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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1195111
審判番号 不服2005-6130  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-07 
確定日 2009-04-02 
事件の表示 特願2001-104179「自動課金システム及び自動課金方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月11日出願公開、特開2002-298031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年4月3日の出願であって、平成17年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年5月6日付けで手続補正がなされ、平成20年10月21日付けで当審より審尋がなされたものである。
なお、審尋に対する回答はなされていない。

2.平成17年5月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年5月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正の内容について
平成17年5月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の記載は以下のとおり補正された。

《本件補正後の特許請求の範囲の記載》
「 【請求項1】 複数のエネルギーそれぞれの使用量を計測する、前記複数のエネルギーそれぞれに対応する複数の計測手段と、
1つの集中管理端末によって管理され、前記1つの集中管理端末からの指示に基づき前記使用量に係る情報を通信回線を介して要求する、前記複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段と、
前記課金手段からの要求に基づき前記複数の計測手段より前記使用量に係る情報を収集し、収集した前記情報を前記課金手段に送信する情報端末とを有し、
前記1つの集中管理端末は、所定の時期に、前記複数の課金手段に対して課金対象者のリストアップを指示するとともに、前記使用量に係る情報の要求指示を行い、
前記通信回線に接続された金融機関側端末は、前記課金手段からの前記使用量に係る情報を受取ると、口座からの自動引き落しを行う
ことを特徴とする自動課金システム。
【請求項2】 前記複数の課金手段は、
ガスの使用に関する情報収集を行うためのガス料金課金サーバと、
水道の使用に関する情報収集を行うための水道料金課金サーバと、
電気の使用に関する情報収集を行うための電気料金課金サーバであり、
前記複数の課金手段それぞれは、前記使用量に係る情報を要求する際、前記情報端末に対応するアドレス情報を収集する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動課金システム。
【請求項3】 前記複数の計測手段は、
ガス使用量を計測するガス使用量計測器と、
水道の使用量を計測する水道使用量計測器と、
電気の使用量を計測する電気使用量計測器であり、
前記情報端末と前記複数の計測手段の間には、無線通信もしくはLANによって情報のやり取りが行われ、
前記情報端末は各住宅もしくは複数の住宅を管轄する所定エリア内に設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の自動課金システム。
【請求項4】 複数のエネルギーそれぞれの使用量を複数の計測手段によって計測する工程と、
1つの集中管理端末によって管理される、前記複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段により、前記1つの集中管理端末からの指示に基づき前記使用量に係る情報を通信回線を介して要求する工程と、
情報端末により、前記課金手段からの要求に基づき前記複数の計測手段より前記使用量に係る情報を収集し、収集した前記情報を前記課金手段に送信する工程とを有し、
前記1つの集中管理端末は、所定の時期に、前記複数の課金手段に対して課金対象者のリストアップを指示するとともに、前記使用量に係る情報の要求指示を行い、
前記通信回線に接続された金融機関側端末は、前記課金手段からの前記使用量に係る情報を受取ると、口座からの自動引き落しを行う
ことを特徴とする自動課金方法。
【請求項5】 前記複数の課金手段はガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバであり、
ガス料金課金サーバにより、前記情報端末に対応させたアドレス情報を収集し、前記情報端末にガスの使用に関する情報収集を行う工程と、
水道料金課金サーバにより、前記情報端末に対応させたアドレス情報を収集し、前記情報端末に水道の使用に関する情報収集を行う工程と、
電気料金課金サーバにより、前記情報端末に対応させたアドレス情報を収集し、前記情報端末に電気の使用に関する情報収集を行う工程と、
前記集中管理端末により、前記ガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバを管理する工程とを有し、
前記複数の課金手段それぞれは、前記使用量に係る情報を要求する際、前記情報端末に対応するアドレス情報を収集する
ことを特徴とする請求項4に記載の自動課金方法。
【請求項6】 前記複数の計測手段はガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器であり、
ガス使用量計測器により、ガス使用量を計測する工程と、
水道使用量計測器により、水道の使用量を計測する工程と、
電気使用量計測器により、電気の使用量を計測する工程とを有し、
前記収集した前記情報を前記課金手段に送信する工程は、前記情報端末により、情報収集要求を受取ると、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器からそれぞれの使用量を示す情報を収集して送信する工程である
ことを特徴とする請求項4に記載の自動課金方法。
【請求項7】 コンピュータに請求項4乃至6の何れかの自動課金方法を実行させることを特徴とするプログラム。 」

