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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1195806
審判番号 不服2006-3722  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-01 
確定日 2009-04-15 
事件の表示 特願2002-229561「電子装置、および似顔絵付き電子メールの受信再生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 70685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成14年8月7日の出願であり、平成18年1月27日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年3月1日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同年3月27日に手続補正書が提出されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成18年3月27日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「ネットワークを通じて電子メールを受信する受信手段と、
3次元グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、電子メール送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を構成しているデータに代えて、そのデータの一部である、似顔絵モデルの座標データ及び動きデータを、前記送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を再構成するための素材データとして、前記ネットワークを通じて当該電子メールと関連付けて取得する素材データ取得手段と、
取得した前記素材データを用いて幾何演算と描画演算を実行し、前記送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を再構成し描画する画像演算装置と、
前記電子メールの本文及び前記描画画像を表示する表示手段と、
を備えた電子装置。」

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-123472号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

(イ)「【0010】第1の発明において、前記制御手段は、選択されたキャラクタと連動する文書内容に応じて、当該キャラクタに喜怒哀楽を表現させることを特徴としている。
【0011】モニタ画面上に登場するキャラクタは、メール等の文書内容に応じた喜怒哀楽を表現する。例えば、うれしいときは笑顔、悲しいときは泣き顔としたり、非常にうれしいときは飛び跳ねたり、眠いときは居眠りをしたりさせることで、文書では表しきれない感情を表すことができる。
【0012】第2の発明は、前記制御手段を前記端末装置に実行させるためのプログラムが記憶された記憶媒体である。
【0013】第3の発明は、メール作成機能、受信者を選択して送信するメール送信機能、並びに、メールを受信するメール受信機能を有する電子メーラーアプリケーションソフトを起動するための電子メール起動制御手段と、複数のキャラクを世代別に記憶するキャラクタ記憶手段と、前記電子メール起動手段による電子メールの送信時に、手動又は自動的に前記キャラクタ記憶手段に分類記憶されたキャラクタを選択する選択手段と、前記選択手段で選択されたキャラクタを、手動又は自動的にメール内容に基づく表情及び/又はアクションを付加して、当該メールに統合するキャラクタ統合手段と、を有する端末装置である。
【0014】上記第3の発明の端末装置よれば、キャラクタを世代別に分類して記憶しておく。電子メール起動手段による電子メールの送信時に、キャラクタを選択する。この選択されたキャラクタには、メール内容に応じた表情及び/又はアクションが付加され、メールに統合される。これにより、文字のみでは表現しきれない感情をキャラクタの動作に代えて送信することができる。この結果、受信者側では、メール内容を読むのみならず、キャラクタの動作を見るという新たな興味をもつため、老若男女に拘らず、すなわち操作の苦手な中高年層にも扱い易くなり、複数の世代に亘るアクセスが可能となる。」(段落【0010】?【0014】)

