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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42C
管理番号 1195246
審判番号 不服2004-19724  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2009-04-10 
事件の表示 平成11年特許願第261674号「通信機能を備えた製本システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 80237〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
1.手続の経緯・本願発明
本願は平成11年9月16日の出願であって、平成16年8月17日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月24日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月8日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
「操作表示器を有し、シーケンサを搭載したローカル製本機と、センタ通信端末器とを、通信インターフェースを介して接続して構成され、上記操作表示器は、シーケンサに記憶されているローカル製本機の生産、稼動情報をモニタ表示して、生産、稼動情報が変更設定できるとともに、その変更設定された生産、稼動情報のうちから少なくとも1以上の任意の情報を選択して、上記通信インターフェースを介して接続された上記センタ通信端末器に転送させる構成とした通信機能を備えた製本システム。」

2.拒絶理由において引用された刊行物及びその記載内容
原査定の拒絶の理由においては、以下の刊行物が引用されており、それらには以下の記載がある。

2-1 特開平05-212989号公報
段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は製本機に関するものである。」
段落【0002】
「【従来の技術】一般に、製本機としては、中綴機や平綴機が知られている。そして、生産する本の種類が変わった場合、これら製本機における各部を調節する必要があるが、従来の製本機においてはこの調節をすべて手作業で行っている。」
段落【0003】
「【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来の製本機では、各部の調節をすべて手作業で行っているため、例えば1人で調節を行った場合には1回の調節作業に約1時間もかかっていた。また、調節作業は、調節量のデータを蓄積して定量的に決めて行うこともなかったため、作業者の勘や経験によるところが多く熟練を要するものであった。さらに、調節不良によって微調整が必要となった場合、調節する部分によっては製本機を停止しなければ微調整が行えず、1回毎に製本機を停止させトライアンドエラーを繰り返しながら微調整を行っていた。しかも、製本機の停止状態で正確に調節しても運転している時と状態が異なるのでなかなか調節が合わない場合が多かった。このため、完璧な調節が行えず調節不良が起こり、その結果、製本機の停止や不良品の発生など生産効率を下げる原因となっていた。」
段落【0004】
「本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製本機の運転中或いは停止中を問わず各部を調節することができ、しかも運転条件を最適に調節できる製本機を提供することにある。」
段落【0014】
「【実施例】図1は製本機の概略図であり、同図に示すように、製本機Mは、刷本を1部ずつギャザリングチェーンGの所定位置に落として丁合する複数のフィーダ1、刷本束を針金によって綴じる綴機2、綴じられた刷本束の三方を断裁して決められた寸法にする断裁機3を連結して構成されている。そして、この基本構成に加えて、丁合された刷本束の丁合ズレを検知するオブリークシートモニタ、丁合された刷本束の増落丁を検知するキャリパ、綴じられた刷本束をギャザリングチェーンGから搬送コンベアCに移載するタッカー4、綴じられた刷本束のうち丁合ズレ及び/又は増落丁のある刷本束を搬送コンベアCから排出するオートリジェクタ、断裁された刷本束の寸法を検知するトリムモニタ5、断裁寸法が正しくない刷本束を搬送コンベアCから排出するオートリジェクタ、断裁された刷本を束ねて集積するスタッカ6を必要に応じて備えている。」
段落【0015】
「上記の構成からなる製本機において、生産条件、すなわち、刷本の種類、生産する本の種類、製本機の運転条件等が変わった時に調整が必要となる各部Aには、図2に示すように、調節機構11と、それを駆動するアクチュエータ12と、アクチュエータ12を駆動するドライバ13が設けられており、またアクチュエータ12の駆動量を検知する検知器14がそれぞれ取り付けられている。さらに、ドライバ13はシーケンサ15によりアクチュエータ12を駆動するようになっており、またシーケンサ15にはアクチュエータ12をボタン操作でも駆動できるように調節ボタン16がつながれている。」
