入力しようとしていた文字列があった場合、予測選択部16からの指示にしたがい、該当する予測候補を選択する。そして、予測候補出力部18は、かな漢字変換システムの変換行を選択された予測候補と置き換え、その変換行を確定する。なお、かな漢字変換システムを使わない場合は、エディタ上の入力中文字列を選択された予測候補と置き換える。」


以上の先行例の記載によれば、先行例には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
先行例の(ア)の「本発明は、予測入力装置及び予測入力方法並びに記録媒体に関するもので、より具体的には、文字入力装置において入力しようとする文字列を予測する技術に関する。」という記載から、

先行例には、「文字入力装置において入力しようとする文字列を予測する予測入力方法」が開示されていると認められる。


(b)
先行例の上記(エ)の「「基本予測データ」は、基本的な名詞からなる辞書であり、優先度は、一般的に使用される頻度を表す。」という記載から、

先行例には、「基本的な名詞からなる辞書である基本予測データ」が開示されていると認められる。

(c)
先行例の上記(オ)の「「履歴予測データ」は、これまでに利用者が入力した名詞からなる辞書であり、優先度は、入力した時期が現在時間に近い方を高くしている。」という記載、

先行例の上記(カ)の「また、履歴予測データを作成する機能は、かな漢字変換システムによって変換行が確定されるたびに処理される。そして具体的には、図7に示すフローチャートのようになっている。すなわち、文字情報入力部11は、かな漢字変換システムで変換行が確定された場合にその確定された変換行(確定文字列)を読み文字列とともに取得するので、文字情報入力部11から与えられた確定文字列とその読み文字列を取得する(ST1)。そして、その取得した最新の確定文字列に関する情報を履歴予測データの先頭に格納した新たな履歴予測データを作成する(ST2)。次いで、予測候補表示がされている場合(後述する)は、その表示を消去する(ST3)。」という記載から、

先行例には、「これまでに利用者がかな漢字変換システムによって入力した名詞からなる辞書である履歴予測データ」が開示されていると認められる。

(d)
先行例の上記(ク)の
「まず、入力文字列を取得する(ST10)。これは、かな漢字変換システムから変換行の文字列を入力文字列として得るもので、具体的には、該当する入力文字列は、文字情報入力部11から与えられる。・・・(中略)・・・この話題予測データに対する検索をした結果、抽出された予測候補数が、あらかじめ設定した最大予測表示数以上になったか否かを判断し(ST12)、Yes(最大予測表示数以上)の場合にはステップ18に飛び、抽出した予測候補を表示する(ST18)。実際には、予測処理部15が予測候補リストから必要なデータを予測表示部17に送り、予測表示部17が出力表示することになる。・・・(中略)・・・一方、予測候補数が最大予測表示数より小さい場合は、ステップ13に進み履歴予測データ記憶部19bをアクセスし、ステップ11と同様に入力文字列をキーにして履歴予測データ記憶部19b内の履歴予測データをアクセスし、履歴予測データの読みに対して入力文字列の前方一致検索を行う。そして、一致した予測データは、予測候補として優先度順の高い順に予測候補リストに追加する。つまり、ステップ11で抽出し格納した予測候補リストの末尾に、今回抽出した予測データを予測候補として追加する。・・・(中略)・・・次いで、ステップ13を実行して得られた予測候補数(ステップ11とステップ13でそれぞれ抽出された予測候補数の総和)が最大予測表示数以上か否かを判断する(ST14)。・・・(中略)・・・一方、最大予測表示数より小さい場合は、ステップ15へ進み、基本予測データに対して前方一致検索を行う。つまり、入力文字列をキーに基本予測データ記憶部19aをアクセスし、基本予測データの読みに対して入力文字列の前方一致検索を行う。そして、一致した予測データは、優先度順の高い順に予測候補リストの末尾に追加する。つまり、基本予測データに基づく予測候補の優先度が、他の2つの予測データに基づく予測候補の優先度よりも低いように設定した。」
という記載から、

