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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1195124
審判番号 不服2006-12909  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-22 
確定日 2009-04-02 
事件の表示 平成 8年特許願第319069号「携帯型情報通信機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月19日出願公開、特開平10-164401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 経緯
1 手続
本願は、平成8年11月29日の出願であって、平成18年5月15日付けで拒絶査定された。
本件は、本願についてされた上記拒絶査定を不服とする平成18年6月22日の審判請求である。

2 査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

理 由
本願の請求項1ないし2に係る発明は、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開平8-307550号公報
刊行物2:特開平7-168529号公報
刊行物3:特開平3-222582号公報
刊行物4:特開平8-140072号公報
刊行物5:特開平7-297793号公報


第二 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成18年1月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載される発明のとおりであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう)は、平成18年1月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される事項により特定される、以下のとおりのものである。

「マイクとスピーカとカメラを備え、通話モードおよびカメラ撮影モードを含む複数の動作モードを有する携帯型情報通信機であって、
前記携帯型情報通信機の筐体の長手方向に表示画面の長辺が配置され、前記カメラから出力された動画像を文字とともに前記表示画面に表示可能な表示手段と、
前記複数の動作モードから1つのモードの選択を指示する指示手段と、
前記指示手段により前記通話モードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が縦長となる表示方向に表示し、前記カメラ撮影モードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が横長となる表示方向に前記カメラから出力された動画像とともに表示するように制御する制御手段と、を備え、
前記マイクは前記筐体の長手方向の一方の端部近辺に配置され、前記スピーカはもう一方の端部近辺に配置されていることを特徴とする携帯型情報通信機。」


第三 当審の判断
1 刊行物
(1)刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平8-307550号公報)には、図面と共に、以下の記載がある。

(ア)「【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ(以下FAX)の送信、受信機能を有する携帯電話装置に関するものである。
・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のような従来技術の問題点を改善するものであり、小型化が可能で、しかも操作性の極めて優れたFAX機能付きの携帯電話装置を提供するものである。」(段落【0001】?【0006】)

(イ)「【課題を解決するための手段】本発明は、ファクシミリ送信を行うべき画像データを手書き入力するとともに受信されたファクシミリ画像データを表示するための長方形状の入力表示装置を有し、ファクシミリの送受信を無線回線を介して行うよう構成されたファクシミリ機能を有する携帯電話装置において、前記入力表示装置の長手方向に一致する第一の方向と、該長手方向と垂直な第二の方向の2方向に回動自在に設けられると共にファクシミリ画像データおよび音声データの送受信を行うためのアンテナと、該アンテナの回動方向位置を検出するための検出スイッチと、該検出スイッチの検出結果に基づいて前記入力表示装置の表示方向を切り換える制御手段とを有することを特徴とするものである。
また本発明は、前記制御手段が、前記アンテナが前記入力表示装置の長手方向に一致する第一の方向にある時には前記入力表示手段の表示を縦長に表示し、前記アンテナが前記入力表示手段の長手方向とは垂直な第二の方向に設定されるときは前記入力表示手段の表示を横長に表示するよう制御することを特徴とするものである。
また本発明は、ファクシミリ送信を行うべき画像データを手書き入力するとともに受信されたファクシミリ画像データを表示するための長方形状の入力表示装置を有し、ファクシミリの送受信を無線回線を介して行うよう構成されたファクシミリ機能を有する携帯電話装置において、前記入力表示装置の長手方向に一致する第一の方向と、該長手方向と垂直な第二の方向の2方向に回動自在に設けられると共にファクシミリ画像データおよび音声データの送受信を行うためのアンテナと、該アンテナの回動方向位置を検出するための検出スイッチと、該検出スイッチの検出結果に基づいて前記入力表示装置の表示方向を切り換えるとともにファクシミリモードと携帯電話モードのモードを切り換えるよう制御する制御手段とを有することを特徴とするものである。
さらに本発明は、前記制御手段は前記アンテナが前記入力表示装置の長手方向に一致する第一の方向にある時には前記入力表示手段の表示を縦長に表示するとともに携帯電話モードに設定し、前記アンテナが前記入力表示手段の長手方向とは垂直な第二の方向に設定されるときは前記入力表示手段の表示を横長に表示するとともにファクシミリモードに設定するよう制御することを特徴とするものである。
【作用】請求項1および2記載のファクシミリ機能を有する携帯電話装置においては、アンテナの方向に従って入力表示手段に表示される画面の方向が制御され、装置を縦長にして使用する場合には、アンテナを入力表示手段の長手方向と同じ方向に向けることにより縦長表示に設定され、装置を横長にして使用する際には、アンテナを入力表示手段の長手方向と垂直な方向に回転させることにより横長表示に設定される。
また、請求項3および4記載のファクシミリ機能を有する携帯電話装置においては、表示の切換と同時に、携帯電話モードもしくはファクシミリモードの動作モードの切換が行われる。」(段落【0007】?【0012】)

