ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D |
---|---|
管理番号 | 1195807 |
審判番号 | 不服2006-3816 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-02 |
確定日 | 2009-04-16 |
事件の表示 | 特願2005-132776「IDカード作成・管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月 4日出願公開、特開2005-306042〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成5年8月20日(優先権主張:平成5年6月25日)に出願した特願平5-206422号(以下、「原々出願」という。)の一部を平成14年6月17日に新たな特許出願(特願2002-176085号、以下、「原出願」という。)とし、さらに、その一部を平成17年4月28日に新たな特許出願(特願2005-132776号)としたものであって、平成18年1月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月2日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。 その後、当審により平成19年3月12日付けで審尋が通知されたのに対し、同年5月2日付けで回答書が提出され、さらに、当審により平成20年10月30日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、同年12月25日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。 2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明は、平成20年12月25日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「 【請求項1】 順次搬送される申請書からID番号を読み取るID番号読取手段と、 該ID番号読取手段で読み取られたID番号に基づき対応するID情報を照会し、該ID情報を入手するID情報照会手段と、 申請者の顔を撮影して顔画像データを入力する顔画像データ入力手段と、 前記申請書のイメージデータを入力する申請書イメージ入力手段と、を有し、 前記ID情報及び前記顔画像データに基づいてIDカードを作成する一方、前記ID情報、前記顔画像データ及び前記申請書のイメージデータをファイリングするIDカード作成・管理システムであって、 前記申請書イメージ入力手段は、前記ID番号読取手段よりも前記申請書の搬送方向下流側に配置され、前記ID番号読取手段によって前記ID番号が読み取られた後の前記申請書から、前記申請書のイメージデータを入力するものであり、 複数のIDカード作成にかかる処理を並列的に行うIDカード作成制御手段を備え、 該IDカード作成制御手段は、 前記ID情報照会手段によるID情報の照会が済んで、前記ID番号に対応する顔画像データ及びID情報が揃ったことが確認されたものからIDカードを作成し、前記ID番号に対応付けて前記ID情報、前記顔画像データ及び前記申請書のイメージデータをファイリングすることを特徴とするIDカード作成・管理システム。」 3.刊行物 (1)当審における拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開平1-116877号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 (ア)「第1図、および第2図はこの発明の個人認証票発行装置としての、個人認証票として特定の免許証を発行する免許台帳統合管理システムの構成を示すものである。 この免許台帳統合管理システムは、OCRスキャナ11、漢字入力端末機12、CCDカメラ13、14、ホスト漢字入力端末機15、A/D変換器16、処理回路17、システムコントローラ18、オーバレイプリンタ19、光ディスク装置20、磁気ディスク装置21、光ディスクオートチェンジャ22、イメージプリンタ41、漢字プリンタ42およびホストCPU23などによって構成されている。」(2頁左下欄17行?同頁右下欄9行) (イ)「上記OCRスキャナ11は、受付けた申請書のイメージデータ(2値画像)を読取るとともに、申請書上の免許証番号を解読(判読)するものであり、たとえば二次元走査装置で構成されている。」