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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1195052
審判番号 不服2008-4739  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-28 
確定日 2009-04-03 
事件の表示 特願2001-339176「レンズアレイ、レンズアレイユニット、および光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月14日出願公開、特開2003-139911〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成13年11月5日に出願された特願2001-339176号であって、平成19年8月22日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月26日付けで手続補正がなされ、これに対して、平成20年1月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年2月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同年3月28日付けで手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定

[結論]

平成20年3月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成20年3月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、補正前(平成19年10月26日付け手続補正書参照)に

「【請求項1】 第1および第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズと、これらを繋ぐホルダ部とを備えている、レンズアレイであって、
上記各凸レンズは、それらの第1のレンズ面が物体から光を受けたときにこの物体の倒立像を結像可能である一方、第2のレンズ面が上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能であるとともに、上記第2のレンズ面は、上記第1のレンズ面よりも大径とされており、かつ、
上記ホルダ部と上記複数の凸レンズとは、透光性を有する樹脂によって一体成形されていることを特徴とする、レンズアレイ。
【請求項2】 上記複数の凸レンズは、一定方向に間隔を隔てて1列または複数列に並んでいる、請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】 上記複数の凸レンズは、千鳥配列とされている、請求項2に記載のレンズアレイ。
【請求項4】 上記複数の凸レンズがマトリクス状に配列された面状レンズアレイとして構成されている、請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズアレイと、
複数の貫通孔を有し、かつこれら複数の貫通孔が上記各第1のレンズ面の正面に配置されるようにして上記レンズアレイに重ね合わされている遮光部材と、
を備えていることを特徴とする、レンズアレイユニット。
【請求項6】 上記遮光部材は、少なくとも上記各貫通孔の内壁面が黒色またはそれに近い暗色とされたものである、請求項5に記載のレンズアレイユニット。
【請求項7】 上記レンズアレイの各第1のレンズ面は、上記遮光部材の各貫通孔の一端開口部よりも大径であり、かつその一端開口部内に一部進入している、請求項5または6に記載のレンズアレイユニット。
【請求項8】 上記遮光部材は、少なくとも上記レンズアレイの各凸レンズが並ぶ方向に伸縮性を有している、請求項5ないし7のいずれかに記載のレンズアレイユニット。
【請求項9】 上記レンズアレイおよび上記遮光部材には、互いに嵌合する少なくとも一対の凹部と凸部とが設けられている、請求項5ないし8のいずれかに記載のレンズアレイユニット。
【請求項10】 上記レンズアレイおよび上記遮光部材のいずれか一方は、枠部を有しており、かつこの枠部内に他方が嵌入して保持されている、請求項5ないし9のいずれかに記載のレンズアレイユニット。
【請求項11】 請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズアレイ、または請求項5ないし10のいずれかに記載のレンズアレイユニットを具備していることを特徴とする、光学装置。」

とあったものを、

「【請求項1】 光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズと、これらを繋ぐホルダ部とを備えている、レンズアレイであって、
上記各凸レンズは、それらの第1のレンズ面が物体から光の入射を受けたときにこの物体の倒立像を第2のレンズ面までの間に結像可能である一方、第2のレンズ面から出射する光により上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能であるとともに、上記第2のレンズ面は、上記第1のレンズ面よりも大径とされており、かつ、
上記ホルダ部と上記複数の凸レンズとは、透光性を有する樹脂によって一体成形されていることを特徴とする、レンズアレイ。
【請求項2】 上記複数の凸レンズは、一定方向に間隔を隔てて1列または複数列に並んでいる、請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】 上記複数の凸レンズは、千鳥配列とされている、請求項2に記載のレンズアレイ。
【請求項4】 上記複数の凸レンズがマトリクス状に配列された面状レンズアレイとして構成されている、請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズアレイと、
複数の貫通孔を有し、かつこれら複数の貫通孔が上記各第1のレンズ面の正面に配置されるようにして上記レンズアレイに重ね合わされている遮光部材と、
を備えていることを特徴とする、レンズアレイユニット。
【請求項6】 上記遮光部材は、少なくとも上記各貫通孔の内壁面が黒色またはそれに近い暗色とされたものである、請求項5に記載のレンズアレイユニット。
【請求項7】 上記レンズアレイの各第1のレンズ面は、上記遮光部材の各貫通孔の一端開口部よりも大径であり、かつその一端開口部内に一部進入している、請求項5または6に記載のレンズアレイユニット。
【請求項8】 上記遮光部材は、少なくとも上記レンズアレイの各凸レンズが並ぶ方向に伸縮性を有している、請求項5ないし7のいずれかに記載のレンズアレイユニット。
【請求項9】 上記レンズアレイおよび上記遮光部材には、互いに嵌合する少なくとも一対の凹部と凸部とが設けられている、請求項5ないし8のいずれかに記載のレンズアレイユニット。
【請求項10】 上記レンズアレイおよび上記遮光部材のいずれか一方は、枠部を有しており、かつこの枠部内に他方が嵌入して保持されている、請求項5ないし9のいずれかに記載のレンズアレイユニット。
【請求項11】 請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズアレイ、または請求項5ないし10のいずれかに記載のレンズアレイユニットを具備しており、各凸レンズの入射側に位置する物体の正立等倍像を、各凸レンズの出射側において結像させることを特徴とする、光学装置。」

