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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22D |
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管理番号 | 1195155 |
審判番号 | 不服2007-4468 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-14 |
確定日 | 2009-04-02 |
事件の表示 | 特願2004-17245「金属スラリー製造方法および金属スラリー製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年8月4日出願公開、特開2005-205478〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成16年1月26日の出願であって、その請求項1?4に係る発明は、平成18年12月6日付手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 溶融金属を傾斜冷却体へ注ぎ、この傾斜冷却体で前記溶融金属を冷却することにより、金属スラリーを製造する金属スラリー製造方法において、 前記傾斜冷却体に振動を与えるとともに、前記傾斜冷却体を冷却する、 ことを特徴とする金属スラリー製造方法。」 2.引用例とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-87771号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開2000-263213号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)引用例1:特開平9-87771号公報 (1a)「本発明においては,図1,図4に示すように,まず、(1)液相線に対して過熱度を300℃未満に保持したAl-Mg合金の溶湯を、その合金の融点よりも低い温度の治具に接触させて液中に結晶核を発生させ、・・・断熱効果を有する断熱容器に注ぎ、その断熱容器内において、所定の液相率まで,液相線温度以下でかつ共晶温度あるいは固相線温度より高い温度の状態に5秒間?60分間保持することで微細な粒状の初晶を多数発生させ、所定の液相率の半溶融Al-Mg合金を得る。」(4欄11?22行) (1b)「鋳造温度が融点に対して300℃以上高ければ、あるいは治具20の表面温度が融点以上の場合では、(1)結晶の核発生が少なく、しかも、(2)断熱効果を有する断熱容器に注がれた時の溶湯Mの温度が液相線よりも高いために残存する結晶核の割合も低く、初晶のサイズが大きくなる。このため、鋳造温度は液相線に対する過熱度が300℃未満とし、治具の表面温度は、合金の融点よりも低くする。なお、液相線に対する過熱度を100℃未満とすることにより、また、治具20の温度を合金Mの融点よりも50℃以上低くすることにより、より微細な初晶サイズとすることができる。」(5欄23?33行) (1c)「治具20に溶湯Mを接触させる方法としては、治具の表面を溶湯Mを移動させる場合(傾斜した治具20へ溶湯を流す)と溶湯中を治具20が移動する場合の2種類がある。なお、ここで言う治具とは、溶湯が流下する際に冷却作用を溶湯に与えるものを言う」(5欄33?38行) (1d)「溶湯Mを接触させる治具20は、溶湯の温度を低下させることができるものであればその材質を限定するものではないが、特に熱伝導率の高い銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属で、しかも一定の温度以下に維持できるように冷却管理された治具20は結晶核を多く生成するので好ましい。なお、溶湯Mが治具20に接触した時に固体状に金属が治具20に付着するのを防ぐために非金属材料を塗布するのは効果的である。」(6欄20?28行) (1e)図2には、傾斜した冷却用治具20に金属溶湯Mを接触させることが示されている。 (2)引用例2:特開2000-263213号公報 (2a)「【請求項1】 液相線温度より僅かに高い所定温度に保持した合金溶湯Aを急冷して初晶を生成させる工程、前記初晶が生成した合金溶湯Bを徐冷して前記初晶を粒状晶に成長させる工程、前記粒状晶が成長して所定の固相比率になった合金溶湯Cを金型圧入用セミソリッドとして所定量押出す工程からなることを特徴とするロール式セミソリッド加工法。」(1頁欄2?8行) (2b)「請求項1記載の発明は、1(当審注:原文は丸囲み数字、以下同様)合金溶湯をその液相線温度より僅かに高い温度に保持し、2(丸囲み)前記合金溶湯Aを急冷して初晶を生成させ、3(丸囲み)この初晶の生成した合金溶湯Bを除冷して前記初晶を成長させてデンドライトの少ない粒状晶の豊富な固液共存状態の合金溶湯Cにする、という最近知られるようになった凝固組織の粒状化方法(セミソリッド加工法)を高圧ダイキャスト加工法に応用したものである。」(4欄24?31行) (2c)「図3は本発明のロール式セミソリッド加工装置の第3の実施形態を示す縦断面説明図である。図2と同一の部分は同一の符号を付してある。この加工装置は、急冷器2が、内部に冷却管17を配した溶湯保留器18からなり、その他は図2に示した加工装置と同じである。