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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1195803
審判番号 不服2006-1575  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-26 
確定日 2009-04-13 
事件の表示 特願2003-123570「顧客管理システム及びポイント管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開,特開2004-326656〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成15年4月28日の出願であって,平成17年12月21日付で拒絶査定がなされ,これに対し,平成18年1月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年2月27日付で手続補正がなされ,平成20年10月7日付で審尋がなされたものである。なお,前記審尋に対して回答書は提出されていない。

2.平成18年2月27日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月27日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成18年2月27日付の手続補正(以下,「本件補正」という。)により,請求項1は,
「複数の店舗にそれぞれ設置される複数の店舗システムと,これらの店舗システムに通信網を介してデータ送受信可能に接続される本部システムとで構成される顧客管理システムであって,
前記本部システムの一部を構成し,顧客毎に付与されるポイントを集計した累積ポイントを記憶するポイントファイルを有するポイント記憶装置と,
前記店舗システムの一部を構成し,顧客の買い上げに係る売上処理に応じて当該顧客の前記累積ポイントに対するポイント加算情報またはポイント減算情報を生成する商品販売データ処理装置と,
を備え,
前記商品販売データ処理装置は,売上処理の際,前記ポイント記憶装置に対して前記通信網を介して,顧客を特定してその顧客の累積ポイントの問い合わせを行う処理を実行し,
前記ポイント記憶装置は,その累積ポイントの問い合わせに応じて前記ポイントファイルを検索して当該顧客の累積ポイントを抽出して前記商品販売データ処理装置に前記通信網を介して通知する処理を実行し,
前記商品販売データ処理装置は,当該売上処理後直ちに,今回の売上処理による売上金額に対する新規のポイントを算出してこれをポイント加算情報として前記通信網を介して前記ポイント記憶装置に送信する処理を実行し,
前記商品販売データ処理装置は,当該売上処理後直ちに,前記通知された累積ポイントが基準ポイントに達したかどうかを判定し,基準ポイントに達していると判定した場合であってその基準ポイントが使われた場合には当該基準ポイントをポイント減算情報として前記通信網を介して前記ポイント記憶装置に送信する処理を実行し,
前記ポイント記憶装置は,前記ポイントファイルに記憶されている前記累積ポイントを,前記各店舗システムの前記商品販売データ処理装置からそれぞれ前記通信網を介して売上処理後に直ちに送信されたポイント加算情報またはポイント減算情報に基づいて書き換える処理を実行する,
ことを特徴とする顧客管理システム。」
と補正された。
また,本件補正により,補正前の請求項2,請求項5,及び請求項6は削除された。
また,本件補正により,補正前の請求項3は,
「前記通信網の障害に起因して前記店舗システムと前記本部システムとの間のデータ通信に失敗した場合に,当該データ通信に係る前記ポイント記憶装置の前記ポイントファイルに記憶されている前記累積ポイントの更新を中止することを特徴とする請求項1記載の顧客管理システム。」
と補正され,補正後の請求項2とされた。
また,本件補正により,補正前の請求項4は,
「前記累積ポイントの更新を中止した場合には,データ通信に失敗した旨と,顧客の会員番号と,ポイント加算情報またはポイント減算情報とが記載された障害レシートを前記商品販売データ処理装置から発行することを特徴とする請求項2記載の顧客管理システム。」
と補正され,補正後の請求項3とされた。
さらに,本件補正により,補正前の請求項7は,
「顧客毎に付与されるポイントを集計した累積ポイントを記憶するポイントファイルを有するポイント記憶装置を備える本部システムと,この本部システムに通信網を介してデータ送受信可能に接続されて顧客の買い上げに係る売上処理に応じて当該顧客の前記累積ポイントに対するポイント加算情報またはポイント減算情報を生成する商品販売データ処理装置を備える複数の店舗にそれぞれ設置される複数の店舗システムと,
で構成される顧客管理システムで用いられるポイント管理方法であって,
前記商品販売データ処理装置が,売上処理の際,前記ポイント記憶装置に対して前記通信網を介して,顧客を特定してその顧客の累積ポイントの問い合わせを行う処理を実行する工程と,
前記ポイント記憶装置が,その累積ポイントの問い合わせに応じて前記ポイントファイルを検索して当該顧客の累積ポイントを抽出して前記商品販売データ処理装置に前記通信網を介して通知する処理を実行する工程と,
前記商品販売データ処理装置が,当該売上処理後直ちに,今回の売上処理による売上金額に対する新規のポイントを算出してこれをポイント加算情報として前記通信網を介して前記ポイント記憶装置に送信する処理を実行する工程と,
前記商品販売データ処理装置が,当該売上処理後直ちに,前記通知された累積ポイントが基準ポイントに達したかどうかを判定し,基準ポイントに達していると判定した場合であってその基準ポイントが使われた場合には当該基準ポイントをポイント減算情報として前記通信網を介して前記ポイント記憶装置に送信する処理を実行する工程と,
前記ポイント記憶装置が,送信されたポイント加算情報またはポイント減算情報に基づいて,前記ポイント記憶装置の前記ポイントファイルに記憶されている前記累積ポイントを書き換える処理を実行する工程と,
を有することを特徴とするポイント管理方法。」
と補正され,補正後の請求項4とされた。