と補正するものであるところ、その内容は、次の補正事項1ないし4のとおりである。

(1)補正事項1
請求項1において、「第1および第2のレンズ面」を「光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面」とする補正。

(2)補正事項2
請求項1において、「第1のレンズ面が物体から光を受けたときに」を「第1のレンズ面が物体から光の入射を受けたときに」とする補正。

(3)補正事項3
請求項1において「物体の倒立像を結像可能である」を「物体の倒立像を第2のレンズ面までの間に結像可能である」とする補正。

(4)補正事項4
請求項1において「第2のレンズ面が上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能である」を「第2のレンズ面から出射する光により上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能である」とする補正。

2.補正の要件について
補正事項1は、「第1のレンズ面」について「光入射側」という限定を付し、「第2のレンズ面」について「光出射側」という限定を付すものであるから、いわゆる限定的減縮を目的とする補正に該当する。補正事項2は、「光」について「光の入射」と限定したものであるから、いわゆる限定的減縮を目的とする補正に該当する。補正事項3は、「物体の倒立像」の結像位置について「第2のレンズ面までの間」と限定したものであるから、いわゆる限定的減縮を目的とする補正に該当する。補正事項4は、「第2のレンズ面が上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能である」という事項について「第2のレンズ面から出射する光により」結像可能であると限定したものであるから、いわゆる限定的減縮を目的とする補正に該当する。よって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものである。

3.独立特許要件について
本件補正は平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げるいわゆる限定的減縮を目的とするものに該当するものであるから、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)について以下に検討する。

(1)引用例
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-214305号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「【請求項1】 平行平面の透明基板の片側の表面の直線上に等しい微小凸集光曲面がそれぞれ薄いベース層で繋がれた状態で等間隔に配し、反対側の表面の直線上にもこれと等しい微小凸集光曲面がそれぞれ薄いベース層で繋がれた状態で等間隔に配され、透明基板の表裏の微小凸集光曲面がそれぞれ光軸を共有するレンズアレイにおいて正立等倍の実像を得るために物体よりの発散光が物体側の微小凸集光曲面により基板厚みのほぼ1/2の距離に縮小結合され、その像を物体側と対称に配された像側に凸なる微小凸集光曲面により拡大再結像する構成において物体側より順に
r_(i ):球面の曲率半径または非球面の頂点曲率半径
d_(i ):光軸上の厚みまたは空気間隔
n_(i ):材質の屈折率
とし、
r_(3 ):物体側凸集光曲面の曲率半径または非球面の頂点曲率半径
d_(3 ):物体側凸集光曲面層の軸上厚み
n_(2 ):物体側凸集光曲面層の材質の屈折率
d_(4 ):基板の1/2厚み
n_(3 ):基板の材質の屈折率
において、
1.14<{(d_(3 )n_(3 )+d_(4 )n_(2 ) )・(n_(2 )-1)}/r_(3) n_(2 ) n_(3) <1.55
……(1)
なる条件を満足することを特徴とする正立実像の小型レンズアレイ。
・・・
【請求項7】 請求項1記載の構成において、物体側凸集光曲面層の材質の屈折率n_(2 ) と基板の材質の屈折率n_(3 ) が等しく、その材質がプラスチックの場合は射出成形法で、材質がガラスの場合はプレス成形法により一体成形ができることを特徴とする正立実像の小型レンズアレイ。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は複写機,ファクシミリ,イメージスキャナなどの原稿読み取りに好適な正立実像の小型レンズアレイに関する。」

