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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1195751
審判番号 不服2008-8879  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-10 
確定日 2009-04-09 
事件の表示 特願2007-180345「入力誤り修復支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-305153〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成6年10月3日に出願した特願平6-263137号の一部を平成17年8月15日に新たな特許出願とし、さらに、その新たな特許出願である特願2005-235572号の一部を平成19年7月9日に新たな特許出願としたものであって、
平成20年3月4日付けで拒絶査定がなされ(発送日同年3月11日)、これに対し、平成20年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年5月12日付けで手続補正がなされたものである。



2.原査定の理由

原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。

「A.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第5項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていない。

[請求項1について]
(1)「前記解析部での解析結果及び前記かな漢字変換実行部での変換結果に基づき前記入力された読み文字列に対して、短い読みの細切れな文節の発生の有無の検査をおこない、短い読みの細切れな文節がある場合に、入力誤りの可能性が高いと判断して」とあるが、装置構成が「短い読みの細切れな文節の発生の有無」といった漠然とした概念をどのように検査するのか、具体的手法・構成が不明である。
また、上記記載によれば、短い読みの細切れな文節がある場合に、直ちに入力誤りの可能性が高いと判断されると解されるが、発明の詳細な説明【0029】-【0030】段落の記載を見ると、入力誤りの可能性が高いと判断される条件は、「総合検査値が敷居値以上」であることであり、短い読みの細切れな文節があるか否かは「総合検査値」を求めるための一パラメータに過ぎない。つまり、この記載からでは、短い読みの細切れな文節があることで直ちに(総合検査値が敷居値を超えて)入力誤りの可能性が高いと判断されるものとは読み取れない。
よって、本請求項の記載は、発明の詳細な説明の記載と対応しない。

(2)「前記読み文字列の中から前記文節に係る文字を入力誤り推定文字として摘出する」とあるが、これに対応する発明の詳細な説明の記載が不明である。
よって、請求項1およびこれに従属する全ての請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない、あるいは、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでない。

B.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(1)上記理由Aの(1)の指摘に関連して、発明の詳細な説明の記載では、「短い読みの細切れな文節の発生の有無」をどのように検査するのか、本願明細書には装置構成の動作として理解できる記載がない。
(2)上記理由Aの(2)の指摘に関連するが、発明の詳細な説明の記載において、入力誤り推定文字の摘出の具体的方法が不明である。
明細書【0029】段落には、「入力誤り摘出部31Aでは、かな漢字変換実行部32を呼び出し、読み文字列(範囲指定されたのであれば範囲指定内の読み文字列)に対して内部的にかな漢字変換処理を行なう。そして、かな漢字変換実行部32での変換結果と解析部311での解析結果とを用いて読み文字列を検査して各検証項目毎に検査値を設定し(ステップS102)、総合検査値が閾値以上であれば入力誤りの可能性が高いと判断して読み文字列の中から入力誤り推定文字を摘出する。」と記載されている。しかしながら、この記載では、まず、総合検査値が読み文字列全体に対して計算されるのか、読み文字列の部分毎に区切って計算されるのか、さらに部分毎に区切るのであれば、どのように区切るのかが不明である。加えて、そのように計算された総合検査値が閾値以上の時、総合検査値の計算の対象となった文字列のうち、どの部分を入力誤り推定文字として抽出するのか、本願明細書には装置構成の動作として理解できる記載がない。

よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載では、請求項1およびこれに従属する全ての請求項に係る発明について、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。」

なお、平成20年3月4日付けの拒絶査定の備考の欄には、

「(なお、拒絶理由通知の理由Aの冒頭で、「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第5項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていない。」と記載していますが、拒絶理由の説明の中で「具体的手法・構成が不明」、および、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでない。」と記載しているように、特許法第36条第5項第2号の要件にも触れていることは明らかです。したがって、上記した理由Aの冒頭の記載は、「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第5項第1号,第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。」の明らかな誤記ですので訂正します。)」

と記載されている。



3.当審の判断

(1)
特許法第36条第4項に関する拒絶理由である前記B(2)の
「(2)上記理由Aの(2)の指摘に関連するが、発明の詳細な説明の記載において、入力誤り推定文字の摘出の具体的方法が不明である。
明細書【0029】段落には、「入力誤り摘出部31Aでは、かな漢字変換実行部32を呼び出し、読み文字列(範囲指定されたのであれば範囲指定内の読み文字列)に対して内部的にかな漢字変換処理を行なう。そして、かな漢字変換実行部32での変換結果と解析部311での解析結果とを用いて読み文字列を検査して各検証項目毎に検査値を設定し(ステップS102)、総合検査値が閾値以上であれば入力誤りの可能性が高いと判断して読み文字列の中から入力誤り推定文字を摘出する。」と記載されている。・・・(中略)・・・加えて、そのように計算された総合検査値が閾値以上の時、総合検査値の計算の対象となった文字列のうち、どの部分を入力誤り推定文字として抽出するのか、本願明細書には装置構成の動作として理解できる記載がない。」
について検討する。


