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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B29D
管理番号 1195709
審判番号 訂正2009-390006  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-01-21 
確定日 2009-04-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4080537号「保存-安定なヒドロゲル」に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4080537号に係る明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書(審決注:ここでいう「明細書」は、いずれも「明細書」及び「請求の範囲」を意味するものである。以下同じ。)のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件訂正審判の請求の要旨は、特許第4080537号(平成9年5月15日国際出願、平成20年2月15日設定登録)の特許権の設定の登録時の明細書を、審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許請求の範囲の請求項14について、
「14.基R_(2)が、式(II):

(式中、
qは、ゼロ又は1であり、
R_(4)及びR_(5)は、それぞれ他と独立に、2?8個の炭素原子を有する低級アルキレン、6?12個の炭素原子を有するアリーレン、6?10個の炭素原子を有する2価環式脂肪族基、7?14個の炭素原子を有する、アリーレンアルキレン若しくはアルキレンアリーレン、又は13?16個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンであり、そして
R_(3)は、2?24個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンである)の基である、請求項12記載の方法。」
を、
「14.基R_(2)が、式(II):

(式中、
qは、ゼロ又は1であり、
R_(4)及びR_(5)は、それぞれ他と独立に、2?8個の炭素原子を有する低級アルキレン、6?12個の炭素原子を有するアリーレン、6?10個の炭素原子を有する2価環式脂肪族基、7?14個の炭素原子を有する、アリーレンアルキレン若しくはアルキレンアリーレン、又は13?16個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンであり、そして
R_(3)は、2?24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基である)の基である、請求項12記載の方法。」
と訂正するものである。

2.当審の判断
2-1.訂正の内容
本件訂正は、請求項14に記載された式(II)のR_(3)の定義を、「2?24個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレン」から「2?24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基」に変更するものである。

2-2.訂正の目的についての検討
訂正前の請求項14に記載された式(II)のR_(3)は、化学構造式の記載からみて、1価の基であることが明らかであるのに対し、その定義に用いられた「2?24個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレン」は、2価の基であるから、前記式(II)のR_(3)の定義は、化学構造式と矛盾するものである。
したがって、訂正前の請求項14の記載は、式(II)のR_(3)の定義に関して、明りょうでない記載を含むものである。

一方、訂正前の明細書の発明の詳細な説明には、上記式(II)のR_(3)の定義に関して、以下の記載がある。
「例えば、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(I):

(式中、
Rは、8個までの炭素原子を有する低級アルキレンであり、
R_(1)は、水素又は低級アルキルであり、そして
R_(2)は、好適には25個までの炭素原子を有する、オレフィン性不飽和の電子-吸引性で、共重合しうる基である)の単位約0.5?約80%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有する改質ポリビニルアルコールのプレポリマーの使用が好適である。
R_(2)は、典型的には、式R_(3)-CO-(ここで、R_(3)は、2?24個の炭素原子、好適には2?8個の炭素原子、特に2?4個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基である)で示されるオレフィン性不飽和のアシル基である。別の実施様態では、基R_(2)は、式(II):

(式中、
qは、ゼロ又は1であり、
R_(4)及びR_(5)は、それぞれ他と独立に、2?8個の炭素原子を有する低級アルキレン、6?12個の炭素原子を有するアリーレン、6?10個の炭素原子を有する2価飽和環式脂肪族基、7?14個の炭素原子を有する、アリーレンアルキレン若しくはアルキレンアリーレン、又は13?16個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンであり、そして
R_(3)は上記で定義したとおりである)の基である。」
(第5頁最下行?第6頁下から4行(特許公報第5頁第35行?第6頁第11行))

上記発明の詳細な説明においては、式(II)のR_(3)の定義について、「R_(3)は上記で定義したとおりである」と記載されている。
そして、かかる「上記で定義したとおり」は、その直前のR_(3)に関する記載である「ここで、R_(3)は、2?24個の炭素原子、好適には2?8個の炭素原子、特に2?4個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基である」を指すものと解され、また、発明の詳細な説明の記載からは、他の意味に解釈され得る余地はない。
したがって、発明の詳細な説明における式(II)のR_(3)の定義は、「2?24個の炭素原子、好適には2?8個の炭素原子、特に2?4個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基」、すなわち、「2?24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基」であり、当該式(II)のR_(3)の定義は、化学構造式と矛盾しない。
よって、訂正前の請求項14の式(II)のR_(3)の定義の本来意味するところは、訂正後の請求項14の式(II)のR_(3)の定義である「2?24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基」であるものと認められる。
してみると、本件訂正は、訂正前の請求項14の式(II)のR_(3)の定義に関する明りょうでない記載について、その不明りょうさを正して、その記載本来の意味内容を明らかにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2-3.新規事項の有無についての検討
上記「2-2.訂正の目的」で述べたとおり、本件訂正は、訂正前の明細書の発明の詳細な説明の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。

