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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1195813
審判番号 不服2006-7516  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-20 
確定日 2009-04-16 
事件の表示 特願2003-282019「光記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月24日出願公開、特開2005- 50434〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成15年7月29日の出願であって、平成17年9月1日付けで手続補正がなされたが、平成18年3月13日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成18年4月20日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年5月17日付けで手続補正がなされた。
その後、当審において、平成20年11月4日付けで前置報告書の内容を利用した審尋がなされたが、回答書の提出はされなかった。

第2 平成18年5月17日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年5月17日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1.手続補正の内容
平成18年5月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に
「【請求項1】
光ディスクからの光ビームの反射光量を検出し、反射光量に応じた電気信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力される前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部から出力される前記電気信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換器と、
前記アナログ・ディジタル変換器から出力される前記電気信号を演算処理して、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成するエラー信号生成部と、
前記受光素子から出力される前記電気信号を、直接的または前記演算処理の一部を施して前記増幅部に入力する手段と、
前記増幅部から出力される前記電気信号に与えるオフセットおよびゲインを調整する第1および第2の制御信号を出力する制御部とを備え、
前記制御部は、前記アナログ・ディジタル変換器から出力される前記電気信号を検出し、前記電気信号の直流成分と前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの中央値とが一致するように、前記電気信号にオフセットを与えるための第1の制御信号と、前記電気信号の出力振幅が前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの範囲内に収まるようにゲインを調整するための第2の制御信号とを出力し、
前記増幅部は、前記第1および第2の制御信号に応じて、前記電気信号に与えるオフセットおよびゲインを調整し、増幅した前記電気信号を前記アナログ・ディジタル変換器に入力する、光記録再生装置。
【請求項2】
前記増幅部は、前記電気信号と基準電圧との電位差を増幅する差動増幅器と、前記差動増幅器の第1の入力端子に結合され、前記基準電圧にオフセットを与えるための第1の可変抵抗器と、前記差動増幅器の出力端子と第2の入力端子との間に結合され、ゲインを変化させるための第2の可変抵抗器とを含み、前記第1の可変抵抗器は、前記第1の制御信号に応じて抵抗値を調整し、前記第2の可変抵抗器は、前記第2の制御信号に応じて抵抗値を調整する、請求項1に記載の光記録再生装置。
【請求項3】
前記制御部は、中央演算処理装置を含む、請求項1または2に記載の光記録再生装置。」

とあったものを、

「 【請求項1】
光ディスクからの光ビームの反射光量を検出し、反射光量に応じた電気信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力される前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部から出力される前記電気信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換器と、
前記アナログ・ディジタル変換器から出力される前記電気信号を演算処理して、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成するエラー信号生成部と、
前記増幅部から出力される前記電気信号に与えるオフセットおよびゲインを調整する第1および第2の制御信号を出力する制御部とを備え、
前記受光素子は、複数の領域に分割され、前記複数の領域から複数系列からなる前記電気信号を出力し、
前記増幅部および前記アナログ・ディジタル変換器は、それぞれ、前記複数系列からなる電気信号の増幅およびディジタル変換が可能なように設けられ、
前記制御部は、前記アナログ・ディジタル変換器から出力される前記複数系列の電気信号を検出し、前記複数系列の電気信号の各々について、前記電気信号の直流成分と前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの中央値とが一致するように、前記電気信号にオフセットを与えるための前記第1の制御信号と、前記電気信号の出力振幅が前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの範囲内に収まるようにゲインを調整するための前記第2の制御信号とを出力し、
前記増幅部は、前記第1および第2の制御信号に応じて、前記複数系列の電気信号の各々に与えるオフセットおよびゲインを調整し、増幅した前記複数系列の電気信号を前記アナログ・ディジタル変換器に入力する、光記録再生装置。
【請求項2】
前記増幅部は、
前記電気信号と基準電圧との電位差を増幅する差動増幅器と、
前記差動増幅器の第1の入力端子に結合され、前記基準電圧にオフセットを与えるための第1の可変抵抗器と、
前記差動増幅器の出力端子と第2の入力端子との間に結合され、ゲインを変化させるための第2の可変抵抗器とを含み、
前記差動増幅器と前記第1および第2の可変抵抗器とは、前記複数系列の電気信号に対応して複数組が設けられ、
前記第1の可変抵抗器は、前記第1の制御信号に応じて抵抗値を調整し、前記第2の可変抵抗器は、前記第2の制御信号に応じて抵抗値を調整する、請求項1に記載の光記録再生装置。
【請求項3】
前記制御部は、中央演算処理装置を含む、請求項1または2に記載の光記録再生装置。」