(c)「【0011】
【実施例】次に本発明による正立実像の小型レンズアレイの実施例1から10までを第1表から第10表に示す。図2は、物体である原稿は厚さd_(1 )の原稿押さえ板に密着しており、空気間隔を隔てて透明基板の物体側および像側にそれぞれ凸集光曲面層を接着したレンズアレイの1つを示しており、物体の物体側凸集光曲面層による第1像は基板厚みのほぼ1/2の位置に倍率m_(1) で縮小結像し、その像を像側の凸集光曲面層で倍率m_(2) で拡大結像する。総合倍率M=m_(1 )×m_(2)である。物体側より順に平面または球面の曲率半径または非球面の頂点曲率半径をr_(i ) ,軸上の厚みまたは空気間隔をd_(i ),材質のe線に対する屈折率をn_(i ),アッベ数をν_(i )とし、非球面の形状の式は、
X:非球面上の点のレンズ面頂点における接平面からの距離
h:光軸からの高さ
C:非球面頂点の曲率(C=1/r)
K:円錐定数
A_(2i):非球面係数
とするとき、
【0012】
【数1】

で表される。なお、各実施例において、全系の焦点距離はf,有効
FナンバーはEF_(NO),物体高はy,再結像の像高はy’で示し、物像間距離も記す。」

(d)「【0019】
【表7】

【0020】
【表8】



(e)上記(d)の記載から、基板厚みのほぼ1/2の位置に倍率m_(1)で縮小結像する際に、前記倍率がm_(1)<0であること、すなわち、基板厚みのほぼ1/2の位置に物体の倒立像を結像することが読み取れる。

(f)上記(d)の記載から、物体側凸集光曲面層の材質の屈折率n_(2)、透明基板の材質の屈折率n_(3) およびn_(4 )並びに像側凸集光曲面層の材質の屈折率n_(5)が等しいことが読み取れる。

上記記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「平行平面の透明基板の片側の表面の直線上に等しい微小凸集光曲面がそれぞれ薄いベース層で繋がれた状態で等間隔に配し、反対側の表面の直線上にもこれと等しい微小凸集光曲面がそれぞれ薄いベース層で繋がれた状態で等間隔に配され、物体側凸集光曲面層の材質の屈折率n_(2) と透明基板の材質の屈折率n_(3)が等しく、その材質がプラスチックであって射出成形法で一体成形され、透明基板の表裏の微小凸集光曲面がそれぞれ光軸を共有するレンズアレイにおいて正立等倍の実像を得るために物体よりの発散光が物体側の微小凸集光曲面により基板厚みのほぼ1/2の距離に物体の倒立像が縮小結合され、その像を物体側と対称に配された像側に凸なる微小凸集光曲面により拡大再結像する構成である正立実像の小型レンズアレイ」

(イ)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-229201号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「特許請求の範囲
1.等間隔に並置されそれぞれの光軸が平行な複数のレンズが一体に成形されたプラスチックからなるレンズ・アレイにおいて、相隣るレンズ間に上記レンズ成形と同時に形成されていて、レンズに入射した光線が、このレンズに隣るレンズへ入射するのを防止する光透過防止用空隙部を設けたレンズ・アレイ。」(公報第1頁左下欄第5?11行参照)

(b)「(産業上の利用分野)
本発明は複写装置や画像形成装置の光学系に好適なレンズ・アレイに関する。」(公報第1頁右下欄第1?3行参照)

(c)「(構 成)
以下、図示の実施例により詳細に説明する。第1図においてレンズ・アレイ20は、フレーム21と一列に並置された複数のレンズ22a、22b、22c、・・・が、合成樹脂を用い射出成形法により一体成形されてなっている。そして、相隣るレンズ間には、適宜間隙wを有する光透過防止用空隙部13a、13b、・・・が穿設されている。これらの空隙部13a、13b、・・・はいずれも断面長方形を有する透孔を形成しており、相隣るレンズに対する面は好ましくは粗面に形成される。第2図は本実施例の断面図であり、レンズ23aに入射した光線lが空隙部の粗面に形成された壁面24により隣接23bへ向けて入射するのが防止されることを示している。空隙部側面に黒色塗料などの光透過防止膜を付着させることでも好ましい効果が期待できる。第3図は本発明の変形実施例を示しており、この場合は前記各空隙部に不透光性の板すなわち遮光板25を挿着したものである。この遮光板25の一端をルーフ・ミラー1へ近接するまでに延ばすことにより、ルーフ・ミラー1により反射した光線が入射レンズに隣接するレンズへ入射することを効果的に防止することができる。第4図は本発明の更なる他の実施例を示しており、この場合、光透過防止用の空隙部27は長方形断面の不透孔に形成されている。図で良く示すように空隙部27の底面は粗面に仕上げられており、ルーフ・ミラー1の稜線部とレンズ・アレイの空隙部27の反対側面との間に遮光板3を介装させられている。レンズ最外周が空隙部27により規制されそのため入射光がそのレンズにより出射される場合、遮光板3によって阻止させられることでゴーストの発生が防げるようになっている。第5図は前記不透孔形に空隙部が、レンズ・アレイ30の両面に空隙部31a、31bとしてそれぞれ穿設されている例を示している。」(公報第2頁右上欄第5行?左下欄欄第18行参照)

