【重要】サービス終了について

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1195074
審判番号 不服2007-19307  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-10 
確定日 2009-03-30 
事件の表示 特願2004-314577「自然石型枠及び該型枠を使用した構築工法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月18日出願公開,特開2006-125044〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年10月28日の出願であって,平成19年3月14日付け拒絶理由通知に対して、同年5月17日付けで手続補正がなされたが、同年6月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月10日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに,同年8月9日付けで手続補正がなされたものである。その後,当審において平成20年11月7日付けで審査官による前置報告書の内容を提示するとともに請求人の意見を求める審尋を通知したところ,平成21年1月9日付けで回答書が提出されたものである。


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年8月9日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「コンクリートからなる背面部材と、背面部材の上面から下面に貫通して裏面に形成した鉄筋挿通用の溝状の切欠部と、背面部材の裏面に開口したセパレータ挿通用孔部と、自然石からなる多数個の表面部材と、表面部材の裏面に形成された平面加工部とからなり、平面加工部を背面部材の前面に並置することにより、多数個の自然石を利用した板状の型枠に形成したことを特徴とする自然石型枠。」と補正された。

上記補正は,特許請求の範囲の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項のうち,表面部材について「多数個の自然石からなる表面部材」が「自然石からなる多数個の表面部材」を意図したものであることを明確化するとともに,切欠部について「背面部材の裏面に形成した鉄筋挿通用の溝状の切欠部」とあったものを「背面部材の上面から下面に貫通して裏面に形成した鉄筋挿通用の溝状の切欠部」に限定するものであるから,本件補正は,少なくとも,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,補正発明が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて,以下に検討する。

2 刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願日前に頒布された刊行物である,特開平11-44025号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「コンクリート型枠パネル及びコンクリート型枠並びにコンクリート型枠の構築方法」について,図面とともに,次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 土木コンクリート構造物を構築する際に使用されるコンクリート型枠パネルであって、プレキャストコンクリートの一体成型によって略矩形厚板状のパネル基体を形成し、このパネル基体の正面には適宜装飾部を形成し、パネル基体の背面の一側面部分には挿通孔を備えた連結用側部ボックスを複数埋設し、パネル基体の背面の下面部分には挿通孔を備えた連結用下部ボックスを複数埋設し、パネル基体の他側面には側部埋込みナットを複数埋設し、パネル基体の上面には上部埋込みナットを複数埋設し、連結用側部ボックスの挿通孔に挿通されるボルトを側部埋込みナットに螺着せしめることで、左右方向にパネル基体を連結でき、連結用下部ボックスの挿通孔に挿通されるボルトを上部埋込みナットに螺着せしめることで、上下方向にパネル基体を連結できるよう構成したことを特徴とするコンクリート型枠パネル。」
(1b)「【請求項3】 パネル基体の背面には背面部埋込みナットを複数埋設し、パネル連結具やパネルサポート等の端部が螺着可能となるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンクリート型枠パネル。」
(1c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の型枠パネルを用いたコンクリート型枠による土木コンクリート構造物の構築手段にあっては、コンクリート型枠の組立作業や、取外し作業に時間と労力がかかり、能率的な作業が行い難い難点や、取外し作業に於いて、産業廃棄物を多く生み出す難点もあった。また、土木コンクリート構造物の表面に適宜凹凸を設けるようにすると、樹脂系の産業廃棄物を多く生み出してしまう難点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、前述の如き難点等を解消すると共に、コンクリート型枠の組立作業や、取外し作業が簡単に、安全に、且つ能率的に行えるようにし、産業廃棄物を生ぜず、環境問題に役立ち、しかも、外観上体裁の良い土木コンクリート構造物を提供できるようにすべく創出されたもので、・・・」
(1d)「【0011】パネル基体A1の正面に形成される適宜装飾部1は、パネル基体A1を構成する際に、予めその正面に適宜凹凸模様を施したり、自然石や、セラミックや、合成樹脂や、金属や、非鉄金属や、木材や、擬石や、或いは、これらの複合体等をパネル基体A1正面に予め埋込んで構成することによって実施される。すなわち、装飾部1によって、土木コンクリート構造物の外観上の体裁が良好となるように形成してある。」
(1e)「【0018】背面部埋込みナット11は、パネル基体A1の背面部分の所定位置に埋設されており、雌ネジ孔が露出している基端部分がパネル基体A1の背面部分に揃うように配置してある(図1参照)。」
(1f)「【0023】パネル連結具16は、例えば、ターンバックル等を介してその長さ調節が可能となるように形成されると共に、その両端に背面部埋込みナット11に螺着できるような雄ネジ部分を設けて構成され(図3参照)、適宜間隔で対向するように配されるコンクリート型枠パネルA相互の間隔を維持できるように構成されている。尚、雄ネジ部分の基端がわには適宜継手を設けて、折曲げ可能に形成しても良い。」
そして,上記記載事項(1a)ないし(1f)に記載された内容及び図面並びに技術常識を総合すると,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「土木コンクリート構造物を構築する際に使用されるコンクリート型枠パネルであって,プレキャストコンクリートの一体成型によって略矩形厚板状のパネル基体を形成し,連結用下部ボックスの挿通孔に挿通されるボルトを上部埋込みナットに螺着せしめることで上下方向にパネル基体を連結できるよう構成し,パネル基体の背面には背面部埋込みナットを複数埋設してパネル連結具やパネルサポート等の端部が螺着可能となるように構成し,このパネル基体の正面には自然石等をパネル基体正面に予め埋込んで構成した適宜装飾部を形成した,コンクリート型枠パネル。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願日前に頒布された刊行物である,特開平5-17961号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「石積み擁壁構造」について,図面とともに,次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 数段に積み重ねたコンクリートブロックの控部の透孔に横鉄筋を貫挿し、複数の横鉄筋間を縦鉄筋により連結したことを特徴とする石積み擁壁構造。」
(2b)「【0009】上記ブロック本体1aの裏側の中央部には控部1bが突設されていて、その両側面を貫くように透孔1cが穿設されている。また、該控部1bの上部には凸部1dが突設されている。」
(2c)「【0010】上記ブロック本体1aの裏側の両側下部には、突起1eが形成されていて、該突起1eの下面には凹部1fが形成されていて、図3に示すように、千鳥状にずらせて積み重ねた下段のブロック本体1aの上記凸部1dと嵌合するようになっている。」
(2d)「【0013】3は横鉄筋であって、上記コンクリートブロック1の控部1bの透孔1cを貫通するように配筋される。」
(2e)「【0014】4は縦鉄筋であって、上記横鉄筋3に交差するように配筋される。」
(2f)図2ないし4には,コンクリートブロックのブロック本体1aの裏面,控部1b及び突起1eにより,コンクリートブロックの上面から下面に貫通して裏面に形成した空間を設け,この空間に縦鉄筋4を挿通したことが示されている。