(2頁右下欄10?13行) (ウ)「上記CCDカメラ13は、新しい免許証に使用する申請者の顔(身体の特徴)をカラーで撮影し、カラーの画像信号に変換して出力するものである。」(3頁左上欄4?6行) (エ)「上記合流部30は、上記属性情報発生部31から発生される固定の画像パターン(文字パターンと印鑑のパターン)、システムコントローラ18から出力される関連データに対応する文字パターン等を用いて免許データつまり住所、氏名、免許の種類等からなる印刷データからなる免許証記載事項としてのパターンデータ、および上記CCDカメラ13あるいは14により撮影した申請者の顔画像、あるいは顔写真に対応する画像信号を合成するものである。 上記電子プリンタ32は、上記合流部30から供給される免許証記載事項と上記CCDカメラ13あるいは14で撮像した申請者の顔写真(顔画像)を重ね合せた印刷パターンで印刷することにより、免許証を発行(作成)するものである。」(3頁左下欄3?17行) (オ)「上記光ディスク装置20は、上記CCDカメラ13あるいは14で撮影された申請者の顔写真(顔画像)、および上記OCRスキャナ11で読取った申請書のイメージデータとを光ディスク(記憶媒体)1、1に記憶するものである。上記顔写真、申請書のイメージデータは免許証番号、住所、氏名等を検索キーとする検索コードで管理されて記憶されるようになっており、その検索コードも光ディスク1、1に同時に記憶されるようになっている。」(3頁左下欄18行?同頁右下欄7行) (カ)「上記ホストCPU23は、各免許証(免許証番号)ごとの関連データたとえば住所、氏名、免許の種類等を図示しないメモリでサブマスタとして記憶管理(-元管理)しているものであり、その記憶内容によってCPU24で記憶管理されているメインマスタの内容が更新されるようになっている。」(4頁左上欄12?18行) (キ)「まず、申請書の受付けについて説明する。すなわち、まず申請書が窓口に受付けられると、窓口の係員は申請書をOCRスキャナ11にセットし、読取りを行なわせる。 これにより、OCRスキャナ11はその申請書のイメージデータ(2値画像)を読取るとともに、申請書上の免許証番号を解読(判読)し、システムコントローラ18に出力する。システムコントローラ18は、供給されるイメージデータを一旦磁気ディスク21aに記憶保存し、免許証番号を図示しないメモリに記憶する。」(4頁右上欄4?14行) (ク)「この一致の指示は、システムコントローラ18に供給される。すると、システムコントローラ18は、関連データの要求信号と免許証番号とをホストCPU23に出力する。 これにより、ホストCPU23は、免許証番号に対応する関連データたとえば住所、氏名、免許の種類等を図示しないメモリから読出し、システムコントローラ18へ出力する。」(4頁左下欄6?13行) (ケ)「この免許証の作成の指示は、システムコントローラ18に供給される。すると、システムコントローラ18は、上記関連データ(修正済み)に対応する文字パターン等を用いて免許データつまり住所、氏名、免許の種類等からなる印刷データを作成し、合成部30に出力する。」(4頁右下欄3?8行) (コ)「また、係員は上記申請者の顔の部分をCCDカメラ13で撮影する。すると、CCDカメラ13はその撮影した顔の画像に対応するカラーの画像信号を合成部30へ出力する。これにより、合成部30は免許証記載事項としての上記各パターンデータ、および画像信号を対応する位置に合成し、この合成した結果を電子プリンタ32で免許証の用紙上にプリントアウトする。」(4頁右下欄12?19行) 前記記載(イ)、(キ)から、OCRスキャナ11は、申請書のイメージデータを入力するものであるとともに、申請書上の免許証番号を解読(判別)するものであるから、申請書上の免許証番号を読み取るものでもあることが把握できる。 前記記載(カ)、(ク)から、各免許証番号ごとの関連データ(住所、氏名等)は、ホストCPU23が管理するメモリであるサブマスタに記憶されており、ホストCPU23は、免許証番号に基づき免許証番号に対応する関連データを照会し、該関連データを入手するものといえる。 前記記載(ウ)、(コ)から、CCDカメラ13は、申請者の顔を撮影して顔画像データを入力するものであることが把握できる。 前記記載(エ)から、固定の画像パターンと、関連データ等の免許証記載事項と、CCDカメラ13等により撮影した申請者の顔画像とが合成部30で合成され、合成された印刷パターンを電子プリンタ32で印刷することにより、免許証が作成されることが把握できる。したがって、前記記載(ア)の免許台帳統合管理システムは、少なくとも関連データ及び顔画像データに基づいて免許証を作成するといえる。 