《本件補正前の特許請求の範囲の記載》
「 【請求項1】 複数のエネルギーそれぞれの使用量を計測する、前記複数のエネルギーそれぞれに対応する複数の計測手段と、
1つの集中管理端末によって管理され、前記1つの集中管理端末からの指示に基づき前記使用量に係る情報を要求する、前記複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段と、
前記課金手段からの要求に基づき前記複数の計測手段より前記使用量に係る情報を収集し、収集した前記情報を前記課金手段に送信する情報端末とを有し、
前記1つの集中管理端末は、所定の条件を満たしたときに、前記複数の課金手段に対して前記使用量に係る情報の要求指示を行う
ことを特徴とする自動課金システム。
【請求項2】 前記課金手段は、
ガスの使用に関する情報収集を行うためのガス料金課金サーバと、
水道の使用に関する情報収集を行うための水道料金課金サーバと、
電気の使用に関する情報収集を行うための電気料金課金サーバと、
前記ガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバを管理する集中管理端末とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の自動課金システム。
【請求項3】 前記集中管理端末は、
公共料金の課金時期を判断する課金時期判断部と、
前記課金時期判断部によって課金時期が判断されると、前記ガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバに対して課金対象者のリストアップを指示する課金対象者リストアップ指示部と、
前記課金時期判断部によって課金時期が判断されると、前記ガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバに対して課金要求の指示を促す課金要求指示部とを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の自動課金システム。
【請求項4】 前記計測手段は、
ガス使用量を計測するガス使用量計測器と、
水道の使用量を計測する水道使用量計測器と、
電気の使用量を計測する電気使用量計測器と、
情報収集要求を受取ると、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器からそれぞれの使用量を示す情報を収集して送信する情報収集端末とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の自動課金システム。
【請求項5】 前記情報収集端末と、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間は、無線通信によって情報のやり取りが行われることを特徴とする請求項4に記載の自動課金システム。
【請求項6】 前記情報収集端末と、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間は、LANによって情報のやり取りが行われることを特徴とする請求項4に記載の自動課金システム。
【請求項7】 前記情報収集端末は、各住宅に設置されることを特徴とする請求項4?6の何れかに記載の自動課金システム。
【請求項8】 前記情報収集端末は、複数の住宅を管轄する所定エリア内に設置されることを特徴とする請求項4?6の何れかに記載の自動課金システム。
【請求項9】 前記情報収集端末は、複数の住宅を管轄する所定エリア内の電柱に設置され、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間で情報のやり取りが行われることを特徴とする請求項4?6の何れかに記載の自動課金システム。
【請求項10】 前記情報収集端末は、複数の住宅を管轄する所定エリア内の電柱に設置され、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間で情報のやり取りがLANによって行われることを特徴とする請求項4?6の何れかに記載の自動課金システム。
【請求項11】 金融機関側端末が接続され、前記課金手段からの課金情報を受取ると、口座からの自動引き落しが行われることを特徴とする請求項1に記載の自動課金システム。
【請求項12】 複数のエネルギーそれぞれの使用量を複数の計測手段によって計測する工程と、
1つの集中管理端末によって管理される、前記複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段により、前記1つの集中管理端末からの指示に基づき前記使用量に係る情報を要求する工程と、
情報端末により、前記課金手段からの要求に基づき前記複数の計測手段より前記使用量に係る情報を収集し、収集した前記情報を前記課金手段に送信する工程とを有し、
前記1つの集中管理端末は、所定の条件を満たしたときに、前記複数の課金手段に対して前記使用量に係る情報の要求指示を行う
ことを特徴とする自動課金方法。
【請求項13】 ガス料金課金サーバにより、ガスの使用に関する情報収集を行う工程と、
水道料金課金サーバにより、水道の使用に関する情報収集を行う工程と、
電気料金課金サーバにより、電気の使用に関する情報収集を行う工程と、
集中管理端末により、前記ガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバを管理する工程とを有する
ことを特徴とする請求項12に記載の自動課金方法。
【請求項14】 課金時期判断部により、公共料金の課金時期を判断する工程と、
課金対象者リストアップ指示部により、前記課金時期判断部によって課金時期が判断されると、前記ガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバに対して課金対象者のリストアップを指示する工程と、
課金要求指示部により、前記課金時期判断部によって課金時期が判断されると、前記ガス料金課金サーバ、水道料金課金サーバ、電気料金課金サーバに対して課金要求の指示を促す工程とを有する
ことを特徴とする請求項13に記載の自動課金方法。
【請求項15】 ガス使用量計測器により、ガス使用量を計測する工程と、
水道使用量計測器により、水道の使用量を計測する工程と、
電気使用量計測器により、電気の使用量を計測する工程と、
情報収集端末により、情報収集要求を受取ると、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器からそれぞれの使用量を示す情報を収集して送信する工程とを有する
ことを特徴とする請求項12に記載の自動課金方法。
【請求項16】 前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間にて無線通信により情報のやり取りを行う工程を有することを特徴とする請求項15に記載の自動課金方法。
【請求項17】 前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間にてLANにより情報のやり取りを行う工程を有することを特徴とする請求項15に記載の自動課金方法。
【請求項18】 各住宅内にて前記情報のやり取りを行う工程を有することを特徴とする請求項15?17の何れかに記載の自動課金方法。
【請求項19】 複数の住宅を管轄する所定エリア毎に前記情報のやり取りを行う工程を有することを特徴とする請求項15?17の何れかに記載の自動課金方法。
【請求項20】 複数の住宅を管轄する所定エリア内の電柱に設置された情報収集端末により、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間で情報のやり取りが行われる工程を有することを特徴とする請求項15?17の何れかに記載の自動課金方法。
【請求項21】 複数の住宅を管轄する所定エリア内の電柱に設置された情報収集端末により、前記ガス使用量計測器、水道使用量計測器、電気使用量計測器との間で情報のやり取りがLANによって行われる工程を有することを特徴とする請求項15?17の何れかに記載の自動課金システム。
【請求項22】 金融機関側端末により、前記課金手段からの課金情報を受取ると、口座からの自動引き落しを行う工程を有することを特徴とする請求項12に記載の自動課金方法。
【請求項23】 コンピュータに請求項12?22の何れかの自動課金方法を実行させることを特徴とするプログラム。 」