と補正をしようとするものである。

すると、本件補正後の請求項1についてみれば、
本件補正前の「前記受光素子から出力される前記電気信号を、直接的または前記演算処理の一部を施して前記増幅部に入力する手段と、」を、
本件補正後に『前記受光素子は、複数の領域に分割され、前記複数の領域から複数系列からなる前記電気信号を出力し、前記増幅部および前記アナログ・ディジタル変換器は、それぞれ、前記複数系列からなる電気信号の増幅およびディジタル変換が可能なように設けられ、』とする事項は、
択一的記載で必ずしも明確でなかった「受光素子から出力される前記電気信号を、直接的または前記演算処理の一部を施して前記増幅部に入力する」から、明確である『直接的』を実質的に選択して『前記受光素子から出力される前記電気信号』を『前記増幅部に入力する手段』とするととともに、
受光素子については「複数の領域に分割され、前記複数の領域から複数系列からなる前記電気信号を出力し」とし、「増幅部およびアナログ・デイジタル変換器」についても『それぞれ、前記複数系列からなる電気信号の増幅およびディジタル変換が可能なように設けられ』とするもので、これらは発明特定事項を限定するものと認める。
また、上記『複数の領域から複数系列』とすることで、本件補正前の「前記電気信号に与える」を「前記複数系列の電気信号の各々に与える」とすることも発明特定事項を限定するものである。
また、本件補正後の請求項2,3については本件補正と同じく請求項1を引用するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-298373号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の技術的事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【0038】この情報記録再生装置は、情報記録媒体100に対する情報(データ)の記録及び再生を行う装置である。この情報記録媒体100は、例えば、CD-ROM,DVD-ROM,CD-R,CD-RW,DVD-R,DVD-RAM,MD,MOなどの光ディスク等の再生すべき情報が記録された、あるいは情報の記録が行われる記録媒体である。」

(2)「【0044】次に、上記情報記録再生装置におけるこの発明の前提となる通常の信号処理部について説明する。図2は、この発明の前提となる通常の信号処理部の内部構成を示すブロック図である。この信号処理部104は、異なるフォーマットの情報記録媒体へ対応するため二つの光源LD1とLD2を備えており、受光部PD2とPD5によってそれぞれの光源LD1とLD2の照射光の一部をモニタする。
【0045】受光部PD1では光源LD1によるレーザ光の照射時に情報記録媒体からの反射光を受光し、受光部PD4では光源LD2によるレーザ光の照射時に情報記録媒体からの反射光を受光する。受光部PD3はチルト量を検知するための受光部である。上記受光部PD1とPD3とPD4は、複数に分割された分割受光素子によって構成されており、その各受光素子によって反射光を受光している。なお、光ピックアップによっては光源LD1とLD2の出射光を同一の受光部でモニタするように構成されたものもある。同様にして、情報記録媒体からの反射光を受光する受光部も同一とするように構成されたものもある。
【0046】入力選択部1は、受光部PD1?PD5の出力する各受光信号を入力し、何れか一つを制御部11からの選択信号に従って順次選択出力していく。調整部2は、入力選択部1から出力された受光信号のオフセット調整及びゲイン調整を行う。A/D変換器3は、調整部2から出力された受光信号をアナログ信号からデジタル信号にデジタル変換(A/D変換)する。上記各部による経路にて処理される受光信号は、後述するように比較的低帯域な信号であり、複数の信号を時系列処理する。この入力選択部1,調整部2及びA/D変換器3によって受光信号変換部21′を構成する。
【0047】サーボ信号演算処理部13は、A/D変換器3によってディジタル信号に変換された各受光信号に基づいてサーボエラー信号を生成するディジタル演算処理を行う。また、同時に、オフセット調整,ゲイン調整も行ってその生成したサーボエラー信号をサーボプロセッサ14へ供給する。RF選択部4は、受光部PD1とPD4から出力された受光信号を入力し、後段の回路に必要な信号を選択あるいは一部加減算などの演算を行い、その後段の高速アナログ信号処理部5,ウォブル信号生成部6,RF信号前処理部8の回路へ供給する。」