先行例には、「基本予測データに基づく予測候補の優先度が、履歴予測データに基づく予測候補の優先度よりも低いように設定されている」ことが開示されていると認められる。


以上の先行例の記載によれば、先行例には下記の発明(以下、「先行例発明」という。)が開示されていると認められる。

「基本的な名詞からなる辞書である基本予測データと、
これまでに利用者がかな漢字変換システムによって入力した名詞からなる辞書である履歴予測データとを備え、
基本予測データに基づく予測候補の優先度が、履歴予測データに基づく予測候補の優先度よりも低いように設定されていることを特徴とする、
文字入力装置において入力しようとする文字列を予測する予測入力方法。」



6.対比

本願補正発明と引用例発明とを対比する。

(1)
引用例発明の
「・・・、入力予測部、・・・、予測データベースを含む文字入力支援システム」、及び、
「前記入力予測部が、前記認識ステップで認識された文字から、予測される文字又は文字列の候補である予測データを、前記予測データベースから一つ以上抽出する入力予測ステップ」と、

本願補正発明の
「入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーション」、
「予測候補抽出手段」、及び、
「前記予測候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記予測候補検索アプリケーションにより、予測される文字または文字列の候補である予測候補を前記予測候補検索用辞書から一つ以上抽出する予測候補抽出ステップ」とは、

「予測候補抽出手段」、及び、
「前記予測候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、予測される文字または文字列の候補である予測候補を前記予測候補検索用辞書から一つ以上抽出する予測候補抽出ステップ」を有する点で一致し、

本願補正発明では、「入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーション」を備えることによって「前記予測候補検索アプリケーションにより」予測候補を抽出するのに対し、
引用例発明では、「文字入力支援システム」が「予測候補検索アプリケーション」を備えているのか否か不明であり、そのため、「前記予測候補検索アプリケーションにより」予測候補を抽出するか否かも不明である点、

で相違する。


(2)
引用例発明の
「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIMEと、
文字を入力するための入力部とを具備し、
前記IMEが、前記入力部を通じて1文字ずつ入力された文字を認識する認識ステップ、
前記IMEが、前記認識ステップで認識した文字から、前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換処理ステップ」と、

本願補正発明の
「入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーション」、
「文字を入力する入力手段」、
「入力文字受付手段」、
「変換候補抽出手段」、
「前記入力文字受付手段が、前記入力手段を通じて1文字ずつ入力された文字を受け付ける入力文字受付ステップ」、及び、
「前記変換候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する変換候補抽出ステップ」とは、

「文字を入力する入力手段」、
「前記入力手段を通じて1文字ずつ入力された文字を受け付ける入力文字受付ステップ」、及び、
「前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、変換候補を抽出する変換候補抽出ステップ」を有する点で一致し、

・本願補正発明では、「入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーション」を備えることによって「前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する」のに対し、
引用例発明では、IMEが「それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能」を備えることによって「前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する」点、

・本願補正発明では、「入力文字受付手段」が「入力文字受付ステップ」を実行し、「変換候補抽出手段」が「変換候補抽出ステップ」を実行しているのに対し、
引用例発明では、「IME」が「入力文字受付ステップ」及び「変換候補抽出ステップ」を実行している点、

で相違する。


(3)
引用例発明の
「少なくとも入力された文字を表示するモニタ表示画面」及び、
「前記認識ステップで入力された文字を前記モニタ表示画面の文字列の入力行に表示するステップ」と、

本願補正発明の
「少なくとも入力された文字を表示する表示画面」、
「入力文字表示手段」、及び、
「前記入力文字表示手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字を前記表示画面の所定位置に表示する入力文字表示ステップ」とは、

「少なくとも入力された文字を表示する表示画面」、及び、
「前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字を前記表示画面の所定位置に表示する入力文字表示ステップ」を有する点で一致し、