2-2.本件補正の目的について

本件補正の内容をみると、本件補正後の請求項1・2・3、請求項4・5・6及び請求項7は、それぞれ本件補正前の請求項1・2・4、請求項12・13・15及び請求項23に対応するものである。
そして、本件補正後の請求項1・4に関しては、本件補正前の請求項1に記載される事項を、本件補正前の請求項3に記載される事項の一部及び本件補正前の請求項11に記載される事項により限定して本件補正後の請求項1とし、本件補正前の請求項12に記載される事項を、本件補正前の請求項14に記載される事項の一部及び本件補正前の請求項22に記載される事項により限定して本件補正後の請求項4としている。
本件補正後の請求項2・5に関しては、本件補正前の請求項1・13に記載される事項である、「複数の課金手段」が「情報端末」に「使用量に係る情報を要求する」との事項を、さらに「情報端末に対応するアドレス情報を収集する」と限定して本件補正後の請求項2・5としている。
本件補正後の請求項3・6に関しては、本件補正前の請求項4に記載される事項を、本件補正前の請求項6及び請求項7に記載される事項により限定して本件補正後の請求項3とし、本件補正前の15に記載される事項を、実質的に本件補正後の請求項6としている。
本件補正後の請求項7は、残る請求項の削除により、本件補正前の請求項23における引用する請求項を繰り上げている。
以上のとおりであることから、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とし、又は請求項の削除を目的としてなされたものであると認められる。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、又は同法同項第1条に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