(3)「【0055】図3に示すように、この主要部は第1?第n受光部PD1?PDnがそれぞれ一つから複数の受光信号を出力する。入力選択部1は、N個のスイッチSW1?SWNからなり、それぞれのスイッチの一端が対応する受光部からの受光信号Sin1?SinNに接続されている。これらのスイッチSW1?SWNはそれぞれ選択信号Ssel1?SselNに応じて何れか一つのスイッチがオンとなり、そのオンになったスイッチに対応する受光信号が選択されて出力される。その出力される受光信号をSseloとする。調整部2は、オフセット調整部30及びゲイン調整部31からなり、受光信号Sseloをそれぞれオフセット信号Sofs及びゲイン信号Sgainに従ってそれぞれオフセット調整及びゲイン調整を行う。その調整後に出力される受光信号をADinとする。
【0056】A/D変換器3は、オフセット調整及びゲイン調整された受光信号ADinをアナログ値(アナログ信号)からnビットのディジタル値(デジタル信号)に変換する。A/D変換されたデータは第1インタフェース(I/F)部32と第2インタフェース(I/F)部33を介してデータ保持部34へ転送され、制御部11からの書込信号Wr1?WrMによってデータ保持部34のレジスタReg1?RegMに順次格納していく。サーボ信号演算処理部13は、データ保持部34のレジスタReg1?RegMに格納された受光信号のデータからサーボエラー信号を生成する演算処理を行う。また、情報記録媒体や光ピックアップの個体間バラツキによるゲインバラツキを調整するゲイン調整やオフセット調整も行う。
【0057】なお、この実施形態において設けた受光部の数,種類,受光信号線数は一例であり、受光信号の総数が入力選択部1の入力端数N以内であれば、その他の数,種類,受光信号線数でも実現可能である。以下の説明では、これら受光部には、図2と同様に受光部PD1?PD5の五つの受光部を備えた情報記録再生装置で説明する。
【0058】より具体的に説明するため、第1受光部PD1は情報記録媒体からの反射光を、図5に示すような四分割受光素子35によって受光(受光スポット36)し、四分割受光素子35の各分割受光素子(a,b,c,d)が受光量に応じて出力する受光電流を電流電圧変換器37a?37dによってそれぞれ受光信号VA,VB,VC,VDに変換して出力する。ここで、光源の照射光量や情報記録媒体の反射率などによって受光量が大きくばらつくため、各電流電圧変換器37a?37dのゲイン、つまり電流電圧変換率をゲイン切換信号に従って切換えられるようにしている。この場合、通常は帰還抵抗の抵抗値を切換えることによって切換えることができる。これは記録時と再生時とで切換える程度のものでもよい。」