本願補正発明では、「入力文字表示手段」が「入力文字表示ステップ」を実行するのに対し、
引用例発明では、何が「入力文字表示ステップ」を実行するのか不明である点、

で相違する。


(4)
引用例発明の
「・・・、予測結果表示部、・・・を含む文字入力支援システム」、及び、
「前記IMEが、前記変換候補を一覧表示ウィンドウに並べて表示し、前記予測結果表示部が、前記予測データを予測データウィンドウに使用頻度や使用履歴に応じた順序で一覧表示する候補表示ステップ」と、

本願補正発明の
「候補文字表示手段」、及び、
「前記候補文字表示手段が、前記予測候補と前記変換候補とを出力候補として前記表示画面の所定位置に並べて表示する候補文字表示ステップ」とは、
「前記予測候補と前記変換候補とを出力候補として前記表示画面の所定位置に並べて表示する候補文字表示ステップ」を有する点で一致し、

本願補正発明では、「候補文字表示手段」が予測候補と変換候補の「両方」を表示するのに対し、
引用例発明では、「IME」が変換候補を表示し、「予測結果表示部」が予測候補を表示する点、

で相違する。


(5)
引用例発明の「ユーザの選択操作又は変換操作に応じて、前記候補表示ステップで表示された前記予測データと前記変換候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列を選択する選択ステップ」と、

本願補正発明の「使用者による選択指示に応じて、選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補を選択する選択ステップ」とは、

「使用者による選択指示に応じて、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補を選択する選択ステップ」を有する点で一致し、

本願補正発明では、「選択手段」が「選択ステップ」を実行しているのに対し、
引用例発明では、何が「選択ステップ」を実行しているのか不明である点、

で相違する。


(6)
引用例発明の
「予測データ学習部、・・・、予測データベースを含む文字入力支援システム」、及び、
「前記予測データ学習部が、前記選択ステップで選択された前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列が、前記変換候補である場合には、前記確定文字列の抽出結果と前記仮名入力文字列の抽出結果とを取り込んで、予測データを作成し、予測データベースに記憶する一方、前記選択ステップで選択された前記確定文字列が、前記予測データである場合には、前記仮名入力文字列と前記予測データの選択結果とを用いて、予測データの使用頻度や使用履歴の学習を行う学習ステップ」と、

本願補正発明の
「登録手段」、及び、
「前記登録手段が、前記選択ステップで選択された前記確定出力候補が、前記変換候補であるか否か判別し、前記変換候補であると判別したときには、前記確定出力候補として選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録して、前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする登録ステップ」とは、

「前記登録手段が、前記選択ステップで選択された前記確定出力候補が、前記変換候補であるか否か判別し、前記変換候補であると判別したときには、前記確定出力候補として選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書に登録する登録ステップ」を有する点で一致し、

本願補正発明では、確定出力候補として選択された文字または文字列を「前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録」することにより「前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする」のに対し、
引用例発明では、そのような開示がない点、

で相違する。


(7)
引用例発明の「入力された文字の仮名漢字変換を行う文書作成システムにおける入力された文字の仮名漢字変換方法」は、

本願補正発明の「入力文字情報変換装置における入力文字情報変換方法」に相当する。


(8)
したがって、本願補正発明と引用例発明とは、

「文字を入力する入力手段と、少なくとも入力された文字を表示する表示画面と、予測候補抽出手段と、登録手段と、を具備する入力文字情報変換装置における入力文字情報変換方法であって、
前記入力手段を通じて1文字ずつ入力された文字を受け付ける入力文字受付ステップと、
前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字を前記表示画面の所定位置に表示する入力文字表示ステップと、
前記予測候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、予測される文字または文字列の候補である予測候補を前記予測候補検索用辞書から一つ以上抽出する予測候補抽出ステップと、
前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、変換候補を抽出する変換候補抽出ステップと、
前記予測候補と前記変換候補とを出力候補として前記表示画面の所定位置に並べて表示する候補文字表示ステップと、
使用者による選択指示に応じて、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定出力候補を選択する選択ステップと、
前記登録手段が、前記選択ステップで選択された前記確定出力候補が、前記変換候補であるか否か判別し、前記変換候補であると判別したときには、前記確定出力候補として選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書に登録する登録ステップと、
を有することを特徴とする入力文字情報変換方法。」