2-4.特許請求の範囲の拡大又は変更の有無についての検討
上記「2-2.訂正の目的」で述べたとおり、本件訂正は、訂正前の請求項14の式(II)のR_(3)の定義に関する明りょうでない記載について、その不明りょうさを正して、その記載本来の意味内容を明らかにするものであり、式(II)のR_(3)の定義を実質的に変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同条第3項及び第4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
保存-安定なヒドロゲル
【発明の詳細な説明】
本発明は、加水分解しうる側鎖基を含み、かつその保存安定性が制御された加水分解により達成できるヒドロゲルの製造方法に関する。保存安定性が達成されると同時に、ヒドロゲルは、その最終パッケージ中で消毒され、そして水性相の塩濃度は、好適には生理学的範囲に調節されている。
例えばポリマーを溶液中で架橋することによるヒドロゲルの商業的製造において、その方法が経済的であるためには、例えば粘度、結晶化の傾向、溶解性、化学反応性に関する出発ポリマーの一定の物理化学的特性が必要とされる。これらの特性は、ポリマー中で特定の側鎖基を用いることにより、正に影響させることができる。大きな商業規模で用いられかつ有利な価格である側鎖基を使用することが、経済的方法に有利であるが、不利な点としては、そのような側鎖基は、ヒドロゲルが意図されている目的のためには常に充分に安定ではないということである。
例えば、Mowiol溶液(ポリビニルアルコールを部分的に加水分解した水溶液、Hoechst AG)の粘度は、一方では、ポリマーの重合度及び加水分解度に、他方では、濃度及び温度に依存している(例えば、Hoechst AGパンフレット“Profileines Polymeren,Polyvinylalkohol Mowiol”(ポリマーのプロフィール、Mowiolポリビニルアルコール)1991を参照すること)。重合度が一定であれば、完全に加水分解したポリビニルアルコール(PVA)の溶液は、部分的に加水分解したポリビニルアルコールの溶液よりも高い粘度を有することになる。更に、PVA構成単位の極性は、いわゆる会合現象を引き起こし、それは、完全に加水分解された、高-及び低-分子量Mowiol型の特に高濃度の範囲で起こる。その結果、いわゆるゲル効果となり、効率的な加工を困難にし、また高粘度が妨げとなるため、商業的な方法を不可能にさせる。
本発明は、ヒドロゲル、特に加水分解しうる側鎖基により改質された架橋性ポリビニルアルコールに基づいたヒドロゲルに関し、そのヒドロゲルの保存安定性は簡単な方法により達成できる。本発明は、また、ヒドロゲルの保存安定性が達成されると同時に、ヒドロゲルが、その最終パッケージ中で消毒され、そして水性相の塩濃度を生理学的範囲に設定することができる方法に関する。
前記及び後記において、保存安定性は、また、例えば成形体、特にコンタクトレンズの、形状安定性及び/又は機械的安定性を意味する。
本発明の結果、保存-安定性ヒドロゲルの製造においては、特にPVAプレポリマーを使用することが可能であり、プレポリマー溶液の低粘度かつ良好な加工安定性のような加工技術に関する利点を提供するが(これに関連して上記のPVAの会合現象を参照すること)、従来は、加水分解に関して安定性を欠き、そしてその結果保存における安定性を欠いているために、この使用が可能ではなかった。更に、架橋プレポリマー、ひいてはヒドロゲルの機械的性質は、網状密度のみでなく、用いるプレポリマーの側鎖基によって制御することができる。
したがって、本発明のヒドロゲル成形体は、好適には物理化学的性質が加水分解的に除去しうる側鎖基により正に改質されたPVAプレポリマーから製造される。架橋に続く加工工程において、側鎖基は、ヒドロゲルの機械的性質にいかなる有意な変更もなく、加水分解的に除去される。成形体は、この加工工程においてその最終形態となる。加工工程は、好適には、成形体がその最終パッケージの中で同時に加水分解及び消毒され、その結果、生理学的塩溶液のなかで保存-安定かつ殺菌の方法で梱包されるような方法で行われ得る。
本発明の文脈で、「成形体」は、実質的かつ好適にヒドロゲルを含む成形体を意味する。ヒドロゲルは、より好適には、コンタクトレンズの材料としての使用に特に適するものである。特に好適なヒドロゲル材料は、ポリビニルアルコール(PVA)から誘導される。
したがって、本発明は、保存-安定なヒドロゲル成形体、特にコンタクトレンズを製造する方法であって、
a)加水分解的に除去しうる側鎖基を含むヒドロゲル成形体を、コンテナー中に移す工程、
b)ヒドロゲル成形体を含むコンテナーを、塩基性緩衝溶液で満たす工程、
c)コンテナーを閉じる工程、及び
d)ヒドロゲル成形体及び塩基性緩衝溶液を含むコンテナーを、少なくとも100℃の温度でオートクレーブにかける工程を含むことを特徴とする方法であり、ここで、オートクレーブにかける間、加水分解的に除去しうる側鎖基は、実質的に完全に除去され、コンテナーの内容物は消毒され、そして塩基性緩衝溶液は、実質的に等張であり、ヒトの涙液に適合しうるpHである生理学的に許容しうる水性溶液に転換される。
上記のようにヒドロゲル形成体は、好適には特にポリビニルアルコール(PVA)から誘導される材料である。架橋性であり、かつ水-溶解性(未だ架橋していない)PVAプレポリマーから誘導されるヒドロゲルの使用が、特により好適である。