(2)補正の目的について
(2-1)請求項1に係る本件補正について
請求項1に係る本件補正は,補正前後の請求項1の記載からみて以下の補正事項を含む。
(補正事項1)
「前記商品販売データ処理装置は,売上処理の際,前記ポイント記憶装置に対して前記通信網を介して,顧客を特定してその顧客の累積ポイントの問い合わせを行う処理を実行し,」との記載を追加する補正事項。

(補正事項2)
「前記ポイント記憶装置は,その累積ポイントの問い合わせに応じて前記ポイントファイルを検索して当該顧客の累積ポイントを抽出して前記商品販売データ処理装置に前記通信網を介して通知する処理を実行し,」との記載を追加する補正事項。

上記補正事項1及び2は,商品データ処理の機能として,補正前の請求項1に記載された「前記店舗システムの一部を構成し,顧客の買い上げに係る売上処理に応じて当該顧客の前記累積ポイントに対するポイント加算情報またはポイント減算情報を生成する」との機能に,新たに「売上処理の際,前記ポイント記憶装置に対して前記通信網を介して,顧客を特定してその顧客の累積ポイントの問い合わせを行う処理を実行する」との機能及び「その累積ポイントの問い合わせに応じて前記ポイントファイルを検索して当該顧客の累積ポイントを抽出して前記商品販売データ処理装置に前記通信網を介して通知する処理を実行する」との機能を追加するものであり,補正事項1及び2により追加された機能は,補正前の請求項1に記載された機能の下位概念でなく,同位の概念である。
したがって,上記補正事項1及び2は,補正前の請求項1に記載された事項を限定的に減縮するものとは認められないので,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げられた事項を目的とするものに該当するとは認められない。
また,上記補正事項1及び2が,改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げられた請求項の削除を目的とするものにも,同項第3号に掲げられた誤記の訂正を目的とするものにも,同項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
よって,上記補正事項1及び2は,改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(2-2)請求項4に係る本件補正について
補正後の請求項4に係る本件補正は,補正前の請求項7及び補正後の請求項4の記載からみて以下の補正事項を含む。
(補正事項3)
「前記商品販売データ処理装置が,売上処理の際,前記ポイント記憶装置に対して前記通信網を介して,顧客を特定してその顧客の累積ポイントの問い合わせを行う処理を実行する工程と,」の記載を追加する補正事項。

(補正事項4)
「前記ポイント記憶装置が,その累積ポイントの問い合わせに応じて前記ポイントファイルを検索して当該顧客の累積ポイントを抽出して前記商品販売データ処理装置に前記通信網を介して通知する処理を実行する工程と,」の記載を追加する補正事項。