という点で一致し、

(相違点1)
本願補正発明では、「入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーション」を備えることによって「前記予測候補検索アプリケーションにより」予測候補を抽出するのに対し、
引用例発明では、「文字入力支援システム」が「予測候補検索アプリケーション」を備えているのか否か不明であり、そのため、「前記予測候補検索アプリケーションにより」予測候補を抽出するか否かも不明である点、

(相違点2)
本願補正発明では、「入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーション」を備えることによって「前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する」のに対し、
引用例発明では、IMEが「それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能」を備えることによって「前記仮名漢字変換機能により、前記仮名や漢字の変換候補を抽出する」点、

(相違点3)
本願補正発明では、「入力文字受付手段」が「入力文字受付ステップ」を実行し、「変換候補抽出手段」が「変換候補抽出ステップ」を実行しているのに対し、
引用例発明では、「IME」が「入力文字受付ステップ」及び「変換候補抽出ステップ」を実行している点、

(相違点4)
本願補正発明では、「入力文字表示手段」が「入力文字表示ステップ」を実行するのに対し、
引用例発明では、何が「入力文字表示ステップ」を実行するのか不明である点、

(相違点5)
本願補正発明では、「候補文字表示手段」が予測候補と変換候補の「両方」を表示するのに対し、
引用例発明では、「IME」が変換候補を表示し、「予測結果表示部」が予測候補を表示する点、

(相違点6)
本願補正発明では、「選択手段」が「選択ステップ」を実行しているのに対し、
引用例発明では、何が「選択ステップ」を実行しているのか不明である点、

(相違点7)
本願補正発明では、確定出力候補として選択された文字または文字列を「前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録」することにより「前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする」のに対し、
引用例発明では、そのような開示がない点、

で相違する。



7.相違点に対する判断

(1)相違点1について

引用例発明の「文字入力支援システム」は、

予測データ学習部,入力予測部,予測結果表示部、予測データベースを含むものであって、

「前記入力予測部が、前記認識ステップで認識された文字から、予測される文字又は文字列の候補である予測データを、前記予測データベースから一つ以上抽出する入力予測ステップ」

「・・・、前記予測結果表示部が、前記予測データを予測データウィンドウに使用頻度や使用履歴に応じた順序で一覧表示する候補表示ステップ」

「前記予測データ学習部が、前記選択ステップで選択された前記入力された文字に対応する文字または文字列の確定文字列が、前記変換候補である場合には、前記確定文字列の抽出結果と前記仮名入力文字列の抽出結果とを取り込んで、予測データを作成し、予測データベースに記憶する一方、前記選択ステップで選択された前記確定文字列が、前記予測データである場合には、前記仮名入力文字列と前記予測データの選択結果とを用いて、予測データの使用頻度や使用履歴の学習を行う学習ステップ」

を有するものであるから、
「入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能」を備えていることは明らかである。

また、各種機能をアプリケーションという形式で実装することは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
「入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーション」を備えることによって「前記予測候補検索アプリケーションにより」予測候補を抽出するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

引用例には、IMEが仮名漢字変換用辞書を備えることは明記されていないものの、IMEが仮名漢字変換用辞書を備える必要があることは、情報処理分野における周知技術である。

また、各種機能をアプリケーションという形式で実装することは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、
「それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能」を「入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーション」として実装すること、及び「前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する」ことは、当業者が容易に想到し得ることである。


(3)相違点3について

引用例発明は
「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能と、それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能とを備えるIME」を備えている。