(ウ)「【実施例】以下図面に従って本発明によるファクシミリ機能付き携帯電話装置の実施例を説明する。図1は本発明の外観を示す図であり、同図(A)は側面図、(B)は正面図である。図に示すように装置本体100の正面にはほぼ全領域にわたって、長方形状の入力表示装置101が設けられている。この入力表示装置100はたとえばデジタイザと液晶ディスプレイを組み合わせたものであり、図示しない装置付属の入力ペンによって、任意の文字や図形の手書き入力を行えると共に、ディスプレイに表示されるテンキーやアイコンをタッチする事により所定の入力が行える。装置本体100の側面には受話用スピーカ102および送話用マイクロホン103が設けられており、本装置を通常の携帯電話として使用する場合にはこれらを耳と口に合わせて通話を行う。
104はアンテナであり、このアンテナ104は図2に示すように、装置本体100に回動支軸105を中心に180度にわたって回動自在に設けられている。そしてこのアンテナ104は、待ち受け時等の非使用時は破線104’に示すように装置本体100に収納されるとともに、装置を携帯電話として、もしくはFAXとして使用する際には、実線104で示すような長方形状の入力表示装置101の長手方向と一致する第一の方向、もしくは破線104''で示すような入力表示装置の長手方向と垂直な第二の方向に回動される。
追って詳説するように、このアンテナ104の回動方向は検出スイッチ106により検出されると共に、検出結果に従って制御回路により入力表示装置101の表示、および装置の動作モードが切り換えられる。」(段落【0013】?【0015】)

(エ)「図4は本発明の装置を携帯電話として使用する場合を示した斜視図である。この場合アンテナ104は入力表示装置101の長手方向に一致した方向に設定される。このアンテナ104の方向が検出スイッチ106で検出されるとモード切換回路121を介してシステム制御回路122、表示制御回路119が共同し、装置を携帯電話モードに設定する。すなわち、入力表示装置101には図4に示すように、テンキー123、各種ファンクションキー124等が表示される。この状態で付属の入力ペン、若しくは指で直接テンキー123を操作すると、この操作が入力検出回路120にて検出され、システム制御回路122の制御によりダイヤリングが行われ、通話が行える。
図5は本発明の装置をFAXモードで使用する場合を示した図である。すなわち、アンテナ104を入力表示装置101の長手方向に対して垂直な方向に回動されたことが検出スイッチ106で検出されると、モード切換回路121を介してシステム制御回路122、表示制御回路119が共同し、装置をFAXモードに設定する。すなわち、入力表示装置101には図5に示すように、テンキー125、各種機能アイコン126および送信画像手書き入力エリア127が表示される。この状態で付属の入力ペンにより、送信したい画像を送信画像手書き入力エリア127に手書き入力する。入力された画像は一旦ページメモリ116に記憶され、その後所定の操作により、FAXユニット113によって符号化が行われると共に、FAXモデム118を介してFAXデータが送信される。
通常、FAX送信される画像は横書きにて入力される場合が多く、FAXモードで使用する際は、装置本体100を横長にして使用される場合が多い。・・・(以下略)」(段落【0020】?【0022】)

