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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G21C
管理番号 1195749
審判番号 不服2008-4074  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2009-04-09 
事件の表示 平成10年特許願第 91228号「燃料集合体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月19日出願公開、特開平11-287881〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成10年4月3日の出願であって、平成20年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月21日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成20年10月15日付けで審尋がなされ、同年12月18日付けで回答書が提出されている。

II.平成20年3月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月21日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.平成20年3月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は、明細書ならびに図面を補正するものであって、本件補正のうち、特許請求の範囲に係る補正は、補正前(平成19年10月22日付けで補正、以下同じ。)の請求項1の
「【請求項1】
ウラン加工施設での取り扱うウランの濃縮度が5重量%以下、燃料集合体の平均濃縮度が燃料集合体の高燃焼度化により3.5重量%以上に増加し、燃料集合体内の最高濃縮度の燃料ペレットの濃縮度が4.8重量%以上である燃料集合体であって、前記最高濃縮度の燃料ペレットに、使用済み燃料を再処理して得られた回収したウランを使用することを特徴とする燃料集合体。」なる記載を、
「【請求項1】
ウラン加工施設での取り扱うウランの濃縮度が5重量%以下、燃料集合体の平均濃縮度が燃料集合体の高燃焼度化により3.5重量%以上に増加し、燃料集合体内の最高濃縮度の燃料ペレットの濃縮度が4.8重量%以上である燃料集合体であって、中央部に少なくとも1本のウォータロッドあるいはウォータボックスを配置した原子炉用燃料集合体において、前記最高濃縮度の燃料ペレットに、使用済み燃料を再処理して得られた回収したウランを使用し、前記ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合よりも、それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合を大きくすることを特徴とする燃料集合体。」(下線は補正箇所を示す。)
と補正するものであって、その余の請求項2ないし6については、形式上、補正はない。
上記請求項1に係る補正は、以下の2つの補正事項からなる。
(補正事項1)「燃料集合体」が「中央部に少なくとも1本のウォータロッドあるいはウォータボックスを配置した原子炉用燃料集合体」であるとする補正。
(補正事項2)「前記ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合よりも、それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合を大きく」するとの発明特定事項を付加する補正。

2.補正事項についての検討
最初に、上記補正事項1について検討する。
補正事項1は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、燃料集合体の形態を限定するものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第二号に規定する、いわゆる限定的減縮を目的とするものである。
次いで、上記補正事項2について検討するに、補正事項2は、燃料集合体中における燃料棒の配置について限定を加えるものであるので、当該事項が本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるか、すなわち、いわゆる新規事項の追加に該当するかどうか、さらに、前記限定がいわゆる限定的減縮に該当するかどうかを検討する。
(2-1)新規事項の追加について
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、7種の実施例が記載されており、それら実施例について「ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合」と「それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合」を算出すると、いずれの実施例の場合でも「ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合」よりも「それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合」が大きくなっているといえる。
しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、「最高濃縮度の燃料ペレットに、使用済み燃料を再処理して得られた回収したウランを使用する」ことを技術的思想とし、その様々な態様の実施例が記載されているにすぎず、「ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合よりも、それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合を大きく」するという直接的な記載や、そのような技術的思想を示唆する記載もなされていないばかりでなく、前記した7種の実施例を含む、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から、補正事項2の補正事項が当業者に自明な事項であるとも認められない。
したがって、補正事項2はいわゆる新規事項の追加に該当し、補正事項2を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものである。
(2-2)限定的減縮について
上記(2-1)のとおり、補正事項2はいわゆる新規事項の追加に該当するものであるが、念のため、補正事項2が特許法第17条の2第4項各号のいずれかに該当する補正であるか否かについて、さらに検討する。
補正前の請求項1に係る発明は、回収ウランを「濃縮度の高さに応じて」使用することを発明特定事項とするものであるのに対し、補正事項2によって付加される事項は、回収ウランを「燃料集合体内における燃料棒の配置に応じて」使用する事項に関するものであり、両者は別異の手段に係る事項である。
してみると、補正事項2は特許請求の範囲を減縮するものであるものの、補正前の請求項1に記載された課題の解決手段を下位概念化するものではなく、発明特定事項を限定するものとはいえないので、補正事項2は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、補正事項2が、請求項の削除、誤記の訂正ならびに不明りょうな記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかであるので、補正事項2は、特許法第17条の2第4項各号に規定する目的のいずれにも該当しない。
よって、補正事項2を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものである。
(2-3)独立特許要件違反について
請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、さらに、特許法第17条の2第4項各号に規定する目的のいずれにも該当しないことは上述のとおりであるが、念のため、上記本件補正後の請求項1に係る発明に係る補正が、新規事項の追加に該当せず、さらに、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(「以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(2-3-1)本件補正発明
本件補正発明は、平成20年3月21日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「ウラン加工施設での取り扱うウランの濃縮度が5重量%以下、燃料集合体の平均濃縮度が燃料集合体の高燃焼度化により3.5重量%以上に増加し、燃料集合体内の最高濃縮度の燃料ペレットの濃縮度が4.8重量%以上である燃料集合体であって、中央部に少なくとも1本のウォータロッドあるいはウォータボックスを配置した原子炉用燃料集合体において、前記最高濃縮度の燃料ペレットに、使用済み燃料を再処理して得られた回収したウランを使用し、前記ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合よりも、それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合を大きくすることを特徴とする燃料集合体。」