そして、情報処理装置に対してある機能を実装する場合、当該機能毎にそれぞれ手段を設けることは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明の「IME」に関して、「入力された仮名文字を1文字ずつ認識しつつ仮名入力文字列を認識する認識機能」及び「それまでに認識した仮名入力文字列を文節または単語毎に切り出して仮名や漢字の変換候補を抽出する仮名漢字変換機能」に対して、それぞれ、「入力文字受付手段」及び「変換候補抽出手段」という名称の手段を割り当てることにより、
引用例発明において、「入力文字受付手段」が「入力文字受付ステップ」を実行し、「変換候補抽出手段」が「変換候補抽出ステップ」を実行するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(4)相違点4について

情報処理装置があるステップを実行する場合、当該ステップを実行するための手段を設けることは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、「入力文字表示ステップ」を実行するための「入力文字表示手段」を設けるように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(5)相違点5について

引用例発明では、変換候補及び予測候補を表示してはいるものの、変換候補を表示する手段と、予測候補を表示する手段とが異なる。

一方、出力手段というひとつの手段が、予測候補と変換候補とを並べて表示することは、情報処理分野における周知技術(例えば、拒絶査定の備考の欄で提示された、特開平10-222504号公報(特に、特許請求の範囲第3項、段落【0053】乃至【0054】)を参照)である。

しかも、特定の機能毎に手段を設ける実装方法を採用したり、特定の機能を複数纏めてひとつの手段とする実装方法を採用したりすること、及び、複数の手段をひとまとまりの手段として呼称することは、情報処理分野における常套手段である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術及び常套手段を適用することによって、
変換候補を表示する手段と予測候補を表示する手段とをひとつの手段(例えば、候補文字表示手段という名称の手段)に纏める、
又は、変換候補を表示する手段と予測候補を表示する手段とひとまとまりの手段として呼称(例えば、候補文字表示手段という名称で呼称)することによって、
「候補文字表示手段」が予測候補と変換候補の「両方」を表示するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(6)相違点6について

情報処理装置があるステップを実行する場合、当該ステップを実行するための手段を設けることは、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、当該周知技術を適用することによって、「選択ステップ」を実行するための「選択手段」を設けるように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(7)相違点7について

入力予測の精度を向上させ、より効率の良い入力を実現することに関する、先行例発明には、
「基本的な名詞からなる辞書である基本予測データと、
これまでに利用者がかな漢字変換システムによって入力した名詞からなる辞書である履歴予測データとを備え、
基本予測データに基づく予測候補の優先度が、履歴予測データに基づく予測候補の優先度よりも低いように設定されていることを特徴とする、
文字入力装置において入力しようとする文字列を予測する予測入力方法。」
が開示されている。

そして、先行例発明の「基本予測データ」、「履歴予測データ」、「基本予測データに基づく予測候補の優先度が、履歴予測データに基づく予測候補の優先度よりも低いように設定されていること」は、それぞれ、
本願補正発明の(予測候補検索用辞書のメモリエリアの)「デフォルト領域」、(予測候補検索用辞書のメモリエリアの)「追加登録領域」、(予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域の予測候補が)「予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする」ことに相当する。

したがって、引用例発明において、入力予測の精度を向上させ、より効率の良い入力を実現することを更に改善すべく、先行例発明を適用し、
「予測データベース」の記憶領域(メモリエリア)を「デフォルト領域」と「追加登録領域」とに分割した上で、
確定出力候補として選択された文字または文字列を「前記予測候補検索用辞書のメモリエリアの追加登録領域に登録」することにより「前記変換候補抽出手段が前記予測候補として、前記予測候補検索用辞書のメモリエリアのデフォルト領域の予測候補よりも上位の優先順位で用いられるようにする」ことは、当業者が容易に想到し得ることである。



8.むすび

つまり、本願補正発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

参考:平成19年(行ケ)第10056号審決取消請求事件
「第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(手続違反)について
・・・(中略)・・・
(2) 審決は,審判請求時にされた本件補正について,特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきであるとするところ,本件補正について,これらの条文を適用することに誤りはないし,かつ,補正を却下するに当たり,却下の理由を事前に通知することが必要であるとの規定はないのであるから,審決に原告主張の違法な点はない。」
(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071106165655.pdf)