2-3.独立特許要件について

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明について

本願補正発明は以下のとおりである。
「 複数のエネルギーそれぞれの使用量を計測する、前記複数のエネルギーそれぞれに対応する複数の計測手段と、
1つの集中管理端末によって管理され、前記1つの集中管理端末からの指示に基づき前記使用量に係る情報を通信回線を介して要求する、前記複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段と、
前記課金手段からの要求に基づき前記複数の計測手段より前記使用量に係る情報を収集し、収集した前記情報を前記課金手段に送信する情報端末とを有し、
前記1つの集中管理端末は、所定の時期に、前記複数の課金手段に対して課金対象者のリストアップを指示するとともに、前記使用量に係る情報の要求指示を行い、
前記通信回線に接続された金融機関側端末は、前記課金手段からの前記使用量に係る情報を受取ると、口座からの自動引き落しを行う
ことを特徴とする自動課金システム。 」


(2)引用例について

原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された、特開2000-346671号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス及び電気機器による資源の使用量に対応する料金を算出する料金算出装置、特に複数種の資源を使用する機器による各資源の使用量に対応する金額に割引を適用して、割引料金を算出する料金算出装置及びコンピュータを前記料金算出装置として機能させるためのプログラムを記録してある記録媒体に関する。」

(イ)「【0030】
【発明の実施の形態】〔実施の形態1〕図1は本発明に係る料金算出装置の構成を示すブロック図であって、課金業者?課金単位体間の資源及びこの使用量情報の流れを表している。ここで、課金業者とは、ガス,電力及び水道水を含む複数の資源を供給する統合資源供給事業者か、またはガス,電力及び水道水の互いに異なる資源を供給する複数の資源供給事業者により共同設置された料金計算センタをいう。
【0031】1はコンピュータを用いた本発明に係る料金算出装置であって、課金業者側に設置されている。料金算出装置1はCD-ROMなどの記録媒体2から読み取った、本発明の料金算出装置用のプログラムを実行することで、本発明の料金算出装置として動作する。
【0032】課金業者側から供給されるガス,電力及び水道水は、課金単位体側に設けられたガス機器4,電力機器5及び水道用機器6へ夫々与えられる。また課金単位体側には、ガス機器4,電力機器5及び水道用機器6への供給経路から分岐してガス,電力及び水道水の供給を夫々受けるガス給湯器7が設置してある。また課金単位体側には、課金業者側から課金単位体側までのガス,電力及び水道水の供給経路において、これらがガス給湯器7行きに分岐する点の上流、即ち分岐点の課金業者側には各資源の使用量を計量するガスメータ8,電力量計9及び量水器10が夫々設けてある。
【0033】更にまた、ガス給湯器7並びにガスメータ8,電力量計9及び量水器10と接続されて、ガス給湯器7によるガス、電力及び水道水の使用量情報並びにガスメータ8,電力量計9及び量水器10により夫々計量された各資源の計量値を、毎月予め定められた日時に電力線を用いて課金業者側へ送信する送信手段11が設けてあって、送信手段11と料金算出装置1とを接続することで、割引サービスの実施が可能な料金算出システムを形成している。