(ロ)「【0024】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)図1には、第1乃至第3の発明に係る端末装置100の概略構成図が示されている。
【0025】端末装置100は、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)はもちろん、携帯電話、ポケットボード等のPDA(携帯情報端末)であってもよいが、ここではパーソナルコンピュータを例にとり説明する。
【0026】第1の実施の形態に係るPC(端末装置)100は、ハード構成としては、図1に示される如く、CPU102、RAM104、ROM106、I/Oポート108及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス110で構成され、I/O108には、モニタ112、外部記憶装置(FDドライバやCDドライバ)114、プリンタ116、キーボード117等が接続された構成となっている。
【0027】ここで、第1の実施の形態では、このPC100を用いて電子メールアプリケーションソフトを起動させている。
【0028】電子メールアプリケーションソフトが起動しているときのシステム構成は、図3に示すように、電子メール起動制御部118が全体を総括するようになっている。
【0029】この電子メール起動制御部118には、メール作成部120、送信機能部122、受信機能部124が備えられており、電子メールの送受信が可能となっている。
【0030】また、この電子メール起動制御部118には、選択部126が接続されている。選択部126は、予め複数のキャラクタが記憶されたキャラクタ記憶部128から、特定のキャラクタが選択する役目を有している。
【0031】選択基準は、電子メール起動制御部118において設定した受信者に基づいている。すなわち、キャラクタ記憶部128では、複数のキャラクタが受信者に対応付けられて記憶されている。正確には、受信者の年齢に則したキャラクタが割当られている。例えば、シルバー世代と呼ばれる年齢層に該当する受信者には、昔なつかしマンガキャラクタが対応付けられ、中高年層に該当する受信者には、青春時代に夢中になったヒーローやヒロインのアニメーションキャラクタが対応付けられ、若年層に該当する受信者には、現在最も人気を博しているキャラクタが対応付けられている。
【0032】すなわち、第1の実施の形態の電子メールアプリケーションソフトでは、分散化した3世代以上の家族間のコミュニケーションツールとして適用されることを目的としており、各世代に適合したキャラクタを文字メールに付加して送信することで、いままで電子メールに興味がない、あるいは拒絶反応を起こしていた世代に対して、電子メールの操作容易性を認識させる工夫がなされている。
【0033】選択部126で選択されたキャラクタは、アニメーション加工部130へ送られるようになっている。このアニメーション加工部130では、電子メール起動制御部118のメール作成部120で作成した文字メールに基づいて、キャラクタの表情やアクションが設定される。
【0034】アニメーション加工部130で表情やアクションが加味されたキャラクタは、統合部132へ送られるようになっている。この統合部132には、前記電子メール起動制御部118のメール作成部120で作成された文字メールが入力されており、この文字メールとキャラクタとが統合された後、再度電子メール起動制御部118へ送られるようになっている。
【0035】このようにして完成したキャラクタ付き電子メールは、図3に示される如く、送信機能部122によってプロバイダ134によって接続されたインターネット136を介して、指定したアドレスに対応するメールサーバー138へ送信されるようになっている。メールサーバー138では、添付されたIDに基づいて蓄積され、他の端末装置100A(同一の電子メールツールを搭載している端末装置)からのアクセスにより、当該電子メールを送出することになる。
【0036】キャラクタ付き電子メールを受け取った端末装置100Aでは、この電子メールを開くことにより、文字のみならず、キャラクタの表情やアクションによって、文字では表現できない感情まで受け取ることができる。
【0037】また、受信側の世代に合わせてキャラクタを選択しているため、いままで無関心であった、シルバー世代や中高年世代の年齢層にも違和感なく対応が可能となり、操作性としては極めて簡単となった電子メールの普及に貢献することができる。
【0038】また、選択するキャラクタとしては、マンガやアニメーションのキャラクタではなく、受信者又は送信者の似顔絵を用いてもよい。」(段落【0024】?【0038】)

以上の記載によれば、この引用例1には以下のような発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「端末装置100において、メール作成部120で作成した文字メールに基づいて、アニメーション加工部130で、複数のキャラクタから選択されたキャラクタ(送信者の似顔絵を用いても良い。)の表情やアクションを設定し、表情及びアクションが付加されたキャラクタは文字メールと統合されてキャラクタ付き電子メールとして送信機能部122によってインターネット136を介してメールサーバー138へ送信され、
メールサーバー138にアクセスして前記キャラクタ付き電子メールを受け取った他の端末装置100A(同一の電子メールツールを搭載している端末装置)では、この電子メールを開くことにより、メールの文字を読むのみ成らず、メールの内容に応じたキャラクタの喜怒哀楽を表現する表情及びアクションを見ることができる、
端末装置。」

(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-133445号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