(2-3-2)引用文献
(2-3-2-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭62-32385号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「原子炉用燃料集合体」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)第1頁左下欄第14?16行
「〔発明の技術分野〕
本発明は回収ウランを用いた原子炉用燃料集合体に関するものである。」
(イ)第2頁左上欄第18行?同右上欄第10行
「〔発明の目的〕
本発明は上記情況に鑑みてなされたもので、使用済み燃料から回収された回収ウランを使用する燃料集合体において、燃料製造工場における各工程および品質管理上の複雑さを最小限にとどめ、さらに^(236)Uによる反応度低下を最小限にとどめることを目的とするものである。
〔発明の概要〕
本発明は燃料濃縮度が一様でない多数の燃料棒を格子状に配列してなる原子炉用燃料集合体において、使用済み燃料の再処理によって得られる回収ウランが1種類の濃縮度の燃料棒にのみ装荷されていることを特徴とするものである。」
(ウ)第2頁左下欄第3?5行
「 また本発明においては回収ウラン燃料が装荷される燃料棒は最高濃縮度の燃料棒であることが望ましい。」
(エ)第2頁左下欄第20行?第2頁右下欄第10行
「同図からわかるように、回収ウランを再濃縮したときに再濃縮度ウランにもち込まれる全^(236)U量は再濃縮ウランの^(235)U濃縮度が高くなるにつれて減少していく、したがって本発明において回収ウランを装荷する燃料棒では、その回収ウランの濃縮度を高めて^(235)U濃縮度を最高濃縮度としたものを使用すると、^(236)Uによる反応度低下の弊害を軽減することができ、上述の回収ウランを装荷する燃料棒を同一種類の濃縮度の燃料棒のみとしたことによる、効果と相俟って一層有利に回収ウランを利用することができる。」
(オ)第2頁右下欄第11行?第3頁左上欄第10行
「〔発明の実施例〕
本発明の実施例を図面を参照して説明する。
第1図は本発明の一実施例を説明するための燃料集合体の燃料棒配置図である。第1図に示されるように、燃料集合体1はチャンネルボックス2に囲まれた中に燃料棒3および水ロッド4が規則正しく格子状に配列して構成され、制御棒5の周囲に配置されている。燃料棒3は符号11?16で示すウラン濃縮度の異なる6種類の燃料棒で構成されている。
上記燃料集合体の各燃料棒が含有する^(235)U、^(236)UおよびGd_(2)0_(3)の各濃度を下記の第1表に示す。
第1表(省略)
上記表から明らかなように本実施例では^(236)Uは符号11の燃料棒にのみ入っており、すなわち回収ウランは符号11の燃料棒のみに使用されている。」
(カ)第1図
第1図には、中央部に水ロッド4が2本配置されている原子炉用燃料集合体の燃料棒配置図が図示されている。