したがって、前記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が開示されていると認められる。 「申請書のイメージデータを入力するとともに、申請書上の免許証番号を読み取るOCRスキャナ11と、 免許証番号に基づき対応する関連データを照会し、該関連データを入手するホストCPU23と、 申請者の顔を撮影して顔画像データを入力するCCDカメラ13と、を有し、 前記関連データ及び前記顔画像データに基づいて免許証を作成する免許台帳統合管理システム。」 (2)当審における拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開平1-110196号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 (サ)「このMRPの作成工程は、第4図及び第5図に示されるように、大きく分けて、パスポートの申請書11を受は付けると共に該申請書11の個人情報をワードプロセッサ12により文字情報用フロッピィディスク13に入力する前工程100と、前記申請書11の顔写真11aの画像を入力すると共に、この入力された顔写真11a等の人物画像や文字情報等を画像合成装置14により合成する画像合成工程110と、この画像合成工程110で得られた合成画像をビデオプリンタ15により前記受像層1に熱転写してプリントするビデオプリント工程120と、人物画像等が熱転写された受像層1を接着層4を介し支持シート3に固定して、透明シート2、受像層1、接着層4、及び支持シート3を4層状に重ね合わせ一体化し、このようにして構成されたMRPを発行する後工程130とから構成されている。」(4頁右下欄5行?5頁左上欄1行) (シ)「前記前工程100は、顔写真11aが貼付され、必要な個人情報が記入されたパスポートの申請書11を受は付ける申請書受付工程101と、受は取った申請書11に識別のためのバーコードラベル16を貼付するバーコードラベル貼付工程102と、申請書11の個人情報を文字情報用フロッピィディスク13に入力する文字情報入カニ程103とから構成されている。前記申請書受付工程101及びバーコードラベル貼付工程102は人手により行われる。 前記文字情報入カ工程103は、具体的には、第5図に示される表示用CRT12a、バーコードリーダ12b、及びキーボード12cを備えたワードプロセッサ12を用いてオペレータが操作することにより行われる。なお、文字情報入力の前にバーコードリーダ12bを用いて前記申請書11のバーコードが読み込まれる。この読み込まれたバーコードによる識別符号に対応させて、該申請書11に記載された個人情報がキーボード入力により、コード化された文字情報として入力され、文字情報用フロッピィディスク13に記録される。なお、キーボード入力に替えて、申請書11の個人情報をカメラにより入力し、これで得られた文字画像情報を例えば記憶媒体に記憶させるようにしてもよい。」(5頁左上欄2行?同頁右上欄6行) (ス)「前記画像合成部28は、第6図に示されるように、人物画像入力部22により撮像された人物画像1bのデータをバーコードリーダ25からの識別符号と対応させて読み出し、また、前記ワードプロセッサ12により入力され且つバーコードリーダ12bからの識別符号と対応させて記憶された文字情報用フロッピィディスク13からの文字情報のデータを読み出し、このようにしてバーコードによる識別符号に基づき対応・合致させて読み出したデータを、制御回路36を介して、人物画像用のフレームメモリ31、文字画像用のフレームメモリ32、人物画像に対して階調補正を行うためのルックアップテーブル・マトリクス回路33、文字画像に対して階調補正を行うためのルックアップテーブル34、合成・間引き回路35で処理し、前記各画像1a?1dを合成するように構成されている。」(5頁右下欄2?18行) (セ)「前述したように前記画像合成工程110で、バーコードによる識別符号に基づいて文字画像1aと人物画像1bとが自動的に対応させられ合成される」(7頁右上欄12?15行) したがって、前記記載及び図面を含む刊行物2全体の記載から、刊行物2には、以下の事項が開示されていると認められる。 「申請書から写真入り冊子を作成するときに、まず、申請書上のバーコードから識別符号を読み取り、読み取った識別符号に対応させて申請書上の文字情報や人物画像のデータを読み出す点。」 (3)当審における拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開平3-223987号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 (ソ)「(産業上の利用分野) 本発明は運転免許証、身分証明書、入門証、銀行通帳などの写真入りカード(または冊子)を作成するために、申請書上の画像を読取って所定の処理を行う画像読取り処理装置に関する。」