(イ)「【0026】本実施形態では、登場キャラクタの口形状を動かすために、4つの口形状に対応した4種類の基本形状が用意されており、それらの基本形状を所定の重み付け係数を用いて合成することにより、任意の口形状を実現している。図2?図5は、任意の口形状を算出するために用いられる基本形状を示す図である。図2(A)、(B)には、口を閉じた場合の頭部の形態が示されている。また、図3(A)、(B)には口を上下に大きく開けた場合の頭部の形態が示されている。図4(A)、(B)には口を左右に大きく広げた場合の頭部の形態が示されている。図5(A)、(B)には、口を前に突き出した場合の頭部の形態が示されている。
【0027】図6は、上述した4種類の基本形状を特定するために用いられる基本形状データの具体例を示す図である。同図において、「形状データ1」が図2に示した口を閉じた状態に、「形状データ2」が図3に示した口を上下に大きく開けた状態に、「形状データ3」が図4に示した口を左右に大きく広げた状態に、「形状データ4」が図5に示した口を前に突き出した状態にそれぞれ対応している。
【0028】また、「頂点」は、図2等に示したキャラクタの頭部に対応する三次元オブジェクトを構成する各ポリゴンの頂点座標を示しており、1から順番に通し番号が付されている。例えば、図7に示すような複数のポリゴンによって頭部の三次元オブジェクトが構成されている。
【0029】データ格納部120に格納された基本形状データには、図6に示したように、4種類の基本形状を特定するために必要な各ポリゴンの頂点座標が含まれている。なお、本実施形態では、4種類の基本形状のそれぞれに対応する各頂点座標のデータを格納する代わりに、一の基本形状(基準形状)については各頂点座標のデータを格納し、それ以外の3つの基本形状(参照形状)についてはこの基準形状との差分値で示される各頂点座標のデータを格納しており、データ量の削減を図っている。
【0030】図6において、「形状データ2A」は、形状データ1を基準としたときの形状データ2を差分値で示したものである。例えば、頂点1に対応する形状データ1の座標値をW11(=(x11,y11,z11))、形状データ2の座標値をW21(=(x21,y21,z21))とすると、形状データ2Aの差分座標値W21’はW21-W11(=(x21-x11(=x21’),y21-y11(=y21’),z21-z11(=z21’)))となる。「形状データ3A」、「形状データ4A」についても同様であり、基準形状に対して動きの少ない部位の頂点座標については、この差分座標値が0に近い値となる。
【0031】図8は、表示間隔毎(例えば1/60秒毎)に口形状を動かすために行うポリゴン座標の修正処理の動作手順を示す流れ図である。まず、ゲーム演算部110内の頭部形状算出部114は、口形状を動かすキャラクタの三次元オブジェクトに対応するブレンド率データを一組分取得する(ステップ100)。
【0032】図9は、表示間隔毎に用意されたブレンド率の内容を示す図であり、データ格納部120に格納されたブレンド率データ126の具体例が示されている。図9において、「フレーム」は1/60秒間隔で表示される各表示フレームを示している。上述したステップ100では、まずフレーム1に対応させて格納されている一組のブレンド率R11、R21、R31、R41が読み出される。
【0033】次に、頭部形状算出部114は、三次元オブジェクトの一の頂点に対応する4種類の基本形状データをデータ格納部120から取得する(ステップ101)。例えば、まず、図6に示した頂点1に対応した4種類の形状データ1、2A、3A、4Aが読み出される。
【0034】次に、頭部形状算出部114は、ステップ101で取得した4種類の形状データのそれぞれに、ステップ100で取得した各ブレンド率を乗算する(ステップ102)。上述した頂点1に対応する基本形状データとフレーム1に対応するブレンド率を例にとると、
R11×W11
R21×W21’
R31×W31’
R41×W41’
で示されるそれぞれの乗算処理が行われる。
【0035】また、頭部形状算出部114は、これら4つの乗算値を加算する(ステップ103)。上述した例では、R11×W11+R21×W21’+R31×W31’+R41×W41’(=T)の演算が行われる。この演算によって得られる加算値Tは、口形状を動かした場合の着目頂点の座標そのものを示している。例えば、ブレンド率としてR11=1、R21=1、R31=0、R41=0が設定されている場合には、
T=1×W11+1×W21’
=W11+(W21-W11)
=W21
となる。すなわち、図3に示した基本形状そのものの口形状に対応した頂点座標が得られる。また、ブレンド率R11、R21、R31、R41を0や1以外の中間値に設定することにより、図3?図5に示した3種類の基本形状を合成した頭部形状に対応した頂点座標が得られる。
【0036】このようにしてステップ103において一の頂点の座標が得られると、頭部形状算出部114は、この座標値を、描画処理に必要な他の情報とともに画像生成部140に送る(ステップ104)。その後、頭部形状算出部114は、三次元オブジェクトの全ての頂点に対して理が終了したか否かを判定する(ステップ105)。例えば、頂点1だけについて処理が終了した場合には否定判断が行われ、2番目以降の各頂点について上述したステップ101以降の処理が繰り返される。また、全ての頂点について処理が終了した場合には、ステップ105の判定において肯定判断が行われ、次に、画像生成部140による画像の生成処理が行われて、着目しているフレームの画像がテレビモニタ装置200の表示部210に表示される(ステップ106)。このようにして、一のフレームに対応する表示が行われた後、再びステップ100に戻って、次のフレームに対応する処理が開始される。
【0037】このように、本実施形態のゲーム装置では、複数の基本形状の各頂点座標を示す基本形状データを用意しておいて、ブレンド率(重み付け係数)を用いてこれらを合成することにより任意の口形状を設定することができる。特に、基本形状データは、キャラクタの頭部形状に合わせて固定的に用意されたものを用いることができ、各表示フレームに対応した一組のブレンド率を用意しておくだけで任意の口形状を実現することができるため、口形状を動かすために必要なデータ量を削減することができる。また、ブレンド率の内容を可変することにより、複雑な口形状を容易に実現することができるため、ゲーム演算部110における処理の負担を軽減することができる。」