(2)
「上記理由Aの(2)の指摘」によって指摘された箇所は、本出願当初の特許請求の範囲第1項、すなわち、

「【請求項1】
入力された読み文字列を解析して前記読み文字列に対する解析結果を記憶手段に格納する解析部と、
前記読み文字列を辞書を索引してかな漢字変換文字列に変換するかな漢字変換実行部と、
前記解析部での解析結果及び前記かな漢字変換実行部での変換結果に基づき前記入力された読み文字列に対して、短い読みの細切れな文節の発生の有無の検査をおこない、短い読みの細切れな文節がある場合に、入力誤りの可能性が高いと判断して、前記読み文字列の中から前記文節に係る文字を入力誤り推定文字として摘出する入力誤り摘出部と、
特定キーの入力により前記入力誤り摘出部で摘出された入力誤り推定文字の位置にカーソルを移動させる入力誤り指摘部と、
を備えたことを特徴とする入力誤り修復支援装置。」

という記載中の「前記読み文字列の中から前記文節に係る文字を入力誤り推定文字として摘出する」という記載に関する箇所である。

なお、指摘された当該箇所は、
平成20年2月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲第1項、すなわち、

「 【請求項1】
入力された読み文字列を解析して前記読み文字列に対する解析結果である文節情報を記憶手段に格納する解析部と、
前記読み文字列を辞書を索引してかな漢字変換文字列に変換するかな漢字変換実行部と、
前記解析部での解析結果である文節情報及び前記かな漢字変換実行部での変換結果に基づき、前記入力された読み文字列に対して、所定文字数以下の文節が所定回数以上連続するかを検査することによって短い読みの細切れな文節の発生の有無の検査をおこない、短い読みの細切れな文節の有無を含む各検査により設定された総合検査値が閾値を超えた場合に、入力誤りの可能性が高いと判断することにより前記読み文字列の中から検査値が前記閾値以上となった文節情報を入力誤り推定文字として摘出する入力誤り摘出部と、
特定キーの入力により前記入力誤り摘出部で摘出された入力誤り推定文字の位置にカーソルを移動させる入力誤り指摘部と、
を備えたことを特徴とする入力誤り修復支援装置。」

という記載中の「前記読み文字列の中から検査値が前記閾値以上となった文節情報を入力誤り推定文字として摘出する」に対応し、

更に、平成20年5月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲第1項、すなわち、

「 【請求項1】
入力された読み文字列を解析して前記読み文字列に対する解析結果である文節情報を記憶手段に格納する解析部と、
前記読み文字列を辞書を索引してかな漢字変換文字列に変換するかな漢字変換実行部と、
前記解析部での解析結果である文節情報及び前記かな漢字変換実行部での変換結果に基づき、前記入力された読み文字列に対して、所定文字数以下の文節が所定回数以上連続するかを検査することによって短い読みの細切れな文節の発生の有無の検査をおこない、短い読みの細切れな文節の有無を含む各検査により設定された総合検査値が閾値を超えた場合に、入力誤りの可能性が高いと判断して前記読み文字列の中から、前記短い読み切れな文節にかかる文節情報に基づいて入力誤り推定文字を摘出する入力誤り摘出部と、
特定キーの入力により前記入力誤り摘出部で摘出された入力誤り推定文字の位置にカーソルを移動させる入力誤り指摘部と、
を備えたことを特徴とする入力誤り修復支援装置。」

という記載中の「前記短い読み切れな文節にかかる文節情報に基づいて入力誤り推定文字を摘出する」(なお、「短い読み切れな文節」は「短い読みの細切れな文節」の誤記であることは明らかである。)に対応する。


(3)
このことから、特許法第36条第4項に関する拒絶理由である前記B(2)は、「短い読みの細切れな文節」として判断された「読み『文字列』」の中から、どの部分を「入力誤り推定『文字』」として抽出するのか、本願明細書には装置構成の動作として理解できる記載がない、という拒絶理由を含んでいる。
したがって、この点について、更に検討する。


(4)
本願明細書又は図面には、「短い読みの細切れな文節」に対する入力誤り推定文字を抽出することに関して、以下の記載がある。

「【0024】
入力誤り摘出部31Aは、解析部311での解析結果とかな漢字変換実行部32での変換結果に基づき、読み文字列を検査して検査値を設定し、検査値が閾値以上であれば入力誤りの可能性が高いと判断して読み文字列の中から入力誤り推定文字を摘出する。」