【0034】課金業者側に設置してある料金算出装置1は、本発明の料金算出装置用のプログラム及びデータを記録したCD-ROMなどの記録媒体2から前記プログラム及びデータを読み取るための媒体読取手段15を備えており、また媒体読取手段15により読み取られたプログラム及びデータを記憶するハードディスクドライブなどを用いてなる補助記憶手段14を備えている。また、補助記憶手段14はガス,電力及び水道水の各使用量に対応する料金を所定の規則に則って夫々規定する従量料金テーブル14a を格納している。補助記憶手段14に記憶されたプログラム及びデータを読み出して、RAM13に格納し、CPU12により前記プログラムを実行することで本発明の料金算出装置として動作する。
【0035】さらに料金算出装置1は、電力線を経由して情報を受信する受信手段16とを備えている。また、RAM13には割引に係る数値を記憶するための割引率記憶領域13a が設けてある。RAM13,補助記憶手段14,媒体読取手段15及び受信手段16は、バスにて相互に接続してある。なお、受信手段16は料金算出装置1の外部に設置しても良い。また、送信手段11は電力線の代わりに電話回線を用いて、所要の情報を課金業者側へ送信する構成とし、これに応じて受信手段16は電力線の代わりに電話回線を経由して課金単位体側から情報を受信する構成としても良い。
【0036】一方、課金単位体側に設置してあるガス給湯器7は、ガス給湯器7によるガス使用量を計量するガスサブメータ7a,同じく電力使用量を計量する電力量サブメータ7b及び同じく水道水使用量を計量する量水サブメータ7cを内蔵しており、ガスサブメータ7a,電力量サブメータ7b及び量水サブメータ7cは計量値を送信手段11へ与えるべくなしてある。
【0037】図2は本発明に係る料金算出装置1の処理手順を説明するためのフローチャートである。ガスメータ8,電力量計9及び量水器10により夫々計量されたガス,電力及び水道水の使用量、即ち各資源の第1使用量[C1]を受信手段16によって受信する(S1)。またガスサブメータ7a,電力量サブメータ7b及び量水サブメータ7cにより夫々計量されたガス,電力及び水道水の使用量、即ち各資源の第2使用量[C2]を受信手段16によって受信する(S2)。ガスの第2使用量[C2]に基づきガス、電力及び水道水の第2使用量[C2]の料金割引サービスに適用すべき割引率を設定し、これを割引率記憶領域13a に記憶させる(S3)。
【0038】次に、資源毎に第1使用量から第2使用量を差し引いた残余[C1-C2] に対応する金額を従量料金テーブル14a を参照して導出し、第1料金[K1]とする(S4)。また、第2使用量[C2]に対応する金額を従量料金テーブル14a を参照して導出し(S5)、割引率記憶領域13a から読み出した割引率分を前記金額から差し引いて求め、第2料金[K2]とする(S6)。そして、第1料金及び第2料金を足し合わせた料金[K1+K2] を出力する(S7)。
【0039】課金業者は、課金単位体毎の月次の使用量に基づき出力された料金を口座振替の手続きに従って所定の預金口座から引き落とし、また前記使用量及び領収金額などを記した料金明細書を課金単位体へ郵送する。なお、前述の実施の形態においては、ガス,電力及び水道水の各使用量に適用すべき割引率をガス使用量に基づき設定する構成としたが、ガス使用量の代わりに他の資源、例えば電力の使用量に基づき割引率を設定する構成としても良いことは言うまでもない。また、ガス,電力及び水道水について、割引率を個別に設定する構成としても良いし、ガス,電力及び水道水の全てではなく、例えばガス及び水道の二つだけに割引率を設定する構成にしても良い。」

してみると、上記摘記事項(ア)(イ)の記載事項から、引用例には以下の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。

