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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1195151
審判番号 不服2006-29034  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-28 
確定日 2009-04-02 
事件の表示 平成 8年特許願第230159号「パチンコ機の受け皿」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月17日出願公開、特開平10- 71255〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年8月30日に出願されたものであって、平成18年11月2日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月28日付けで本件拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年1月25日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年1月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「遊技球を収容可能な窪み部を有しており、その窪み部の内壁がパチンコ機の賞球払出口の前方を覆うように、パチンコ機の本体前面に突設される受け皿であって、
前記窪み部の底面は、プラスチックで形成されており、前記賞球払出口側から発射装置へ遊技球を供給する球送り機構側に向かって斜め下がりに傾斜するように形成されると共に、該底面の賞球払出口側端部の部分が、該賞球払出口の出口部下辺と略同一の高さに形成され、
前記賞球払出口の前方に位置している前記窪み部の内壁の上辺が、賞球払出口の最高位置より高くなっていることを特徴とするパチンコ機の受け皿。」
と補正された(下線部が補正により追加された事項)。
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「窪み部の底面」について「プラスチックで形成されており」との限定を付加したものであるので、平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか検討する。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭61-129513号(実開昭63-38569号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(1-ア)
「本考案は、パチンコ機の賞球排出樋と開閉パネル前面に設けられている球供給皿との間を接続し、賞球排出樋内を流下する賞球を球供給皿に案内して排出させる接続樋に関するものである。」(第2頁1?4行)

(1-イ)
「パチンコ機1は、第1図に示すように、窓部を有する額縁状の前面枠2の裏面に遊技盤収納フレーム(図示せず)を固定し、・・・前面枠2の窓部には、ガラス枠10と開閉パネル11を各々開閉可能に蝶着し、開閉パネル11の表側には第2図に示すように球供給皿12を設け、開閉パネル11の裏側には第3図に示すように球供給皿12の底部の傾斜上端が臨む開閉パネル11の一側に接続樋13を取付け、他側に球供給機構14を設けてある。」(第5頁3?19行)

(1-ウ)
「接続樋13は、第4図に示すように、賞球排出樋8の出口9に接続可能な横長な略矩形の入口開口部15と、球供給皿12に連通する横長な略矩形の出口開口部16とを有する断面略四角形の短尺な合成樹脂製の筒材であって、」(第5頁20行?第6頁4行)

(1-エ)
「球供給皿12内には賞球が一箇所に溜まることなく万遍なく分散した状態で溜まる」(第10頁11?12行)」

(1-オ)
「球供給皿12は、接続樋13の出口開口部16に対向する内側面の上端から接続樋13の出口開口部16に向けてほぼ水平方向に延出した飛出防止部35を形成してある。したがって、接続樋13の出口開口部16から勢いよく排出された賞球が球供給皿12の内側面に衝接して跳ね上っても、これらの賞球は飛出防止部35に当って球供給皿12内に落下する。」(第10頁13?20行)

上記摘記した(1-エ)、第1図及び第2図より、「球供給皿12」は、「賞球」が溜まる「窪み部」を有し、該「窪み部」は「出口開口部16」の前方に位置していることが分かり、また、上記摘記した(1-オ)及び第5図を併せて勘案すれば、この「窪み部」の内側面が「出口開口部16」の前方を覆うように設けられていることも明らかである。さらに、第5図から、「窪み部」の内側面の上辺が、「出口開口部16」の最高位置より高くなっていることが分かる。
以上の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「賞球が溜まる窪み部を有しており、その窪み部の内側面がパチンコ機1の出口開口部16の前方を覆うように、パチンコ機1の前面枠2の窓部に開閉可能に螺着された開閉パネル11の表側に設けられる球供給皿12であって、
前記窪み部の底部の傾斜上端が臨む開閉パネル11の一側に接続樋13を取付け、他側に球供給機構14を設け、
前記出口開口部16の前方に位置している前記窪み部の内側面の上辺が、出口開口部16の最高位置より高くなっているパチンコ機1の球供給皿12。」

3.本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「賞球」は本願補正発明の「遊技球」に相当し、
以下同様に「溜まる」は「収容可能な」に、「内側面」は「内壁」に、「出口開口部16」は「賞球払出口」に、「表側に設けられ」は「前面に突設され」に、「球供給皿12」は「受け皿」に、「底部」は「底面」に、「球供給機構14」は「発射装置へ遊技球を供給する球送り機構」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用文献1における「前面枠2」あるいはこれに螺着される「開閉パネル11」は「パチンコ機1」の「本体」を構成するものである。