(4)「【0116】次に、ディジタル信号処理によるサーボエラー信号の生成について説明する。図18は、上記サーボ信号演算処理部13の内部構成を示すブロック図である。図19は、図18に示したサーボ信号演算処理部13の動作説明に供する波形図である。図18に示した構成のサーボ信号演算処理部13によれば、後述する係数の変更により、様々なサーボエラー信号生成の演算方法に対応可能である。その一例として、フォーカスエラー信号FEは非点収差法で、トラックエラー信号TEは差動プッシュプル法でそれぞれ生成し、次の数4及び数5に基づく演算処理によって生成する場合を説明する。非点収差法,差動プッシュプル法とも周知の方法であるので詳細な説明は省略する。」

(5)図3には、A/D変換器からの出力が、I/Fを介して制御部に入力され、制御部からオフセット信号(Sofs)及びゲイン信号(Sgain)が出力され調整部に入力されることが記載されている。

上記摘示事項を、図面とともに総合整理すると、刊行物1には次の発明が記載されているものと認める。
「光源によるレーザ光の照射時に光ディスク等の情報記録媒体からの反射光を受光する受光部と、
受光部の出力する各受光信号を入力し、何れか一つを制御部からの選択信号に従って順次選択出力していく入力選択部と、
入力選択部から出力された受光信号のオフセット調整及びゲイン調整を行う調整部と、
調整部から出力された受光信号をアナログ信号からデジタル信号にデジタル変換(A/D変換)するA/D変換器と、
A/D変換器によってディジタル信号に変換された各受光信号に基づいてサーボエラー信号を生成するディジタル演算処理を行うサーボ信号演算処理部と、
A/D変換器からの出力を入力し、オフセット信号とゲイン信号を出力する制御部と、
を備えた情報記録再生装置であって、
受光部は、複数に分割された分割受光素子によって構成され、各分割受光素子が受光量に応じて出力する受光電流を電流電圧変換器によってそれぞれ受光信号に変換して出力し、
調整部は、受光信号をそれぞれオフセット信号及びゲイン信号に従ってそれぞれオフセット調整及びゲイン調整を行い、調整された受光信号を出力し、
サーボ信号演算処理部は、サーボエラー信号として、フォーカスエラー信号とトラックエラー信号を演算処理によって生成する
情報記録再生装置。」(以下「刊行物発明」という。)

また、同じく、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である特開平6-176371号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(6)「【請求項2】 前記ゲイン・オフセット調整部は、装置立ち上げ状態で測定したフォーカスエラー信号の直流(DC)レベルが前記第1のADコンバータの中央値に略一致するように前記フォーカスエラー信号のオフセット調整を行うと共に、フォーカスサーチ動作時に測定した前記フォーカスエラー信号のピーク・トウ・ピークが前記第1のADコンバータの所望レンジ範囲内に入るようにゲイン調整してなる請求項1記載の光ディスク装置。」