(オ)「【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によるFAX機能付き携帯電話装置においては、長方形状の入力表示装置の使用方向に対するアンテナの向きに応じて、携帯電話モードとFAXモードのいずれかのモード設定を行うように構成したので、・・・(略)・・・
また、アンテナの向きを変えるだけでモードの切換を行うことが出来、操作性の極めて優れた装置を提供する事が出来る。」(段落【0023】?【0024】)

(2)刊行物1に記載された発明
ア FAX機能付き携帯電話装置
上記(ア)(オ)によれば、刊行物1には、FAX機能付き携帯電話装置が記載されているといえる。

イ 送話用マイクロホンと受話用スピーカ
上記(ウ)によれば、刊行物1のFAX機能付き携帯電話装置は、送話用マイクロホンと受話用スピーカを備えているといえる。

ウ 複数の動作モード
上記(イ)(オ)によれば、刊行物1のFAX機能付き携帯電話装置は、携帯電話モードおよびFAXモードの複数の動作モードを有するといえる。

エ 入力表示装置
上記(イ)(ウ)及び図1によれば、刊行物1のFAX機能付き携帯電話装置は、前記FAX機能付き携帯電話装置の筐体の長手方向に表示画面の長辺が配置される入力表示装置を備えているといえ、その表示画面には、上記(エ)及び図5によれば、手書き入力された送信したい画像をテンキー等の文字とともに表示可能であるいえる。
以上によれば、刊行物1のFAX機能付き携帯電話装置は、前記FAX機能付き携帯電話装置の筐体の長手方向に表示画面の長辺が配置され、手書き入力された送信したい画像をテンキー等の文字とともに前記表示画面に表示可能な入力表示装置を備えているといえる。

オ モードの選択を指示する回動可能なアンテナ
上記(イ)(ウ)(オ)によれば、刊行物1のFAX機能付き携帯電話装置は、前記複数の動作モードから1つのモードの選択を指示する回動可能なアンテナを備えているといえる。

カ 表示制御回路
上記(イ)(エ)及び図4、図5によれば、刊行物1のFAX機能付き携帯電話装置は、前記アンテナの回動方向により前記携帯電話モードの選択が指示された場合はテンキー等の文字を前記表示画面が縦長となる表示方向に表示し、前記FAXモードの選択が指示された場合はテンキー等の文字を前記表示画面が横長となる表示方向に手書き入力された送信したい画像とともに表示するように制御する表示制御回路を備えているといえる。

キ 送話用マイクロホンと受話用スピーカの配置
上記(ウ)及び図1によれば、刊行物1のFAX機能付き携帯電話装置は、前記送話用マイクロホンは前記筐体の長手方向の一方の端部近辺に配置され、前記受話用スピーカはもう一方の端部近辺に配置されているといえる。

ク まとめ
上記ア?キによれば、刊行物1に記載された発明(以下「刊行物1発明」という)として、以下のとおりのものを認定することができる。

「送話用マイクロホンと受話用スピーカを備え、携帯電話モードおよびFAXモードの複数の動作モードを有するFAX機能付き携帯電話装置であって、
前記FAX機能付き携帯電話装置の筐体の長手方向に表示画面の長辺が配置され、手書き入力された送信したい画像をテンキー等の文字とともに前記表示画面に表示可能な入力表示装置と、
前記複数の動作モードから1つのモードの選択を指示する回動可能なアンテナと、
前記アンテナの回動方向により前記携帯電話モードの選択が指示された場合はテンキー等の文字を前記表示画面が縦長となる表示方向に表示し、前記FAXモードの選択が指示された場合はテンキー等の文字を前記表示画面が横長となる表示方向に手書き入力された送信したい画像とともに表示するように制御する表示制御回路と、を備え、
前記送話用マイクロホンは前記筐体の長手方向の一方の端部近辺に配置され、前記受話用スピーカはもう一方の端部近辺に配置されているFAX機能付き携帯電話装置。」