(d)第5図より、両面に凸レンズ面を有し、相隣るレンズが連結していることが見て取れる。

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-265842号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「2.特許請求の範囲
(1)ガス放電表示パネルの放電セル配列パターンと対応するパターンを有するレジスト層を透明基板上に形成し、上記レジスト層をマスクとして上記透明基板をエッチングした後、該透明基板の表面を研磨して、上記放電セル対応部分に集光レンズを形成することを特徴とするガス放電表示パネル用集光レンズ板の製造方法。
(2)透明基板の両面にそれぞれ集光レンズを形成することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のガス放電表示パネル用集光レンズ板の製造方法。
・・・
(4)透明基板の両面にそれぞれ形成する集光レンズの焦点距離を互いに異ならせたことを特徴とする特許請求の範囲第2項に記載のガス放電表示パネル用集光レンズ板の製造方法。」(公報第1頁左下欄第5行?右下欄第4行参照)

(b)「[産業上の利用分野]
本発明は、ガス放電表示パネルの表示輝度を向上させるために、パネル内へ組み込んで使用する集光レンズ板の製造方法に係り、特に、透明基板をエツチングすることによって、放電セル対応部分に集光レンズを形成したガス放電表示パネル用集光レンズ板の製造方法に関する。」(公報第1頁右下欄第17行?公報第2頁左下欄第3行参照)

(c)「[実施例2]
第3図は、本発明の他の実施例を示すもので、透明基板2の上面と下面とにそれぞれ形成する集光レンズ5a、5bの直径を異なる寸法として、その焦点距離を互いに異ならせたものである。
本実施例に於いては、第3図(A)に示す如く、まず透明基板2の上面に大きなドット径のレジスト層3aを、下面に小さなドット径のレジスト層3bをマトリクス状に形成し、これに化学エッチングを施して、第3図(B)に示す如く、上記透明基板2の上下両面にそれぞれ大径の突起4a及び小径の突起4bを形成する。次いで、透明基板2に形成されたレジスト層3a、3bを除去した後、化学研磨して突起4a、4bの角とり及び透明化を行い、上記基板2の上面に大径の凸形集光レンズ5a、下面に小径の凸形集光レンズ5bを形成する。」(公報第3頁右上欄第17行?左下欄欄第13行参照)

(d)第1図より、透明基板の両面に集光レンズをマトリクス状に配列した構造、すなわち、レンズアレイが見て取れる。

(2)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「物体側」の「微小凸集光曲面」は、本件補正発明の「凸状曲面とされた」「第1のレンズ面」に相当する。
引用発明の「像側」の「微小凸集光曲面」は、本件補正発明の「凸状曲面とされた」「第2のレンズ面」に相当する。
引用発明の「基板」は、本件補正発明の「ホルダ部」に相当する。
引用発明の「物体側凸集光曲面層の材質の屈折率n_(2) と透明基板の材質の屈折率n_(3) が等しく、その材質がプラスチックの場合であって射出成形法で一体成形され」いることと、本件補正発明の「光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズ」と「ホルダ部とが樹脂一体成形によって形成され」ていることは、ホルダ部と第1のレンズ面とが、透光性を有する樹脂によって一体成形されているという点で一致する。
引用発明の「物体よりの発散光が物体側の微小凸集光曲面により基板厚みのほぼ1/2の距離に物体の倒立像が縮小結合され」ることは、本件補正発明の「第1のレンズ面が物体から光の入射を受けたときにこの物体の倒立像を第2のレンズ面までの間に結像可能である」ことに相当する。
引用発明の「正立等倍の実像を得るために」「基板厚みのほぼ1/2の距離に」「縮小結合された」「物体の倒立像」を「物体側と対称に配された像側に凸なる微小凸集光曲面により拡大再結像する」ことは、本件補正発明の「第2のレンズ面から出射する光により上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能である」ことに相当する。