段落【0016】
「そして、シーケンサ15には、アクチュエータ12の駆動量を検知する検知機14と調節機構11の上下限点及び原点を検知するためのスイッチ17がつながれているとともに、例えば、コンピュータとのデータ通信が可能な計算機リンクユニット及びRS-232Cケーブルを介してコンピュータ18がつながれており、各アクチュエータ12の駆動量をコンピュータ18と通信できるようになっている。」
段落【0018】
「コンピュータ18は自動調節を可能にするために作成されたプログラムに基づいて作動する。プログラムの内容は、生産条件を入力するための入力部分と、入力データから各調節機構11の調節量を決定する部分、すなわち各アクチュエータ12の駆動量を算出するか若しくは過去に同じ又は類似の品目がある場合についてはその時の調節量を過去のアクチュエータ駆動量のデータから検索するための演算及び検索部分と、各アクチュエータ12の駆動量をシーケンサ15に送り、またアクチュエータ12を調節ボタン16で微調整した時のアクチュエータ12の駆動量をシーケンサ15から受け取る通信部分と、生産条件及び各アクチュエータ12の駆動量を蓄積するデータ保存部分と、作業者がコンピュータ18に生産条件を入力したり調節ボタン16の操作をする時に操作指示をする画面及び各調節機構11の調節量を表示する画面表示部分とから構成されている。」
段落【0019】
「実際の操作は、データの入力から行われる。入力するデータとしては、本の種類として、品目名、仕上げサイズ、本厚さ、針金の綴じ状態、使用フィーダ番号等があり、刷本の種類として、刷本のサイズ、ラップ代、折り仕様、ページ数、紙質、紙厚、版式等があり、製本運転条件として、製本機回転数、駆動軸の初期回転角度、フィーダのサッカーにおけるタコの位置、各フィーダの回転数と製本機の回転数の比(クラッチの比)等がある。これらの入力データは、調節を適切に行うために必要なものであり、自動調節を行う箇所が異なれば、必然的に入力データの項目も変わることが考えられる。したがって入力するデータ項目は必ずしもこの通りではなく、必要に応じて増減されたり或いは変えられたりするものである。」
段落【0020】
「入力が終わると、入力されたデータから各調節機構11の調節量を決定し、それに基づき各アクチュエータ12の駆動量を算出する。調節機構11によっては、調節量が入力データから一義的に決定されるものとされないものがある。一義的に決定されるものとしては、例えば、フィーダで刷本の位置を一定に押さえるための小口ガイドなどがある。これは、刷本の小口サイズが分かっていれば、そのサイズの位置若しくは多少の隙間を開けた位置にガイドを移動すればよい。このように一義的に決定できるものについては、計算式をプログラム中に加えることにより算出する。また、例えば、フィーダテーブル上の刷本の位置を設定するフィーダの天地ガイドについては、2個のガイドを必ずしも中心に対称に調節する必要はなく、むしろフィーダのサッカーのタコの位置によって刷本設定位置を変える場合もあるので、刷本の天地サイズの他にタコの位置の条件を取り込んで天地ガイドの調節位置を決定するプログラムを加えてもよい。一義的に決定できないもの、例えば、フィーダの刷本落下タイミングなどは、刷本のサイズ、折り仕様、紙質、紙厚、製本機の回転数の影響があると考えられ、単純な計算では決定が困難なものである。このような場合については、過去のデータの中から入力された条件に近いものを検索する。検索の方法としては、過去のデータの中で入力された条件と全く同じものを最優先として採用し、同じものがなければ検索する条件の範囲を徐々に広げて決定するという方法がある(例えば、天地寸法が200mmの条件であった場合、まず初めに200mmで検索を行い、天地寸法が200mmのものが過去のデータにない場合には、195mmから205mmと検索範囲を広げ、それでもなければ、190mmから210mmへと広げる等)。このようにしてアクチュエータ12の駆動量を決定した後に、そのデータをシーケンサ15に出力する。そして、このデータをもとにシーケンサ15が各アクチュエータ12を駆動して自動調節が行われる。」
段落【0021】
「製本機Mの自動調節が終了し、微調整が必要な場合には微調整を行った後、各アクチュエータ12の駆動量はシーケンサ15からコンピュータ18に送られる。この時のアクチュエータ12の駆動量は、微調整を行った場合にはその値が、また、微調整を行わなかった場合にはコンピュータ18からシーケンサ15に送った値となっている。このデータは、次回以降の調節の際に検索用のデータとして用いることができるように、コンピュータ18により例えばフロッピーディスク等に保存される。」