2 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
(1)携帯型情報通信機
刊行物1発明の「FAX機能付き携帯電話装置」は、本願発明でいう「携帯型情報通信機」といえるものである。

(2)マイクとスピーカ
刊行物1発明の「送話用マイクロホン」と「受話用スピーカ」は、それぞれ、本願発明の「マイク」と「スピーカ」に相当するから、刊行物1発明の「送話用マイクロホンと受話用スピーカ」を備える構成は、本願発明の「マイクとスピーカ」を備える構成と相違しない。

(3)カメラ
刊行物1発明は、本願発明の「カメラ」に相当する構成を備えていない点で相違が認められる。

(4)複数の動作モード
刊行物1発明の「携帯電話モード」は、本願発明の「通話モード」に相当するといえるので、両者は、「通話モードおよび通話モードと異なる別のモードを含む複数の動作モードを有する」点で一致しているといえるものの、「通話モードと異なる別のモード」が、刊行物1発明では、「FAXモード」であるのに対し、本願発明では、「カメラ撮影モード」である点で相違が認められる。

(5)表示手段
刊行物1発明の「テンキー等の文字」は、本願発明でいう「文字」といえるから、刊行物1発明の「前記FAX機能付き携帯電話装置の筐体の長手方向に表示画面の長辺が配置され、手書き入力された送信したい画像をテンキー等の文字とともに前記表示画面に表示可能な入力表示装置」は、文字とともに表示される画像が異なる点を除き、本願発明の「前記携帯型情報通信機の筐体の長手方向に表示画面の長辺が配置され、画像を文字とともに前記表示画面に表示可能な表示手段」に相当するといえる。もっとも、上記(3)に関連し、刊行物1発明は、「カメラ」を備えていないため、文字とともに表示される画像が「前記カメラから出力された動画像」ではない点で相違が認められる。

(6)指示手段
本願発明の「前記複数の動作モードから1つのモードの選択を指示する指示手段」は、明細書段落【0016】の「次に、タッチキー6a?6jを選択して、カメラ映像撮影を指示すると、携帯型情報通信機1は図2に示す様にカメラ頭部3の映像をカラー液晶表示部2に横長表示される。」という記載、及び、明細書段落【0019】の「そして、タッチキーからのカメラ撮影指示では、横長表示に変換された映像信号61の端子64側にスイッチ73を切換える。また、タッチキーからの通話指示では、縦長表示の映像信号53の端子62に切換えられる。」という記載に照らせば、人間が選択を指示するものをいうと解されるところ、刊行物1発明の「アンテナ」も、人間が動かすことによって、動作モードの選択を指示するものである。よって、刊行物1発明の「前記複数の動作モードから1つのモードの選択を指示する回動可能なアンテナ」は、本願発明の「前記複数の動作モードから1つのモードの選択を指示する指示手段」と相違しない。

(7)制御手段
刊行物1発明の「テンキー等の文字」は、本願発明でいう「文字」といえるから、刊行物1発明の「前記モード切換回路により前記携帯電話モードの選択が指示された場合はテンキー等の文字を前記表示画面が縦長となる表示方向に表示し」は、本願発明の「前記指示手段により前記通話モードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が縦長となる表示方向に表示し」に相当するといえ、また、刊行物1発明の「前記FAXモードの選択が指示された場合はテンキー等の文字を前記表示画面が横長となる表示方向に手書き入力された送信したい画像とともに表示するように制御する」は、「通話モードとは異なる別のモード」が「カメラ撮影モード」である点、及び、文字とともに表示される画像が異なる点を除き、本願発明の「前記(カメラ撮影)モードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が横長となる表示方向に画像とともに表示する」に相当するといえる。
以上によれば、刊行物1発明と本願発明とは、「前記指示手段により前記通話モードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が縦長となる表示方向に表示し、前記通話モードとは異なる別のモードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が横長となる表示方向に画像とともに表示するように制御する制御手段」を備える点で一致しているといえる。もっとも、文字を表示画面が横長となる表示方向に表示を行うのが、刊行物1発明では、「FAXモード」の選択が指示された場合であるのに対し、本願発明では、「カメラ撮影モード」の選択が指示された場合である点、及び、上記(5)と同様に、刊行物1発明は、「カメラ」を備えていないため、文字とともに表示される画像が「前記カメラから出力された動画像」ではない点で相違していると認められる。