これらの記載ならびに第1図の図示内容からして、刊行物1には、
「中央部に2本の水ロッドを配置した原子炉用燃料集合体において、最高濃縮度の燃料棒のみに、使用済み燃料の再処理によって得られる回収ウランを装荷した、燃料集合体。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(2-3-2-2)刊行物2
原査定の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-204193号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「原子炉用燃料集合体」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(キ)第2頁右上欄第17行?同左下欄第4行
「〔発明の概要〕
本発明は多数の燃料棒が格子状に配列され、前記多数の燃料棒の一部に燃料濃縮度あるいは可燃性毒物濃度が軸方向分布を有する燃料棒が存在する原子炉用燃料集合体において、使用済み燃料の再処理によって得られる回収ウランが前記軸方向分布を有する燃料棒以外の燃料棒にのみ装荷されていることを特徴とするものである。」
(ク)第2頁左下欄第10行?同右下欄第19行
「〔発明の実施例〕
本発明の実施例を図面を参照して説明する。
第1図は本発明の一実施例を説明するための燃料集合体の燃料棒配置図である。第1図に示されるように、燃料集合体1はチャンネルボックス2に囲まれた中に燃料棒3および水ロッド4が規則正しく格子状に配列して構成され、制御棒5の周囲に配置されている。燃料棒3は符号11?18で示すウラン濃縮度の異なる8種類の燃料棒およびGで示す可燃性毒物入り燃料棒(以下「ガドリニア棒」という)で構成されている。
第2図は各燃料棒の燃料濃縮度軸方向分布および可燃性毒物濃度軸方向分布を示す燃料棒縦断面説明図であり、11?18で示される各燃料棒内の数値1.7,1.9,2.1,2.5,3.0,3.3,3.5,3.8はそれぞれ燃料濃縮度を示し、2.5GD,4.0GDは可燃性毒物濃度を示している。……
このような濃度分布を有する燃料集合体において、回収ウランを再濃縮して製造した燃料ペレットは符号11,14,17および18の燃料棒にのみ装荷されている。」
(ケ)第1図、第2図
第1図には、燃料集合体の燃料棒配置図が、第2図には第1図に用いる核燃料棒の燃料濃縮度および可燃性毒物濃度の軸方向分布図が、図示されている。
(2-3-2-3)刊行物3
原査定の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭60-76686号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「燃料集合体」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(コ)第1頁左下欄第14?16行
「〔発明の利用分野〕
本発明は軽水型原子炉用燃料集合体、特に回収ウランを用いた燃料集合体に関するものである。」
(サ)第2頁左下欄第1?5行
「〔発明の目的〕
本発明の目的は、上記の欠点である反応度ペナルティーが小さくなるように回収ウランを利用することにより、必要天然ウラン量を減少できる軽水型原子炉用の燃料集合体を提供することにある。」
(シ)第3頁左下欄第1?6行
「実施例1
本発明の一実施例である燃料集合体の模式的横断面図を、第8図に示す。本実施例では、表2に示すように、ウラン236は燃料集合体周辺部には含まれず、燃料集合体中央部に局在している。本実施例の燃料集合体を燃料集合体IIとする。」
(ス)第3頁右下欄第5?14行
「実施例2
第9図は本発明の燃料集合体の他の実施例の模式的横断面図である。本実施例は、実施例1よりさらに所要天然ウラン量を減少させるため、燃料集合体中央部に含まれるウラン236濃度に分布をつけたものである。
すなわち、共鳴エネルギー領域中性子束の小さい燃料集合体中心部のウラン236濃度を高くしたものである。濃度分布は表3に示す。本実施例の燃料集合体を燃料集合体IIIとする。」
(セ)表2、表3、第8図、第9図
「表2」ならびに「第8図」には、前記(シ)で摘記した実施例1について、燃料棒番号とウラン濃縮度との関係、ならびに、燃料集合体中のウラン棒の配列が燃料棒番号によって模式的に示されている。また、「表3」ならびに「第9図」には、前記(ス)で摘記した実施例2について、同様に示されている。

(2-3-3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の、(a)「水ロッド」が、本件補正発明の(a’)「ウォータロッド」に相当することは明らかであり、「ウォータロッド」と「ウォータボックス」とは、断面形状や断面積が異なるものの、「水ロッド」の一種であることは、当業者の技術常識である。
また、燃料棒中には燃料ペレットが装荷されていることは当業者の技術常識であり、また、前記した摘記(イ)の「燃料製造工場における各工程および品質管理上の複雑さを最小限にとどめ」るという引用発明の目的からして、引用発明の(b)「最高濃縮度の燃料棒のみに、使用済み燃料の再処理によって得られる回収ウランを装荷した」ことは、最高濃縮度の燃料棒中の燃料ペレットのみに、使用済み燃料の再処理によって得られる回収ウランを装荷したことを意味することは明らかであるので、前記(b)の事項は、本件補正発明の(b’)「最高濃縮度の燃料ペレットに、使用済み燃料を再処理して得られた回収したウランを使用」したという事項を含むことは明らかである。
してみると、両者は、
<一致点>
「中央部に少なくとも1本のウォータロッドあるいはウォータボックスを配置した原子炉用燃料集合体において、前記最高濃縮度の燃料ペレットに、使用済み燃料を再処理して得られた回収したウランを使用した、燃料集合体。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
「燃料集合体」が、本件補正発明では「ウラン加工施設での取り扱うウランの濃縮度が5重量%以下、燃料集合体の平均濃縮度が燃料集合体の高燃焼度化により3.5重量%以上に増加し、燃料集合体内の最高濃縮度の燃料ペレットの濃縮度が4.8重量%以上である」のに対し、引用発明には、そのような濃縮度について記載されていない点。
<相違点2>
本件補正発明は、「ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合よりも、それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合を大きくする」という構成を具備しているのに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。