(2頁左上欄3?7行) (タ)「第3図に画像読取り部104の構成を示す。画像読取り部104は申請書100上の各領域202.202,203の画像を読取るためのものであり、最も高い分解能が要求される写真領域201上の申請者の顔写真に対する読取り分解能が十分に得られ、しかもモノクロ写真は勿論、カラー写真の読取りもできるように構成されている。 第3図において、申請書100は搬送機構301により矢印Y方向(副走査方向)に一定速度で搬送される。この搬送動作は副走査に相当する。申請書100の表面は光源駆動回路302により駆動される光源303により照明され、その表面上の画像は結像レンズ304によってカラー撮像素子305上に結像される。 このカラー撮像素子305によって、申請書100上の画像は、例えば16ドツト/ mmの密度で読取られる。」(5頁左上欄12行?同頁右上欄7行) したがって、前記記載及び図面を含む刊行物3全体の記載から、刊行物3には、以下の事項が開示されていると認められる。 「運転免許証を作成するための処理装置において、運転免許証の発行を申請する申請書上の画像を読み取る画像読み取り部に、搬送機構を設けた点。」 4.本願発明と刊行物1記載の発明との対比 a.刊行物1記載の発明の「免許証」は、個人を識別することができるものであり、本願発明の「IDカード」に相当する。 b.本願発明の「ID番号」と刊行物1記載の発明の「免許証番号」とを対比するに、本願発明の「ID番号」について、発明の詳細な説明の段落【0002】には、「個人識別番号(以下、ID番号という。)」と記載されていることから、本願発明の「ID番号」とは、個人識別番号であることが理解できる。 一方、刊行物1記載の発明の「免許証番号」が個人を識別する番号であることは自明の事項である。 したがって、刊行物1記載の発明の「免許証番号」は、本願発明の「ID番号」に相当している。 c.本願発明の「ID情報」と刊行物1記載の発明の「関連データ」とを対比するに、本願発明の「ID情報」について、発明の詳細な説明の段落【0002】には、「本人の住所,氏名,生年月日,個人識別番号(以下、ID番号という。)などのID情報(個人情報)」及び「氏名,住所,ID番号等のID情報」と記載されていることから、本願発明の「ID情報」とは、住所、氏名、生年月日、ID番号等を示していることが理解できる。 一方、刊行物1記載の発明の「関連データ」は、前記記載(カ)から、たとえば、住所、氏名、免許の種類等であることが把握できる。 したがって、刊行物1記載の発明の「関連データ」は、本願発明の「ID情報」に相当している。 d.前記記載(イ)、(キ)から、刊行物1記載の発明の「OCRスキャナ11」は、申請書のイメージデータを読み取り、申請書上の免許証番号を解読(判読)するものであることが把握できる。したがって、刊行物1記載の発明の「OCRスキャナ11」は、本願発明の「申請書イメージ入力手段」に相当するとともに、本願発明の「ID番号読取手段」の申請書上のID番号を読み取る機能を有する点で共通する。 e.前記記載(ウ)から、刊行物1記載の発明の「CCDカメラ13」は、申請者の顔を撮影し、カラーの画像信号に変換して出力するものであることが把握できる。したがって、刊行物1記載の発明の「CCDカメラ13」は、顔画像をデータとしてシステム内に入力するものであるから、本願発明の「顔画像データ入力手段」に相当する。 f.前記記載(ク)から、刊行物1記載の発明の「ホストCPU23」は、免許証番号に対応する関連データを読み出すことが把握できる。したがって、刊行物1記載の発明の「ホストCPU23」は、本願発明の「ID情報照会手段」に相当している。 g.刊行物1記載の発明の「免許台帳統合管理システム」は、免許証を作成することのできる管理システムであるから、本願発明の「IDカード作成・管理システム」に相当している。 よって、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。 <一致点> 「申請書から読み取られたID番号に基づき対応するID情報を照会し、該ID情報を入手するID情報照会手段と、 申請者の顔を撮影して顔画像データを入力する顔画像データ入力手段と、 申請書のイメージデータを入力する申請書イメージ入力手段と、を有し、 前記ID情報及び前記顔画像データに基づいてIDカードを作成するIDカード作成・管理システム。」 <相違点1> ID番号読取手段と申請書イメージ入力手段に関し、本願発明では、「ID番号読取手段」が、「申請書イメージ入力手段」とは別に設けられ、「順次搬送される申請書からID番号を読み取る」ことが特定されるとともに、「前記申請書イメージ入力手段は、前記ID番号読取手段よりも前記申請書の搬送方向下流側に配置され、前記ID番号読取手段によって前記ID番号が読み取られた後の前記申請書から、前記申請書のイメージデータを入力するものであり」と特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、それらの特定を有しない点。 <相違点2> 本願発明では、IDカード作成・管理システムは、「前記ID情報、前記顔画像データ及び前記申請書のイメージデータをファイリングする」ものであることが特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、それらの特定を有しない点。 <相違点3> 本願発明では、「複数のIDカード作成にかかる処理を並列的に行うIDカード作成制御手段を備え、該IDカード作成制御手段は、前記ID情報照会手段によるID情報の照会が済んで、前記ID番号に対応する顔画像データ及びID情報が揃ったことが確認されたものからIDカードを作成し、前記ID番号に対応付けて前記ID情報、前記顔画像データ及び前記申請書のイメージデータをファイリングする」との特定がされているのに対して、刊行物1記載の発明ではそのような特定がされていない点。 5.判断 <相違点1について> 刊行物1の前記記載(オ)には、申請書のイメージデータを免許証番号等を検索キーとする検索コードで管理、記憶する旨の記載があり、この記載から、刊行物1記載の発明は、OCRスキャナ11から入力される申請書のイメージデータを、免許証番号に対応させて管理するものであることが把握できる。 一方、刊行物2には、前記したとおり、「申請書から写真入り冊子を作成するときに、まず、申請書上のバーコードから識別符号を読み取り、読み取った識別符号に対応させて申請書上の文字情報や人物画像のデータを読み出す点」が記載されている。この記載から、先に読み取った識別符号に対応させて、識別符号に関連付けられた他のデータを管理することが把握できる。 また、刊行物3には、前記したとおり、「運転免許証を作成するための処理装置において、運転免許証の発行を申請する申請書上の画像を読み取る画像読み取り部に、搬送機構を設けた点。」が記載されている。 したがって、刊行物1記載の発明の「免許証番号」を先に読み取り、「申請書のイメージデータ」を後に読み取る構成として、申請書の搬送方向の上流側に免許証番号を読み取る手段を配置し、搬送方向の下流側に申請書のイメージデータを読み取る手段を配置することは、当業者であれば容易に想到することである。 したがって、前記相違点1に係る本願発明の構成は、刊行物1記載の発明、刊行物2,3に記載される事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。 <相違点2について> まず、本願発明において、「ファイリング」とは何を意味しているのかについて検討する。 一般に「ファイル」とは、「書類・資料などを整理し、綴じて保存すること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第5版)を意味することから、コンピュータを用いたシステムにおいてファイルするとは、データを記憶手段に保存することと解することができる。そして、前記「ファイリング」とは、ファイルを名詞的に表現しようとしていることが明らかであるから、コンピューターを用いたシステム内の何かしらの記憶手段にデータを保存することを意味していると解することができる。 また、本願の発明の詳細な説明の段落【0023】には、「また、EWS2には、ハードディスクドライブ(HDD)32が内蔵されており、各端末で扱う申請書のイメージデータ,顔画像データ,ID情報などは、前記HDD32(ファイリング手段)に一旦記憶されるようになっている。」と記載されており、また、段落【0054】には、「一方、HDD32(ファイリング手段)に記憶されている顔画像データ,申請書イメージデータ,ID情報(ID番号を含む)は、ID番号を検索情報としてEWS2の空き時間にホストコンピュータ11にファイリングデータとして転送され、顔画像データ,申請書イメージデータについては集合型光ディスク13aに、また、ID情報については磁気記憶装置13bに記憶される。」と記載されていることから、最終的にデータベースにデータを保存することと解することができる。 そこで、前記相違点2について検討するに、刊行物1に記載の免許台帳統合管理システムは、サブマスタに関連データを記憶し、光ディスク装置20に顔画像データと申請書のイメージデータとを記憶しているものであるから、相違点2は実質的な相違点でない。 