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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1195153
審判番号 不服2007-1936  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2009-04-02 
事件の表示 特願2000-200116「筒内噴射式火花点火内燃機関」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月18日出願公開、特開2002- 13420〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年6月28日の出願であって、平成18年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年4月26日に意見書が提出されたが、同年11月10日付けで拒絶査定がなされ、平成19年1月18日に同拒絶査定に対する審判請求がなされる共に手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされ、その後に当審において平成20年10月16日付けで審尋がなされ、それに対して同年12月16日に回答書が提出されたものである。

2.本件補正の内容
平成19年1月18日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、出願当初の)下記の(ロ)に示すものを下記の(イ)に示すものと補正するものである。

(イ)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 機関始動時において、一部気筒だけへ燃料を噴射して一部気筒運転を実施した後に、全気筒へ燃料を噴射して全気筒運転を実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、燃料噴射圧力が設定値以上となる時に前記全気筒運転を開始すると共に、機関排気系に配置された触媒装置を暖機するために、前記全気筒において暖機制御を開始することを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機関。」

(ロ)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 機関始動時において、一部気筒だけへ燃料を噴射して一部気筒運転を実施した後に、全気筒へ燃料を噴射して全気筒運転を実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、機関排気系に配置された触媒装置を暖機するための前記一部気筒における暖機制御程度は、前記全気筒運転時に比較して前記一部気筒運転時には小さくされることを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機関。
【請求項2】 前記一部気筒における暖機制御は、前記一部気筒運転時には中止されることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
【請求項3】 前記一部気筒を除く気筒の暖機制御は、前記全気筒運転開始から所定期間経過後に開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
【請求項4】 機関始動時において、一部気筒だけへ燃料を噴射して一部気筒運転を実施した後に、全気筒へ燃料を噴射して全気筒運転を実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、燃料噴射圧力が設定値以上となる時に前記全気筒運転を開始すると共に、機関排気系に配置された触媒装置を暖機するために、前記全気筒において暖機制御を開始することを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機関。」

3.本願発明
本件補正は、本件補正前の(すなわち、出願当初の)特許請求の範囲の請求項1ないし3の削除に該当する。したがって、本願の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の(すなわち、出願当初の)特許請求の範囲の請求項4と同じであり、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、上記2.(イ)の請求項1に記載された事項により特定されるものである。

4.原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-80942号公報(平成12年3月21日公開。以下、単に「引用文献」という。)
(A)引用文献記載の事項
引用文献には、次の事項が図面と共に記載されている。
(a)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施の形態について説明すると、図1?図5は本発明の一実施形態としての内燃機関の始動制御装置を示すもので、図1はその要部ブロック図、図2はその内燃機関の構成図、図3はその制御内容を示すフローチャート、図4,図5はいずれもその効果を示す図である。
【0012】まず、本実施形態の始動制御装置を有する内燃機関(以下、エンジンという)について説明すると、このエンジンは、各シリンダ(気筒)内に直接燃料を噴射して点火プラグの点火により燃焼を行なう筒内噴射エンジンであり、ここでは、自動車用エンジンに用いられている。つまり、図2に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、各シリンダ3毎に、点火プラグ4と、燃焼室5内に直接開口する燃料噴射弁6とが設けられ、……」(段落【0011】及び【0012】)
(b)「【0027】図1はECU60によるエンジンの制御機能を示すブロック図であり、図1に示すように、ECU60には、始動時にエンジン制御を行なう機能(始動時制御手段、即ち、本実施形態の内燃機関の始動制御装置)61と、通常時(始動完了後)にエンジン制御を行なう機能(通常時制御手段)62とをそなえている。……
【0028】一方、始動時制御手段61は、始動時、即ち、キースイッチ53のポジションがスタータオン(即ち、クランキングスイッチオン)の状態になった時点から各気筒の燃焼室で確実な燃焼(完爆)が行なわれるようになった時点まで制御を行なう。なお、燃焼室で確実な燃焼が行なわるようになったか否かは、エンジン回転数Neが所定回転数Ne_(1)に達したか否かにより判定する。」(段落【0027】及び【0028】)
(c)「【0033】始動時燃料噴射気筒制限手段61Bは、始動時に所定の条件下では一部の気筒には燃料噴射を行なうが他の気筒には燃料噴射を行なわないように燃料噴射を行なう気筒を制限する。……」(段落【0033】)
(d)「【0043】本発明の一実施形態としての内燃機関の始動制御装置(始動時制御手段61)は、上述のように構成されているので、例えば図3に示すように、燃料噴射に関する始動時制御が行なわれる。……
【0049】一方、ステップS40?S70の制御条件の判定により、いずれも「Yes」であれは(「あれば」の誤記と認められる。)、……ステップS80に進み、燃料噴射気筒の制限制御を行なう。この制御は、例えば、直列4気筒エンジンの場合、気筒識別完了直後に第1気筒に燃料噴射を行なう番になっていれば、まず、この第1気筒に燃料噴射を行なって、次の第3気筒については燃料噴射を停止して、その次の第4気筒については燃料噴射を行ない、さらに次の第2気筒については燃料噴射を停止するというように、1つおきに燃料噴射を停止する。
【0050】なお、ステップS90に進んだ場合、次に、ステップS100に進み、エンジン回転数Neが所定回転数(始動完了回転数)Ne_(1)以下(Ne≦Ne_(1) )であるか否かを判定し、ここで、エンジン回転数Neが所定回転数(始動完了回転数)Neを上回ったら、始動時の燃料制御(空燃比リッチ化)が終了するので、燃料噴射気筒の制限制御も終了する。」(段落【0043】ないし【0050】)