b.引用発明における「窪み部の底部」は、その傾斜上端となる一側に「接続樋13」が、また、その反対側となる他側に「球供給機構14」が設けられ、上記摘記した(1-ウ)より、該「接続樋13」は「出口開口部16」にて「球供給皿」に連通するものであるから、「窪み部の底部」が、「出口開口部16」側から「球供給機構14」側に向かって斜め下がりに傾斜するように形成されていることは明らかである。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「遊技球を収容可能な窪み部を有しており、その窪み部の内壁がパチンコ機の賞球払出口の前方を覆うように、パチンコ機の本体前面に突設される受け皿であって、
前記窪み部の底面は、前記賞球払出口側から発射装置へ遊技球を供給する球送り機構側に向かって斜め下がりに傾斜するように形成されると共に、
前記賞球払出口の前方に位置している前記窪み部の内壁の上辺が、賞球払出口の最高位置より高くなっているパチンコ機の受け皿。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は、窪み部の底面が「プラスチックで形成され」ているのに対し、引用発明は、素材について限定がない点。

<相違点2>
本願補正発明は、「窪み部」「底面の賞球払出口側端部の部分が、賞球払出口の出口部下辺と略同一の高さに形成され」ているのに対し、引用発明では、そのように形成されているか明らかでない点。

4.相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断
<相違点1>について
受け皿の底面ひいては受け皿全体をプラスチックで形成することは、例えば、原査定の拒絶の理由で示した特開平8-126755号公報(特に、段落【0022】参照)に記載されるように、パチンコ機において従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。)であるから、引用発明において、当該周知技術1を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、パチンコ機の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に想到し得るものである。

<相違点2>について
請求人は、平成19年1月25日付け手続補正書(方式)にて「「賞球払出口」の出口部下辺と受け皿の「窪み部の底面」とを「略同一の高さ」にすることによって、「賞球払出口」から高く跳ね上がって出てきた賞品球の運動エネルギーが、「窪み部の底面」に落下衝突した際に必ず減少するため、「窪み部の底面」で、再度跳ね上がる高さを低くすることができ、「賞球払出口」から払い出される賞品球の「受け皿」からの飛び出しを防止することに大いなる効果を奏」(第5頁14-19行)する旨主張する。しかし、これはあくまで「賞球払出口」の前方に位置している「窪み部」「底面」と「賞球払出口の出口部下辺」の間に存在する段差の有無に起因した効果であるところ、本願補正発明は、「賞球払出口側端部」において、「窪み部」「底面」が「賞球払出口の出口部下辺」と「略同一の高さに形成され」と規定するものであり、「賞球払出口」の前方に位置している「窪み部」「底面」と「賞球払出口の出口部下辺」との高さ関係を規定するものではない。本願の【図3】を参酌するに、「賞球払出口」の前方に位置している「窪み部」「底面」と「賞球払出口の出口部下辺」との間に全く段差が無いとはいえず、引用文献1(特に第5図)に開示されたものと格別な差異があるとは認められない。
さらに、球供給皿の底面の賞球払出口側端部の部分と賞球払出口の出口部下辺との高さを略同一にする点は、例えば特開平8-19648号公報(特に、【図1】、【図3】及び【図4】参照)、特開平5-76653号公報(特に、【図1】-【図4】参照)に示すとおり、パチンコ機において従来周知の技術(以下、「周知技術2」という)である。したがって、同周知技術2に従い、引用発明において「球供給皿12」の底面の「開口出口部15」側端部の部分を「開口出口部15」の出口部下辺と略同一の高さに形成すること、すなわち相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、適宜なし得る設計事項である。

以上述べたとおり、相違点1、2に係る本願補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これらの構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月10日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技球を収容可能な窪み部を有しており、その窪み部の内壁がパチンコ機の賞球払出口の前方を覆うように、パチンコ機の本体前面に突設される受け皿であって、
前記窪み部の底面は、前記賞球払出口側から発射装置へ遊技球を供給する球送り機構側に向かって斜め下がりに傾斜するように形成されると共に、該底面の賞球払出口側端部の部分が、該賞球払出口の出口部下辺と略同一の高さに形成され、
前記賞球払出口の前方に位置している前記窪み部の内壁の上辺が、賞球払出口の最高位置より高くなっていることを特徴とするパチンコ機の受け皿。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.本願発明の進歩性の判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明における「前記窪み部の底面は、プラスチックで形成されており、前記賞球払出口側から発射装置へ遊技球を供給する球送り機構側に向かって斜め下がりに傾斜するように形成されると共に」との発明特定事項から「プラスチックで形成されており」との限定事項を省いたものに実質的に相当する。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」に述べたとおり、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、周知技術1は「窪み部の底面」を「プラスチックで形成」することに関するものであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されるべきものであり、本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-28 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-17 
出願番号 特願平8-230159
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 俊久  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 森 雅之
河本 明彦
発明の名称 パチンコ機の受け皿  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  
代理人 田中 裕人  
代理人 山中 郁生  

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