(2-3-4)検討・判断
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点1について>
原子力の技術分野において、
・燃料集合体の高燃焼度化を図るためには燃料集合体のウラン濃縮度を高くする必要があること、
・ウラン濃縮を行うウラン加工施設では、濃縮処理効率を維持しつつ濃縮処理時の臨界安全管理を行うために、取り扱うウランの濃縮度を上限値(一般的には5%)以下とする必要があること、
・原子炉炉心に配置される燃料集合体中の燃料棒のウラン濃縮度分布は、中性子束分布等々の原子炉炉心の核物理特性を考慮して定められること、
は当業者の技術常識に属する事項である。また、各濃縮度に関し、本願の明細書には格別な臨界的意義は何ら記載されていない。
してみると、ウラン加工施設で取り扱い得る濃縮度の上限に応じて燃料集合体内の最高濃縮度の燃料ペレットの濃縮度を定めるとともに平均濃縮度を定めることは、当業者が適宜行い得る設計的事項にすぎず、相違点1に格別の技術的創作性を見出すことはできない。
<相違点2について>
回収ウランを使用し、その使用割合を高めた燃料集合体に関して記載されている刊行物2ならびに刊行物3について、前記(ク)、(ケ)ならびに(シ)ないし(セ)として摘記した実施例に即し、それらの「ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合」(以下、平成20年12月18日付け回答書に即して「S」という。)と、「それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合」(以下、同様に「T」という。)を、「回収ウラン使用燃料棒数×回収ウラン濃縮度」の総和を各領域について算出して、「S/T」として表すと、刊行物2について摘記した実施例では「38.9%/57%」、刊行物3について摘記した実施例1、2では、いずれも「28.8%/81%」となり、
「S<T」
の関係であることがわかる。
そうすると、回収ウランの使用割合を高めるため、「ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合よりも、それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合を大きくする」ことは本願出願前に周知の技術的事項にすぎない。
してみると、回収ウランの使用割合を高めるために相違点2の構成を採用する程度のことは、当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。

そして、これらの相違点によって奏される本件補正発明の作用効果も、引用発明および周知の技術的事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(2-3-5)独立特許要件についてのむすび
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明に係る補正が、新規事項の追加に該当せず、さらに、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とするものであるとしても、本件補正発明は引用発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項、もしくは、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、また、本件補正が特許法第17条の2第3項に違反せず、請求項1に係る補正が特許法第17条の2第4項第2号に該当するものであるとしても、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。
したがって、本件補正は特許法第159条1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成20年3月21日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正前の、平成19年10月22日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「ウラン加工施設での取り扱うウランの濃縮度が5重量%以下、燃料集合体の平均濃縮度が燃料集合体の高燃焼度化により3.5重量%以上に増加し、燃料集合体内の最高濃縮度の燃料ペレットの濃縮度が4.8重量%以上である燃料集合体であって、前記最高濃縮度の燃料ペレットに、使用済み燃料を再処理して得られた回収したウランを使用することを特徴とする燃料集合体。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1ならびにその記載事項は、上記「II.3.(2-3-2)」の(2-3-2-1)に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比、検討・判断
本願発明は、上記「II.〔理由〕2.(2-3-1)」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、「中央部に少なくとも1本のウォータロッドあるいはウォータボックスを配置した原子炉用燃料集合体において」、ならびに、「前記ウォータロッドに隣接する領域の燃料棒及び最外周領域にある燃料棒に配置した回収ウラン量の割合よりも、それ以外の領域の燃料棒に装荷された回収ウラン量の割合を大きく」との事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、「II.〔理由〕2.(2-3-5)」に記載したとおり、引用発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-05 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-24 
出願番号 特願平10-91228
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G21C)
P 1 8・ 572- Z (G21C)
P 1 8・ 575- Z (G21C)
P 1 8・ 121- Z (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今浦 陽恵青木 洋平  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 武田 悟
森林 克郎
発明の名称 燃料集合体  
代理人 井上 学  

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