(ロ)「【0066】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、登場キャラクタの三次元オブジェクトの口形状を動かす場合について説明したが、登場キャラクタに瞼の開閉動作を同時に行わせるようにしてもよい。この場合には、目の周りの所定範囲の頂点について、上述した口形状を動かす場合と同等の処理を行えばよい。すなわち、瞼を閉じた第1の基本形状と瞼を開いた第2の基本形状の各座標データを基本形状データ130に含ませておくとともに、これら2つの基本形状を合成するためのブレンド率をブレンド率データ126に含ませておく。頭部形状算出部114は、瞼についても基本形状データとブレンド率データの積和演算を行うことにより、目の周辺について各頂点座標を算出する。この算出結果も用いて画像生成部140による画像生成を行うことにより、フレーム単位で目の開閉状態が変化する画像を表示することが可能になる。同様に、瞼に関するブレンド率データ126に対応する補正値を補正データ128に含ませておいて、登場キャラクタの感情の起伏等に応じて瞼の動きを可変するようにしてもよい。」(段落【0066】)

(ハ)「【0068】また、上述した実施形態では、本発明をゲーム装置に適用した場合について説明したが、それ以外の画像処理装置、例えばアニメーション画像を生成する装置等に本発明を適用するようにしてもよい。」(段落【0068】)

3.対 比
本願発明と上記引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「インターネット136」及び「端末装置100A」は、本願発明の「ネットワーク」及び「電子装置」に相当する。
引用例1発明の「キャラクタ(送信者の似顔絵を用いても良い。)の表情やアクションが設定され、表情やアクションが加味されたキャラクタ」は、本願発明の「3次元グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、電子メール送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像」と「グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像」である点で一致するといえる。
引用例1発明の端末装置100A(同一の電子メールツールを搭載している端末装置)において表情やアクションが加味されたキャラクタ付き電子メールを受け取ることは、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を構成するデータを受け取ることであって、該受け取ったデータは電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を描画するためのデータといえるから、本願発明の「3次元グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、電子メール送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を構成しているデータに代えて、そのデータの一部である、似顔絵モデルの座標データ及び動きデータを、前記送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を再構成するための素材データとして、前記ネットワークを通じて当該電子メールと関連付けて取得する素材データ取得手段を備えた」と「グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を構成しているデータを、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を描画するデータとして、前記ネットワークを通じて当該電子メールと関連付けて取得するデータ取得手段を備えた」点で一致するといえる。
引用例1発明の「この電子メールを開くことにより、メールの文字を読むのみ成らず、メールの内容に応じたキャラクタの喜怒哀楽を表現する表情及びアクションを見ることができる」は、受け取ったデータを用いて電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を描画する画像処理装置を備え、メールの本文と描画した画像を表示する表示手段を備えることは明らかであるから、本願発明の「取得した前記素材データを用いて幾何演算と描画演算を実行し、前記送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を再構成し描画する画像演算装置と、前記電子メールの本文及び前記描画画像を表示する表示手段と、を備えた」と「取得した前記電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を描画するデータを用いて、前記送信者の似顔絵のアニメーション画像を描画する画像処理装置と、前記電子メールの本文及び前記描画画像を表示する表示手段と、を備えた」点で一致するといえる。