3 対比
補正発明と引用発明を対比すると,引用発明の「パネル基体」は補正発明の「背面部材」に相当する。
また,引用発明の「背面部埋込みナット」と補正発明の「背面部材の裏面に開口したセパレータ挿通用孔部」とは,ともに型枠(パネル)同士を所定間隔に維持するセパレータ(パネル連結具)を取り付ける部材であるから,「背面部材の裏面に開口したセパレータ取付部」である点で共通している。
また,引用発明の「自然石等」と補正発明の「自然石からなる多数個の表面部材」とは,「自然石からなる表面部材」である点で共通している。
また,引用発明の「自然石等をパネル基体正面に予め埋込んで構成した適宜装飾部を形成した,コンクリート型枠パネル」と補正発明の「自然石からなる多数個の表面部材と、表面部材の裏面に形成された平面加工部とからなり、平面加工部を背面部材の前面に並置することにより、多数個の自然石を利用した板状の型枠に形成した(ことを特徴とする)自然石型枠」とは,「板状の型枠に形成した自然石型枠」である点で共通している。
してみれば,両者の一致点および相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「コンクリートからなる背面部材と,背面部材の裏面に開口したセパレータ取付部と,自然石からなる表面部材とからなる,板状の型枠に形成した自然石型枠。」

<相違点1>
背面部材が,補正発明は「背面部材の上面から下面に貫通して裏面に形成した鉄筋挿通用の溝状の切欠部」を有するのに対し,引用発明は連結用下部ボックス及び上部埋込みナット等により複数のパネルの位置決め及び連結等を行うものであって,溝状の切欠部は持たない点。

<相違点2>
セパレータ取付部が,補正発明は「セパレータ挿通用孔部」であるのに対し,引用発明は「背面部埋込みナット」である点。

<相違点3>
自然石型枠が,補正発明は「自然石からなる多数個の表面部材と、表面部材の裏面に形成された平面加工部とからなり、平面加工部を背面部材の前面に並置することにより、多数個の自然石を利用した板状の型枠に形成した」ものであるのに対し,引用発明は「自然石等をパネル基体正面に予め埋込んで構成した」ものであるが,自然石を何個使用したものか明らかでなく,また,自然石の裏面に平面加工部を形成してその平面加工部を背面部材の前面に並置したものではない点。