第3 本願発明について

1.本願発明

平成18年12月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年8月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲第1項に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
入力された少なくとも1個の文字から予測される文字または文字列の候補である予測候補を、予測候補検索用辞書から一つ以上抽出し、学習機能に基づいて優先順に並べて使用者に提示する機能を備える予測候補検索アプリケーションと、入力された文字を、仮名漢字変換用辞書を用いて変換する機能を備える仮名漢字変換アプリケーションとを有すると共に、文字を入力する入力手段と、少なくとも入力された文字を表示する表示画面と、入力文字受付手段と、入力文字表示手段と、予測候補抽出手段と、変換候補抽出手段と、候補文字表示手段と、登録手段とを具備する入力文字情報変換装置における入力文字情報変換方法であって、
前記入力文字受付手段が、前記入力手段を通じて1文字ずつ入力された文字を受け付ける入力文字受付ステップと、
前記入力文字表示手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字を前記表示画面の所定位置に表示する入力文字表示ステップと、
前記予測候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記予測候補検索アプリケーションにより、予測される文字または文字列の候補である予測候補を前記予測候補検索用辞書から一つ以上抽出する予測候補抽出ステップと、
前記変換候補抽出手段が、前記入力文字受付ステップで受け付けられた文字から、前記仮名漢字変換アプリケーションにより、前記仮名漢字変換用辞書を用いて変換候補を抽出する変換候補抽出ステップと、
前記候補文字表示手段が、前記予測候補と前記変換候補とを出力候補として前記表示画面の所定位置に並べて表示する候補文字表示ステップと、
使用者による選択指示に応じて、選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列を選択する選択ステップと、
前記登録手段が、前記選択ステップで、前記出力候補の中から、前記変換候補の一つが、前記入力された文字に対応する文字または文字列として選択されたときは、前記選択された文字または文字列を、前記予測候補検索用辞書に登録して前記予測候補として用いられるようにする登録ステップと、
を有することを特徴とする入力文字情報変換方法。」

ただし、特許請求の範囲第1項の「使用者による選択指示に応じて、前記選択手段が、前記候補文字表示ステップで表示された前記出力候補の中から、前記入力された文字に対応する文字または文字列を選択する選択ステップ」に関して「選択手段」は前記されておらず、「前記選択手段」は「選択手段」の誤記であることは明らかであるから、上記の如く認定した。



2.引用例の認定

原査定の拒絶の理由で引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2 〔理由〕4.引用例の認定」に記載したとおりである。



3.対比及び判断

本願発明は、上記「第2 〔理由〕3.本願補正発明の認定」の欄で認定した本願補正発明から、上記「第2 〔理由〕1.補正内容」の欄に記載した本件補正事項1及び本件補正事項2による減縮を解除したものに相当し、本願補正発明を減縮したものではないから、本願発明と引用例発明との間には、上記「第2 〔理由〕6.(8)」の欄で抽出した本願補正発明と引用例発明との間の相違点(相違点1乃至7)以外の相違点はないといえる。

一方、上記「第2 〔理由〕6.(8)」の欄で抽出した本願補正発明と引用例発明との間の相違点7は、本件補正事項2による減縮によって生じた相違点であり、本願発明と引用例発明との間には、当該相違点7は存在しない。

そして、引用例発明との間に当該相違点7が存在しない本願発明の進歩性が、先行例発明を持ち出すまでもなく、引用例発明と周知技術から否定されることは、上記「第2 〔理由〕7.相違点に対する判断」の欄での検討内容から明らかである。
以上によれば、本願発明は、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえる。



4.むすび

したがって、本願発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって結論の通り審決する。
 
審理終結日 2009-01-30 
結審通知日 2009-02-04 
審決日 2009-02-17 
出願番号 特願2002-13722(P2002-13722)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浜岸 広明佐藤 匡  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 小曳 満昭
和田 財太
発明の名称 入力文字情報変換方法、入力文字情報変換装置、モニタ装置、プログラムおよび記憶媒体  
代理人 佐藤 正美  

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