PVAは、通常、対応するホモポリマー性の、ポリビニルアセタート、ポリビニルプロピオナート又はポリビニルブチラート、一般的にはポリビニルアルカノアート、好適にはポリビニル低級アルカノアート、若しくはそれらの混合物、又は適当なコモノマーとのポリビニルアルカノアートのコポリマーを含む混合物の加水分解により得られる。好適なポリビニルアルカノアートは、ポリビニルアセタート、ポリビニルプロピオナート及びそれらの混合物である。特に好適なポリビニルアルカノアートは、ポリビニルアセタートである。このようなポリビニルアルカノアートの加水分解は、典型的には、約0.8?15モル%、好適には2?10モル%、特に5?10モル%のポリビニルアルカノアートの残留含量を有するPVA型となる。アルカノアートの残留含量は、一般的には、一方では例えば非-架橋性プレポリマーの物理化学的性質を正に改良することができ、他方では加水分解的に除去することができる上述の除去しうる側鎖基により構成されている。
適当な上述のコモノマーは、例えば、エチレン、プロピレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリラート、アリルアルコール及びスチレンである。適当なコモノマーは、典型的には、約20重量%まで、好適には約5重量%までの量で存在しうる。
側鎖基を除去する加水分解の工程は、ヒドロゲルの機械的性質が実質的に変わらないという事実により、特に特徴づけられる。しかし、成形体は、一般的にその加工工程でその最終形体となる。加工工程は、好適には、成形体がその最終パッケージ中で同時に加水分解及び消毒され、その結果、成形体は、生理学的塩溶液中に保存-安定かつ殺菌の方法で梱包されるような方法で行われ得る。好適な実施様態では、成形体はコンタクトレンズである。
加工工程は、典型的には、例えば光化学的架橋によりヒドロゲルを製造した後、オートクレーブにかけるために、ヒドロゲルの量に適した濃度かつ容量の塩基性水溶液中でヒドロゲルを梱包することを含む。典型的には、オートクレーブが次に続き、例えば好適には121℃で加水分解の速度に適した期間実施される。オートクレーブにかける間にヒドロゲルは、一般的には消毒され、側鎖基は、一般的には完全に加水分解される。加水分解の間、酸が遊離し、それは典型的には側鎖基を除去することにより生じて、好適には塩基加水分解溶液と共に、pH値、浸透圧モル濃度及び組成が好適には生理的に許容しうる範囲の緩衝混合物を形成させる。
好適に用いられるPVAプレポリマーは、典型的には標的にされ、かつ著しく効果的な方法、特に光架橋により架橋され得る。
光架橋の方法において、適当には、基架橋を開始できる光開始剤を加える。光開始剤の例としては、当業者によく知られているが特に言及しうる適当な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン又はIrgacure型、例えばIrgacure(登録商標)1173である。架橋は、高-エネルギー放射線、例えば適当な波長のUV光線、又は電離線、例えばガンマ線、又はX線により開始され得る。
光架橋は、適当には溶媒中で実施される。適当な溶媒は、原則としてポリビニルアルコール又は用いられるプレポリマーを溶解するあらゆる溶媒であり、例えば水、低級アルカノールのようなアルコール類、例えばメタノール、ポリオール類、例えばグリセロール、グリコール又はポリエチレングリコール、アミン類、例えばエタノールアミン又はジエチレントリアミン、またジメチルホルムアミド(DMF)のようなカルボン酸アミド類、極性非プロトン性溶媒類、例えばジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン(NMP)、及びまた適当な溶媒の混合物、例えば水とカルボン酸アミド又はアルコールとの混合物、例えば水/メタノール混合物である。
光架橋、特にPVAプレポリマーの光架橋は、好適には前述のプレポリマーの水溶液から直接に実施され、例えばEP641806において既に記載されたように、好適な精製工程、すなわち例えば限外濾過の結果、得ることができる。例えば約15?40%水溶液を光架橋することにより可能である。
本発明の文脈で、「架橋」は、材料が、特に水-溶解性プレポリマーの重合により水-不溶性状態に転換され、その中で成形用型キャビティにより限定された形(例えば成形体として)を保持する、あらゆる種類の反応として現象的に理解されるべきである。
また、架橋反応、特に使用が好適なPVAプレポリマーの光架橋反応の期間は、典型的には約1秒?約2分の範囲、好適には約1?60秒の範囲、特に約1?30秒の範囲である。上記で説明したように、その期間の後で成形体又はコンタクトレンズは、典型的には画定されかつ安定した形となる。したがって、その基準が、典型的に成形用型中の成形体の残留時間を決定する。しかしその後、架橋は、最終段階の架橋が達成されるまで自発的に増進又は増強しうるが、これは一般的には、成形用型中の成形体の残留時間になんら関係しない。
加水分解の間に毒性生成物を形成せず、適切に加水分解的に安定なポリマー鎖を有する側鎖基により特徴づけられる水-溶解性PVAプレポリマーが、特に好適である。プレポリマーは、特にPVAプレポリマー又はそれから誘導されるPVAプレポリマーを意味する。
ヒトの目及びヒトの器官と優れた適合性を有する意味において、非-毒性側鎖基類は、例えばアセタート又はプロピオナート基である。しかし、代表的側鎖基類の混合物を用いることも可能である。この側鎖基類は、エステル交換反応により更に改質してもよく、そのため、酸、特に生理学的に許容される酸のエステル類を更に使用しうる。数種の典型的な例を挙げる。すなわち、サリチル酸、安息香酸、ニコチン酸及び乳酸である。
例えば、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(I):