「【0029】
入力誤り摘出部31Aでは、かな漢字変換実行部32を呼び出し、読み文字列(範囲指定されたのであれば範囲指定内の読み文字列)に対して内部的にかな漢字変換処理を行なう。そして、かな漢字変換実行部32での変換結果と解析部311での解析結果とを用いて読み文字列を検査して各検証項目毎に検査値を設定し(ステップS102)、総合検査値が閾値以上であれば入力誤りの可能性が高いと判断して読み文字列の中から入力誤り推定文字を摘出する。その際、摘出した入力誤り推定文字について、読み文字列内での位置情報を作成する。」

「【0030】
上記検査値を設定する上での基準となる項目は、(a) 未登録語の有無の検査(読みが辞書(ユーザ登録のものを含む)に登録されているか否か)、(b) 文法的な誤りの有無の検査(助詞が無い名詞+用言となっているか否か、句読点の重複などになっているか否か)、(c) 短い読みの細切れな文節の発生の有無(例えば、「にゅ/力/驟雨/服(にゅりょくしゅううふく:本来、入力修復)となっているか否か」の検査、(d) 変換結果における“くずれ”の有無(例えば、「亜kz委/酔う/hkう:本来、赤い洋服)となっているか否か」の検査、(e) ローマ字入力及びかな入力時における(ローマ字→かな)変換時の失敗の有無(未変換文字の発生があるか否か)の検査である。」

「【0031】
入力誤り推定文字の摘出が終わると(ステップS103)、入力誤り摘出部31Aは、入力誤り指摘部31Bを呼び出す。入力誤り指摘部31Bは、入力誤り摘出部31Aで摘出された入力誤り推定文字の位置にカーソルを移動させる。その際、読み文字列の中の入力誤り推定箇所をマーク又は色表示で示し、複数の入力誤り推定箇所が存在する場合には、入力誤り摘出部31Aで設定された検査値の値が大きい入力誤り推定文字の位置から順に、特定キーが入力される毎にカーソルを順次移動させ、入力誤り位置へのカーソル移動機能に係る処理を終了する(ステップS104,S105)。」


(5)
段落【0030」の「(c) 短い読みの細切れな文節の発生の有無(例えば、「にゅ/力/驟雨/服(にゅりょくしゅううふく:本来、入力修復)となっているか否か」の検査」という記載から、
「短い読みの細切れな文節」が、本来「入力修復」を得るために「にゅうりょくしゅうふく」という「読み文字列」を入力すべきところを、「にゅりょくしゅううふく」と誤って「読み文字列」を入力したために得られる「にゅ/力/驟雨/服」のような文節を指すことは明らかである。

また、段落【0029】の「・・・、総合検査値が閾値以上であれば入力誤りの可能性が高いと判断して読み文字列の中から入力誤り推定文字を摘出する。」という記載(すなわち、「入力誤り推定文字」は「読み文字列」の中から抽出される。)、
段落【0031】の「入力誤り指摘部31Bは、入力誤り摘出部31Aで摘出された入力誤り推定文字の位置にカーソルを移動させる。・・・(中略)・・・、複数の入力誤り推定箇所が存在する場合には、入力誤り摘出部31Aで設定された検査値の値が大きい入力誤り推定文字の位置から順に、特定キーが入力される毎にカーソルを順次移動させ、入力誤り位置へのカーソル移動機能に係る処理を終了する」という記載、
及び、【図4】に図示されているように、カーソルは1文字分の大きさを有していることは技術常識であることから、
「入力誤り推定文字」は「読み文字列」の中から抽出される1文字(すなわち、『文字』)であって、複数文字からなる「入力誤り推定『文字列』」の誤記ではないことは明らかである。


(6)
そうすると、仮に、平成20年2月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲第1項、及び平成20年5月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲第1項に記載されているような、
「所定文字数以下の文節が所定回数以上連続するかを検査することによって短い読みの細切れな文節の発生の有無の検査をおこな」う、
という処理を行うことによって、「読み『文字列』」の中から「入力誤り推定『文字列』」を得ることが、本願明細書又は図面の記載から自明な事項であるとしても、

本願明細書又は図面(特に、段落【0029】乃至【0030】の記載)では、
情報処理装置に対して、如何なる技術的思想(例:コンピュータ・アルゴリズム)を適用して、「入力誤り推定『文字列』」(例:「にゅりょくしゅううふく」)の中から、「入力誤り推定『文字』」(例:「にゅ『』りょくしゅう『う』ふく」中の『』で囲った文字)を推定して抽出するのか、
(平成20年5月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲第1項に至っては、情報処理装置に対して、如何なる技術的思想(例:コンピュータ・アルゴリズム)を適用して、『短い読みの細切れな文節にかかる文節情報』という特定の情報から、「入力誤り推定『文字』」を推定して抽出するのか)
について開示されているとはいえない。


したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の構成を記載しているとはいえない。



4.むすび

したがって、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-04 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2007-180345(P2007-180345)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 立川 功
和田 財太
発明の名称 入力誤り修復支援装置  
代理人 酒井 昭徳  

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