また、「ファイリング」の意味として、ホストコンピュータのデータベースに記憶されているデータを、端末コンピュータのメモリ(ハードディスク)に一時的に記憶することであるとも解することができるが、刊行物1記載の発明の顔画像データや関連データは、係員が「申請者の顔」と「光ディスク装置20に記憶されている顔画像」とを照合するときや、係員が「申請書の記載内容」と「サブマスタに記憶されている関連データ」とを照合するときに、漢字入力端末機12に表示されるものであるし、また、関連データは、修正の必要があれば漢字入力端末機12で修正されることから、それらのデータを一時的に記憶しておくメモリを備えることは通常のことであって格別なものではない。 してみれば、刊行物1記載の発明から前記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。 <相違点3について> (1)まず、前記相違点3の「複数のIDカード作成にかかる処理を並列的に行うIDカード作成制御手段を備え、該IDカード作成制御手段は、前記ID情報照会手段によるID情報の照会が済んで、前記ID番号に対応する顔画像データ及びID情報が揃ったことが確認されたものからIDカードを作成し」との構成について検討する。 「複数のIDカード作成にかかる処理を並列的に行うIDカード作成制御手段」との記載について、「並列的に」との記載と、「複数のIDカード作成にかかる処理」との記載が不明確であるので、それらについて検討しておく。 ・「並列的に」について 「並列的に」との記載が、複数個のIDカード作成端末を備えることで複数のIDカードの作成を並行して行うことを示しているのか、それとも、1つのIDカード作成端末内で複数のIDカード作成にかかる処理を並列的に行うことを示しているのかわからず、不明確な記載となっているので、両者について検討することとする。 ・「複数のIDカード作成にかかる処理」について 「複数のIDカード作成にかかる処理」が、どのような処理を示しているのか(例えば、データの取得処理や顔画像の撮影処理まで含むのか)わからず不明確な記載となっているので、発明の詳細な説明の記載を参照して、当該記載を解釈することとする。 発明の詳細な説明の段落【0063】には、「顔画像データの読取りをID情報の照会に対応させて行わせる必要はなく、たとえID情報の照会が済んでいなくても、顔画像データの読取りを優先してどんどん進行させ、ID情報の照会が済んで顔画像データとID情報とが揃ったことが管理ファイル上で確認されたものから、逐次プリンタ8に対してデータを転送し、作成指令を出力させるようにすれば良い。」と記載され、複数のIDカード作成にかかる処理の具体例として、顔画像データの読取りとID情報の照会が記載されている。このことから、「複数のIDカード作成にかかる処理」とは、プリンタでの処理だけでなく、プリンタへデータを転送する前のデータ処理まで包含していると解することができる。 したがって、本願発明の「複数のIDカード作成にかかる処理」は、プリンタへ印刷するためのデータを転送する前に行われるデータ処理まで含んだ処理であると解することとする。 まず、「並列的に」との記載について、発明の詳細な説明の段落【0060】には、「複数のIDカード作成にかかる処理が1つの端末内で並列的に処理できるようにすると良い。」と記載されていることから、「並列的に」との記載は、1つのIDカード作成端末内で複数のIDカード作成にかかる処理を並列的に行うことを示していると解することができるので、その場合について検討する。 刊行物1の前記記載(エ)から、免許証の作成に用いられるデータは、「印鑑等の固定の画像パターンデータ」と、「住所や氏名等の関連データ」と、「申請者の顔画像データ」であることが把握できる。 ここで、「住所や氏名等の関連データ」は、免許証番号等ごとにサブマスタに記憶、管理されていることから、免許証番号をキーとして関連データの準備ができたか否かを確認することができる。 また、「申請者の顔画像データ」は、免許証番号等を検索キーとして管理されていることから、免許証の作成に用いられる顔画像データを、CCDカメラ13から直接入力するのではなく、免許証番号に基づいて光ディスク装置20から取得するように変更する程度のことは当業者が容易に想到することであり、免許証番号をキーとして顔画像データの準備ができたか否かを確認することができる。 また、「印鑑等の固定の画像パターンデータ」は、免許証の発行の不正を防止するために付与されるものであり、すべての免許証に共通して付与されるデータであると解することができ、免許証番号に係わらず準備ができたか否かを確認することができる。 