(式中、
Rは、8個までの炭素原子を有する低級アルキレンであり、
R_(1)は、水素又は低級アルキルであり、そして
R_(2)は、好適には25個までの炭素原子を有する、オレフィン性不飽和の電子-吸引性で、共重合しうる基である)の単位約0.5?約80%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有する改質ポリビニルアルコールのプレポリマーの使用が好適である。
R_(2)は、典型的には、式R_(3)-CO-(ここで、R_(3)は、2?24個の炭素原子、好適には2?8個の炭素原子、特に2?4個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基である)で示されるオレフィン性不飽和のアシル基である。別の実施様態では、基R_(2)は、式(II):

(式中、
qは、ゼロ又は1であり、
R_(4)及びR_(5)は、それぞれ他と独立に、2?8個の炭素原子を有する低級アルキレン、6?12個の炭素原子を有するアリーレン、6?10個の炭素原子を有する2価飽和環式脂肪族基、7?14個の炭素原子を有する、アリーレンアルキレン若しくはアルキレンアリーレン、又は13?16個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンであり、そして
R_(3)は上記で定義したとおりである)の基である。
式(I)のプレポリマー、架橋性プレポリマー又はヒドロゲル、またその製造方法及びその使用は既知であり、EP641806(Ciba-Geigy)に詳細が記載されている。
用いられるプレポリマーのPVA基本構造は、ポリビニルアセタート、ポリビニルプロピオナート及び/又はそれらの混合物の好適には0.8?15モル%、特に2?10モル%から誘導される側鎖基の量をなお含む。ポリビニルアセタート5?10モル%の範囲の量が特に好適である。
塩基性、かつ好適には水性加水分解溶液の必須成分は、塩基により形成される。適当な塩基は、酸、好適には弱酸の原則的に全ての無機又は有機塩基であり、加水分解的開裂の後、眼に生理学的に許容しうる範囲内にあるpH値を有する緩衝混合物が得られる。典型的な無機塩基は、リン酸塩(例えばリン酸ナトリウム)、リン酸1水素塩、ホウ酸塩及び炭酸塩である。典型的な有機塩基は、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)である。必須成分として特に好適なのは、リン酸1水素塩及び/又はリン酸塩である。塩基性緩衝溶液が、主成分として、リン酸1水素塩及び/又はリン酸塩を含むことが好ましい。
本発明を通して塩基加水分解溶液は、好適には水性であり、典型的には、塩基に加えて張性増強剤を含んでもよい。張性増強剤は、一般的には、オートクレーブにかける前に、およそ塩基緩衝溶液の浸透圧モル濃度に設定して用いる。張性増強剤は、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属ハロゲン化物のようなイオン化合物、例えばCaCl_(2)、KBr、KCl、LiCl、Nal、NaBr、NaCl又はホウ酸である。非-イオン張性増強剤は、例えばウレア、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール又はデキストロースである。特に好適なイオン張性増強剤は、NaClである。
特に好適な実施様態において、側鎖基としてアセタート基を有する式(I)のプレポリマーのPVAヒドロゲル成形体を用い、それをオートクレーブ工程でNa_(2)HPO_(4)及びNaCl溶液と反応させて、加水分解-及び保存-安定な成形体、特にコンタクトレンズを形成させる。遊離した酢酸及びNa_(2)HPO_(4)は、pH値約7.3を有する緩衝混合物を形成する。その緩衝液の形成の結果、系はコンタクトレンズの質量においてジオプター-関連の変化に無反応になる。
また本発明は、オートクレーブ下の状態(初期pH値、時間及び温度)で、成形体(ヒドロゲル)は、加水分解しうる側鎖基から一般的に完全に開放されることが可能であり、したがって保存-安定性生成物を得る方法に関する。
塩基緩衝溶液の初期pH値は、好適にはpH8?12の範囲、より好適にはpH8.5?11の範囲、特にpH9?10の範囲である。
前記及び後記の「オートクレーブ」は、密閉容器中における圧力下の熱処理であり、典型的には少なくとも100℃の温度の蒸気を導入することを意味することとして常に使われる。「オートクレーブ」は、特に消毒を意味する。
オートクレーブにかける温度範囲は、好適には101?150℃であり、110?130℃の範囲が特に好適であり、115?125℃の範囲が特により好適である。
オートクレーブ工程に必要な期間は、一般的には約5分?約18時間の範囲、好適には約15分?約8時間の範囲、特に約20分?約120分の範囲である。
オートクレーブ工程の後、パッケージ中の水溶液の浸透圧モル濃度は、約220?約450mosmol、好適には約250?約400mosmol、特に約280?約400mosmolである。
また、オートクレーブ工程後のpH値は、約pH6?8、特にpH6.8?7.6である。
本発明は、また加水分解が生成物の一次パッケージの中で実施でき、それは生成物を同時に消毒することが可能であり、生理学的に許容しうる塩濃度が得られる方法に関する。
本発明は、また加水分解が生成物の一次パッケージの中で実施でき、生成物を同時に消毒することが可能であり、生理学的に許容しうる塩濃度及び生理学的に許容しうるpHが得られる方法に関する。
本発明は、また上記の加水分解の後、成形体(ヒドロゲル)の機械的性質(ヒドロゲルの化学的構造及び網状密度に基づく)が、実質的に変化しないままである方法に関する。
本発明は、またアルミニウムの封止箔を有し、等張であり、かつヒトの涙液に適合しうるpHである即時使用水性溶液中に、消毒された成形体、特にコンタクトレンズを含むポリプロピレンパッケージに関する。
その使用が好適な材料は、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(III):

(式中、
R_(10)及びR_(11)は、それぞれ他と独立に、アミノ、水素、8個までの炭素原子を有する非置換若しくは置換の、低級アルキル、アリール又はシクロアルキルであり、そして
R_(12)は、水素又は4個までの炭素原子を有する低級アルキルであり特にメチルである)の単位約0.5?約80%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有するポリビニルアルコールのプレポリマーである。
また、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(IV)及び(V)、(V)及び(VI)又は(IV)、(V)及び(VI):

(式中、
Alkは、12個までの炭素原子を有するアルキレンであり、
R_(21)は、水素、アルキル又はシクロアルキルであり、そして
R_(22)は、水素又は低級アルキルであり、
R_(23)は、n=0のとき下記式

の基であるか、又はn=1のとき下記式

の基であり、
R_(24)は、水素又は低級アルキルであり、
n=0又は1であり、そして好適には0であり、
R_(16)及びR_(17)は、それぞれ他と独立に、水素、低級アルキル、アリール又はシクロアルキルである);