(B)引用文献記載の発明
したがって、引用文献には、次の発明(以下、単に「引用文献記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「エンジン1の始動時において、一部の気筒だけへ燃料を噴射して一部気筒運転を実施した後に、全気筒へ燃料を噴射して全気筒運転を実施する筒内噴射エンジン1において、エンジン1の回転数が所定回転数を上回ったら前記全気筒運転を開始する筒内噴射エンジン1。」

5.対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、機能又は構成からみて、引用文献記載の発明における「エンジン1」が本願発明における「機関」に相当し、以下、同様に、「一部の気筒」が「一部気筒」に、「筒内噴射エンジン1」が「筒内噴射式火花点火内燃機関」にそれぞれ相当するものと認められる。
したがって、本願発明と引用文献記載の発明は、
「機関始動時において、一部気筒だけへ燃料を噴射して一部気筒運転を実施した後に、全気筒へ燃料を噴射して全気筒運転を実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、所定の条件を満たした時に前記全気筒運転を開始する筒内噴射式火花点火内燃機関。」
の点で一致し、次の(1)及び(2)の点で相違している。
(1)「所定の条件を満たした時」を、本願発明においては「燃料噴射圧力が設定値以上となる時」としているのに対して、引用文献記載の発明においては「エンジン1の回転数が所定回転数を上回ったら」としている点(以下、「相違点1」という。)。
(2)「全気筒運転を開始すると共に、」本願発明においては、「機関排気系に配置された触媒装置を暖機するために、前記全気筒において暖機制御を開始する」としたのに対して、引用文献記載の発明においては、「暖機制御」に関しては不明な点(以下、「相違点2」という。)。

6.判断
上記相違点1及び2について以下に検討する。
(1)相違点1について
「機関始動時」における「一部気筒運転」から「全気筒運転」への切換点を、本願発明のように「燃料噴射圧力が設定値以上となる時」とするか、引用文献記載の発明のように「エンジン1の回転数が所定回転数を上回ったら」とするかは、当業者が選択可能な設計事項にすぎない(なお、本願明細書及び図面において、図3に関するものは「機関回転数が設定回転数NE1となった時に一部気筒運転から全気筒運転へ切り換えるように」している。)。
しかも、エンジン始動時に2気筒運転から4気筒運転(全気筒運転)に切り換えるのに「燃料圧力」が「所定圧力」を超えた場合とすることが、平成20年10月16日付けの審尋における前置報告書に記載の特開平10-103175号公報(特に、段落【0028】ないし【0031】並びに【図4】及び【図5】に注意。)に記載されているし、また、「始動時」と「始動後」を区別するのに「燃料圧力」を利用することが特開平9-242586号公報に記載されている(なお、この公報には、「始動時」と「始動後」を区別するのに「エンジン回転数」を利用することも記載されている。)。
してみれば、引用文献記載の発明の「エンジン1の回転数が所定回転数を上回ったら」を「燃料噴射圧力が設定値以上となる時」と変更して、上記相違点1に係る本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。
(2)相違点2について
「機関排気系に配置された触媒装置を暖機するために、」「暖機制御」を行うことは、ごく普通に行われていることである(必要であれば、例えば、原査定の拒絶の理由に引用した特開平8-109836号公報及び平成20年10月16日付けの審尋における前置報告書に記載の特開平6-207545号公報参照。)。
そして、「暖機制御」の開始タイミングをどのように設定するかは、当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎない。
してみれば、引用文献記載の発明において、「全気筒運転を開始すると共に、」「全気筒において暖機制御を開始する」ようにすることにより、上記相違点2に係る本願発明の構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものであるともいえる。

また、本願発明を全体として検討しても、本願発明が引用文献記載の発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

7.まとめ
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-30 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-17 
出願番号 特願2000-200116(P2000-200116)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 信朗森藤 淳志  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 中川 隆司
森藤 淳志
発明の名称 筒内噴射式火花点火内燃機関  
代理人 鶴田 準一  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  

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