上記補正事項3及び4は,ポイント管理方法の工程として,補正前の請求項7に記載された「売上処理後に直ちに,前記各店舗システムの前記商品販売データ処理装置からそれぞれ前記通信網を介して前記ポイント記憶装置に対してポイント加算情報またはポイント減算情報を送信する工程」及び「送信されたポイント加算情報またはポイント減算情報に基づいて,前記ポイント記憶装置の前記ポイントファイルに記憶されている前記累積ポイントを書き換える工程」に,新たに「前記商品販売データ処理装置が、売上処理の際,前記ポイント記憶装置に対して前記通信網を介して,顧客を特定してその顧客の累積ポイントの問い合わせを行う処理を実行する工程」及び「前記ポイント記憶装置が,その累積ポイントの問い合わせに応じて前記ポイントファイルを検索して当該顧客の累積ポイントを抽出して前記商品販売データ処理装置に前記通信網を介して通知する処理を実行する工程」を追加するものであり,上記補正事項3及び4により追加された工程は補正前の請求項7に記載された工程の下位概念ではなく,同位の概念である。
したがって,上記補正事項3及び4は,補正前の請求項7に記載された事項を限定的に減縮するものとは認められないので,改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた事項を目的とするものに該当するとは認められない。
また,上記補正事項3及び4が,改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げられた請求項の削除を目的とするものにも,同項第3号に掲げられた誤記の訂正を目的とするものにも,同項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
よって,上記補正事項3及び4は,改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(2-3)まとめ
上記補正事項1-4を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
以上のとおり,平成18年2月27日付の手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「複数の店舗システムと,これらの店舗システムに通信網を介してデータ送受信可能に接続される本部システムとで構成される顧客管理システムであって,
前記本部システムの一部を構成し,顧客毎に付与されるポイントを集計した累積ポイントを記憶するポイントファイルを有するポイント記憶装置と,
前記店舗システムの一部を構成し,顧客の買い上げに係る売上処理に応じて当該顧客の前記累積ポイントに対するポイント加算情報またはポイント減算情報を生成する商品販売データ処理装置と,
を備え,
前記ポイント記憶装置の前記ポイントファイルに記憶されている前記累積ポイントは,前記各店舗システムの前記商品販売データ処理装置からそれぞれ前記通信網を介して売上処理後に直ちに送信されたポイント加算情報またはポイント減算情報に基づいて書き換えられることを特徴とする顧客管理システム。」

4.引用例
(1)引用例1
原査定で拒絶の理由に引用された特開2001-325509号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(a)「【0012】
【発明の実施の形態】図1は,本発明による顧客サービス管理分析システム102の一実施形態の概略的構成図である。顧客サービス管理分析システム102の基本的構成メンバーとしては,システム運用の中核となるシステム運用センター10,実際に店舗を設けた実店舗40,ネットワーク上の仮想店舗であるネット店舗60,クレジットカード会社70がある。
【0013】システム運用センター10は,顧客サービス管理分析システム102の中核であり,各構成メンバーとの間でデータを授受し,データを処理かつ記憶する制御システムである。
【0014】システム運用センター10に含まれる機能的な構成要素として,POSシステム12と,FSPシステム18と,及び多次元データ分析システム28とが含まれる。
【0015】POSシステム12は,よく知られており,実店舗40にはPOS端末42及びPOSサーバー44が設置される。顧客が店舗において商品等を購入した場合,即時に売上データがPOS端末42に入力され,POSサーバー44により処理される。尚,後述するFSPシステム18とPOSシステム12を連動させることが好適であるので,POSサーバは売上データに基づくポイントデータの処理も行う。POSサーバー44は,POS端末42からの入力データを売上情報及びポイント付与情報として格納するデータベース46,並びに,顧客情報及びポイント残高情報等として格納するデータベース48を具備する。システム運用センター10に設置されるPOSシステムの本体12は,POSサーバ44から伝送された売上情報を格納するデータベース14,並びに,店舗情報及び商品情報を予め格納した店舗マスタ及び商品マスタ16のデータベース16を具備する。
【0016】ネット店舗60は,インターネット上のサイトであるホームページ68を運営管理するウェブサーバー62により実現され,ウェブサーバー62は,売上情報及びポイント付与情報を格納するデータベース64及び顧客情報及びポイント残高情報等を格納するデータベース66を具備する。
【0017】FSPシステム18は,基本的には,各店舗の実施するポイントシステムを運営管理するための機能を具備する。すなわち,顧客が商品等を購入した場合,売上金額に応じてその顧客にポイントを付与し,その変更されたポイントデータをFSPシステム18へ伝送する。この処理は,上記のPOSシステムと連動させることができ,POS端末へ売上データが入力されたとき,同時にポイントに関するデータ処理も行うことが好適である。従って,POSサーバー44からFSPシステム18へ,売上データ及びポイントデータが伝送される(矢印82)。FSPシステム制御部26は,取得したデータをデータベースとして格納しかつ管理する。具体的には,顧客情報,売上情報及びポイント情報のデータを管理する。また,後述する多次元データ分析システムとの連携機能を具備する(矢印92)。
【0018】また,POSシステム12からFSPシステム18へは,各種マスタデータが適宜伝送される(矢印90)。
【0019】FSPシステムの具体的な実施例としては,即時発行のポイントカードを用いる方式がある。これは,店舗の店頭においてポイントカードを即時発行し,支払い方法が現金であってもクレジットカードであっても売上金額に応じたポイントを即時付与するものである。
【0020】実店舗40に設置されるFSP端末52は,サービスカウンタ等に設置される高機能のポイントシステム専用端末であり,顧客が個人データの登録や変更を行ったり,ポイント照会や還元を行ったり,また各種履歴照会を行ったりすることができる。このFSP端末52とFSPシステム18との間では,顧客データ及びポイントデータが伝送される(矢印84)。
【0021】実店舗40におけるキオスク端末50は,無人コーナー等に設置される簡易機能をもつ端末であり,顧客はポイント照会や還元を行うことができる。このキオスク端末50とFSPシステム18との間では,ポイントデータが伝送される(矢印86)。さらに,インターネット接続可能なウェブ端末79を実店舗40に設置してもよく,顧客はこれによってもポイント照会や還元を行うことができる(矢印85)。
【0022】さらにネット店舗60のウェブサーバー62とFSPシステム18との間では,売上データ及びポイントデータが伝送される(矢印88)。ネット店舗60を利用する顧客もまたウェブ端末79を用いてアクセスし,ポイント照会や還元を行う。
【0023】また,好適例としてFSPシステム18は,クレジットカード会社との連携機能も具備している。クレジットカード会社70は,自社のカードシステム運営用のサーバー72を設置しており,サーバー72により管理されるデータベース74には,会員情報,売上情報及びカード利用によるポイント情報が含まれる。カード会社サーバー72は,FSPシステム18に対してクレジット顧客データを送ると共に,他店ポイントデータを送ることもある。」(第3欄第5行-第4欄第46行)