(式中、
R_(21)は上記で記載したとおりであり、
R_(25)は、n=0のとき低級アルキル又は低級アルケニルであり;n=1のとき低級アルキレン又は低級アルケニレンであり、
n=0又は1であり、
R_(26)は、式-(NH-CO-R_(7))_(o)(R_(8))_(p)又は-N(R_(9))_(2)の基であり、
R_(7)は、低級アルキル(p=0のとき)又は低級アルキレン(p=1のとき)であり、
R_(8)は、複素環基であり、
R_(9)は、水素又は低級アルキルであり、そして
o及びpは、それぞれ他と独立に、0又は1である);

(式中、
R_(15)は、水素又は4個までの炭素原子を有する低級アルキルであり、特にメチルであり、
kは0?6の値であり、好適には0である)
の単位約0.5?約80%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有する改質ポリビニルアルコールのプレポリマーは、好適である。
また、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(I)、(IIIa)、(IV)、(V)、(VI)及び/又は(VII)のいずれかの組み合わせにおいて、

(式中、
R_(21)は、水素、アルキル又はシクロアルキルであり、
Alkは、12個までの炭素原子を有するアルキレンであり、
Bは、窒素-含有の2価の基であり、
m=0又は1であり、そして
PIは、一般的には光開始基であり、特に、式(VIII):

(式中、
Xは、-O-、-S-又は-N(R_(32))-であり、
R_(32)は、水素又は4個まで炭素原子を有する低級アルキルであり、
R_(29)は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロアルキル、複素環又はアルケニルであり、
R_(30)は、水素、低級アルコキシ、アリール又は-NR_(33)R_(34)(ここで、R_(33)及びR_(34)は、それぞれ他と独立に、低級アルキルであるか、又はR_(33)及びR_(34)は、一緒になって、5-又は6-員複素環を形成する)であり、
R_(31)は、R_(29)と独立して、R_(29)と同じ意味を有するか、又は
R_(29)及びR_(31)は、一緒になって、5-又は6-員シクロアルキルを形成する)の光開始基である)の単位約0.5?約80%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有する改質ポリビニルアルコールのプレポリマーが、好適である。
窒素-含有の2価基Bは、例えば-NH-CO-(CH_(2))_(x)-(ここで、xは、1?6である);-N(R_(a))-(CH_(2))_(y)-(ここで、R_(a)は、水素又は12個まで炭素原子を有するアルキルであり、そしてyは、2?6である)であるか;又は
Bは、式(VIIa):

(式中、
R’’は、水素、アルキル、-Alk-PI、-CO-R’’’’(ここで、R’’’’は、-COOH若しくはアクリルアミドで置換されてもよい、低級アルキル又は低級アルケニルである)であり、
R’’’は、水素、又はR’’が-CO-R’’’’でない場合には低級アルキルであり、そして
Alk及びPIのような残りの変数は、前述のとおりである)の第四級アンモニウム塩であってもよい。
式(VIII)の典型的な光開始基PIは、既にEP632329(Ciba-Geigy)に記載されている。したがって、この明細書の好ましい実施様態も、ここで好適に用いられる。
また、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(IX)、(X)及び(XII)、(IX)及び(X)又は(IX)及び(XII):

(式中、
Alkは、12個までの炭素原子を有するアルキレンであり、
R_(40)は、水素又は低級アルキルであり、
R_(41)は、25個までの炭素原子を有する、オレフィン性不飽和の電子-吸引性の架橋しうる基であり、好適にはそれぞれ他と独立して、式(I)の基R_(2)で定義したとおりであり、そして
R_(21)は、水素、アルキル又はシクロアルキルである);

(式中、
Alk及びR_(21)は、上記で定義したとおりであり、
R_(42)は、第一級、第二級又は第三級アミノ基又は式(XI)

(式中、
それぞれのR’は、他と独立に、水素、4個まで炭素原子を有する低級アルキルであり、そして
X^(-)は、陰イオン、特にハライド、例えばフルオリド、クロリド、ブロミド、アイオダイドイオンである)の第四級アミノ基である);

(式中、
R_(21)及びAlkは、上記で定義したとおりであり、そして
R_(43)は、一塩基性、二塩基性若しくは三塩基性の、飽和若しくは不飽和の、脂肪族又は芳香族の、有機酸又はスルホン酸の基である)
の単位約0.5?約80%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有する改質ポリビニルアルコールのプレポリマーが好適である。
また、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(XIII)及び(XIV)、(XIII)及び(XV)、又は(XIII)、(XIV)及び(XV):

(式中、
Uは、下記式

の基、又は下記式

(式中
X_(1)は、2?12個の炭素原子、好適には2?6個の炭素原子を有するアルキレンであり、
R_(51)は、水素又は4個までの炭素原子を有する低級アルキルであり、
Yは、7?12個の炭素原子を有する2価の基であり、特に脂環式又は芳香族であり、そして
Zは、1個以上の酸素原子で中断されてもよいC_(2)-C_(12)アルキレンである)の基である);

(式中、
Alkは、アルキレンであり、
h=0又は1であり、
R_(21)は、水素、アルキル又はシクロアルキルであり、そして
R_(50)は、1?18個の炭素原子を有する1価の有機基であり、特にアルキル、シクロアルキル、アリール又は複素環基である);

(式中、
Aは、1?18個の炭素原子を有する1価の有機基であり、特にアリール、アルキル、シクロアルキル又は複素環基である)
の単位約0.5?約80%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有する改質ポリビニルアルコールのプレポリマーが好適である。
はじめに既に述べたように、上記及び下記に用いられたポリビニルアルコール類は、少量の、典型的には20重量%まで、好適には5重量%までの、エチレン、プロピレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリラート、アリルアルコール、スチレン又は慣用的に用いられる同様なコモノマーのコポリマー単位を含んでもよい。
その使用が特に好適な材料は、例えば、PVAのヒドロキシル基の数に基づいて、式(I):