してみれば、免許証を作成する際に、免許証番号に基づいて印刷に必要なデータが準備できたか否かの判断をして、免許証の印刷を開始し得るものである。そして、このようにデータが揃ったものから処理を実行することは、コンピュータの分野においてデータフロー型のアーキテクチャと呼ばれる周知の技術である(例えば、特開昭61-169959号公報の3頁左上欄8?10行の「データが揃ったものから処理が実行されるデータフロー型データ処理装置」との記載、特開昭61-286959号公報の2頁右下欄16?18行の「必要な情報が揃ったことを判断して処理装置内のプログラムを実行させるデータフロー型の処理装置」との記載等を参照されたい。)。 したがって、刊行物1記載の発明において、プリンタ部に入力される顔画像データを免許証番号に基づいて光ディスク装置20から取得するように変更することで、前記相違点3の当該記載に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。 また、免許証を作成するために制御する箇所を、その機能に倣って「IDカード作成制御手段」と称することに何ら困難性はない。 また、「並列的に」の意味として、複数個のIDカード作成端末を備えることで複数のIDカードの作成を並行して行うことであるとも解し得るので、その場合について検討する。 ホストコンピュータと複数の端末コンピュータとを接続したネットワーク型のコンピュータにおいて、すべての作業をホストコンピュータで処理するとホストコンピュータに対する負荷が大きくなることから、各端末コンピュータにメモリを設け、該メモリにデータを記憶して各端末コンピュータでの処理を行うことは、例示するまでもなく周知の技術であるから、刊行物1記載の発明のホストCPU23をホストコンピュータとし、サブマスタや光ディスク装置20をホストコンピュータの記憶装置として集中管理し、他の構成を複数台設置することで、ネットワーク型のシステムとして構築することで、免許証番号に対応させてIDカードの作成処理を各端末コンピュータで並行して行うことは、当業者であれば容易に想到することである。 (2)次に、前記相違点3の「IDカード作成制御手段は、・・・前記ID番号に対応付けて前記ID情報、前記顔画像データ及び前記申請書のイメージデータをファイリングする」との点について検討する。 前記<相違点2について>で検討したように、刊行物1に記載の免許台帳統合管理システムは、サブマスタに関連データを記憶し、光ディスク装置20に顔画像データと申請書のイメージデータとを記憶しているものであって、最終的にデータベースとなるサブマスタや光ディスク装置20にデータを保存するものであって、この点は実質的な相違点でないし、また、「ファイリング」の意味として、ホストコンピュータのデータベースに記憶されているデータを、端末コンピュータのメモリ(ハードディスク)に一時的に記憶することであるとも解するとしても、データを一時的に記憶しておくメモリを備えることは通常のことであって格別なものではない。 以上(1)、(2)のとおりであるから、前記相違点3に係る本願発明の構成は、刊行物1記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。 そして、本願発明の作用効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2,3に記載される事項及び周知の技術から当業者が予測できる程度のものである。 したがって、本願発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物1記載の発明、刊行物2,3に記載される事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物1に記載の発明、刊行物2,3に記載の事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-10 |
結審通知日 | 2009-02-17 |
審決日 | 2009-03-03 |
出願番号 | 特願2005-132776(P2005-132776) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B42D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武田 悟 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
菅野 芳男 菅藤 政明 |
発明の名称 | IDカード作成・管理システム |
代理人 | 笹島 富二雄 |