(8)マイクとスピーカの配置
刊行物1発明における、「送話用マイクロホンと受話用スピーカ」を備え、「前記送話用マイクロホンは前記筐体の長手方向の一方の端部近辺に配置され、前記受話用スピーカはもう一方の端部近辺に配置され」とする構成は、本願発明における、「マイクとスピーカ」を備え、「前記マイクは前記筐体の長手方向の一方の端部近辺に配置され、前記スピーカはもう一方の端部近辺に配置され」とする構成と相違しない。

3 一致点、相違点
本願発明と刊行物1発明との上記対比によれば、本願発明と刊行物1発明とは、
[一致点]
「マイクとスピーカを備え、通話モードおよび通話モードとは異なる別のモードを含む複数の動作モードを有する携帯型情報通信機であって、
前記携帯型情報通信機の筐体の長手方向に表示画面の長辺が配置され、画像を文字とともに前記表示画面に表示可能な表示手段と、
前記複数の動作モードから1つのモードの選択を指示する指示手段と、
前記指示手段により前記通話モードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が縦長となる表示方向に表示し、前記通話モードとは異なる別のモードの選択が指示された場合は文字を前記表示画面が横長となる表示方向に画像とともに表示するように制御する制御手段と、を備え、
前記マイクは前記筐体の長手方向の一方の端部近辺に配置され、前記スピーカはもう一方の端部近辺に配置されていることを特徴とする携帯型情報通信機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明は、「カメラ」を備え、文字とともに表示される画像が「前記カメラから出力された動画像」であり、また、「通話モードとは異なる別のモード」が「カメラ撮影モード」であって、文字を表示画面が横長となる表示方向に表示を行うのが「カメラ撮影モード」の選択が指示された場合であるのに対し、
刊行物1発明は、「カメラ」を備えておらず、そのため、文字とともに表示される画像が「前記カメラから出力された動画像」ではなく、また、「通話モードとは異なる別のモード」が「FAXモード」であって、文字を表示画面が横長となる表示方向に表示を行うのが「FAXモード」の選択が指示された場合である点。