(式中、
Rは、8個までの炭素原子を有する低級アルキレンであり、
R_(1)は、水素又は低級アルキルであり、そして
R_(2)は、式R_(3)-CO-(ここで、R_(3)は、2?4個の炭素原子を有する、オレフィン性不飽和で共重合しうる基である)のオレフィン性不飽和アシル基である)の単位約0.5?約80%、特に単位約1?約15%を含む、少なくとも約2000の平均分子量を有するポリビニルアルコールの誘導体であるプレポリマーある。
2?24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和で共重合しうる基R_(2)は、アルキレンであり、好適には低級アルケニル、特にアクリル又はメタクリル酸のアシル基である基-CO-R_(3)である。
本発明の文脈において、別途に規定されない限り「低級」は、特に、8個までの炭素原子、好適には6個までの炭素原子、特に4個までの炭素原子を有する基及び化合物を表す基及び化合物を示す。
アルキルは、20個までの炭素原子を有し、直鎖又は分岐で有り得る。適当な例としては、デシル、オクチル、ヘキシル、ペンチル、ネオペンチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、プロピル、エチル及びメチルが挙げられる。
低級アルキルは、特に、8個までの炭素原子、好適には6個まで、特に4個までの炭素原子を有し、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル又はオクチルである。
アルカノアートは、20個までの炭素原子を有し、直鎖又は分岐アルカンカルボン酸の基である。アルカノアートは、例えば、ドデカノアート、ブチラート又はアセタートである。
低級アルカノアートは、特に、8個までの炭素原子、好適には6個まで、特に4個までの炭素原子を有し、例えば、ブチラート、プロピオナート又はアセタートである。
アルキレンは、20個までの炭素原子を有し、直鎖又は分岐で有り得る。適当な例としては、デシレン、オクチレン、ヘキシレン、ペンチレン、ブチレン、プロピレン、エチレン、メチレン、2-プロピレン、2-ブチレン及び3-ペンチレンが挙げられる。
低級アルキレンは、8個まで、好適には6個まで、特に4個までの炭素原子を有するアルキレンである。低級アルキレンは、特にプロピレン、エチレン又はメチレンである。
アルケニルは、2?20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐のアルケニルであり、例えば、ウンデセニル又はドデセニルである。
低級アルケニルは、2?8個の炭素原子、好適には2?6個の炭素原子、特に2?4個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐のアルケニルである。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-プロペン-2-イル、1-ブテン-2-又は-3-又は-4-イル、2-ブテン-3-イル及びペンテニル、ヘキセニル及びオクテニルの異性体である。
アルコキシは、20個までの炭素原子を有し、例えば、ノニルオキシ又はオクチルオキシである。
低級アルコキシは、8個までの炭素原子、好適には6個まで、特に4個までの炭素原子を有し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ又はtert-ブトキシである。
飽和2価脂環基は、20個までの炭素原子、好適には12個までの炭素原子を有し、好適にはシクロアルキレン、例えばシクロヘキシレンであり、又はシクロヘキシレン-低級アルキレン、例えばシクロヘキシレンメチレンであり、1個以上の、例えばトリメチルシクロヘキシレンメチレン、例えば2価イソホロン基のような、例えばメチル基である低級アルキル基により非置換又は置換されている。
アリーレンは、24個までの炭素原子、好適には18個までの炭素原子を有し、別途に定義されない限り、好適には、低級アルキル又は低級アルコキシ、特に1,3-フェニレン、1,4-フェニレン又はメチル-1,4-フェニレン、1,5-ナフチレン又は1,8-ナフチレンにより非置換又は置換の、フェニレン又はナフチレンである。
アリールは、24個まで、好適には18個までの炭素原子を有し、低級アルキル又は低級アルコキシにより置換されてもよい炭素環式芳香族化合物である。例としては、フェニル、トリイル、キシリル、メトキシフェニル、tert-ブトキシフェニル、ナフチル及びフェナントリルである。
アルキレンアリーレン又はアリーレンアルキレンのアリーレン単位は、好適には、低級アルキル又は低級アルコキシにより非置換又は置換されているフェニレンであり、そのアルキレン単位は、好適には、メチレン又はエチレン、特にメチレンのようなアルキレンである。したがって、このような基は、好適にはフェニレンメチレン又はメチレンフェニレンである。
アリーレンアルキレンアリーレンは、好適には、8個まで、特に6個まで、好適には4個までの炭素原子をアルキレン単位に有するフェニレン-低級アルキレン-フェニレンであり、例えばフェニレンエチレンフェニレン又はフェニレンメチレンフェニレンである。
本発明の文脈において、アリール-低級アルキルは、30個まで、好適には24個まで、特に18個までの炭素原子を有し、アリールにより置換された低級アルキルである。アリール-低級アルキルの例としては、ベンジル、キシリルメチル、トリルエチル、フェニルブチル、tert-ブトキシフェニルメチル、ナフチルプロピル、メトキシフェニルメチル及びフェニルヘキシルである。
シクロアルキルは、好適には12個までの炭素原子を有し、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、1,3-ジメチルシクロヘキシル、1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキシル、1,2-ジメチルシクロペンチル又はシクロオクチルである。
複素環基は、好適には12個までの炭素原子を有し、特に、例えば1個以上の次の種類のヘテロ原子:-S-、-O-、-N=又は-NH-により置換された5-又は6-員炭素環である。典型的な例としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリジン、ピログルタミン酸、マレイミド、クマリン、クマロン、インドール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、チオピラン、キノリン及びウラシルである。
下記の実施例は、本発明を更に説明するために役立つが、その範囲をいかようにも制限することを意図していない。別途に定義されない限り、温度は摂氏である。用語「塩水」は、別途定義されない限り、塩化ナトリウム溶液約0.9%重量%を水に含み、それを好適な生理学的pHの範囲、すなわちpH6.8?7.6に緩衝したものを示す。
実施例1
リン酸水素塩濃度が異なる塩基溶液中における、種々のアセタート含量を有するポリビニルアルコールヒドロゲルレンズの加水分解。
R_(1)=1そしてR_(2)=R_(3)-CO-である式(I)のプレポリマー(これは、EP641806の実施例15(i)と同様にして得た)の水性プレポリマー溶液から、(パラメータは以下のように選ばれた(表1も参照すること):固形分含量、30質量%、x mol%アセタート基(反復単位に基づく)及びy mmol/gアクリルアミド基(式(I)中の基R_(2)に対応))、中圧水銀ランプを用いて石英ガラス成形用型中で光化学架橋により、EP641806の実施例15にしたがってコンタクトレンズを製造した。コンタクトレンズは、アルミニウムの封止箔を有する従来のPPパッケージ中で、Na_(2)HOP_(4)溶液(z mmol/lのNa_(2)HOP_(4))0.5ml中に122℃で45分間オートクレーブにかけた。オートクレーブにかけた後、コンタクトレンズの曲率(基本曲率)の直径及び半径、またオートクレーブ溶液のpH値及び浸透圧モル濃度も測定した。コンタクトレンズを80℃で促進保存試験(1週間)に付した。コンタクトレンズの曲率(基本曲率)の直径及び半径及びオートクレーブ溶液のpH値及び浸透圧モル濃度を再度測定した。
比較において、コンタクトレンズ(No.9)は、1N水性NaOHの0.5ml中に121℃で20分間かけて完全に加水分解した。除去されたアセタートの量をNaOH溶液の逆-滴定により測定した。アセタート量の実測値は、加水分解が90%を超えたことを示した。この場合も、コンタクトレンズの曲率(基本曲率)の直径及び半径を測定した。
更に比較として、コンタクトレンズ(No.10)を従来の塩水0.5ml中、(No.11)を従来の塩水5.0ml中でオートクレーブにかけて、次に80℃で促進保存試験(1週間)に付した。
表1(No.1?No.8)の結果は、コンタクトレンズが保存-安定性であることを示している。No.8とNo.9を比較すると、同一のアクリルアミド及びアセタートでは、本発明による加水分解で起こる形状の変化及び完全な加水分解はほぼ同程度(直径で0.20mm?直径で0.24mm)である。保存安定性の問題が、No.10及びNo.11で示された。保存液が少量の場合には(No.10)pH値の著しい削減がみられるが、保存液が大量の場合には(No.11)、保存の期間中にコンタクトレンズの形状の顕著な変化がみられた。
ISO基準によると、コンタクトレンズの形状で許容しうる誤差は、±0.20mm(直径、基本曲率)である。保存液の生理学的な範囲は、pH6.8?7.8及び280?400mosmol/kgである。保存の結果起る形状の変化は、表1のNo.1?No.9で示されるように、全ての場合においてISO基準により許容しうる形状の最大の変化よりも小さい。