上記摘記事項(a)からみて,引用例1には,
『「実店舗(40)」と,この「実店舗(40)」に「インターネット」を介して送信可能に接続される「システム運用センタのFSPシステム(18)」とで構成される顧客サービス管理分析システムであって,
前記「システム運用センタのFSPシステム(18)」の一部を構成し,顧客毎に付与されるポイントを集計したポイントデータを記憶する「データベース」と,
前記「実店舗(40)」の一部を構成し,顧客の商品の購入に係る売上処理に応じて当該顧客のポイントデータに対するポイントを生成し,生成したポイントに基づいて当該顧客のポイントデータを生成する「POSサーバ(44)」と,
を備え,
前記「データベース」に記憶されているポイントデータは、前記「実店舗(40)」の「POSサーバ(44)」から前記「インターネット」を介して売上処理後に送信されたポイントデータに基づいて書き替えられる顧客サービス管理分析システム。』
との発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-197546号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(b)「【0030】同様に,顧客33Nも店舗26Nでの商品等の購買の対価に対してサービスを受けたポイントPD/Nを,自己の携帯通信端末機34Nに備え付けられた外部接続用の外部端子35Nを店舗26Nの店舗端末機27Nに接続して,携帯通信端末機34Nから入出点する。
【0031】この入出点操作においても,店舗26Aと同様に,携帯通信端末機34Nがどの端末から入点したかを知らせる携帯通信端末機34Aを認識する端末認識のための端末認識番号なども店舗端末機27Nに携帯通信端末機34Nから自動的に送信される。
【0032】店舗端末機27Nは,入出点操作がなされると,ネットワーク28N,インターネット20,およびネットワーク19を介して顧客管理業者21のメインサーバ22に店舗端末機27Nの店舗認識データSR/Nと共に端末認識番号PD/N,ポイントPT/N,メーカ・商品名MPなどを送信する。
【0033】そこで,メインサーバ22は,これ等のデータを受信しこれを自己が管理する顧客管理データベース24の所定領域に格納する。このため顧客管理データベース24には,店舗端末機27Nの認識データSR/N,端末認識番号PD/N,ポイントPT/N,メーカ・商品名MP,或いは本部40のデータなどが一括して格納されていることとなる。」(第5欄第24行-同欄第47行)

上記摘記事項(b)の段落【0032】の記載からみて,引用例2に記載された事項において,顧客端末機における商品の購入に対するポイントの入点操作の処理の後に,直ちにそのポイントのデータを顧客端末機からメインサーバに送信していることは明らかである。
してみると,上記摘記事項(b)からみて,引用例2には,
「顧客端末機における商品の購入に対するポイントの入点操作の処理の後に,直ちにそのポイントのデータを顧客端末機からメインサーバに送信する」
との事項が開示されていると認められる。