上記【0001】?【0004】の記載からは、当該刊行物1における発明が、製本機に係るものであって、従来の製本機は各部の調節をすべて手作業で行っていた不都合を解消すべく、製本機の運転中或いは停止中を問わず各部を調節することができ、しかも運転条件を最適に調節できる製本機を提供することが、当該刊行物1における発明の目的であることが把握できる。
そして、上記段落【0014】?【0021】には実施例の態様が記載されている。
ここで上記段落【0014】の記載から、製本機Mは、刷本を1部ずつギャザリングチェーンGの所定位置に落として丁合する複数のフィーダ1、刷本束を針金によって綴じる綴機2、綴じられた刷本束の三方を断裁して決められた寸法にする断裁機3を連結した基本構成から成り、その他に、丁合ズレを検知するオブリークシートモニタ、丁合された刷本束の増落丁を検知するキャリパ、綴じられた刷本束をギャザリングチェーンGから搬送コンベアCに移載するタッカー4、綴じられた刷本束のうち丁合ズレ及び/又は増落丁のある刷本束を搬送コンベアCから排出するオートリジェクタ、断裁された刷本束の寸法を検知するトリムモニタ5、断裁寸法が正しくない刷本束を搬送コンベアCから排出するオートリジェクタ、断裁された刷本を束ねて集積するスタッカ6が必要に応じて備えられているものが把握できる。
そして、段落【0015】には、製本機において、生産条件、すなわち、刷本の種類、生産する本の種類、製本機の運転条件等が変わった時に調整が必要となる部位として、図2に示されるように、調節機構11と、それを駆動するアクチュエータ12と、アクチュエータ12を駆動するドライバ13が設けられており、またアクチュエータ12の駆動量を検知する検知器14がそれぞれ取り付けられており、さらに、ドライバ13はシーケンサ15によりアクチュエータ12を駆動するようになっており、またシーケンサ15にはアクチュエータ12をボタン操作でも駆動できるように調節ボタン16がつながれていることが記載されている。
さらに、段落【0016】には、シーケンサ15には、アクチュエータ12の駆動量を検知する検知機14と調節機構11の上下限点及び原点を検知するためのスイッチ17がつながれているとともに、例えば、コンピュータとのデータ通信が可能な計算機リンクユニット及びRS-232Cケーブルを介してコンピュータ18がつながれており、各アクチュエータ12の駆動量をコンピュータ18と通信できるようになっていることが記載されている。
また、段落【0018】には、コンピュータ18に生産条件を入力するための入力部分と、入力データから各調節機構11の調節量を決定する部分、すなわち各アクチュエータ12の駆動量を算出するか若しくは過去に同じ又は類似の品目がある場合についてはその時の調節量を過去のアクチュエータ駆動量のデータから検索するための演算及び検索部分と、各アクチュエータ12の駆動量をシーケンサ15に送り、またアクチュエータ12を調節ボタン16で微調整した時のアクチュエータ12の駆動量をシーケンサ15から受け取る通信部分と、生産条件及び各アクチュエータ12の駆動量を蓄積するデータ保存部分と、作業者がコンピュータ18に生産条件を入力したり調節ボタン16の操作をする時に操作指示をする画面及び各調節機構11の調節量を表示する画面表示部分とから構成されていることが記載されている。
そして、段落【0019】及び【0020】には、実際の操作に関して、どのようなデータの入力が行われるか、入力されたデータに基づいて各調節機構の調節がどのように行われて、製本機Mの自動調節がなされるかが記載されている。
さらに、段落【0021】には、製本機Mの自動調節が終了し、微調整が必要な場合には微調整を行った後、各アクチュエータ12の駆動量はシーケンサ15からコンピュータ18に送られるとも記載されている。
してみるに、これら段落【0014】?【0021】に示される実施例記載からは、以下の発明が把握できる。