表1の凡例
a)保存:80℃で1週間。
b)49.8mmol/lのNaClを追加。
c)塩水0.5mlの成分:132.6mmol/lのNaCl;17.1mmol/lのNa_(2)HPO_(4);5.4mmol/lのNaH_(2)PO_(4)。
d)塩水5.0mlの成分はc)と同じ。
e)NaClを追加しない。したがってオートクレーブ後の浸透圧モル濃度は、いくらか低い。
実施例2
架橋剤の含有量が異なるポリビニルアルコールヒドロゲルの加水分解。
実施例1と同様にして、反復単位に基づくアセタート基10モル%及びアクリルアミド基0.46又は0.52mmol/gを有する水性プレポリマー溶液(固形分含量30質量%)から、中圧水銀ランプを用いて石英ガラス成形用型中で光化学架橋によりコンタクトレンズを製造した。コンタクトレンズは、アルミニウムの封止箔を有する従来のPPパッケージ中で、Na_(2)HPO_(4)溶液(135mmol/lのNa_(2)HPO_(4))0.5ml中に122℃で45分間オートクレーブにかけた。オートクレーブにかけた後、コンタクトレンズの曲率(基本曲率)の直径及び半径、またオートクレーブ溶液のpH値及び浸透圧モル濃度も測定した。コンタクトレンズを80℃で促進保存試験(1週間)に付した。コンタクトレンズの曲率(基本曲率)の直径及び半径、またオートクレーブ溶液のpH値及び浸透圧モル濃度も再度測定した。
保存中に起る形状の変化は、全ての場合においてISO基準により許容しうる形状の最大の変化よりも小さいことから、表2の結果はコンタクトレンズが保存-安定性であることを示している。