5.対比
本願発明と引用発明を比較すると,引用発明の「実店舗(40)」は本願発明の「店舗システム」に相当し,以下同様に,「システム運用センタのFSPシステム(18)」は「本部システム」に,「顧客サービス管理分析システム」は「顧客管理システム」に,「ポイント」は「ポイント加算情報」,「ポイントデータ」は「累積ポイント」に,「データベース」は「ポイント記憶装置」に,「インターネット」は「通信網」に,「POSサーバ(44)」は「商品販売データ処理装置」に,それぞれ相当する。
また,引用発明の「ポイントデータ」と本願発明の「ポイント加算情報またはポイント減算情報」は,ポイントの情報という点で共通する。
したがって,本願発明と引用発明は,
「店舗システムと,これらの店舗システムに通信網を介してデータ送受信可能に接続される本部システムとで構成される顧客管理システムであって,
前記本部システムの一部を構成し,顧客毎に付与されるポイントを集計した累積ポイントを記憶するポイント記憶装置と,
前記店舗システムの一部を構成し,顧客の買い上げに係る売上処理に応じて当該顧客の前記累積ポイントに対するポイントの情報を生成する商品販売データ処理装置と,
を備え,
前記ポイント記憶装置に記憶されている前記累積ポイントは,前記各店舗システムの前記商品販売データ処理装置からそれぞれ前記通信網を介して売上処理後に送信されたポイントの情報に基づいて書き換えられることを特徴とする顧客管理システム。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
店舗システムが,本願発明では,複数あるのに対し,引用発明では,複数あるかどうか明記されていない点。

(相違点2)
本願発明では,ポイント記憶装置が累積ポイントを記憶するポイントファイルを有しているのに対し,引用発明では,ポイント記憶装置が累積ポイントを記憶しているものの,ポイントファイルを有し,該ポイントファイルに記憶しているかどうかは明記されていない点。

(相違点3)
商品販売データ処理装置で生成され,送信されるデータが,本願発明では,ポイント加算情報またはポイント減算情報であるのに対し,引用発明では,累積ポイントである点。

(相違点4)
本願発明では,商品販売データ処理装置から送信される情報が売上処理後直ちに送信されるのに対し,引用発明では,商品販売データ処理装置から送信される情報が売上処理後直ちに送信されるかどうか明記されていない点。

6.当審の判断
(相違点1について)
1つのシステムで複数の店舗のシステムのデータを管理することは周知事項であるので,引用発明において,店舗システムを複数とすることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,当業者が引用発明及び周知事項に基づいて容易に想到しえたものである。

(相違点2について)
情報を記憶装置に記憶する場合に,情報をファイルに記憶させて,そのファイルを記憶装置に設けることは周知事項であるので,引用発明において,ポイント記憶装置に累積ポイントを記憶するポイントファイルを設けることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって,相違点2に係る本願発明の構成は,当業者が引用発明及び周知事項に基づいて容易に想到しえたものである。

(相違点3について)
送信元でポイント加算情報に基づいて累積ポイントを生成し,当該累積ポイントの情報を送信して,送信先で送信された累積ポイントにより送信先に記憶された累積ポイントを書き換えるか,ポイント加算情報を送信して,送信先で当該ポイント加算情報により累積ポイントを書き換えるかは当業者が適宜選択できる設計的事項であるので,引用発明において,送信元の商品販売データ処理装置でポイント加算情報に基づいて累積ポイントを生成し,その累積ポイントを送信し,送信された当該累積ポイントに基づいて送信先の本部システムのポイント記憶装置に記憶された累積ポイントを書き換える代わりに,ポイント加算情報を送信して,当該ポイント加算情報に基づいて送信先の本部システムのポイント記憶装置に記憶された累積ポイントを書き換えることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって,相違点3に係る本願発明の構成は,当業者が引用発明に基づいて容易に想到しえたものである。

(相違点4について)
引用例2には、「顧客端末機における商品の購入に対するポイントの入点操作の処理の後に,直ちにそのポイントのデータを顧客端末機からメインサーバに送信する」との事項が開示されているので,引用発明において,商品販売データ処理装置から送信される情報を,売上処理後に直ちに送信することは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって,相違点4に係る本願発明の構成は,当業者が引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて容易に想到しえたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1,引用例2,及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願発明は,引用例1に記載された発明,引用例2に記載された事項,及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明,引用例2に記載された事項,及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-12 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-02 
出願番号 特願2003-123570(P2003-123570)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 貝塚 涼  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 小山 満
久保田 健
発明の名称 顧客管理システム及びポイント管理方法  
代理人 柏木 慎史  

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