「複数のフィーダ、綴機、断裁機を連結した基本構成から成り、これら基本構成とされる各機器の調節機構を駆動するアクチュエータの駆動量を検知する検知器及び同アクチュエータをドライバーにより駆動するシーケンサとを搭載した製本機と、コンピュータとをデータ通信が可能な計算機リンクユニット及びRS-232Cケーブルを介して接続した構成とされ、
コンピュータは、少なくとも生産条件を入力するための入力部分と、入力データから各調節機構の調節量を決定する部分と、製本機の備えるアクチュエータの駆動量をシーケンサに送り、また、同アクチュエータを調整した時のアクチュエータの駆動量をシーケンサから受け取る通信部分と、作業者がコンピュータに生産条件を入力したり操作指示をする画面及び前記各調節機構の調整量を表示する画面表示部分とから構成されている製本機システム。」(以下、「刊行物1記載発明」という。)

2-2 刊行物2:特開平05-008381号公報
段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は印刷物の製造工程管理装置、特に、多品目にわたる印刷物を製造するために各生産機械を管理するために製造工程管理装置に関する。」
段落【0005】
「そこで本発明は、多品目にわたる印刷物の生産を効率良く行うことのできる印刷物の製造工程管理装置を提供することを目的とする。」
段落【0010】
「【実施例】以下、本発明を図示する実施例に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例に係る印刷物の製造工程管理装置の基本構成を示すブロック図である。この管理装置は、印刷およびその後の加工を行う生産ライン10に対して、製造工程の管理を行う機能を有し、ライン管理装置20、異常表示装置30、ホストコンピュータ40、版倉庫端末51、用紙倉庫端末52、製品倉庫端末53、の各構成要素からなる。」
段落【0012】
「ライン管理装置20は、ハードウエアとしては、コンピュータおよびこれに接続されたインターフェイスで構成されており、機能的には、条件テーブル21、予定テーブル22、条件設定手段23、の3つの要素を備えている。一方、異常表示装置30も、コンピュータを組み込んだ装置であり、異常表示モニタ31、回転灯32、ブザー33を備えている。ライン管理装置20には、上位の装置としてホストコンピュータ40が接続されており、また、下位の装置として版倉庫端末51、用紙倉庫端末52、製品倉庫端末53が接続されている。」
段落【0017】
「異常表示装置30は、各生産機械11?15に異常が発生したときに、各生産機械から与えられる異常発生信号に基づいてこの異常内容を、異常表示モニタ31に表示する機能をもっている。たとえば、印刷機11に紙づまりセンサを設けておき、紙づまりが生じたときに、紙づまりを示す異常発生信号を異常表示装置30に伝達できるようにしておけば、これをオペレータに報知することができる。オペレータへの報知を確実にするために、異常発生時には回転灯32を点灯しブザー33を鳴動させるようにしている。また、発生した異常の内容はライン管理装置20へ報告される。」
段落【0018】
「このシステムの動作は次のとおりである。まず、ホストコンピュータ40からライン管理装置20に対して製造予定が与えられ、ライン管理装置20内に図3に示すような予定テーブル22が保持される。条件設定手段23は、この予定テーブル22を参照することにより、最初に処理すべき品目が算数1であり、その版位置はL1であることを認識する。そこで、条件設定手段23は、図2に示す条件テーブル21を参照して、算数1に対応する稼働条件を抽出し、各生産機械に対する条件設定を行う。すなわち、印刷機11に対して稼働条件A3が、断裁機12に対して稼働条件B3が、糊付機13に対して稼働条件C3が、結束機14に対して稼働条件D3が、搬出機15に対して稼働条件E3が、それぞれ設定され、算数1の生産準備が完了する。また、条件設定手段23は、版倉庫端末51に対して、版位置がL1である旨を伝達する。版倉庫の係員は、この版倉庫端末51の表示を見て、版位置L1にある版を取り出して、生産ラインに搬入し、これを印刷機11にセットする。また、条件設定手段23は、用紙倉庫端末52に対して、所定の用紙(たとえば、B5判印刷用の用紙)を示す表示を行う。」
段落【0023】
「【発明の効果】以上のとおり本発明による印刷物の製造工程管理装置によれば、印刷物の各品目についての各生産機械の稼働条件を定めた条件テーブルと、処理すべき品目順を定めた予定テーブルとを用意し、予定テーブルから認識した品目についての稼働条件を条件テーブルから求め、求めた稼働条件を各生産機械に自動設定するようにしたため、多品目にわたる印刷物の生産を効率良く行うことができるようになる。また、異常表示装置により異常発生を報知するようにしたため、異常発生時に適切な対処が可能になる。」