したがって、両者は、
「ネットワークを通じて電子メールを受信する受信手段と、
グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を構成しているデータを、前記送信者の似顔絵のアニメーション画像を描画するためのデータとして、前記ネットワークを通じて当該電子メールと関連付けて取得するデータ取得手段と、
取得した前記データを用いて、前記送信者の似顔絵のアニメーション画像を描画する画像処理装置と、
前記電子メールの本文及び前記描画画像を表示する表示手段と、
を備えた電子装置。」
で一致するものであり、次の点(1)、(2)で相違している。

(1)電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像が、本願発明では、3次元グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、3次元アニメーション画像であるのに対し、引用例1発明では、3次元アニメーション画像ではない点。

(2)本願発明では、電子メールと関連付けて取得するデータが、電子メール送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を構成しているデータに代えた、そのデータの一部である、似顔絵モデルの座標データ及び動きデータであり、画像演算装置が前記取得したデータを用いて幾何演算と描画演算を実行し、電子メール送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を再構成し描画するのに対し、引用例1発明では、電子メールと関連付けて取得するデータが、表情やアクションが設定され、表情やアクションが加味されたキャラクタであり、画像処理装置が似顔絵モデルの座標データ及び動きデータを用いて幾何演算と描画演算を実行し、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を再構成し描画する画像演算装置ではない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点(1)について
上記引用例2には、一つの基準形状データ(ポリゴン座標データ)と該基準形状データとの差分値で示される複数の形状データを用いてキャラクタの口形状の動き、瞼の開閉動作の画像データを生成し表示させる画像処理装置、及びその技術をアニメーション画像の生成装置に適用することが記載されている。
そして、似顔絵による3次元アニメーションを作成する画像処理装置は、本出願前周知(特開2001-222725号公報、特開平8-305878号公報参照)であり、また、キャラクタの動きや感情表現を豊にするためにアニメーション画像を3次元にすることも一般的な技術課題である。
したがって、引用例1発明において、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を3次元グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、3次元アニメーション画像とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

・相違点(2)について
3次元動画データの送信において、3次元動画データに代えて、基準画像データと動きデータを送信することによりデータ通信量を減少させ、受信側で送信された基準画像データと動きデータを用いて3次元動画データを再生することは本出願前周知の技術(特開平11-355737号公報、特開平11-259680号公報、特開2001-357413号公報段落【0051】?【0064】の記載参照)である。
そして、通信において、データ通信量を減らすことは一般的な技術課題である。
そうすると、引用例1発明において、電子メール送信者の似顔絵のアニメーション画像を3次元グラフィック生成手段によってあらかじめ生成された、3次元アニメーション画像とした際に、電子メールと関連付けて取得するデータを、電子メール送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を構成しているデータに代えて、そのデータの一部である、似顔絵モデルの座標データ及び動きデータとすること、及び画像処理装置を前記似顔絵モデルの座標データ及び動きデータを用いて幾何演算と描画演算を実行し、送信者の似顔絵の3次元アニメーション画像を再構成し描画するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、上記の相違点に基づく本願発明の作用効果も、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-05 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-24 
出願番号 特願2002-229561(P2002-229561)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和津幡 貴生  
特許庁審判長 江嶋 清仁
特許庁審判官 和田 志郎
角田 慎治
発明の名称 電子装置、および似顔絵付き電子メールの受信再生方法  
代理人 黒田 健二  
代理人 松本 孝  

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