溶湯保留器18では、合金溶湯Aは冷却管17により冷却されて初晶が生成する。冷却管17表面上に凝着物が生成すると、1(丸囲み)溶湯流路が狭まる、2(丸囲み)凝着物は粗大樹枝晶となって合金溶湯中に混入して合金溶湯の流動性を阻害する。このため、冷却管17は、溶湯保留器18の側壁を貫通して液密に出入れ自在に配しておき、冷却管17を出入れして前記凝着物を溶湯保留器18内面に擦って剥離するのが良い。」(6欄11?23行) (2d)「冷却管17が湯面上に露出していると露出部分に凝着物が生成し、この場合も前記1(丸囲み)2(丸囲み)の不具合が生じるので、冷却管17は合金溶湯B中に埋没させるようにするのが良い。冷却管17は内部に水を流すなどの方法で容易に冷却される。冷却管17に振動を付与すると、初晶の生成が促進され、また冷却管17上への凝着物の生成が低減する。」(6欄24?30行) 3.引用例1に記載された発明 引用例1の摘記(1a)によれば、Al-Mg合金の溶湯を、その合金の融点よりも低い温度の治具に接触させて液中に結晶核を発生させて半溶融合金を得ることがわかり、この治具に接触させる方法としては、摘記(1c)、(1e)によれば傾斜した治具20に溶湯を流す方法が記載されている。 さらに摘記(1b)によれば、治具の表面温度は、合金の融点よりも低くする必要があることがわかり、摘記(1d)から、治具は一定の温度以下に維持できるように冷却管理することが好ましいことがわかる。 以上の事項を考慮して、引用例1の摘記(1a)?(1e)の記載事項を整理すると、引用例1には、次の「半溶融Al-Mg合金の製造方法」についての発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「Al-Mg合金の溶湯を傾斜した治具に接触させ、この傾斜した治具で前記Al-Mg合金の溶湯を冷却することにより、半溶融Al-Mg合金を製造する方法において、前記傾斜した治具を冷却することを特徴とする半溶融Al-Mg合金の製造方法。」 4.対比・判断 引用例1発明における「Al-Mg合金の溶湯」、「半溶融Al-Mg合金」は、それぞれ、本願発明1における「溶融金属」、「金属スラリー」に相当し、引用例1発明における「傾斜した治具」は、Al-Mg合金の溶湯を冷却するのだから、本願発明1における「傾斜冷却体」に相当する。 以上によれば、両者は、 「溶融金属を傾斜冷却体へ注ぎ、この傾斜冷却体で前記溶融金属を冷却することにより、金属スラリーを製造する金属スラリー製造方法において、 前記傾斜冷却体を冷却する、 ことを特徴とする金属スラリー製造方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 本願発明1では、傾斜冷却体に振動を与えるものであるのに対し、引用例1発明における傾斜冷却体に振動が与えられているか否か不明である点。 以下、上記相違点について検討する。 引用例2の摘記(2a)、(2b)によれば、液相線温度より僅かに高い温度に保持した合金溶湯Aを急冷して初晶を生成させ、この初晶が生成した合金溶湯Bを徐冷することでデンドライトの少ない粒状晶の豊富な固液共存状態の合金溶湯Cを得ることが記載されている。そして、摘記(2c)によれば、合金溶湯Aの急冷に冷却管17を用いること、冷却管17表面上に凝着物が生成すると凝着物は粗大樹枝晶となって合金溶湯中に混入して合金溶湯の流動性を阻害することが記載され、摘記(2d)には冷却管17に振動を付与すると、初晶の生成が促進され、また冷却管17上への凝着物の生成が低減することが記載されている。 これらの記載によれば、冷却管17に振動を付与することにより、冷却管17上への凝着物の生成が低減し、デンドライトの少ない粒状晶の豊富な固液共存状態の合金溶湯Cが得られることが理解できる。 そして、引用例1も、摘記(1a)にあるように、微細な粒状の初晶を多数発生させるものであって、摘記(1d)にあるように、溶湯Mが治具20に接触した時に固体状に金属が治具20に付着するのを防ぐことが要求されている。 そうであれば、引用例1発明において、溶湯を冷却する治具(本願発明1の傾斜冷却体に相当するので、以下「傾斜冷却体」という。)に固体状に金属が付着するのを防ぎ、微細な粒状の初晶を多数発生させるために、傾斜冷却体に振動を与えることは、当業者であれば容易に想到し得たものというべきである。 そして、本願発明1は、引用例1、2の記載から予測できないような格別に顕著な効果を奏するとは認められない。 したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-28 |
結審通知日 | 2009-02-03 |
審決日 | 2009-02-17 |
出願番号 | 特願2004-17245(P2004-17245) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B22D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國方 康伸 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
市川 裕司 諸岡 健一 |
発明の名称 | 金属スラリー製造方法および金属スラリー製造装置 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 福田 伸一 |