当該刊行物2に記載される発明は、段落【0001】に記載されるように、多品目にわたる印刷物の生産を効率良く行うことのできる印刷物の製造工程管理装置において、段落【0010】及び【0012】に記載されるように、印刷およびその後の加工を行う生産ライン10に対して、製造工程の管理を行う機能を有し、ライン管理装置20、異常表示装置30、ホストコンピュータ40、版倉庫端末51、用紙倉庫端末52、製品倉庫端末53、の各構成要素からなる実施例記載があり、これにおいては、ライン管理装置20の上位の装置としてホストコンピュータ40が接続され、下位の装置として版倉庫端末51、用紙倉庫端末52、製品倉庫端末53が接続された構成が示されている。
そして、段落【0023】及び図1をも参照すれば、ホストコンピュータ40から製造予定に係る指示がなされると、これに接続されたライン管理装置20において、印刷物の各品目についての各生産機械の稼働条件を定めた条件テーブルと、処理すべき品目順を定めた予定テーブルとが用意され、予定テーブルから認識した品目についての稼働条件を条件テーブルから求め、求めた稼働条件を各生産機械に自動設定することで、印刷物の製造が行われることが把握できる。
さらに、各生産機械11?15からなる生産ライン10に異常が発生したときには、各生産機械から与えられる異常発生信号が別途用意された異常表示装置30に伝えられ、当該異常表示装置30からライン管理装置20に対して、その異常発生状況が伝えられることから、当該ライン管理装置20を介して、ホストコンピュータ40において、生産ライン異常を検出できるものとされている。

2-3 刊行物3:特開平05-008582号公報
段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は預金通帳等の小冊子を製造するために用いる小冊子製造設備のモニタ装置に関する。」
段落【0014】
「これら小冊子製造設備10全体は、3台のモニタ装置23a,23b,23cにより機械停止等の監視が行なわれる。」
段落【0015】
「次に各モニタ装置23a,23b,23cについて以下詳述する。各モニタ装置23a,23b,23cは同一の構成となっている。すなわち図1に示すように、モニタ装置23a,23b,23cは、小冊子製造設備10全体および各々の装置の稼働状況を写し出す全体画面と、小冊子製造設備10を構成する個々の装置が停止した場合に当該停止装置を含む部分の運転状況を写し出す分割警報画面を各々表示することが可能な表示部33を有している。この表示部33は、CRT画面からなっており、上記全体画面および分割警報画面の他に、小冊子製造設備10の稼働実績を示す稼働実績画面を表示することが可能となっている。」
段落【0038】
「以上説明したように、本実施例によれば、通常運転時、小冊子製造設備全体の運転状況を表示部の全体画面によって確認することができるとともに、停止時において、当該停止装置および停止原因を表示部の分割警報画面によって確認することができる。さらに外部から画面選択ボタンを押圧することにより、表示部を稼働実績画面として小冊子製造設備の稼働実績を確認することができる。又、これらの情報はデータ通信部(図示せず)を介して、上位コンピュータへ通信することにより自在に加工できるため、例えば工場全体あるいは会社全体の生産管理システムの一部として本発明を利用することができる。」

前記段落【0001】に記載されているように、当該刊行物3に記載される発明は、預金通帳等の小冊子を製造するために用いる小冊子製造設備のモニタ装置に関するものであって、いわば製本機に係るものといえる。
そして、段落【0014】及び【0015】に記載されているように、当該小冊子製造設備においては、製造設備の運転状況を確認できるように、設備に付帯したモニタ装置を複数台備えておき、これらは、小冊子製造設備全体および各々の装置の稼働状況を写し出す全体画面と、小冊子製造設備を構成する個々の装置が停止した場合に当該停止装置を含む部分の運転状況を写し出す分割警報画面を各々表示することが可能な表示部を有するものとして構成されている。
また、段落【0038】にあるように、当該刊行物3に記載される小冊子製造設備は、上位コンピュータへ小冊子製造設備の稼働実績を通信することで、工場全体あるいは会社全体の生産管理システムの一部として機能させ得るとの記載がある。