「 各課金単位体毎にガス、電力、水道水を含む複数の資源の使用量を計量する、ガスメータ、電力量計、量水器が設けられ、
課金業者側に料金算出装置が設けられ、
ガスメータ、電力量計、量水器によりそれぞれ計量された各資源の計量値を、これらのガスメータ、電力量計、量水器と接続され、さらに料金算出装置と接続された送信手段により、毎月予め定められた日時に課金業者へ計量値を送信し、
課金業者は、課金単位体毎の月次の使用量に基づき料金算出装置から出力された料金を口座振替の手続きに従って所定の預金口座から引き落とす
ことを特徴とする料金算出システム。 」


(3)対比

本願補正発明と引用例発明とを対比する。

引用例発明の「ガス、電力、水道水を含む複数の資源の使用量を計量する、ガスメータ、電力量計、量水器」は、「各課金単位体毎」に、即ち各住宅毎に設けられるものであることから、本願補正発明の、「複数のエネルギーそれぞれの使用量を計測する、前記複数のエネルギーそれぞれに対応する複数の計測手段」に相当する。

引用例発明の「課金業者側」に設けられる「料金算出装置」は、ガス、電力、水道水の使用量と割引率とから料金を算出するものであるが、当該割引率は個別に設定することも可能であることから、ガス、電力、水道水の各使用量から、ガス、電力、水道水のそれぞれの料金が算出されるものであり、本願補正発明の、「複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段」に相当する。
そしてそれぞれの料金だけではなく全体としての割引計算もしていることから、「複数の課金手段」を集中して管理する手段を有しており、当該集中して管理する手段と、本願補正発明の「1つの集中管理端末」とは「集中管理手段」という概念に包摂される。

引用例発明の「送信手段」は、ガスメータ、電力量計、量水器と接続され、料金算出装置と接続されて、課金業者へ計量値を送信するものであることから、本願補正発明の、「複数の計測手段より使用量に係る情報を収集し、収集した情報を課金手段に送信する情報端末」に相当する。

引用例発明では、「課金業者は、課金単位体毎の月次の使用量に基づき料金算出装置から出力された料金を口座振替の手続きに従って所定の預金口座から引き落とす」こととしている。
当該「使用量に基づき出力された料金」は、「料金算出装置」、即ち「課金手段」から取得している。
これに対して、本願補正発明は、「課金手段からの前記『使用量に係る情報』を受取ると、口座からの自動引き落としを行う」ものである。
ここで当該『使用量に係る情報』とは、『前記』されるところの本願補正発明の記載を参酌すると「複数の計測手段」から「情報端末」が収集する情報であり、さらに発明の詳細な説明の第【0025】段落の記載を参酌すれば、これは「使用量を示す情報」であると理解できる。
一方、発明の詳細な説明の第【0027】段落の記載を参酌すれば、「金融機関側端末」が「課金手段」から受け取る『使用量に係る情報』とは、「使用量を示す課金情報」であることも理解できる。
してみると、本願補正発明の『使用量に係る情報』とは、「使用量を示す情報」と「使用量を示す課金情報」とを包摂する。
以上の検討結果を前提として、引用例発明と本願補正発明とを比較する。
引用例発明は、課金手段からの『使用量に基づき出力された料金』、即ち『使用量を示す課金情報』を受け取ると、口座からの自動引き落としを行うものであると認められることから、本願補正発明の、「前記課金手段からの前記『使用量に係る情報』を受取ると、口座からの自動引き落しを行う」という概念に包摂される。


以上のとおりであることから、引用例発明の「料金算出システム」は、本願補正発明の「自動課金システム」に相当する。


そうすると本願補正発明と引用例発明は、
「 複数のエネルギーそれぞれの使用量を計測する、前記複数のエネルギーそれぞれに対応する複数の計測手段と、
集中管理手段により管理され、複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段と、
複数の計測手段より使用量に係る情報を収集し、収集した情報を課金手段に送信する情報端末とを有し、
課金手段からの使用量に係る情報を受け取ると、口座からの自動引き落としを行う
ことを特徴とする自動課金システム。 」