4 判断
まず,相違点1について検討する。擁壁等に用いられるコンクリートブロックに,上面から下面に貫通して裏面に形成した鉄筋挿通用の空間を設ける技術は,上記刊行物2に記載されており,その鉄筋挿通用の空間の形状を溝状の切欠部とする技術も,例えば特開昭56-64033号公報(特に,特許請求の範囲の「・・・大型コンクリートブロックをスライドさせながら縦溝内に縦鉄筋を挿入し、次に縦溝内にコンクリートを流し込んで充填する・・・」という記載,第1ないし3図等参照。),特開昭49-49403号公報(特に,第1頁右下欄第14行?第2頁左上欄第3行の「・・・2は上記ブロツク本体1Aの前面から背面方向に穿設された連結索3の挿入される貫通孔で、この貫通孔2には、当該ブロツクの底面より正面からみてL状の溝4が形成連通せしめられている。・・・」という記載,第1ないし3図等参照。),及び実願昭59-64581号(実開昭60-178025号)のマイクロフィルム(特に,明細書第5頁第8?10行の「・・・組積したブロック上端より突条のみぞ(4)(4’)の下ふくれした部分に連結鉄筋(23)を挿通し・・・」という記載,第1図,第5図等参照。)等にみられるように周知技術である。してみれば,引用発明において,型枠の設置性を高めるために,連結用下部ボックス及び上部埋込みナット等による位置決め構造に代えて,上面から下面に貫通して裏面に形成した鉄筋挿通用の溝状の切欠部を設けることは,当業者が容易になし得たことである。
次に,相違点2について検討する。セパレータ取付部の構成は,セパレータの先端形状等に応じて当業者が適宜選択し得るものである。引用発明では,セパレータであるパネル連結具の先端がボルト形状であるため,セパレータ取付部を埋込みナットとしたものであるが,セパレータ先端の形状に応じて,セパレータ取付部を単なる挿通孔形状とすることに,特段の困難性はない。
最後に,相違点3について検討する。擁壁等に用いられるコンクリートブロックの表面を自然石で化粧するにあたり,多数個の自然石を用いる技術は,例えば特開2003-90055号公報(特に,【0004】の「・・・また、ブロックやパネルの表面に使用する溶岩等の自然石は塊そのままで埋設したり、半分に切断して一面を平坦にしてパネルに接着剤で貼り付けていたので、・・・」という記載等参照。),特開平10-292377号公報(特に,【0011】の「・・・前記コンクリート板12の地山2側面に臨む背面21と対向する表面には自然石からなる薄板状の化粧板16(石板)を多数固定している。この化粧板16は、コンクリート板15を形成するコンクリート自体によって接着固定されている。」という記載等参照。),及び特開平8-323717号公報(特に,【0002】の「・・・図7に示すように、L型擁壁で説明すると、土台壁1の一側縁に立設壁2を立設して断面L字状に形成されるとともに、立設壁2の表面部2aに、装飾体3を露出させて一体成形したものが普及してきている。装飾体3としては、例えば、自然石を矩形板状に形成したもの(図7(a))・・・」という記載等参照。)等にみられるように周知技術である。そして,自然石の裏面(接着面)を平面加工する点について,上記「・・・半分に切断して一面を平坦にして・・・」では接着面に平面加工を行うことが示されており,「自然石からなる薄板状の化粧板16(石板)」及び「自然石を矩形板状に形成したもの」も接着面が平面となるように自然石を加工したものであるから,自然石の裏面(接着面)を平面加工することも周知技術といえる。また,タイルの貼り付け作業などを想像すれば明らかなように,上記加工した自然石を背面板に取り付けるにあたり,その平面加工部を背面板の前面に並置して接着・固定することにも特段の創作性はみられない。したがって,引用発明において,多数個の自然石の裏面に平面加工部を形成し,平面加工部を背面部材の前面に並置することにより、多数個の自然石を利用した板状の型枠を形成することは,当業者が容易になし得たことである。
また,補正発明が奏する効果は,引用発明,刊行物2記載の技術及び周知技術から当業者が予測し得たことである。
したがって,補正発明は,引用発明,刊行物2記載の技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年8月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,同年5月17日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

(本願発明)
「コンクリートからなる背面部材と、背面部材の裏面に形成した鉄筋挿通用の溝状の切欠部と、背面部材の裏面に開口したセパレータ挿通用孔部と、多数個の自然石からなる表面部材と、表面部材の裏面に形成された平面加工部とからなり、平面加工部を背面部材の前面に並置することにより、多数個の自然石を利用した板状の型枠に形成したことを特徴とする自然石型枠。」

2 刊行物とそれに記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とそれに記載された事項は,上記「第2」の「2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,上記「第2」にて検討した補正発明の切欠部について「上面から下面に貫通して」との限定を削除したものである。
そうすると,本願発明を特定する事項をすべて含み,さらに限定したものに相当する補正発明が,上記「第2」の「4」に記載したとおり,引用発明,刊行物2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,刊行物2記載の技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2記載の技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-27 
結審通知日 2009-01-29 
審決日 2009-02-13 
出願番号 特願2004-314577(P2004-314577)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02D)
P 1 8・ 575- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義草野 顕子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 関根 裕
伊波 猛
発明の名称 自然石型枠及び該型枠を使用した構築工法  
代理人 田中 幹人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