3.本願発明と刊行物1記載発明との対比
刊行物1記載発明における「計算機リンクユニット及びRS-232Cケーブル」が、本願発明の「通信インターフェイス」に相当することは明らかである。
また、刊行物1記載発明における「複数のフィーダ、綴機、断裁機を連結した基本構成から成り、これら基本構成とされる各機器の調節機構を駆動するアクチュエータの駆動量を検知する検知器及び同アクチュエータをドライバーにより駆動するシーケンサとを搭載した製本機」は、「シーケンサ」を介してコンピュータと通信可能に接続された「製本機」であるから、本願発明の「シーケンサを搭載したローカル製本機」にひとまず対応する。
そして、刊行物1記載発明の「製本機システム」と、本願発明の「製本機システム」とは、いずれも生産条件を設定して製本を行う総体としてのシステムを構成していることは明らかであるから対応関係にある。
ここで、本願発明である「製本機システム」では、「操作表示器を有し、シーケンサを搭載したローカル製本機と、センタ通信端末器とを、通信インターフェースを介して接続して構成され、」との特定からして、「操作表示器」は、「ローカル製本機」が有していると解するのが自然である。
また、「上記操作表示器は、シーケンサに記憶されているローカル製本機の生産、稼動情報をモニタ表示して、生産、稼動情報が変更設定できるとともに、その変更設定された生産、稼動情報のうちから少なくとも1以上の任意の情報を選択して、上記通信インターフェースを介して接続された上記センタ通信端末器に転送させる構成とした通信機能を備えた」と特定されていることから、「センタ通信端末器」は、「ローカル製本機」に設けられた「操作表示器」から「生産、稼動情報のうちから少なくとも1以上の任意の情報」の転送を受けるものであることが把握できるものの、当該「センタ通信端末器」自体が「ローカル製本機」を制御するものであるか否は請求項記載自体からは定かでない。
それ故に、刊行物1記載発明の「コンピュータ」と、本願発明の「センタ通信端末器」とは、いずれも、前記で対応するとした「ローカル製本機」から、任意の情報について転送を受けるように構成されている点で相当関係にある。

以上を踏まえると、刊行物1記載発明と本願発明とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。

《一致点》
「シーケンサを搭載したローカル製本機と、センタ通信端末器とを、通信インターフェースを介して接続して構成され、任意の情報を上記通信インターフェースを介して接続された上記センタ通信端末器に転送させる構成とした通信機能を備えた製本システム。」

《相違点》
本願発明においては、「ローカル製本機」が、「操作表示器」を有すると特定され、この「操作表示器」が、「シーケンサに記憶されているローカル製本機の生産、稼動情報をモニタ表示して、生産、稼動情報が変更設定できるとともに、その変更設定された生産、稼動情報のうちから少なくとも1以上の任意の情報を選択して、上記通信インターフェースを介して接続された上記センタ通信端末器に転送させる構成」であると特定されているのに対して、
刊行物1記載発明においては、「コンピュータ」が受け取る情報が、基本構成とされる各機器の調節機構を駆動するアクチュエータの駆動量であるとされるものの、前記特定を有するものか定かでない点。