4 判断
上記相違点について検討する。
携帯電話装置に「カメラ」を設け、「カメラ撮影モード」に切り換えて撮影することは周知であるから、携帯電話装置である刊行物1発明の「通話モードとは異なる別のモード」としての「FAXモード」に代えて、「カメラ撮影モード」とし、刊行物1発明における「FAX機能付き」を「カメラ撮影機能付き」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、このとき、「カメラ」を設けることになること、「カメラ撮影モード」の選択が指示された場合に、刊行物1発明における「手書き入力された送信したい画像」に代えて、カメラ撮影モードにおける画像を表示することは当然である。
そして、カメラ撮影装置としてごく普通の電子スチルカメラを想定するに、一般に電子スチルカメラにおいて、筐体背面の表示手段を電子ファインダとして使用することは常であり、また、筐体背面の表示手段にカメラで撮影した動画像(カメラから出力された動画像)を表示すること、及び、撮影に関する文字を表示画面が横長となる表示方向にカメラから出力された動画像とともに表示することは、ともに周知技術である(下記周知例1の特に第7図、下記周知例2の特に図11、図22?24等参照)。ここで、文字の表示方向をこのようにする理由は、筐体背面の表示手段を電子ファインダとして使用する電子スチルカメラは、表示画面が横長となる使用態様、つまり表示手段の表示画面を横長として用いることが標準であり、そうすることが基本の使用態様とみなされているからである(下記周知例1、2参照)。
さらに、刊行物1発明の「FAXモード」において、「表示画面を横長として用い、文字を表示画面が横長となる表示方向に表示を行う」ように設定しているのは、「FAXモード」では通常、送信される画像は横書きにて入力される場合が多い(刊行物1の段落【0022】)ことによるとしていることから、刊行物1に接した当業者は、「表示画面を縦長として用い、文字を表示画面が縦長となる表示方向に表示を行う」とするか、「表示画面を横長として用い、文字を表示画面が横長となる表示方向に表示を行う」とするかは、動作モード毎の表示入力装置の使用態様を考慮し、その利便性に応じて設定すればよいと普通に理解するものである。
そうすると、刊行物1発明の「通話モードとは異なる別のモード」としての「FAXモード」に代えて「カメラ撮影モード」とするとき、「カメラ撮影モード」の選択が指示された場合に、文字とともに表示する画像である「手書き入力された送信したい画像」に代え、カメラ撮影時の画像として周知の「カメラから出力された動画像」とすることが格別困難であるともいえないし、電子スチルカメラとしての上記基本の使用態様を考慮すれば、「表示画面を横長として用い、文字を表示画面が横長となる表示方向に表示を行う」ことが格別困難であるともいえない。
以上のとおりであるから、上記相違点に係る構成は当業者が容易になし得たものである。

記(周知例)
周知例1:特開平3-263992号公報(第3頁左上欄第9行?同頁右上欄第14行、第4頁右下欄第11行?第5頁左上欄第17行、第1図、第4図、第7図参照)
周知例2:特開平5-75966号公報(段落【0050】?【0051】、段落【0108】、段落【0111】、図11、図22?24参照)

5 効果等
本願発明の作用効果は、刊行物1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものであるとは認められない。

6 請求人の主張
請求人は、請求の理由において、刊行物1は、FAXモードであることをもって表示画面の向きを異ならせることについて記載されておらず、ましてや、FAXモードに切り換えると、表示画面に表示する文字の表示方向を制御することについて記載も示唆もされていない旨主張している。しかし、刊行物1においては、アンテナを動かすことで携帯電話モードからFAXモードに切り換わり、それに連動して、表示画面の文字の表示方向が、携帯電話
モードである図4の表示態様(少なくともテンキーの数字を、表示画面が縦長となる表示方向に表示している)から、FAXモードである図5の表示態様(少なくともテンキーの数字を、表示画面が横長となる表示方向に表示している)に切り換わっており、「FAXモードに切り換えると、表示画面に表示する文字の表示方向を制御すること」については、刊行物1に記載されているといえる。よって、出願人の当該主張は採用できない。

また、請求人は、請求の理由において、刊行物1のFAXモードでは、「撮影時の安定性」の問題が発生することがなく、また、FAX送信される画像に応じて装置本体を横長か縦長にして使用するものであるため、たとえFAXとカメラの機能を上位概念化した結果により「広義の画像処理モード」で共通化されたとしても、FAXモードが選択されることにより表示画面に表示する文字の表示方向を制御することに想到する契機がない旨主張している。しかし、カメラにおいて「撮影時の安定性」は一般的な技術課題であって、カメラ撮影時の安定性を高めブレを防止するため、カメラの長手方向を両手で保持して撮影することは、通常行われていることであるから、上記相違点に係る構成を採用した際には、筐体を両手で保持して、カメラ撮影時の安定性を高めブレを防止できることは当然のことに過ぎない。また、「FAXモードが選択されることにより表示画面に表示する文字の表示方向を制御すること」は、上記のように刊行物1に記載されているといえる。よって、出願人の当該主張は採用できない。

7 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第四 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、残る請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-02 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-16 
出願番号 特願平8-319069
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江嶋 清仁清田 健一  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 小池 正彦
岩井 健二
発明の名称 携帯型情報通信機  
代理人 井上 学  

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