実施例3
一次パッケージ中のポリビニルアルコールコンタクトレンズの加水分解。
高温での保存安定性試験。
実施例1と同様にして、反復単位に基づくアセタート基7.5モル%及びアクリルアミド基0.48mmol/gを有する水性プレポリマー溶液(固形含量30質量%)から、中圧水銀ランプを用いて石英ガラス成形用型中で光化学架橋によりコンタクトレンズを生産した。コンタクトレンズは、アルミニウムの封止箔を有する従来のPPパッケージ中で、Na_(2)HPO_(4)溶液(80mmol/lのNa_(2)HPO_(4)及び0.48mmol/gのNaCl)0.65ml中に122℃で45分間オートクレーブにかけた。オートクレーブにかけた後、コンタクトレンズの曲率(基本曲率)の直径及び半径、またオートクレーブ溶液のpH値及び浸透圧モル濃度も測定した。コンタクトレンズを80℃(1週間)、65℃(10週間)及び45℃(12週間)で促進保存試験に付した。コンタクトレンズの曲率(基本曲率)の直径及び半径、またびオートクレーブ溶液のpH値及び浸透圧モル濃度も保存中に測定した。保存中に起る形状の変化は、全ての場合においてISO基準により許容しうる形状の最大の変化よりも小さいことから、表3の結果はコンタクトレンズが保存-安定性であることを示している。

a)ポリプロピレン(PP)パッケージを通して水を損失した結果、浸透圧モル濃度が65℃で増加した。


a)ポリプロピレン(PP)パッケージを通した水の損失の結果、浸透圧モル濃度が65℃で増加した。
実施例4
ポリビニルアルコールヒドロゲルの加水分解。加水分解前後での機械的性質の比較。
実施例1と同様にして、(反復単位に基づく)アセタート基7.5モル%及びアクリルアミド基0.48mmol/gを有する水性プレポリマー溶液(固形分含量30質量%)から、中圧水銀ランプを用いて石英ガラス成形用型中で光化学架橋により小型の平面の円板を生産した。いくつかの平面の円板のヤング率及び圧縮弾性率を測定した。残りの円板を、Na_(2)HPO_(4)溶液(80mmol/lのNa_(2)HPO_(4)及び49.8mmol/gのNaCl)0.65ml中に122℃で45分間オートクレーブにかけた。オートクレーブにかけた後、ヤング率及び圧縮弾性率を測定した。加水分解前後での圧縮弾性率及びヤング率の変化は、統計学的に有意ではなかった。

a)Std=標準偏差
(57)【特許請求の範囲】
1.ポリビニルアルコールから誘導される保存-安定なヒドロゲル成形品を製造する方法であって、
a)加水分解的に除去しうる側鎖を含むヒドロゲル成形体を、コンテナー中に移す工程、
b)ヒドロゲル成形体を含むコンテナーを、塩基性緩衝溶液で満たす工程、
c)コンテナーを閉じる工程、及び
d)ヒドロゲル成形体及び塩基性緩衝液を含むコンテナーを、少なくとも100℃の温度でオートクレーブする工程を含み、ここで、オートクレーブの間、加水分解的に除去しうる側鎖は、実質的に完全に除去され、コンテナーの内容物は消毒され、そして塩基性緩衝溶液は、実質的に等張であり、オートクレーブ工程後のpHがヒトの涙液に適合しうるpH6?8の範囲である生理学的に許容しうる水性溶液に転換されることを特徴とする方法。
2.ヒドロゲル成形体が、水溶性かつ架橋性ポリビニルアルコールから誘導される、請求項1記載の方法。
3.コンテナーが、アルミニウムの封止箔を有するポリプロピレン製パッケージである、請求項1記載の方法。
4.塩基性緩衝溶液が、主成分として、リン酸1水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩又は炭酸塩類を含む、請求項1記載の方法。
5.塩基性緩衝溶液が、pH8?12の範囲である、請求項1記載の方法。
6.オートクレーブを実施する温度範囲が、101?150℃の範囲である、請求項1記載の方法。
7.オートクレーブ工程の期間が、5分?18時間の範囲である、請求項1記載の方法。
8.加水分解的に除去しうる側鎖基類が、アセタート若しくはプロピオナート基又はその混合物である、請求項1記載の方法。
9.用いられたプレポリマーのPVAに基づく構造が、ポリビニルアセタート、ポリビニルプロピオナート及び/又はその混合物の、0.8?15モル%から誘導される側鎖の量を更に含む、請求項2記載の方法。
10.オートクレーブ工程後の浸透圧モル濃度が、220?450浸透圧モル濃度の範囲である、請求項1記載の方法。
11.オートクレーブ工程後のpH値が、pH6.8?7.6の範囲である、請求項1記載の方法。
12.プレポリマーが、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の数に基づいて、式(I):

(式中、
Rは、8個までの炭素原子を有するアルキレンであり、
R_(1)は、水素又は8個までの炭素原子を有するアルキルであり、そして
R_(2)は、25個までの炭素原子を有する、オレフィン性不飽和の電子-吸引性で、共重合しうる基である)の単位0.5?80%を含む、少なくとも2000の平均分子量を有するポリビニルアルコールである、請求項2記載の方法。
13.R_(2)が、式R_(3)-CO-(ここで、R_(3)は、2?24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基である)で示されるオレフィン性不飽和のアシル基である、請求項12記載の方法。
14.基R_(2)が、式(II):

(式中、
qは、ゼロ又は1であり、
R_(4)及びR_(5)は、それぞれ他と独立に、2?8個の炭素原子を有する低級アルキレン、6?12個の炭素原子を有するアリーレン、6?10個の炭素原子を有する2価環式脂肪族基、7?14個の炭素原子を有する、アリーレンアルキレン若しくはアルキレンアリーレン、又は13?16個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンであり、そして
R_(3)は、2?24個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和の共重合しうる基である)の基である、請求項12記載の方法。
15.加水分解をヒドロゲル成形体の最終パッケージ中で実施し、同時にヒドロゲル成形体を消毒し、そして生理学的に許容しうる塩濃度を得る、請求項1記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願平9-541490
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B29D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 晋也  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 渡辺 仁
山本 昌広
登録日 2008-02-15 
登録番号 特許第4080537号(P4080537)
発明の名称 保存?安定なヒドロゲル  
代理人 伊藤 佐保子  
代理人 束田 幸四郎  
代理人 伊藤 佐保子  
代理人 津国 肇  
代理人 津国 肇  
代理人 束田 幸四郎  

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