4.相違点に係る判断
刊行物2に記載される印刷物の製造工程管理装置においては、印刷物の各品目についての各生産機械の稼働条件を定めた条件テーブルと、処理すべき品目順を定めた予定テーブルとが用意され、予定テーブルから認識した品目についての稼働条件を条件テーブルから求め、求めた稼働条件を各生産機械に自動設定するライン管理装置をホストコンピュータから管理するように構成されており、当該ライン管理装置は、ホストコンピュータからの製造条件の指示に応じて稼働条件を設定するものである点において、刊行物1記載発明におけるシーケンサとコンピュータとの関係にある。
このように、製造管理するに際して、生産ラインに対して製造条件を設定するコンピュータと、これの指示に基づいて生産機械に対して稼働条件を設定するライン管理装置或いはシーケンサを接続した装置構成は、きわめて一般的であり、当該刊行物2に記載される印刷物の製造工程管理装置におけるごとくに、生産機械側の稼働条件をも管理可能に構成しておくことも、きわめて一般的であり、これらコンピュータとライン管理装置或いはシーケンサの間では、生産情報或いは稼働情報を相互に通信し合うように構成されていることが通常である。
すると、相違点として抽出した内容のうち、「シーケンサに記憶されているローカル製本機の生産、稼動情報」を対象に、その内から「少なくとも1以上の任意の情報」を、「通信インターフェースを介して接続されたセンタ通信端末器に転送させる」ように構成することは、通常採用されている構成でしかないといわざるを得ない。
しかしながら、前記相違点として抽出した内容のうち、本願発明のシーケンサを搭載したローカル製本機が「操作表示器」を有しており、当該「操作表示器」において「シーケンサに記憶されているローカル製本機の生産、稼動情報をモニタ表示して、生産、稼動情報が変更設定できるとともに、その変更設定された生産、稼動情報のうちから少なくとも1以上の任意の情報を選択して、上記通信インターフェースを介して接続された上記センタ通信端末器に転送させる構成」を与える点については、前記刊行物1記載発明にはなく、また前記刊行物2記載の内容においても明記はない。
ここで、本願発明のシーケンサを搭載したローカル製本機が「操作表示器」を有している点について本願明細書の記載を参照するに、段落【0014】以降の【発明の実施の形態】に係る記載のうち、段落【0015】には図1を参照しつつ、「このシステムでは、シーケンサを搭載したローカル製本機と、表示操作画面1aを有したセンタ通信端末器1とを通信インターフェースを介して接続して構成されている。」との記載、段落【0019】には図2を参照しつつ、「図2は、ローカル製本機として、製本機2、丁合機3、三方断裁機4のみで構成されるシステムを示した図である。以降は、この図に示したシステム構成を中心として説明する。各ローカル製本機2,3,4には、シーケンサ2a,3a,4aを備えており、シーケンスプログラムを実行することによって、信号制御を行い、システムを稼働させている。また、各ローカル製本機2,3,4には、操作表示器2b,3b,4bを備えており、各機2,3,4の生産、稼働情報が設定できるようになっている。なお、生産、稼働情報は、製造部数や各種カウンタ値など、製本機2,3,4の運転制御のために各シーケンサ2a,3a,4aによって管理、制御される情報を含んでいる。」なる記載がある。
そして、これら記載によれば、【発明の実施の態様】における「操作表示器2b,3b,4b」は、「センタ通信端末器1」側ではなく、「ローカル製本機」側に備えられているが、「シーケンサ2a,3a,4a」と接続される別の装置として存在するものとされている。
そこで、刊行物3に記載される小冊子製造設備を参照するに、製造設備に付帯してモニタ装置を複数台備えておき、製造設備の運転状況を設備の各所で確認できるようにすることが記載されている。
そして、このように製造設備の各所に備えられたモニタ装置において、直接的に製造設備の稼働条件を設定可能とするように構成することは、製造設備に備えられた各機器の稼働状況を、通常は別場所に設けられている全体管理を行うコンピュータ画面を参照せずとも、製造設備近傍で確認可能とする目的、或いは、故障が発生した際にその状況を直ちに把握して迅速に対応する目的等から適宜に行われていることであり、刊行物1記載発明を認定した刊行物1の段落【0015】においても、「シーケンサ15にはアクチュエータ12をボタン操作でも駆動できるように調節ボタン16がつながれている」との記載があるように、当然に予定された構成であるといえる。
してみるに、刊行物1記載発明に対して相違点に係る構成を適用することは当業者であれば適宜になし得た程度のことであって容易想到といわざるを得ない。
そして、このようにしたことにより得られる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものともいえない。
以上のとおりであって、本願発明は、刊行物1?3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない以上、その他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-08 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願平11-261674
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 七字 ひろみ
江成 克己
発明の名称 通信機能を備えた製本システム  
代理人 中井 宏行  

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