3.対比
(a)刊行物発明の「光ディスク等の情報記録媒体」は、本願補正発明の「光ディスク」に相当する。
(b)刊行物発明の「光源によるレーザ光の照射時に情報記録媒体からの反射光を受光する受光部」は、「受光量に応じて出力する受光電流を電流電圧変換器によって」「受光信号に変換して出力」するものであって、電流電圧変換器によって変換された受光信号は、情報記録媒体からの反射光に応じた電気信号であるから、本願補正発明の「光ディスクからの光ビームの反射光量を検出し、反射光量に応じた電気信号を出力する受光素子」に相当する。
(c)刊行物発明の「入力選択部から出力された受光信号のオフセット調整及びゲイン調整を行う調整部」は、入力された受光信号のゲイン調整つまり増幅率の調整を行い、出力を行うもので、受光信号を増幅して出力していることは明らかで、本願補正発明の「受光素子から出力される電気信号を増幅する増幅部」に相当する。
(d)刊行物発明の「調整部から出力された受光信号をアナログ信号からデジタル信号にデジタル変換(A/D変換)するA/D変換器」は、本願補正発明の「前記増幅部から出力される前記電気信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換器」に相当する。
(e)刊行物発明の「A/D変換器によってディジタル信号に変換された各受光信号に基づいてサーボエラー信号を生成するディジタル演算処理を行うサーボ信号演算処理部」は、「サーボエラー信号として、フォーカスエーら信号とトラックエラー信号を演算処理によって生成する」から、本願補正発明の「前記アナログ・ディジタル変換器から出力される前記電気信号を演算処理して、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成するエラー信号生成部」に相当する。
(f)刊行物発明の「調整部」は、入力された受光信号の「オフセット調整及びゲイン調整」を、「それぞれオフセット信号及びゲイン信号に従って行」い、「調整された受光信号を出力」するものであって、刊行物発明の「オフセット信号及びゲイン信号」は、本願補正発明の「前記増幅部から出力される前記電気信号に与えるオフセットおよびゲインを調整する第1および第2の制御信号」に相当する。
(g)刊行物発明の「オフセット信号とゲイン信号を出力する制御部」は、本願補正発明の「前記増幅部から出力される前記電気信号に与えるオフセットおよびゲインを調整する第1および第2の制御信号を出力する制御部」に相当する。
(h)刊行物発明の「受光部は、複数に分割された分割受光素子によって構成され、各分割受光素子が受光量に応じて出力する受光電流を電流電圧変換器によってそれぞれ受光信号に変換して出力し」は、電流電圧変換器によって変換された受光信号は、電気信号であることは明らかで、本願補正発明の「前記受光素子は、複数の領域に分割され、前記複数の領域から複数系列からなる前記電気信号を出力し」に相当する。
(i)刊行物発明の「制御部」は、「A/D変換器からの出力を入力し、オフセット信号とゲイン信号を出力する」ものであって、A/D変換器からの出力は、電気信号であり、オフセット信号及びゲイン信号は、調整部からA/D変換器へ出力される「受光信号」の「オフセット調整及びゲイン調整」を行うための信号であるから、「前記アナログ・ディジタル変換器から出力される電気信号を検出し、」「前記」「電気信号」「について、」「前記電気信号にオフセットを与えるための前記第1の制御信号と、」「前記電気信号の」「ゲインを調整するための前記第2の制御信号とを出力」する点で、本願補正発明の「制御部」と共通する。
(j)刊行物発明の「調整部」は、「受光信号をそれぞれオフセット信号及びゲイン信号に従ってそれぞれオフセット調整及びゲイン調整を行い、調整された受光信号を出力し」、A/D変換器に入力するもので、受光信号のゲイン調整つまり増幅率の調整を行い出力しているから、受光信号を増幅して出力していることは明らかであって、「前記第1および第2の制御信号に応じて、前記」「電気信号の各々に与えるオフセットおよびゲインを調整し、増幅した前記」「電気信号を前記アナログ・ディジタル変換器に入力する」点で、本願補正発明の「増幅部」と共通する。
(k)刊行物発明の「情報記録再生装置」は、「光ディスク等情報記録媒体」の記録再生を行う装置であるから、本願補正発明の「光記録再生装置」に相当する。

したがって、本願補正発明と刊行物発明との[一致点]及び[相違点]は以下のとおりである。
[一致点]
「光ディスクからの光ビームの反射光量を検出し、反射光量に応じた電気信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力される前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部から出力される前記電気信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換器と、
前記アナログ・ディジタル変換器から出力される前記電気信号を演算処理して、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成するエラー信号生成部と、
前記増幅部から出力される前記電気信号に与えるオフセットおよびゲインを調整する第1および第2の制御信号を出力する制御部とを備え、
前記受光素子は、複数の領域に分割され、前記複数の領域から複数系列からなる前記電気信号を出力し、
前記制御部は、前記アナログ・ディジタル変換器から出力される電気信号を検出し、前記電気信号のについて、前記電気信号にオフセットを与えるための前記第1の制御信号と、前記電気信号のゲインを調整するための前記第2の制御信号とを出力し、
前記増幅部は、前記第1および第2の制御信号に応じて、前記電気信号に与えるオフセットおよびゲインを調整し、増幅した前記電気信号を前記アナログ・ディジタル変換器に入力する、光記録再生装置。」の点。