の点で一致し、以下の点で相違する。


[相違点1]
本願補正発明では、集中管理手段として、1つの集中管理端末を設け、1つの集中管理端末によって複数の課金手段を管理し、複数の課金手段が1つの集中管理端末からの指示に基づき、使用量に係る情報を通信回線を介して情報端末に要求し、情報端末は、課金手段からの要求に基づき複数の計測手段より使用量に係る情報を収集するものであるのに対して、引用例発明ではそのようになっていない点。

[相違点2]
本願補正発明では、1つの集中管理端末が、所定の時期に、複数の課金手段に対して課金対象者のリストアップを指示するとともに、使用量に係る情報の要求指示を行うものであるのに対して、引用例発明ではそのようになっていない点。

[相違点3]
本願補正発明では、通信回線に接続された金融機関側端末が、課金手段からの使用量に係る情報を受け取ると、口座からの自動引き落としを行うものであるのに対して、引用例発明ではそのようになっていない点。

(4)判断

[相違点1,2について]
第一に、複数住戸の複数のエネルギー使用量を計測する際、所定の時期に、所定の指示に基づいて、所定の住戸や、所定のエネルギーの使用量を遠隔地より通信手段を介して計測することは周知の事項(以下「周知事項1」という。)である。
(例えば、特開平03-020898号公報(以下「周知例1」という。)には、
「第3図(A)、(B)は上記ホスト装置7のホストコンピュータ22および使用検出用端末装置4のコントローラ15の動作を示すフローチャートである。
同図(A)はホストコンピュータ22の動作を示すフローチャートである。1ヶ月または2ヶ月に1回の集計日になるか、係員から所定の項目の使用量または特定住戸について集計要求があるまで待機している。
(途中略)
一方、係員から特定項目の使用量または特定住戸の使用量について集計要求があると、要求された項目についての検出指示電文を全端末装置に送信するか、または、要求された住戸の使用量検出用端末装置に対して検出指示電文を送信する。これに対する使用量計測値を受信し、この計測値に基づいて使用料金を計算する。
(途中略)
以上のようにこの発明の検針システムによれば、水道、電力、ガス等の使用量をホストで一括してまたは必要に応じてそのうちの一部を選択的に集計することができるため、係員の検針が不要になり作業を楽にすることができる。」
(第3頁左上欄第8行-左下欄第11行)
と記載されており、
特開平09-172503号公報(以下「周知例2」という。)には、
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は集合住宅等に設置する自動検針システムに係り、電力、水道、ガス等の検針データを収集し、使用料金の精算等を行うものに関する。
(途中略)
【0011】使用料金の算出は、中央装置3の入力部21より、使用料金の請求先(契約者名等)および計量器の種別(電力等)の指定を入力して行う。入力部21よりの指示の入力に応動し、制御部30を介して記憶部22のデータを読出し、判別部23により、入力部21より指示された計量器のアドレスを判別し、入出力部24を介してサテライトユニット2a等に信号を送る。この信号はサテライトユニット2a等の入出力部13より入力し、制御部15を介して判別部14で判別し、メモリ部12の当該計量器のアドレスのデータを読出し、入出力部13より中央装置3に送出する。(以下略)」
と記載されている。)

第二に、複数の課金手段に対して、これを管理し処理の指示をするための手段として、1つの集中管理端末を別途設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項であると認められる。

第三に、所定の住戸を特定する際に、対象者をリストアップすることは、当業者には技術常識であると認められる。

してみると、引用例発明に上記周知事項1を適用することにより、所定の時期に、集中管理手段からの指示に基づいて、複数の課金手段が、使用量に係る情報を通信回線を介して情報端末に要求し、情報端末が、課金手段からの要求に基づき複数の計測手段より使用量に係る情報を収集するよう構成することには何ら困難性がない。

その際、上記設計的事項を参酌すれば、集中管理手段として、1つの集中管理端末を設け、当該1つの集中管理端末により、複数の課金手段に指示をするよう構成することには何ら困難性がない。