よって、本件補正発明と引用発明とは、
「光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズと、これらを繋ぐホルダ部とを備えている、レンズアレイであって、
上記各凸レンズは、それらの第1のレンズ面が物体から光の入射を受けたときにこの物体の倒立像を第2のレンズ面までの間に結像可能である一方、第2のレンズ面から出射する光により上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能であるとともに、
上記ホルダ部と上記第1のレンズ面とは、透光性を有する樹脂によって一体成形されていることを特徴とする、レンズアレイ」の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件補正発明では「光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズ」と「これらを繋ぐホルダ部」とが「透光性を有する樹脂によって一体成形」されているのに対して、引用発明では、ホルダ部と第2のレンズ面とが透光性を有する樹脂によって一体成形されているか否かが明らかでない点。

(相違点2)
本件補正発明では、「第2のレンズ面は、第1のレンズ面よりも大径とされて」いるのに対して、引用発明ではこのことが明らかでない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
複数のレンズが一体に成形されたプラスチックからなるレンズ・アレイにおいて、両面に凸レンズ面を有し、相隣るレンズが連結しているレンズ・アレイ、すなわち、光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズとこれらを繋ぐホルダ部とが一体成形されているレンズ・アレイは例えば引用例2に記載されるように周知であって、引用例1には、物体側凸集光曲面層の材質の屈折率n_(2) 、透明基板の材質の屈折率n_(3) およびn_(4 )並びに像側凸集光曲面層の材質の屈折率n_(5)が等しいことも記載されているので、引用発明のレンズアレイにおいても、ホルダ部と第2のレンズ面も透光性を有する樹脂によって一体成形すること、すなわち、光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズとこれらを繋ぐホルダ部を透光性を有する樹脂によって一体成形することは当業者が容易に想到しうることである。

上記相違点2について検討する。
引用例3には、透明基板の両面に集光レンズを備えたレンズアレイにおいて、上記基板の上面に大径の凸形集光レンズ、下面に小径の凸形集光レンズを形成したレンズアレイが記載されている。また、光入射側の第1のレンズ面および光出射側の第2のレンズ面のそれぞれが凸状曲面とされた複数の凸レンズとこれらを繋ぐホルダ部とを備えているレンズアレイにおいて、入射した光を無駄にすることなく出射させるために、第2のレンズ面が、第1のレンズ面よりも大径とされているレンズアレイは、例えば特開2000-284158号公報(段落【0032】および図5参照)、特開2001-290104号公報(段落【0036】および図1参照)、および特開2000-352606号公報(段落【0056】および図13参照)に記載されるように周知である。してみると、引用発明においても、入射した光を無駄にすることなく出射させるために、第2のレンズ面を第1のレンズ面よりも大径とすることは当業者が容易に想到しうることである。

そして、本件補正発明の作用効果は引用発明、引用例2の記載及び引用例3の記載から当業者が予期できたものである。

したがって、本件補正発明は、引用発明、引用例2の記載及び引用例3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.本件補正についての結び

よって、本件補正発明は、上記引用発明、引用例2の記載及び引用例3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、「第2[理由]1.」に補正前請求項1として記載したとおりのものである。

本願発明は、前記「第2[理由]2.」で検討した本件補正発明から、「第1のレンズ面」について「光入射側」という限定を省き、「第2のレンズ面」について「光出射側」という限定を省き、「光」について「光の入射」という限定を省き、「物体の倒立像」の結像位置について「第2のレンズ面までの間」という限定を省き、「第2のレンズ面が上記物体の正立像が結像されるように上記倒立像の反転が可能であることにより、物体の正立等倍像を結像可能である」という事項について「第2のレンズ面から出射する光により」結像可能であるという限定を省いたものに相当する。

2.対比・判断

本願発明を、引用発明と対比すると、本願発明と引用発明とは、本件補正発明と引用発明との一致点において一致し、一方で、両者は、本件補正発明と引用発明との相違点1および2においてのみ相違する。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2.」において記載したとおり、引用発明、引用例2の記載及び引用例3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明、引用例2の記載及び引用例3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2の記載及び引用例3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-20 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願2001-339176(P2001-339176)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 憲  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 安田 明央
小松 徹三
発明の名称 レンズアレイ、レンズアレイユニット、および光学装置  
代理人 吉田 稔  
代理人 田中 達也  
代理人 古澤 寛  
代理人 臼井 尚  
代理人 仙波 司  
代理人 鈴木 泰光  

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