[相違点]
(相違点1)
本願補正発明が「前記増幅部および前記アナログ・ディジタル変換器は、それぞれ、前記複数系列からなる電気信号の増幅およびディジタル変換が可能なように設けられ」ているのに対して、刊行物発明では「前記増幅部および前記アナログ・ディジタル変換器」がそれぞれ複数系列からなる電気信号の増幅およびディジタル変換が可能なように設けられている点について特定されておらず、これに伴い、「制御部」においても「アナログ・ディジタル変換器」から出力される複数系列の電気信号を検出して、「増幅部」から出力される「複数系列からなる電気信号」を調整することについて特定されていない点。

(相違点2)
本願補正発明では、オフセットの調整が「前記電気信号の直流成分と前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの中央値とが一致するよう」にするものであり、ゲインの調整が「前記電気信号の出力振幅が前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの範囲内に収まるように」するものであるのに対して、刊行物発明では、そのような特定がなされていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
増幅器及びA/D変換器を複数系列からなる電気信号の増幅及びディジタル変換が可能なように複数並列に設けることは周知技術(例えば、特開平10-97724号公報の段落【0057】?【0063】及び図10等参照)であって、刊行物発明においても、増幅器及びアナログ・ディジタル変換器を、複数系列からなる電気信号の増幅およびディジタル変換が可能なように設け、「制御部」においても、アナログ・ディジタル変換器から出力される複数系列の電気信号を検出して「増幅部」から出力される「複数系列からなる電気信号」を調整するようにすることは当業者が容易に想到しうることである。

(相違点2について)
刊行物2には、オフセットの調整について、電気信号であるフォーカスエラー信号の直流成分が、A/D変換器の中央値に一致するようにするものであって、ゲイン調整がフォーカスエラー信号の出力振幅をA/D変換器のダイナミックレンジ内に収まるようにすることの記載がある。そして、刊行物発明とは、光ディスクに対するトラッキングエラー信号のオフセット及びゲインを調整する技術の点で共通する。
したがって、刊行物発明においても、オフセットを調整して前記電気信号の直流成分と前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの中央値とが一致するようにし、ゲインを調整して前記電気信号の出力振幅が前記アナログ・ディジタル変換器のダイナミックレンジの範囲内に収まるようにすることは当業者が容易に想到しうることである。

そして、上記相違点についての判断を総合しても本願補正発明の奏する効果は、各刊行物から当業者が十分予測可能なもので格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、上記刊行物1に記載された発明に刊行物2及び周知技術を組合せることで当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年5月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成17年9月1日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」)は、「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明の「受光素子」が「複数の領域に分割され、前記複数の領域から複数系列からなる前記電気信号を出力」ている点、「増幅部」および「アナログ・ディジタル変換器」が「前記複数系列からなる電気信号の増幅およびディジタル変換が可能なように設けられ」ている点に関する限定を削除し、「受光素子から出力される電気信号」が「直接的または前記演算処理の一部を施して」増幅部に入力されるとしたものに相当する。

そうすると、本願発明の「前記受光素子から出力される前記電気信号を、直接的または前記演算処理の一部を施して前記増幅部に入力する」のうち「前記受光素子から出力される前記電気信号を、直接的に増幅部に入力する」場合であって、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」で判断したとおり、刊行物1に記載された発明に刊行物2及び周知技術を組合せることで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-13 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-03 
出願番号 特願2003-282019(P2003-282019)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山澤 宏中野 浩昌  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 小松 正
漆原 孝治
発明の名称 光記録再生装置  
代理人 堀井 豊  
代理人 酒井 將行  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  

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