さらに、上記技術常識を参酌すれば、1つの集中管理端末が、複数の課金手段に対して課金対象者のリストアップを指示するとともに、使用量に係る情報の要求指示を行うよう構成することにも何ら困難性がない。

以上のとおりであることから、引用例発明に周知事項1を適用し、もって、1つの集中管理端末によって複数の課金手段が管理され、複数の課金手段が1つの集中管理端末からの指示に基づき、使用量に係る情報を通信回線を介して情報端末に要求し、情報端末は、課金手段からの要求に基づき複数の計測手段より使用量に係る情報を収集するよう構成し、さらに、1つの集中管理端末が、所定の時期に、複数の課金手段に対して課金対象者のリストアップを指示するとともに、使用量に係る情報の要求指示を行うよう構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。

[相違点3について]
通信回線に接続された金融機関側端末が、課金手段からの使用量に係る情報を受け取ると、口座からの自動引き落としを行うことは、周知の事項(以下「周知事項2」という。)である。
(例えば、特開平10-021485号公報(以下「周知例3」という。)には、
「【0044】請求項22の発明に係る電力、ガス又は水道消費量の総合計測システムは、各地域に設けられた前記地域通信ネットワークと、前記各地域通信ネットワークに設けられたデータ伝送装置と、前記各地域集中計算機が接続された前記広域通信ネットワークと、前記各広域通信ネットワークに設けられたデータ伝送装置とを、電気、ガス、水道のうちの少なくとも2種類以上の計測を行い得るように、互いに接続するようにしたものである。
(途中略)
【0046】請求項24の発明に係る電力、ガス又は水道消費量の総合計測システムは、各地域に設けられた前記地域通信ネットワーク及び前記広域通信ネットワークに、各消費者が口座を有する各金融機関の計算機をデータ伝送手段及び通信ネットワークで接続することで、各消費者の電力、ガス、水道料金を各消費者の口座から自動引き落としするようにしたものである。」と記載されている。)
してみると、引用例発明に上記周知事項2を適用し、もって、通信回線に接続された金融機関側端末が、課金手段からの使用量に係る情報を受け取ると、口座からの自動引き落としを行うよう構成することは、当業者が容易に想到することができたものである。

以上のとおりであることから、相違点1乃至相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用例発明、周知事項1及び周知事項2から当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例発明、周知事項1及び周知事項2から当業者が予測できる範囲のものである。


したがって、本願補正発明は、引用例発明、周知事項1及び周知事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


2-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について

3-1.本願発明
平成17年5月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年9月6日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「 複数のエネルギーそれぞれの使用量を計測する、前記複数のエネルギーそれぞれに対応する複数の計測手段と、
1つの集中管理端末によって管理され、前記1つの集中管理端末からの指示に基づき前記使用量に係る情報を要求する、前記複数の計測手段に対応して設けられた複数の課金手段と、
前記課金手段からの要求に基づき前記複数の計測手段より前記使用量に係る情報を収集し、収集した前記情報を前記課金手段に送信する情報端末とを有し、
前記1つの集中管理端末は、所定の条件を満たしたときに、前記複数の課金手段に対して前記使用量に係る情報の要求指示を行う
ことを特徴とする自動課金システム。 」


3-2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された、特開2000-346671号公報(以下「引用例」という。)に記載される事項は、前記「2-3.(2)」に記載したとおりである。


3-3.対比、判断
本願発明は、本願補正発明から、前記2-2.に記載される補正事項の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2-3.(3)(4)」にて対比・判断したとおり、引用例発明、周知事項1及び周知事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明は、本願補正発明と同様の理由により、引用例発明、周知事項1及び周知事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明、周知事項1及び周知事項2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例発明、周知事項1及び周知事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明、周知事項1及び周知事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-28 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-16 
出願番号 特願2001-104179(P2001-104179)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 小山 満
山本 穂積
発明の名称 自動課金システム及び自動課金方法  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  
代理人 木村 明隆  

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